クロアチアは世界一金のかかるクルージングスポット?
9月11日午前7時半、モンテネグロのHERCEG NOVIを出航し北に向かい23マイル走ってクロアチアのCAVTATに午前11時半入航、クロアチア入国手続きを行う。手続きは40分ほどでスムーズに完了したが、クロアチアの1か月間のクルーズ代としてまず2,365クローネ (約35,000円)取られた。ギリシャとは対照的に国策として外来プレジャーボートの受け入れに力を入れているようだが、クルージング許可を得るだけで数万円も取る国は初めてだ。クロアチアでのクルージングは何をするにも金を取られるので、ネットでクロアチアクルーズのボイコットを呼びかけているヨッティーもいるくらいだ。ここCAVTATの岸壁に自分でアンカーを打って停泊するだけで1泊360クローネ(約5400円)。マリーナの平均価格は1泊1万円を超えるようだ。それでも7・8月はお金持ちのスーパーヨットで人気スポットはいっぱいらしい。 我々も財布と相談しながら今後の停泊地を考える必要がありそうだ。
9月12日(水) ドブロブニク観光
クロアチアで最も人気のある観光地、「アドリア海の真珠」と謳われるDUBROVNIKはてまりが停泊しているCAVTATからは湾を隔てて6マイル(約10㎞)ほどのところにあり、水上バスを利用すれば1時間ほどで旧市街のオールドハーバーに着く。海から眺める堅牢な城壁に囲まれた旧市街は、まことに絵になる風景だ。1990年代に勃発したユーゴスラビア紛争でかなりダメージを受け、一時は「危機に扮する世界遺産」リストに登録されたというが、現在は見事に修復され昔のままの景観に戻っている。近づいてみると、瓦や壁の色が褪せていない修復された場所と被害を受けなかった場所の違いはわかるが、短期間でここまで見事に修復したクロアチアの努力には感心する。
周囲2㎞弱の城壁の上をぐるっと一周すると街の佇まいと、旧市街周囲の風景が良くわかる。旧市街の外側の建物も調和のとれたデザインや色彩のものが多く、クロアチアの人達がこの世界遺産を大切に守っていこうとする努力が伺われる。旧市街のメインストリートPlaca通りの両端には広場があり、通りから左右に延びる狭い路地にはレストランやカフェが並ぶ。外敵が侵入した場合に備えて通りがすべて迷路のように入り組んだギリシャのKERKIRAやモンテネグロのKOTOR旧市街と対照的に、わかり易い街路構成になっている。堅牢な城壁に余程自信があったに違いない。それにしても世界中から来ている観光客はすさまじい数で、久しぶりに複数の日本人ツアーの人達に出会った。
風速60ノット(約30m)を超える猛烈なサンダーストームに出会う
9月13日(木) 天気予報では今日明日と天気が崩れ、特に明日は強い東寄りの風が吹く予想だったため、午前8時半にCAVATATを出航しMLJET島のOKUKLJEという小さな入り江に向かった。風は追い風から横風に変わったがジブだけで7ノットを超えるスピードで快走し午前11時半過ぎに入り江の中にあるレストランの桟橋に舫いを取った。ここは、CAVATATで隣り合わせたヨットの、上海生まれのCHENさんから教えてもらったアンカレッジだ。クロアチアのマリーナは値段が高いので、レストランが提供するビジター用の桟橋は食事をすれば無料になるため、その方が安い場合が多いという。
午後になると雲行きが怪しくなってきた。そのうちに大粒の雨が降り出し、雷鳴が近づいてきたと思ったら土砂降りの雨になった。あわててすべての窓を閉め様子を見ていると、それまでの西風が東寄りの風に変わり雨風ともにすさまじい勢いになった。途中で再び風が西に戻ったが約2時間雷雲が通過し終えるまでは、ただなすすべもなく船の舫いが無事でいてくれることを祈るしかなかった。風速計で見たWind Gustは何度も50ノットを超え、瞬間最大風速は60ノットを超えた。夕方になって風が収まると続々とヨットが入航してきた。この嵐の中、海上で待機せざるを得なかったヨットは、短時間とは言え命が縮む思いをしたに違いない。
夜、真っ暗な中をレストランに出かけたが、レストランの中も真っ暗だ。昼間のストームで落雷があり停電したままだという。CHENさん夫妻と共にローソクの明かりの下で限られたメニューの食事を楽しんだ。
KORCULAで日本艇CAVOKとランデヴー
9月15日(土) 朝8時過ぎにMLJET島を出航、KORCULA島へ向かう。この辺りからクロアチア北端のイストラ半島までの沿岸には大小多数の島が点在する海域だ。28マイルほど北西に走り、12時過ぎ島の北東にあるKORCULAのマリーナに舫いを取る。ここで日本艇CAVOKとランデヴーすることになっている。
