岩切天平の甍

親愛なる友へ

テキサス・ムービー

2007年12月03日 | Weblog

 ニューヨークに初雪、電話が鳴る。
「朝ニュース用に雪撮ってもらいたいんですけど。」

セントラルパークにでかけて犬は喜び庭駆け回り。
日本人女性が小さな雪だるまをつくっていた。
「作品撮ってもいいですか?朝のニュースに流れますよ。全国放送ですよ。」「えー、ホントにぃー?おかーさんに電話しなくちゃー。」

十年前までニューヨークに住んでいた照明マンのMから電話があった。
「来てるんだよね、ニューヨーク。」

あの頃、よく一緒に映画を見たり写真を撮ったりして暮らしたMは、自ら監督してロード・ムービーを撮ろうと、今は散り散りになった仲間たちと撮影隊を組んで、テキサスまで運転して行ったことがあった。当時の僕は今よりもっと不遜で、うまく行かない撮影に苦しんでいた彼の力になるどころか、他人事のように、したり顔で説教までして点数稼ぎしかねないようないやなやつだった。今も思い出すと冷や汗が出る。彼はさぞ怒っていた事だろうが、それでも正直なところ僕にとっては甘い思いでだ。

偶然にもトヨダヒトシからも電話があった。
「帰って来たんだよね、ニューヨーク。」

近所に住む共通の友人Nが今夜誰かを招いて鍋パーティーをやるらしいというトオルの情報で、ドラマーのシゲも誘って無理矢理そこに押しかけることに話は決まった。

大メイワクなのはN、「そんなに食い物ないですよー。」と泣きそうな顔をしている。あっけにとられるNの友人たちに「どーも、どーも」のひとことで宴会を乗っ取った。久しぶりに目が見えなくなるまで飲んだけど、終始にこにこしていたMには、今夜もまたちゃんとあやまりそびれた。今度はいつ会えるだろうか。