大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

NAFTA再交渉で米、自動車メーカーに15ドルの最低賃金を求める

2018年03月31日 | 日記

 2018年3月30日(金)のロイターは、現在おこなわれているNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉で、アメリカが自動車メーカーに15ドルの最低賃金を求めていると伝えた。

 NAFTAの再交渉でアメリカは域内で関税なしに輸出できる自動車について、現地生産比率を現在の62.5%から85%に引き上げることを求めている。

 今回、ロイターは、アメリカはさらに輸出される自動車の一定比率の部品について時給15ドル以上の労働者で生産されていることを要求していると伝えている。

 ロイターは生産比率や時給水準については流動的としながらも、低賃金に依存するメキシコの自動車産業への影響は大きいだろうと述べている。


中国・青島(チンタオ)の万象城: こんなのが近くにあったら嬉しいショッピング・モール

2018年03月28日 | 日記

 少し前、資料収集のため中国の青島(チンタオ)を訪れた。

 知りたかった情報が得られ、今回の訪問は大変有意義だった。

 ところで中国の先進経済地域というと上海深センが有名だが、今回の訪問では青島もまた大きく経済発展を遂げていることがわかりその点でも有意義だった。

 印象的なのが青島万象城という贅を尽くしたショッピングモール。

 私は各国のリテールに関心があり、時間がゆるせばショッピング・モール、アウトレットモール、家電量販店、百貨店、スーパーを見て歩いているが、万象城は私がこれまでに行ったショッピングモールの中でもっとも洗練されたものだった。もっとも、アメリカの旅行サイトでトップ10とされているモールにはひとつも行ったことがなく、あくまで私の限られた経験の中での話ではあるが。

 下は万象城に入っている書店。これまで私がみた書店の中で一番おしゃれ。村上春樹さんの本が平積みになっていたのが印象的だった。

 モールの中はこんな感じ。とにかく天井が高くて開放感がある。基本的に中国の公共建築は欧米基準でもともと天井が高いのだが、ここはとくに高い。また床には、最近日本ではあまりみかけなくなった天然大理石を敷き詰めている。

 中にはBALLYやWEEKENDなど高級ブランドからユニクロ、ZARA、H&Mといったファスト・ファッションまで幅広いブランドがところ狭しと並んでいる(モールだからかシャネルとフェンディは入っていなかったが、青島市内の百貨店にいけばあるだろう)。ブランド内容と数でここに勝るモールは日本でも少ないのではないか。

 中には巨大なスケートリンクもあってびっくり。私が写真をとったときは羽生さんが平昌で金メダルをとったときの滑りが繰り返し巨大スクリーンに映し出されていた。なお手前の広告には15年一貫バイリンガル教育(!)と書いてある。

 

 私的にさらにおどろいたのはテスラの展示ブースが2カ所あり、人気を集めていたこと。

 

 

 実はテスラの実物を展示場でみるのはこれがはじめて(テスラ・ストアーは日本が4カ所に対し、中国は30カ所)。

 得ることの多い訪問だった。


卒業式

2018年03月21日 | 日記

 昨日は卒業式だった。

 ゼミ生の進路は、大手会計事務所(公認会計士試験合格)1人、公務員4人(県庁1人、国家公務員1人、市役所2人)、教員1人、民間企業7人。

 今年のゼミ生は、自分のやりたい仕事内容をしっかり考え、それを実際に手に入れた人が多かった。

 

