7番目の訪問国Antiguaへ
2月13日(金)、GuadeloupeからAntiguaへ向かう。42マイルの航程のため朝7時に出航。途中の海峡で体長80㎝近いシイラが掛かった。カリブ海に来てSt. Vincentで獲った沖サワラ以来2匹目の釣果。シイラはそのグロテスクな見かけのせいか、日本では魚屋にほとんど並ばないが、ハワイやカリブではマヒマヒと呼ばれる高級魚。白身でくせが無く美味しい魚だ。早速刺身、照り焼きでいただいた。
元英領Antigua & Barbudaは2つの島で構成された独立国だが、300年続いたイギリス統治時代の影響が色濃く残る国だ。我々が入港したEnglish Harbourと隣のFalmouth Harbourは天然の良港で、大航海時代イギリス艦隊の基地として重用されたところ。ネルソン提督の名前を冠した造船所が当時の面影を残して保存されている。現在はプレジャーボートの一大ベースで、広大なFalmouth Harbourのマリーナにはメガヨットがずらりと停泊している。マリーナフィーを聞いてびっくり、滅茶高いので錨泊することにした。
到着早々、フランスとイギリスの違いをいくつも体験する。入国審査では、パソコンに自分で入力しチェックも無かったフランス領の島とは大きく異なり、カスタムもイミグレーションも厳しい審査を受け、当然パスポートには入国スタンプが押される。クルーはキャプテンが入国手続きを完了するまで上陸禁止だ。English Harbourで入国審査を終え、隣のFarlmouth Harbourに移動して投錨していると、今度はコーストガードのボートがやってきて臨検を受けた。船舶書類の検査から始まり、ライフジャケットなど安全備品の確認、そしてカスタムに提出した同じ内容を再びチェックし、書類に書き込んでいく。30分ほどで終了したが、この4年間のクルーズでこれほど「まじめ」な検査を受けたのははじめてだ。厳重な入国管理で知られるイスラエルでさえ、船に乗り込んできた係官の検査は極めて形式的なものだった。それだけ、英国の伝統を受け継いでいるということなのだろうか。
ランチを食べにレストランに入ると、ほとんどの客が夢中でテレビを見ている。ラグビーのヨーロッパ選手権の中継だった。スペインやイタリア、モロッコなどでは圧倒的にサッカーが人気だが、やはりイギリスはラグビーなのだ。そして極めつけは食事の不味さ。大量のフライドポテトが付いていて大雑把な味付けはイギリスの定番だ。
カリブ海の島々は、その歴史的な背景によって文化や生活習慣が大きく異なる。それが数時間で行き来できる距離に点在するのもカリブの魅力の一つなのかもしれない。
ノルウェーヨッティーと3年半ぶりの再会
2月15日(日)、Falmouth Harbour から12マイルほど北にある、Jolly Harbour Marinaに移動。周囲は独特の明るいブルーの浅い海で、その奥の入り江に造られた天然の良港だ。マリーナのすぐ裏のビーチ沿いにはプールや個人用の桟橋を持つ豪華な別荘が並び、こちらはイギリスのセレブご用達リゾートだ。
そのマリーナの同じ桟橋に後から入ってきた船から声が掛かった。なんと、3年半ほど前にトルコ・イスタンブールのマリーナで仲良くなった、ノルウェーのヨットBijouのRoger & Elizabeth夫妻だった。彼らは2年前に大西洋を横断し、ブラジルまで足を延ばして昨年からカリブ海クルーズを楽しんでいるということだった。それにしても、この出会いにはお互いに本当にびっくりした。奇跡の出会いにラムパンチで乾杯。
2月18日(水)、カナリー諸島ラスパルマスからてまりに乗船し、約二か月半行動を共にした長尾さんが帰国の途に就いた。ベテランヨットマンの長尾さんからは色々と教えられ、大西洋横断では本当に頼もしい助っ人として活躍してくれ感謝している。
入れ替わりに中学時代からの友人北澤君がロスアンジェルスからやってきた。
人も自然もゆったりとした島、Nevisで温泉に浸かる
2月20日(金)、Antiguaを出航して西に45マイルほど走り、St. Kitts & NevisのNevis島に移動した。ここもイギリスが宗主国だった国だがAntiguaと比べて入国手続きはいたって簡単で係官はとてもフレンドリーだった。我々が日本人だと知ると、「ヨットで来た日本人は君たちが初めてだ。歓迎するよ」と言われた。
この島にはアフリカから連れてこられたグリーンモンキーと呼ばれる猿が繁殖し、人口の3倍近く居るというのでタクシーをチャーターし島をぐるっと周回する。途中2度ほど猿を見かけたが餌付けされている訳ではないので、写真を撮る間もなく藪に逃げ込まれてしまった。
Nevisは人口13000人ほどの小さな島。人々は穏やかで生活レベルも悪くなさそうだ。カリブ海の島々の中でも一番自然が残っていると言われており、しかも源泉温度108℃の温泉が湧いているのだ。町はずれの温泉場でタクシーを降りて、無料の温泉浴を楽しむ。温度は40℃前後で適温。ヨーロッパの低温温泉と違い、日本の温泉感覚で久しぶりにリラックスすることができた。
2月22日(日)、Nevisのすぐ北側にあるもう一つの島、St. Kittsの首都Basseterreに移動する。2時間ほどの距離だが、St. Kittsに近づくとスコールとともに強い風が吹いてきた。St. KittsのPort Zante Marina入港直前まで、猛烈な雨で視界が悪く、ちょっと緊張を強いられた。小さなマリーナだがスペースは広く、無線の呼びかけにもすぐに対応してくれて無事入港することができた。
マリーナ入港後町を散策する。Basseterreはカリブの島々の中でも18世紀頃の建物がそのままの姿で保存され、使用されている数少ない町だそうだ。残念ながら日曜日とあって、何処の店もシャッターが閉まり町の中は閑散としていた。
明日は再びフランス領の島St. Barthelemyに立ち寄った後、オランダとフランスが島を二分して領有するSt. Martinに向かう。
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