Yacht TEMARI blog  ヨットてまりのブログ

2011年スペインを出発、3年かけて地中海を一周。その後カリブ海へ渡り、ヨーロッパに戻って航海中のきままなヨットの旅です

ヨットてまり、8年間のクルーズ総括編

2018-10-10 | 旅行

2011年6月8日、スペイン南部にあるAlmerimarマリーナを出航、足掛け8年間に及ぶヨットてまりの航海が始まった。

コリントス運河

ギリシャs教の聖地 Mount. Atos

イスタンブール

2011年 Almerimarからバレアレス諸島、バルセロナ、コルシカ・サルディニア・シチリア島を経てトルコ・イスタンブールを訪問、トルコ・Didimに船を置いて帰国。

航海日数 142日、訪問国数 5か国、航海距離 3,200マイル

EMYR(東地中海ラリー)

エルサレム 嘆きの壁

クロアチア

2012年 トルコ・Didimからエーゲ海を南下、東地中海ラリーに参加しトルコ南岸からキプロス島を経てイスラエルを訪問。その後エーゲ海まで戻り、ミコノス島などエーゲ海の島々を訪れたあと、アドリア海を北上、クロアチアからイタリア・ベネチアまでクルーズ、イタリア南部Brindisiに船を置いて帰国。

航海日数 182日、訪問国数 6か国、航海距離 3,600マイル

マルタ島

チュニジア

2013年、Brindisiからシチリア島を経てマルタ島に渡る。シチリアに戻ったあとチュニジアを訪問、サルディニア島からコルシカ島を経てイタリア・フランス沿岸を西に向かい、バレアレス諸島を経て、スペイン・Almerimarマリーナに戻る。

航海日数 182日、訪問国数 5か国、航海距離 2,600マイル

2014年は秋からスタート、大西洋を横断してカリブ海へ

カナリー諸島Las Parmasの日本人会

カーポヴェルデ

 

前年末スキーで複雑骨折をしたため夏のクルージングを断念し2014年11月1日、スペイン・Almerimarを出航。地中海を出てモロッコ西岸を南下、カナリー諸島・カーポヴェルデを経てカリブ海のグレナダへ。出航が遅れたため年越しの航海となり、グレナダ到着は翌年1月3日となった。

航海日数 61日、訪問国数 4か国、航海距離 3,950マイル

グレナダからプエルトリコまでのカリブ海クルーズを楽しんだあと、再び大西洋を横断しバーミューダ島・アゾレス諸島を経てヨーロッパに戻る

グレナダからアイランドホッピングをしながら北へ向かう。2月末船の修理のためSt. Maartenに寄港、身内の不幸もあり一時帰国しクルーズの再開は5月20日からとなる。カリブ海の北の島々をクルーズ後、6月10日プエルトリコを出航しバーミューダ島・アゾレス諸島を経て、7月21日ポルトガルのリスボンに近いCascaisに到着。

その後、ポルトガル・スペイン・フランス西部沿岸を北に進み、9月末ブルターニュ地方のArzalにあるメーカー指定整備工場に船を預けて帰国。

航海日数 183日、訪問国数 20か国、航海距離 5,440マイル

フランス・ブルターニュからイギリス南部・ベルギー・オランダを経て北欧へ。寒い夏を過ごす

 6月10日、フランス北部を出航、イギリスの南岸を東に向かう。この辺りは潮の干満差が大きく、大潮では水位差が12mに達するところもあり、潮の流れが速い。多くのマリーナには堰があり、干潮時は船の出入りができない。

ブリッジが開くのを待ってうろうろするヨット

オランダ・ドイツの運河を通りバルト海へ

イギリス南部からベルギーを経てオランダへ。オランダ・ドイツにはすべての橋が跳ね橋となっており、マストがあるヨットでも通過できる運河がある。そのルートを通ってバルト海へ入り、スェーデン・デンマークをクルーズ、ドイツ北部の町Flensburgにある整備工場に船を置いて9月初旬帰国。

この夏は25℃を超える夏日は2日間だけで、あとは寒い夏を過ごした。地中海で北欧の人たちをたくさん見かけるのは、この寒さで納得。

航海日数 83日、訪問国数 9か国、航海距離 1,800マイル

この年はマストをはずして、ヨーロッパ運河の旅を楽しむ

船を置いた場所はドイツ北部、バルト海沿岸のデンマークに近いところ。そこから3日ほどバルト海を南下し、ドイツ・Lubeckから運河に入る。その後オランダ・ベルギー・フランスの河川や運河を通って地中海に向かった。海とは全く異なる運河の旅は別世界の旅。とても貴重な体験だった。

残念ながら、ゴールまで残り600㎞ほどのフランスの川で座礁し舵を大きく損傷、走行不能となり船はトラックで地中海まで運搬されることとなり、8月半ばで運河の旅は終了となった。