 ところで、大学教員と学生の関係は国により異なり、同じ国でも大学により大きく異なる。

 たとえば日本のゼミは、ヨーロッパの大学を模したもので、アメリカにはない仕組みだ(したがってアメリカでは卒論もないのが普通)。

 そのかわりアメリカでは、私立大学を中心に授業は少人数(日本のゼミなみの人数)でおこなわれることが多い。

 ただアメリカのすべての大学がそういう恵まれた環境にあるわけでもない。

 予算の少ない州立大学の中には、学生数が多く授業も大規模中心なことろもある。

 ある知り合いのアメリカ人は南部の名の知れた州立大学をでているが、在学中に教員と親しく話したことは一度もなかったと言っていた。

 私はといえば、ゼミではとにかく話をきくこと(話してもらうこと)を心がけている。

 国際的に日本の大学生にもっとも欠けていることが、積極的に話す姿勢だと思っているからである。

 ふりかえってみると、今年卒業のゼミ生のひとたちとはよく話すこと(話をしてもらうこと)ができたと思っている。

 今後の活躍を大いに期待したい。


減税で、米企業の自社株買い増加

2018年03月09日 | 日記

 昨年末に成立したアメリカの減税法は、5年間、投資したものをその年に全額償却することを認めている。

 このためアメリカの多くのメディアは、減税の利益は投資にまわり自社株買いは減少する(株にはマイナス)と予想した。

 しかしニューヨーク・タイムズ(2018/2/26)によれば、ここにきて自社株買いが増加している。

 NYTによれば、アメリカでは2018年1月に約100社が総計1780億ドル(約20兆円:1ドル=110円)の自社株買いを発表した。これは過去最高記録となるものである。

 減税法で海外利益を米国に戻しやすくなったためシスコは670億ドル(7.4兆円)の海外利益を米国に戻したが、そのうち250億ドル(2.8兆円)を自社株買いにまわした。

 同様にアルファベット(グーグルの社名)が86億ドル(9.5千億円)、ペプシが150億ドル(1.7兆円)、アプライド・マテリアルが60億ドル(7千億円)の自社株買いを計画している。

 2016年のアメリカ企業の自社株買い総額は5360億ドル(59兆円)。今年は、それを大きく上回る自社株買いがおこなわれる可能性が高くなっている。

 ところで、この経済への影響はどうなのであろうか。

 減税を支持する人たちは、減税法により、アメリカ国内での投資が増加するほか、あらたにえた利益により雇用や賃金が増加すると主張している。

 しかしNYTによれば、2005年に今回と同じように海外利益を国内還流させる際の税率が引き下げられたとき、3千億ドル(33兆円)の利益が国内にもどってきたが、その92%が自社株買いに充てられたとされる。

 今回も同じようなことになれば、現在、10%のアメリカ人が株の84%、1%のアメリカ人が株の40%を所有しているため、自社株買いの恩恵は株を所有する富裕者に大きくかたよることになりそう。

 これからも減税の影響をしっかりチェックしていきたい。

参考:アメリカでは自社株買いが年々増加している

 上記NYTによれば、20年前は自社株買いは投資の1/4にすぎなかったが、2016年は自社株買いは投資額をわずか5%を下回る程度まで増加している。


韓国の最低賃金、日本の一部県とならぶ

2018年03月06日 | 日記

 近年、先進国で最低賃金の大幅引き上げが続いている(最新のデータはこちら)。

 そうしたなかGDP世界11位の韓国の最低賃金が、2018年1月から7530ウォン(738円:100ウォン=9.8円で計算)に引き上げられた。

 日本は都道府県ごとに最低賃金を定めているが、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄、高知の最低賃金は737円青森、岩手、秋田、鳥取は738円山形、愛媛は739円。島根、740円。韓国の最低賃金は、こうした県とほぼ同じになった。

 なお韓国の物価は日本より低いため、最低賃金によって可能な生活レベルは韓国の方が高い。

 フィナンシャル・タイムズ(2018/3/1)によると、韓国の最低賃金は賃金の中央値の70%で、先進国ではもっとも高くなっている-他の労働者にくらべた賃金水準が高い-。

 日本同様に非正規雇用が増大格差拡大が大きな社会問題になっている韓国であるが、文政権は最低賃金の大幅引き上げにより格差縮小を進めようとしている。

 フィナンシャル・タイムズは、雇用や中小零細企業への悪影響を心配する意見も紹介しているが、韓国はいまや自動車、電機、IT、造船、鉄鋼などで世界トップレベルとなっており、それにみあった待遇を人々が求めるのは自然の成りゆきなようにも思う。

 現在、日本の最低賃金の加重平均は848円。

 日本の最低賃金は他の先進主要国との間に大きな差があってその差がなかなか縮まらない。そうしたなかで、韓国の最低賃金が部分的に日本に追いついた。

 今後とも韓国の最低賃金のうごきを注視していきたい。