岩切天平の甍

親愛なる友へ

平成中村座ふたたび

2007年07月22日 | Weblog

 平成中村座ニューヨーク公演の千秋楽。
演目は“法界坊”。

楽日にも拘らず空席が目立つのは、他の公演とセットでなければ買えないという姑息な売り方がたたったのか、それとも芝居の評判のせいか・・・。

幽霊になる二人の主人公に感情移入させる細やかな演出が薄い。
安易なウケを狙ったテレビのトークショーの様なくすぐりを斬新な演出として延々としつこく、客を辟易させる。
これを辛うじて救うのが圧倒的な伝統。
鳴り物師、三味線連のどこまでも深く高い緊張と炸裂。役者達の体に叩き込まれた所作のみごとさ。ため息の出るような豪華絢爛な美術。
育ちの良いおぼっちゃま達が伝統という舞台の上でおいたされているのを観客が苦笑いして見守っているといった風情。

アメリカ人は、いや、歌舞伎に馴染みの薄い日本人ですら、何やら尊敬に値する文化を持つらしい日本という国の、噂に聞く素晴らしい歌舞伎というものを見たくてやって来る。
あの、けったいな格好をして、妙な声で、男が女に化けてやる芝居に、自分の心をわしづかみにしてぐらぐらと揺すぶってくれるのを期待してやって来る。やっぱり同じ人間なんだと感動したくてやって来る。
ソリッドな、誠心誠意の歌舞伎を。

夢を見た。
座員の一人がやめると宣言している。
「俺は、座長親子の為にやってるんじゃないんだ、芸術を追求しているんだから。」と言っていた。