Yacht TEMARI blog  ヨットてまりのブログ

2011年スペインを出発、3年かけて地中海を一周。その後カリブ海へ渡り、ヨーロッパに戻って航海中のきままなヨットの旅です

11月14日~22日 トルコ・Didimにて最後の片付け。 14/11-22/11 Clean up the boat at Didim in Turkey

2011-11-23 | 旅行

写真上 アポロン神殿にある、有名なメデューサの顔  写真下 Didimのアポロン神殿

 

DIDIMという町

てまりの冬期係留場所に決めたDidimと言う町の歴史は古く、紀元前16世紀頃からDidymaという名前で発展し立派なアポロン神殿の遺跡も町のはずれに残されている。しかし、その後は衰退したようでいわゆる旧市街が存在しない町だ。周囲に高い山が無いためか年間を通して雨が少なく年間平均最低気温12という温暖な気候に恵まれ、1980年代からビーチリゾートとして開発が進んだ。

 

マリーナに近いアパートメントホテルはイギリス人オーナーが多く、周辺のお店の値段表示もトルコリラではなくポンドのところが多い。町のあちらこちらで再開発が進められており、住宅もビルも道路も新しく、まだ工事中のものも多い。町から2kmほどのところにあるDidim Marinaは、トルコの大手コングロマリットが5000万ドルを投資して2年前に完成したばかりの新しいマリーナだ。贅沢なほどゆとりを持って作られたマリーナ周辺の広大な空き地は大型ホテルやショッピングセンターなどが建設される予定という。海に面したちいさなリゾートタウンがマリーナの建設を契機にリッチでお洒落なリゾートタウンに変身しようとしているところと見える。しかし、まだリノベーションは始まったばかりでCesme, Bodrum, Marmarisなどエーゲ海に面した人気のリゾートタウンのようになるにはまだかなりの年月がかかりそうな発展途上の町だ。

写真左 1か月前に来た時はガラガラのドライドック  写真右 大型艇を中心にかなり埋まってきたDidim Marina

 

1119日(土)

今日1日遅れでてまりをドライドックに上架した。昨日上架の予約をしておいたのだが土壇場になって今日は上架ができないという。事務所の説明によると、入荷予定の船を上架中支えるクレードルが来なかったそうだ。丁度1ヶ月前始めてDidim Marinaに到着した頃は、後楽園球場がすっぽり入る広大なドライドックは実際に野球ができそうなほどガラガラだったが、今はメガヨットをはじめすごい数の船が上架されており、クレードルが足りなくなるのもわかるような気がした。Didim Marinaには巨大な屋内整備工場を持つ会社を始め15ものマリーンサービス会社がオフィスを構えており、安心して船の整備を任せられる。他で見たことが無い広大なドライドックと併せて多彩なリペアサービスの提供がこのマリーナの大きなセールスポイントの一つなのだろう。

上架した船での生活は色々と不便なので、我々は一昨日から近くのアパートメントに住まいを移した。ここのところの急激な冷え込みで、夜は暖房の無い室内の温度が15℃位に下がる船の生活がしんどくなっていたので丁度良いタイミングだった。11月はオフシーズンのため、マリーナから徒歩15分ほどのところにある80㎡ぐらいの2LDKアパートメントを1日75TL(約3,500円)で借りることができた。

 

1122日(火)

Didimでの生活も今日で最後になってしまった。船の上架後各給排水管の洗浄など残った作業を行い、てまりの整備と追加工事を委託した業者との最終確認を行った。てまりは進水後10年が経過しているが、予想以上に傷みが少なかった。船はエンジンの部分補修が必要な以外大きな修理個所は見当たらず、心配したアルミの電蝕もほとんど無いようだ。我々は3200マイルに及ぶ今年の航海で、大時化の海や強風のダウンウィンド・アップウィンド、4ノットを越える逆潮など様々な条件の海を走り、この船の安定性と信頼性の高さを確認することができた。従って今回の整備はエンジンを除いて、更に快適にクルージングするための追加工事がメインだ。

 

今年の航海中色々なマリーナで沢山のヨッティーから「良い船だね」と声をかけられた。ALUBAT OVNIという船を知っている人も知らない人も、長距離航海向きに作られた頑丈で使い勝手が良さそうなてまりを見て、その良さを分かってもらえてとてもうれしかった。

