岩切天平の甍

親愛なる友へ

いただきます

2007年10月07日 | Weblog

ある日イースト・ビレッジを歩いていて、歩道にテーブルを出したカフェでパンク風の女の子がご飯を前に顔の前で両手を合わせて目をつむっているのを見かけた。「いただきます。」をしているのだが、この光景に「ああ、三つ子の魂、ってやつだなぁ。」と、いたく感激してしまった。パンク風っていうのがまたいい。

その時カメラを持っていなかった。是非写真に撮ってみたいと、知人にパンクはいないかと探してみたが、今時流行らないのか、なかなか見つからない。
放送局にお弁当を売りに来ていたK君がパフォーマーだと言うので「コレコレこういう訳で、ちょっくら写真を撮らしてもらいたいんだけど。」と頼むと快く引き受けてくれた。「インパクトのある格好で来てね。」「分かりましたー。」

約束の日曜日、クーパースクエアのカフェに座って待っていると。交差点の向こうから何やら白いのがやって来る。「ウワッ、マジかよ!」イスからズリ落ちそうになる。ブリーフ一枚で頭のてっぺんから足の先までの白塗り、山海塾風だ!街行く人たちが立ち止まって振り返る。インパクトありすぎだぜ!平静を装う僕の前に「お待たせしました。」と座る。表情が分からない。

「ちょっと午前中、パフォーマンスをしてきたんです。ああ、疲れた。」
「パフォーマンスって、何するの?」
「街に立ってたり、ティファニーに入ったり。」
「ティファニーって、何も言われなかったの?」
「やっぱり追い出されましたね。『お客さん、お化粧は結構なんですが、裸はちょっと。』って。へへへ。」
笑うと顔がヒビ割れる。
「・・・、へーうまいこと言うもんだね。」

「で、どこで写真撮りましょうか?」
「え?ああ、じゃあワシントンスクエア・パークでも行こうか。」
カメラをぶら下げている男と一緒に歩いていると皆納得するのか、それともイースト・ビレッジだからか、今度はすれ違う人もあまり反応しない・・・こともないか。
公園で彼はノリノリで「こうですか?」「こんなのはどうですか?」とポーズを取ってくれる。「いいねー、いいねー!」とバシャバシャ撮る。なんだか当初のプランとだいぶ違うなぁ。にこにこと寄って来る通行人とのんびりおしゃべりして、イースト・ビレッジの午後が過ぎて行った。