岩切天平の甍

親愛なる友へ

Omi

2007年10月01日 | Weblog

3年前の冬、前芝さんの彫刻を自然の中に置いて写真に撮ったらいいんじゃないかと言う話が出た事があった。上がった候補地が、マンハッタンから北へ、車で約三時間走った森の中にあるOmi International Artist Colony。箱根彫刻の森美術館風だが、美術に限らず、音楽、パフォーミング・アーツ等の芸術家達がそこに住んで活動する芸術村だ。そこの森にある美しい彫刻公園で写真を撮る許可を前芝さんが取り付けて来た。

当時僕はミニバンを持っていたので二人でまず下見に、寒いさなか、おっさん二人で展示してある作品を眺めながら歩き回る。前芝さんの作品は桜で出来ているから、冬の森の中に置いたのでは風景に埋もれてしまいそうだったし、大きいから、一度組み立てたら動かせない。自分の勝手な思い込みにムキになってこだわる僕に、前芝さんはのらりくらりと、「いやーここはー。」「さあ、どうかなー。」とのんびり、僕はプンプンと鼻息を荒げていた。

一旦ブルックリンに戻り、彫刻を解体して車に積み込み再び北へ。
丸太を組み上げたような彫刻は解体して運ぶだけでも結構な労働で、まる一日かかって撮影の時間は一時間くらいか、その間にたった一度だけどんよりと寒い曇り空から日が差して、良かったのかわからないような写真が数枚残った。

そんな事をして、何の得にもならないんだけれど、二人で彫刻を積んで走った夕暮れの田舎道は覚えている。「面白かったね。またやろうね。」とむりやり言った。
思い出すと笑いがこみ上げて来るから、まあ悪くない。
「今度はもう少し小さい作品にしようよ。ビーチでなんかどうかな?」
と言うと、前芝さんは「いやぁ、湿気で作品が傷むからねぇ。」
「じゃあ、このアトリエのビルの屋上なんかどう?マンハッタン橋をバックになんてかっこいいよ。」「でもー、おっこちたら危ないですよー。」
・・・。