航海日数 70日、訪問国数 5か国、航海距離 1,090km

最後の年はフランス・Port Napoleonからリビエラ海岸・コルシカ・サルディニア島・バレアレス諸島を巡り、ホームポートのスペイン・Almerimarに戻る

6月10日、ローヌ川河口近くにあるマリーナを出航し、地中海で最もセレブな町が集まるリビエラ海岸を東に向かう。その後はコルシカ島・サルディニア島・バレアレス諸島の島々を巡り9月下旬スペインのAlmerimarに戻って8年間のクルージングを終えた。

航海日数 96日、訪問国数 3か国、航海距離 1,350マイル

日常と非日常が混じるヨットでの生活

ヨットのクルージングと言うと、青い海を風任せで優雅に走る、あるいは波をかぶりながら大海原を航海するというところがイメージとして浮かんでくるに違いない。しかし、それはほんの一部でしかない。クルージング中はヨットが家となり、年間5か月あまりをそこで暮らしているのだから、日常生活そのものだ。その日の航海を終え、目的地に着いてまずやることは買い出し。市場やスーパーを捜して食料品や生活用品を仕込むことから始まる。逆に言えば、家と共に移動しているからこそ、長期間にわたって旅ができるのだ。飛行機や列車を利用する旅ではせいぜい2-3週間が限度ではないだろうか? 一方、クルージングは旅そのものでもある。初めて訪れる国や町での新しい出会いと感動は、非日常の世界。ヨットの旅の良いところは、気に入った場所に好きなだけ居られること。自由に予定を組めること。悪い点もある。船には、厳しい航海にも耐えられるよう様々な機器が搭載されているが、そうした機器がかなりの頻度で故障する。トラブルへの対応はクルージングの宿命だ。地中海や西ヨーロッパに居る限り、大きなマリーナに行けばほとんどの故障は修理可能だが、僻地ではそうはいかない。応急処置だけして、修理可能なところまでなんとかたどり着くといったこともある。てまりもカリブ海で様々なトラブルが発生し、結局きちんと修理ができたのはヨーロッパに戻ってからだった。

海の上での耐乏生活、沢山の出会いは貴重な経験

マリーナに居る限り日常と変わりない生活ができるが、いったん海に出るとそこには厳しい制約が待っている。水も電気もふんだんに使えばすぐになくなるため、ケチケチにならざるを得ない。久しぶりに上陸し、たっぷりのお湯でシャワーが浴びられることの幸せ感は普通の人にはわからないだろう。

我々は8年に及ぶクルージングを通じて、色々な国で沢山の人たちと出会い、普段の生活や普通の旅では得られない貴重な経験や体験をさせてもらった。この経験を生かして、残り少ない人生を少しでも世の中の役に立つことを考えながら生きていきたいと思っている。

これで、「ヨットてまり」のブログは終了とさせていただきます。皆様から沢山の励ましや、暖かいコメントをいただきました。ブログを通じて知り合った方々もいます。このブログが少しでも皆様の役に立てたと思うとうれしさでいっぱいです。ご愛読ありがとうございました。

2018年10月10日 関山 光二


ヨットてまり8年目のクルーズ さよなら「てまり」

2018-10-02 | 旅行

8年間住んだ「我が家」の整理は、想像以上に大変

9月23日(日)、Almerimarに到着して4日が過ぎた。船の整理に追われる毎日だ。この8年間毎年4-5か月、狭いとはいえ一つの家として日本に居る時と同様の生活ができるように、日本から色々なものを持ちこみ、現地でも購入してきた。その生活用具の整理は、一軒の家を売却するのと同じくらい大変だ。加えて、日本に持ち帰るのはかなりコストがかかるため、必要最小限のものにとどめざるを得ない。他のものは売るか、誰かにあげるか、捨てるかということになる。売れそうなものは、For Saleのプレートを貼っておく。自転車は苦労なく売れた。最大の課題は船だ。地元のブローカーを紹介してもらい、そこを通じてマーケットに出す。少しでも高く売れるように必死になって船をきれいにし、ペンキの剥がれなど目立つ部分はお金をかけてでも修復する。一方船に関連する部品や用品以外は、すべて処分するしかないのだ。

忙しい毎日を癒してくれるのは、安くて美味いタパス

1,000隻ものヨットを収容できるAlmerimarのマリーナは、係留場所に沿って様々なレストランが立ち並ぶ。ランチタイムや夜になると、人気の店はヨッティー達でいっぱいだ。我々も昼間の作業に疲れ果てたときはそうした店で「ちょい軽」をやる。ビールもワインも一杯3€程度で、一杯飲むごとにタパスがタダで付いてくるのだから、ついつい行ってしまう。船に戻ってソバでも食べれば十分の夕食だ。