我々と同じように地中海クルーズを楽しんでいるCAVOKのオーナー松崎さんは大学の先輩で、我々より1年早くヨーロッパクルーズをスタートして今年で3年目を迎えている。今年はサルディニアをスタートしてアドリア海を1周してベネチアから南に下ってきたCAVOKと、北に向かうてまりがうまく予定を合わせてミーティング地点をここに決めたのだ。
夕方6時過ぎマストに日の丸が揚がっているヨットが入航してくるのが見えた。CAVOKには80歳を過ぎた大先輩ご夫妻など3人のゲストが乗っていた。夜はCAVOKに招待され久しぶりに日本人だけでわいわいがやがやと日本食を食べながら日本語の会話を楽しむことができた。
16世紀の街並みで17世紀のコンサートを楽しむ
9月16日(日) KORCULAの旧市街を歩いていると、入口にある聖マルコ大聖堂前の広場に椅子が並べられており、今日は音楽祭の最終日でバロック音楽の夕べが午後9時から開催されることを知った。
早速チケットを購入し早めの夕食を済ませて午後9時15分ほど前に会場に行くと既に席はかなり埋まっていた。
それから約2時間、意表を突くアドリブ演奏からスタートして後半は伝統的なバロック音楽を楽しんだ。16世紀に建てられた建築物の中庭で17世紀のバロック音楽を楽しむという贅沢はヨーロッパでなければ味わえないものだ。
宮殿がそのまま旧市街になったSPLITの街
9月17日(月) 南に行くCAVOKの出航を見送った後、午前7時半にKORCULAを出航して北に向かう。
MAKARSKAに1泊したあと9月18日(火)午後2時過ぎ、CAVTATで会ったCHENさんに教えてもらったKa�・tel Su�・uracのMarina Kastelに舫いを取った。この辺りは中世の城が沢山点在するため地名にKastelがつけられたという。SPLITとTROGIRの丁度中間に位置し、値段も安く静かで良いマリーナだ。
9月19日(水)、バスでSPLITEに出かける。SPLITは地中海に面したクロアチアで最大の町。海から眺めても高層ビルが立ち並ぶ大きな町だ。
SPLITの町は大きいが、見どころが集まる旧市街は昔の宮殿がそのまま街になったミニタウン。
ローマ帝国時代に建てられたという宮殿はその大半がオリジナルのまま保たれている、ヨーロッパでも貴重な例らしくその構造の詳細を見ることができる。石材を台形にカットし並べられた天井のアーチなどを見ると、当時の高い建築技術が伺える。
強風の一日、買い物や片づけで過ごす。
9月20日(木)今日は低気圧の通過で終日雨風が強いとの予報だったため出航を諦めた。風は強いが雨は明け方で止んだため午前中は近くのスーパーに、午後はバスでSPLITの魚市場に買い物に出かけた。
クルージングは見知らぬ場所を旅する「非日常」と船で生活をする「日常」の世界が常に混在する。世界遺産の街に感激し地元の美味しい料理や酒を楽しみながらも、炊事・洗濯・掃除・買い物といったルーティンワークを忘れることができない。中でも買い物は特に重要だ。観光や自然の条件の良い泊地は必ずしも買い物の便が良くない。ここMarina Kastelaはすぐそばに大型のスーパーがあるので、今日は買い物の日と決めた。ショッピングカートを持ってビールやワイン、飲料水などの重たいもの大量に買い込む。午後は昨日見つけたSPLITの魚市場に魚類の買い出しに出かけた。トルコやギリシャに比べて魚介類も生ハムなどの加工肉も種類が豊富なのがうれしい。野菜や果物の値段はトルコの5倍ぐらいはするが、それでも日本に比べればはるかに安いのだ。
周囲を海に囲まれた小さな町Primosten
9月22日(土) 昨日30マイルほど走ってクロアチア本土のPRIMOSTENという小さな町に舫いを取った。
何人かのヨッティーに是非と勧められ立ち寄ってみたが、なんとも魅力のある町だ。小さな半島に作られたこの町はわずか15分で一周できる程度の大きさだが、丘のてっぺんに教会がある素敵な風景だ。20隻程度しか舫いが取れない岸壁は夕方までにいっぱいになってしまった。
ここのところの冷え込みは厳しく、今朝の気温は10度ぐらい。最高気温も20度を少し超える程度だ。
これからベネチアまでずっと北上するので、もう夏は戻ってこないだろう。
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