いよいよカリブ海とお別れ、再び大西洋へ
5月30日午前11時、5日間お世話になったSan JuanのClub Nauticoマリーナを出航、一路バーミューダ島に向かう。プエルトリコは予想外に素敵な国だった。300年以上統治していたスペインと、現在まで100年以上統治するアメリカの文化や生活習慣がミックスされ、この国独自の文化が形成されている。治安はカリブの中では別格に良く、厳しく管理された自然保護によって貴重な動植物が多数生息する、とても居心地の良い国だった。
バーミューダ島までは850マイル、6日間の航程。最初の3日位は東からの貿易風を受けるやや風上へのレグ。その後は徐々に高気圧の影響で風が落ち、南に回っていく予報だ。
El Morro要塞の聳える岬を回ると、20ノットを越える東北東の貿易風が吹いていた。少しリーフしたメインとジブで6ノット以上の安定したスピードで走る。初日のデイラン(1日の航海距離)は145マイル、2日目は151マイルを記録した。順調なペースだ。
6月14日(日) 航海4日目
出航後3日間は安定した東北東の貿易風に恵まれ、デイラン150マイル近くをキープすることができた。しかし北に行くにしたがって高気圧帯に入り、風が弱くなってきた。気象予報では風が南から西に回るはずだが、風向きは逆に北東から北北東に回りキープしている。昨日からエンジンを回し始めたが、機帆走でなんとか時速5.5ノット位を維持、4日目はデイラン130マイルペースだ。
魚が釣れず、カモメが釣れた
出航以来トローリングの仕掛けを流しているが、まったく魚がかかる気配が無い。そのかわりに、疑似餌を小魚と勘違いして近づいてくるカモメが5回も掛かってしまった。針を外して逃がしてやるのだが、カモメも興奮して暴れるため、下手をするとこちらが怪我をしそうだ。早く海の中の魚に食いついてもらいたいものだがかかる気配がない。
Puerto Rico出航6日目、Bermuda島到着
6月16日午前11時すぎ、狭い水路を抜けて広大なラグーンに入り、バーミューダ諸島島北端にあるSt. George’s の入国検査用桟橋に舫いを取る。
後半の2日間は風が北東の微風に変わり、エンジンを回しっぱなしだったが、予定通り6日目の昼前に無事バーミューダに到着することができた。
バーミューダ諸島はイギリス領だが、ニューヨークから2時間のフライトで到着できる場所にあるため、アメリカの影響が強い島だ。アメリカ本土に近い地理的な関係からか、入国管理はきわめて厳しく、領海に入るはるか手前から無線で連絡を取ることを要求される。我々は事前にオンラインで入国申請をしていたため、スムーズに手続きが完了し、午後1時過ぎ、カスタムオフィスから500mほど離れた、Captain Smorkes Marinaに移動する。
バーミューダ諸島は、ほとんど平坦な大小180あまりの珊瑚礁の島々が釣り針のような形に連なって形成され、主要な8つの島はすべて橋で繋がっている。入国管理事務所があるのは北東端に位置するSt. George’s島、首都があるのはHamilton島だ。面積は三宅島とほぼ同じで、そこに7万人近くが暮らすため人口密度はかなり高い。
6月17日(水)、6日ぶりに一晩ゆっくりと寝てこの日は終日船の修理で過ごす。ブッシュが居てくれたおかげで、我々だけならとてもできないような水漏れの補修なども、すべて自分たちでやることができた。ありがたい。
翌日、バスで30分ほど揺られて首都Hamiltonに出かけた。小さな島の割にはきれいでお洒落な街並みだ。立派な大聖堂や国会議事堂、図書館や美術館などは昔の建物をきちんとリノベートして使用されている。
さすがに、バーミューダショーツ発祥の地だけあって、学校の制服は女子もバーミューダショーツが多く、街中でも、ハイソックスとローファーを履き、ネクタイを締めた正統派スタイルの人たちを見かけた。
バーミューダの建物は、倉庫や教会を含めてすべての建物の屋根は白で統一されている。壁の色は色とりどりのパステルカラー。皆良く手入れされていてとても気持ちが良い。我々が船を停泊している、St. George’sは町全体が世界遺産に登録されている、素敵な街並みだ。
St. george’s
6月19日(金)、鍾乳洞見学
バスで10分ほどのところにある、Crystal Caveという鍾乳洞を見学に出かけた。1902年にボールを捜していた少年たちによって偶然発見されたという鍾乳洞は地下200mほどの深さまであり、クリスタルクリアな水を湛えた神秘的な光景が広がっていた。水は海と繋がっているらしく、少し塩からい。
この時期バーミューダに立ち寄るヨットは、ほとんどがてまりと同じでヨーロッパへ渡る途中で寄港した船だ。
マリーナに舫いを取っていたヨットも一つ、また一つと出航していく。隣にいたお爺ちゃんたち4人が乗るMahi Mahiというイギリス船籍の船も今日出航していった。我々は「アゾレスでまた会いましょう」と言って見送る。そして、てまりの出航2日前にはほかに誰もいなくなってしまった。我々も来るべき長距離航海に備えて一週間のんびりと過ごし、英気を養った。
明日、6月22日(月)出航し、ポルトガルの西に浮かぶAzores諸島へ向かう。1800マイル、約2週間の航程だ。