いわゆるサブプライム・ローン問題・・・、住宅価格の高騰を見込んで、支払い能力の無い人に過大なローンを貸し付けたのが、ここのところの不動産不況で回収不能になってきている。影響は業界内に留まらず、世界経済にまで波及しそうな勢いだ。
取材に応じてくれるローン負債者があるという。
初老の白人夫婦、ドラッグ中毒で育児を放棄した親(他人)から子供を引き取り、十六人育て上げた。極めて真面目な中流家庭だ。
子供達が育つにつれて家を拡張するのに借りたローンが利率が上がった為に払えなくなった。
「もっとちゃんと全ての書類に目を通すか、弁護士を雇ってやるべきだったわ。こんなに厚い、百枚もあるような契約書、みんな読むのかしら。」
「疲れたわ、私たちもう歳を取りすぎた・・・。」
肩を落としてため息をつく。
以前、家を買おうとしたことがあったから分かるのだが、いきなり分厚い契約書を出されてこことこことここにサインしろと言われる。
全てに目を通そうなどとするとどれだけ時間がかかるか分からないし、まして、こういった書類はたいがい専門用語だらけの意味不明な文章が多い。
「すぐに契約しないといい物件は他の誰かにとられてしまいますよ。」という脅し文句が背中を押す。それで契約者に問題が起きても、法的には問題は無いのだろうが、倫理的には詐欺まがいだと感じてしまうだろう。
こういった問題の当事者が取材に応じてくれるのは珍しいと言っていたのだけれども、実際に会ってみると、テレビでも何でもいいから話を聞いてくれる人がいれば、少しは慰めになるのだろうと思うくらい気の毒な様子で、我々の手を取って、「カリフォルニアに来た時にはきっとまた連絡してね、ホテルなんかに泊まる事ないのよ。」と言った。