ブルターニュで一番人気の町Saint-Malo
6月20日 Treguierを朝6時半過ぎに出航、57マイル東のSaint-Maloへ向かう。Saint-Maloの目指すマリーナは堰の中にあるため、満潮の前後2時間半以内でないと出入りができない。今日午後の満潮は8時過ぎなので、その時間に合わせて時間調整をしながら走り、午後5時半過ぎに堰の入口に到着。午後6時過ぎマリーナに入港することができた。大潮の今日は干満の差が12mもある。ロックの中で待機すると、はるか見上げる位置にあった岸壁がみるみる目線の位置まできた。ロックの中で4階建ての高さを上がったことになる。
Saint-Maloはブルターニュ7聖人の一人の名前。我々が訪問したVannes,・Treguierとともにトロ・ブレイスと言われるブルターニュ地方の7つの巡礼地のひとつで、旧市街の真ん中にある大聖堂は、窓がすべてステンドグラスの美しいゴシック様式の教会だ。
てまりが停泊したマリーナPort du Vaubanは旧市街城壁のすぐ外側にありロケーションは抜群
日本からのフランス観光ツアーが例外なく訪れるモンサンミシェルは、ここから40kmほど東に行ったところにあるが、Saint-Maloはほとんど知られていないようだ。周囲を城壁で囲まれた旧市街にはおしゃれな店やレストランが立ち並び素敵な街並みを形成し、ブルターニュで最も人気の観光地となっている。イギリスからのフェリーも頻繁に往来しており、イギリスナンバーの車や観光客が目に付く。
最高の牛フィレステーキの部位に付けられる「シャトーブリアン」という名前は、18世紀にここSaint-Maloで生まれた美食家Chateaubriandが、自ら選んだ極上フィレ肉を好んだことから、その名前が付けられるようになったそうだ。
イギリス王室の属領Guernsey島へ。リフトキールで思わぬ恩恵
6月22日(水)ロックのオープンに合わせて朝7時過ぎSaint-Maloのマリーナを出航、53マイル北にある、チャネル諸島のひとつ、Guernsey島に向かう。午後5時過ぎ、無線で島のポートコントロールにコンタクト。午後6時指示された、首都St. Peter PortにあるVictoria marinaのウエイティングポンツーンに舫いを取る。ポンツーンにはすでに10艇以上のヨットが、潮が満ちるのを待って待機中だった。
約1時間後マリーナのテンダーが近づいてきて、ついて来いという。なんと一番後に到着したてまりが最初に指名されたのだ。理由は、てまりがリフティングキールで喫水を浅くできるためだった。キールを揚げるように指示され、我々よりはるか前から待っていた他艇の強い視線を感じながら一番乗りでマリーナに入港。
Guernsey島を含むチャネル諸島は、英王室の属領であるが英連邦の一部ではない。従ってEUにも加盟しておらず、ヨーロッパでは知られたタックスヘブンの島だそうだ。
マリーナでデンマークのヨットと再会
てまりを係留したポンツーンを歩いていると、「日本から来たのかい?」声がかかった。「我々は日本から来たけどヨットはスペインから」と答えると、以前に「てまり」と会ったことがあるという。船もオーナーカップルも見たことがあるようだが思い出せない。先方も何処で会ったか記憶が定かでなかったのだが、真理が日記を見て、2013年シチリアのマリーナで出会った船だということを思い出した。僕もブログを辿って記憶が蘇った。彼らにとっては、ヨットでヨーロッパを航海している日本人は珍しかったので記憶に残っていたという。
デンマーク人のNonneとJorgenは2006年から毎年9か月近くを船で過ごしており、大西洋を2度往復横断しているベテランセイラーだ。我々は今年デンマークに船を置いてくる予定なので、デンマークのマリーナ情報など色々と教えてもらうことができ大助かりだった。
イギリス海峡を横断してイギリス本土へ。
6月25日(土)早朝6時にGuernsey島を出航、進路を北に取りイギリス海峡を横断して、71マイル先のイギリス南部のWeymouthに向かう。Weymouthのマリーナは手前に橋があり、朝8時から夜9時の間、2時間ごとにしか開かないため午後6時のオープンに間に合うように早めに出航した。風も潮も順調で到着まであと2時間足らずという時にマリーンナビゲーションがさらに1時間も早い到着予定時間を示している。??と思い調べてみてイギリス標準時はヨーロッパ中央時間より1時間早いことに気が付いた。マリーンナビの機材はそれを理解していて到着予定時間を現地時間で表示していたのだ。Guernsey島もイギリスの領土なので、我々はこの3日間1時間早い時間で行動をしていたことになる。
Weymouthは前回のロンドンオリンピックでヨット競技が開催された場所。当たり前の話だが、街並みもレストランやパブなどの飲食店もイギリスそのもの。イギリスは真理にとっては初めて、僕も仕事で数十年前にロンドンに一度立ち寄っただけなので、ヨーロッパ本土の国々に慣れた目には新鮮だ。パブでビールを飲んでいると近くにいた人が読んでいる新聞の一面にキャメロン首相の顔写真が大きく掲載されていた。イギリス連邦の意見を2分したEU脱退の決断は国内でも大変な話題になっているようだ。
イギリス最大のヨット基地へ
6月27日(月)午前8時のブリッジオープンと共にWeymouthを出航、56マイル東のPortsmouthに向かう。途中通過するSolent海峡はすぐ南のWight島との間にある、潮の流れが速いので有名な場所。我々が通過した時は追い潮で最大10ノットのスピードを記録した。この周辺には沢山のマリーナがあり、イギリス最大のヨットベースとなっている。毎年8月にここで開催される世界最大のヨットレースCows Weekはヨットマンに知られたビッグイベント。ここSolent海峡で1826年たった7隻のヨットが200£の金杯を争って始まったレースが、今やサンデイセーラーからオリンピッククラスのヨットマンまで8000人を超える参加者を擁するビッグイベントになった。世界最高峰のヨットレースとされるAmerica’s Cupも1851年に開催されたWight島一周レースが始まりという、世界のヨットマン憧れの聖地だ。
Portsmouthのマリーナに舫いを取ると、すぐ前に日の丸が付いた巨大なレース艇が居る。よく見ると、現在世界一周単独無寄港レースに参加中の白石康次郎氏が2006年~2007年に開催された世界一周ヨットレースに参戦し、2位入賞を果たしたSpirit of Yukoだった。
大英帝国の誇り、ネルソン提督の軌跡とVictory号を見学
Portsmouth Historic Dockyardは、大英帝国が最強の海軍力を誇った時代の歴史がちりばめられている、かつての造船所。その中に19世紀初頭にナポレオンのイギリス本土進攻を阻止した、トラファルガー海戦の総指揮を取ったネルソン提督の旗艦Victory号が保存されている。Victory号は地中海からインド洋、カリブ海に至る広大なエリアを航海した巨大な帆船だが、実際に船の中を見て回ると、最大800名を超える乗員が乗り込んでいたという船上の生活は、想像を絶する厳しいものだった。
大西洋で沈没したタイタニック号が出航した町、Southamptonを訪問
6月29日(水)今日出航予定だったが天気予報で強風が予想されたため明日に延期し、Southamptonまで出かけた。電車で一時間のこの町もヨットの基地として有名な町。また、あのタイタニック号が最後に出航した港でもある。予報通りの雨と強風と寒さのため、町歩きもままならず、16世紀に建築されたこの地方の代表的な建物Tudor Houseなどを見学して早々に引き上げる。
明日は40マイルほど東にあるリゾート地Brightonに向かう予定。