住み慣れた船からアパートに引っ越し

2014年大西洋横断に備え、ここAlmerimarでジェネレーター修理の部品待ちのため1か月半ほどの滞在を余儀なくされたことがある。その時紹介してもらった不動産屋で、同じアパートの部屋を借りて9月24日に引っ越した。船の中は整理中の荷物があふれ、足の踏み場もない状態なので仕方がない。6月12日以来、ほぼ3か月半ぶりに陸に上がって寝た。本当に「ヨットてまり」での生活が終わったことを改めて実感した。

9月25日は十五夜。良く晴れた空に満月が浮かんでいる姿を見て、何故か日本が恋しくなった。

日本人の生き方に疑問を感じる

「てまり」で訪問した国は45か国に上るが、何処の国でも日本よりゆったりとした時間が流れているような気がする。びっくりするのは、マリーナで出会うヨットで若いファミリーが多いことだ。中には生まれて1年もたたない子供を連れた家族もいる。そうした若いカップルが、どうやって一ヶ月単位の休みが取れるのか不思議だが、それが許される国が欧米では多いと言うことだ。

日本人はどう考えても働き過ぎだ。正規の労働時間内で仕事を終え、休む時は最低でも一週間単位できちんと休むという当たり前の生活をする欧米人的なライフスタイルを、我々日本人も理解し実践できる社会制度に改革するべきだと思う。

日本人大集合

日本に長距離航海懇話会というヨットの団体がある。ロングクルージングを目指す人たちのために、それを既に実行した人たちの経験を通じて情報を共有するという趣旨で設立されたものだ。

9月26日、ちょうどAlmerimarに船で来ている、うめぼし、Buena Vista,てまりに加えてポルトガルに船を置いている、Alcoirisの垣見さんとイタリアに船を置いて帰国途中の若尾さん夫妻、更に日本からも5人が集まり、総勢13名の日本人がAlmerimarに大集合するイベントが開催された。26・27日の会食、28日は講演会などがおこなわれたが、これだけのヨッティーが地中海に集まるというのは画期的なことだ。

フミさんに長距離航海懇話会から感謝状と記念の盾が送られた

フミさんという人が、ここAlmerimar marinaに居るからこそできたイベントだ。今後ももっと多くの日本人セイラーが地中海クルーズを楽しんでもらいたいと思う。

さようなら「てまり」

9月30日(日)昨日までで船の整理、ヨットブローカーとの打ち合わせなどを終えて今日最終的な後片付けを行った。これで8年間連れ添った「ヨットてまり」ともお別れだ。また良いオーナーのもとで元気に走ってくれることを祈って別れを告げた。

マドリードで最後のスペインを楽しむ

10月1日(月)「てまり」とAlmerimarに別れを告げて、Almeriaから飛行機でスペインの首都Madridに向かった。スペインは過去かなり色々なところを訪問したが、唯一Madridだけは行ったことがなかったのだ。Madridは標高650mの高原にある。内陸性の気候のため寒暖の差が激しいと聞いていた。今日の気温は最高24℃、最低10℃ぐらい。地中海に面したAlmerimarに比べるとかなり低い。

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予約したアパートメントは旧市街に近い便利な場所のため、早速夕食がてら旧市街を散策。レストランには矢鱈とTAPASの看板が目に付く。メインストリートは各国からの観光客でいっぱいだ。

今日の夕食は、Museo del Jamon (ハムの美術館)という店。一階ではあらゆる種類のハムやサラミが売られており、二階にはレストランがある。レストランではハム類だけでなく、タパスからステーキまで豊富なメニューがあり、しかもバカ安。日本の居酒屋だ。

スペイン人は生ハムが大好き

スペインでスーパーや市場に行って感じるのは、何処にもあの生ハムの足が大量にぶら下がっていることだ。Museo del Jamonは専門店だけあって、その種類はすごい。スペインの生ハムの最高峰はJamon de Iberico。普通の生ハムと比べると、本物のイベリコハムは価格が7倍ぐらいする。それでもJamon de Ibericoはスペイン人にとって最高のごちそうのようだ。

緑と旧いアーキテクチャーに囲まれた町・マドリード

 

翌日、二階建ての観光バスのチケットを買い観光スポットを回ってみた。市内には広い公園が沢山あり、緑に囲まれた道路沿いには様々な様式の建築物が立ち並ぶ。皆きちんとリノベートされ、素晴らしい町の景観を維持している。新市街を行くと、有名なサッカーチーム、リアル・マドリードの拠点であるスタジアムが見えてきた。ヨーロッパ各国のサッカーに対する思い入れは半端ではない。

今日のランチは、タパスとピンチョス。ピンチョスはバスク地方定番の、パンの上に様々な素材が載った小皿料理。旧市街にあるサンミゲル市場はそうした小皿料理とお酒を出す店が立ち並ぶ観光スポット。自分の好きな小皿料理とお酒を買い、スタンドで楽しむ。半分以上の客は立ち食いだ。

10月3日(水) マドリード滞在も今日で最後。明後日には4カ月ぶりの日本に戻る。

次回で「てまりブログ」は最後となります。8年間のクルーズを振り返ったレポートをお届けする予定です。