来年は5月から6月中旬まではEMYR(東地中海ラリー)に参加、キプロス・シリア・イスラエル・エジプトなど中東各国を回り、その後はエーゲ海からイオニア海に入りクロアチア・イタリア・マルタ・チュニジアなどを訪問する予定でいる。最近のニュースではエジプト・シリアの国内情勢が不安定だがEMYRコミッティーの判断を見ながら最終的な参加の可否を決めるつもりだ。

 

今年のヨットてまりのクルージング写真はこちら、今年辿った航跡はこちらでご覧いただけます

 

☆明日船を置いてDidimから離れ日本に帰国するため、てまりブログは来年3月までしばらくお休みします。独断と偏見で色々と好き勝手な事を書かせていただきましたが、お付き合いありがとうございました。このブログについてご意見やご希望などがあれば遠慮なくご一報ください。

来年は出来る限りそうしたご意見を取り入れて、楽しいブログにして行きたいと思っています。

 

ヨットてまり キャプテン 関山 光二

 


11月6日~13日 トルコ・Didimにて。 06/11-13/11 Didim in Turkey

2011-11-13 | 旅行

1113日(日) Didim Marinaにて

日本のお盆か正月休みにあたるトルコの祝日「犠牲祭」の一週間、我々はセールやシート類の塩出し、船の整理などをして過ごしたが、一昨日あたりから人が戻り閉めていたお店も再開した。てまりの整備を依頼する業者からの見積もほぼ出揃ったため検討し一社に絞り、船も18日に上架する事に決定した。

 

今年のクルージングをレビューする

68日にスペイン・Costa del solAlmerimarを出航して1027日、トルコ西岸のDidimで今年のクルージングを終えた。 総クルージング日数142日、立ち寄った国 5カ国(スペイン・フランス・イタリア・ギリシャ・トルコ)、停泊した場所60ヶ所、走行距離3,200マイル(約6,000km) これは北海道から沖縄を含んでぐるっと日本一周した距離に匹敵する。初めてのロングクルーズのため予期しないトラブルも色々とあったが、振り返ってみると楽しい思い出も沢山残すことができた。ここで、今までに紹介していないトピックスをいくつか紹介したい。

 

はまってしまった食べ物

l  スペインの生ハム

ブログにも書いたが、ともかく安くて美味しい。残念だったのはギリシャ・トルコでは生ハムがほとんど見当たらなくなったこと。スペインで生ハムの足1本買っておけばよかったと悔やまれる。

 

l  辛く無いししとう(日本の満願寺トウガラシが似ている)

スペインのタパスの定番メニューのひとつ、焼いたピミエンテ(青トウガラシ)がすごく美味しかった。その後何処の国に行ってもホットなものとそうでないトウガラシがあることを知り、てまり料理でも定番メニューになった。味や香りはまさしく青トウガラシだが辛く無いのでいくらでも食べられる。間違えてホットなものを食べた時は口の中が火事になってしまったが。

 

l  ドライフルーツ

何処の国でもドライフルーツは種類が豊富で安い。特にギリシャ・トルコでは日本であまり見たことが無いドライ・イチジクがポピュラーで美味しくてまりの常備スナックのひとつになった。

l  胡麻のお菓子

ギリシャ・トルコでは胡麻をたっぷり使ったお菓子やパンが多いが、特に胡麻だけを蜂蜜で固めたオコシのようなお菓子は栄養豊富で飽きない。 クルージング中荒れた時の栄養補給食品として欠かせない一品。

l  ナッツ類、特に殻付アーモンドと胡麻をまぶしたピーナッツ

ナッツ類も安くて種類が豊富だ。ギリシャのピスタチオは有名だが、我々は殻付のアーモンドがお気に入りでビールのおつまみにぴったり。トルコではたっぷりの胡麻をまぶしたピーナッツも定番。

l  オリーブの実とドライトマトのオイル漬け

何処の国でも様々な種類のオリーブが塩漬けで売られているが、他にドライトマトのオイル漬けを良く見かけた。その両方をサラダに加えると最高のトッピング&ドレッシングになる。

 

 

 

l  メロンと柘榴

見た目は不細工なメロンが甘くて美味しい。日本では高級フルーツ店に行かないと手に入らない柘榴もトルコでは1kg 1TL(約50円)位で甘くて美味しいものが何処でも手に入る。

 

トルコは洗浄便座の先進国?

