7月24日(日) 当初Sicily島のMarsalaに向かうつもりだったが、予定を変更し少し北にあるTrapaniに向けてSardinia南端の Marina Di capitanaを午前11時出航。平均30ノット(約15m)最大45ノットのMistralをほぼ真追手に受け、昼間はジブとステースルの観音開き、夜間はジブ1枚で平均7ノットの速度で167マイル(約310km)を走り、25時間後の25日午前12時Trapaniに到着した。
標高750mの町Erice
7月26日(火) Trapaniは2005年スペインで開催されたアメリカズカップヨットレースに参加したイタリアチームの拠点となったため、それ以降町は活気づき訪れるヨットも増えつつあるというが、商業港で見るべきものは何もない町だったので一泊で移動するつもりだった。しかしマリーナのスタッフが是非町の後方にそびえるErice山に登ると良いとアドバイスしてくれたので行ってみることにした。タクシーで10分ほどのロープウェイの駅から一気に標高751mのErice山に登る。なんの予備知識も無いまま山頂駅に降り立ち、展望台でもあると思い更に道を5分ほど登っていくと城壁のような石造りのゲートがある。その先を覗くとなんとそこに町があるではないか。そこはErice山の山頂にある城壁に囲まれた町Ericeだった。町は山頂から北斜面に向けて広がっているため、南にあるTrapaniからは全く見えなかったのだ。町の歴史は古く人が住み始めたのは紀元前だという。本格的な町が構成されたのは16世紀になってから。戦災を受けていないため、町は当時のままの雰囲気だ。映画Gran Blueで有名になったSicily東岸にあるTaorminaも断崖の上にある町だがEriceはそれと比較にならない高さ。箱根に近い標高で高原のような涼しさだ。小さな町にもかかわらず時代や宗派の違う教会が10か所以上あり、断崖絶壁に立つ城壁や宮殿の遺跡など、様々な支配者達の残した建造物が随所に残る印象的な町だった。標高750mから眺める360度の眺望も圧巻だった。思いもかけなかった素敵な町に出会い、出発の予定を1日延ばすことにした。Taorminaより余程印象が強い町だが、何故かイタリア政府観光局のHPには全く出てこない。機会があれば是非訪問することをお勧めしたい町だ。
7月27日(水) Trapaniを午前7時40分出航、50マイル先にあるシチリアの州都Palermoを目指す。
岬を回るごとに風が前に振れ、風速も30ノット以上に上がったため予定より時間がかかったが午後5時40分Palermoの港に舫いを取った。10時間エンジンを回しっぱなしだったが停止することは無くホッとした。
7月28日(木) シチリアのPalermoと言えばマフィアの本拠地として有名だ。僕らが20年前にシチリアを訪れた時、空港でレンタカー屋のおやじから、「パレルモに寄るなら、走っている間でも必ず窓は閉めてロックしておけ」と注意を受けたくらい当時は危険な町だった。マフィア同士の抗争が続き日常的に町中で殺人があったようだ。しかし、今は町を挙げて脱マフィアを宣言しておりそうした不安は全く感じなかった。
PalermoはSicilyの州都だけあって大都会だ。港内は東京湾並みに汚れており、町も同様にスラムあり再開発中の場所ありで決してきれいな町ではない。マリーナもすぐ隣が本船の荷揚げ埠頭だったりして落ち着かない。ただひとつ良かったのは、イタリアに入ってからインターネット環境が悪く港に着くとネットカフェ捜しから始めていたが、PalermoでVordafoneのPC用無線LAN通信モジュールを入手できたこと。おかげで携帯電話が届く範囲ならどこでもサクサクとネットが使えるようになった。これで、ネットカフェを捜して町を駆けずり回る必要がなくなった。
温泉のある島、Vulcanoへ
7月31日(日) 一昨日PalermoからSicily島北岸を東進しリゾート地Cefaluのマリーナに1泊、昨日Sicily本島の北東にあるAeolia諸島のひとつ、Vulcano島にやってきて久しぶりに錨泊中。Vulcano島は活火山で、山の中腹からは水蒸気が煙のように立ち昇っているのが見える。泊地の目の前の海岸近くには水中から温泉が吹きだしており、その向こうに泥温泉がある。早速3ユーロ払って久しぶりの温泉を楽しんだ。水温は36℃だがぶくぶく泡がでているところに行くと底から熱い海水が吹きだしている。体中に泥を塗りたくっているご婦人も居て結構皆楽しそうだ。泥をたっぷり含んだ水着はそのまま海の中の温泉でひと泳ぎすればきれいになる。
Sardiniaでのエンジントラブル以来ほとんどゆっくりとした時間を過ごす事ができなかったので、ここVulcano島での一日は疲れを癒す丁度良い機会になった。明日はここから20マイルほどのSicily本島のPorto Rosaというマリーナで、数年前から地中海をクルージング中のArco IrisⅢの垣見さん達とランデブーだ。
その他の写真はこちらから