スペイン・フランス・イタリアなどヨーロッパのトイレ事情は日本と大違いで皆悪い。大都市でも公衆トイレがほとんど無いため、町中ではショッピングセンターかカフェに飛び込むしかない。お店のトイレも便座が壊れていたり無かったりで掃除も行き届いていないところが多く快適とは言い難かった。

それに引き換えトルコのトイレは清潔で快適だ。トルコ人は日本人と似た清潔感を持っているようで、モスクの前には必ず洗い場があり、モスクに入る前に皆靴を脱いで丁寧に足を洗っていた。何処の町でも有料(1TL、約50円)だが必ず公衆トイレがあり清潔だ。驚いたことに腰かけ便器にはすべてお尻の洗浄器が付いている。日本ではここ20年ほどですっかり定着した洗浄便座だが、日本のそれはトルコに駐在していたTOTOの社員か商社マンがヒントを得て開発されたものかもしれない。トルコの方が間違いなく洗浄便座の本家だと思う。

 

欧米的ヨットライフ

色々なマリーナで行き逢う欧米のヨッティー達の話を聞くと、彼らはまったく我々と違う考え方のヨットライフを楽しんでいることが分かる。

例えば1か所のマリーナと年間契約を結び、そこを拠点にして近くの島やクルージングスポットにちょっと遊びに行く。次の年はまた違うマリーナで同じように年間契約をして場所を変えながら45年地中海を回っているという船が結構多いのに驚いた。イギリスや北欧だけでなく、オーストラリアや南アフリカなどかなり遠い国のヨッティー達も居る。そうした船は10月下旬には船を片付けてさっさと母国に帰り半年後の4月頃再び船に戻ってくる。トルコなど係留費用の安いマリーナなら、日本で三浦半島のマリーナに係留しておく費用の数分の一で済んでしまうから、日本からの渡航費用を考えてもはるかに安く済む。マリーナの設備は極めて充実しておりセキュリティーも万全で、船の整備や修理の心配もない。しかも、憧れのエーゲ海やイオニア海のクルージングがいつでも出来るのだ。最近は日本でも沖縄などに船を置いて好きな時に乗りに行くと言う人達も増えているようだが、もっと大胆に発想を変えて地中海を拠点にして季節の良い時に数ヶ月間乗りに来るというのも、休みが自由に取れる人にとってはかなり魅力的なヨットライフだという気がする。日本人でも既にそれに近いやり方を実践しているヨットが、ボクが知る限りでも何艇かいるのでこれからもっと増えてくるに違いない。

 

今年のヨットてまりのクルージング写真はこちら、今年辿った航跡はこちらでご覧いただけます


11月1日(火)~4日(金) 世界遺産Pamukkaleへ小旅行

2011-11-05 | 旅行

 

 Didimのマリーナに落ち着き、冬の間にやってもらう整備の合い見積もりの打ち合わせや帰国までにやること等を整理している間に4日間が過ぎ10月が終わってしまった。

111日 午前10時にレンタカーでDidimを出発、12時半頃にDenizliの町に到着した。Pamukkale20㎞ほど南に位置する、その地方の中心都市Denizliは思ったより大きな町で日本なら松本市と言ったところか。町を歩いてみると、女性の大半は頭にショールを巻きロングスカートかパンツ姿だ。やはり地中海沿岸のリゾート地と違い地方に行けばいくほどトルコが回教国である事を実感させられる。

Denizliで簡単な昼食を済まして、今回宿を取っているKarahayitに向かう。

穏やかな山々に囲まれた丘陵地帯をドライブしていくと、山の中腹にそこだけ雪が積もっているように真っ白な崖が見えてきた。そこが有名なPamukkaleの石灰棚だった。近づいていくと、人が蟻のようにその白い崖を歩いて行くのが見える。今日は遠くから眺めるだけにして温泉のあるホテルに急いだ。

Pamukkaleから車で10分ほど走ったところにあるKarahayit村には鉄分の多い赤茶色の温泉が湧いており10数軒のホテルやペンションがある。大きな屋内温泉プールとジャグジーやマッサージなどの充実した施設が魅力で選んだホテルは、日本を含む様々な国の団体客をメインに受けいれている4つ星のかなり規模の大きいホテルだった。 ホテルに着いて早速一風呂浴びるのは温泉旅館の定番。カルシウムと鉄分、マグネシウムがたっぷりの温泉は体に優しい湯質だ。ホテルの食事は朝夕食共にビュッフェスタイルで毎日すこしづつ違った料理が出るので飽きない。

毎日入れ換わる団体客は夜も朝も早い。我々が8時頃に朝食を取りに行く頃にはとっくにバスに乗って出発しているので、広大な温泉施設もビュッフェの夕食も、少し時間をずらせば団体客に煩わされずゆったりと楽しむことができた。こちらの温泉は皆36℃前後の温度に下げて供給されており、日本人にはちょっと物足りないが、温泉の質は良いし30分も入っていると体中が十分に温まってくる。朝湯に入った時は丁度お湯を入れ替えている最中でお湯の温度は日本の温泉並みに暖かく心地よかった。60分間のオイルマッサージもお客は我々だけ。料金も少し安くしてくれて、こちらが悲鳴を上げるくらいしっかりと揉みほぐしてくれた。

 

Pamukkaleの自然公園

世界遺産に登録された、Pamukkaleの石灰棚の光景は他で見ることが出来ない不思議なものだった。その形成過程は日本にもある鍾乳洞と同じなのだが、ここに限って洞窟では無く露出した崖の上から広範囲に渡り石灰を多量に含んだ温水が滝のように流れ落ちているため、長い時間を経て棚田のような形のプールが崖に沿って形成されたようだ。最近は温泉が枯れつつあるらしく、既にかなりの範囲の石灰棚に温水が流れず風化し始めていた。現在他の源泉から新たに温水を引く計画が検討されているというが、歩く範囲も規制されており、そこをはずすと警備員に笛で注意される。それでも、透明な温水が流れ落ちる石灰棚を歩き、浅いプールに足を浸して回りの真白な世界を眺める気分は最高だった。

 

古代遺跡が沈むプールで温泉浴

石灰棚の上の台地に、古代Bergamon王朝時代のヒエラポリス遺跡が広がっている。これもEfes遺跡に匹敵する広大なものだが、地震でかなりの遺跡が破壊され修復中のものが多い。その中心にあるのが、有名な遺跡が沈むPamukkale温泉だ。真夏は豊島園のプール並みに混雑するようだが、今は閑散として我々以外に入っているのは10人程度しかいなかった。 温泉の底に沈む大理石の円柱の上に座って温泉浴を楽しむのはなんとも居心地の悪いような不思議な気分だった。

 

第二のPamukkale?と言われるKaklik洞窟

Pamukkaleから車で1時間ほど走ったところに、最近の地震で発見された新たな石灰棚があると聞いて足を延ばしてみた。案内標識を頼りに車を走らせると、大きなセメント工場の近くにそれらしき場所が見えてきた。しかし、観光バスも居ないし止まっている車は2台だけ。車から降りて行くと洞窟に入る階段があり、どこからか人が出てきて入場料一人2リラ(100円)を徴収された。 階段を下りて行くと明らかに鍾乳洞という感じなのだが、不思議なことにここでもPamukkaleと同じような石灰棚が形成されていた。完全なミニチュア版だがその形成過程が良く分かる。ガイドブックには第二のPamukkaleと書いてあったがスケールの大きさは比較にならず、それはいささか眉唾ものだった。

 

Pamukkale村の日本食堂で親子丼をいただく

Bergamaで知り合ったNaoeさんから教えてもらった、Lamuko’s Lokantaは日本人のラムコさんが経営する食堂。久しぶりに素朴な日本の家庭料理を味わうことができた。御主人はバスのツアー会社を経営しているので一年中まとまった休みが取れないのが悩みだとこぼしていたが、トルコの田舎町Pamukkaleにすっかり溶け込んで幸せそうだった。

 

11月4日(金)半年ぶりのオカでの生活は、温泉三昧と美味しい料理に明け暮れた4日間。大いに満足してDidimに戻った。戻る途中で通った小さな村では市が開催されていたが、そこで沢山の羊も売られていた。11月6日から始まるイスラムの祭典・犠牲祭で使われる羊たちだ。毎年この時期になると羊が飛ぶように売れるらしい。値段も普段の数倍になるので、ラムコさんのご主人も何頭か羊を買って育てて利益を得たそうだが、死んだり盗まれたりする羊もいるので、手間のかかる割に割の良い仕事ではないとこぼしていた。

 

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