アパッチ蹴球団-高校サッカー篇:project“N”- 

しばらく自分のサッカー観や指導を見つめなおしていきたいと思っています。

ボールを置く位置

2018年11月15日 06時05分53秒 | 技術の謎
先日、久しぶりにワールドカップロシア大会の試合を見直した。見たのは予選リーグの日本対コロンビア戦と決勝戦。ともに、リアルタイムでは認識しきれなかったものを発見できた。特に、コロンビアの選手の技術面の高さを改めて実感した。具体的には、日本の選手を切り返してかわしたときの姿勢の良さが印象的だった。正直、美しさすら感じた。ライン際で厳しめに身体を当てようとする日本の選手を切り返してかわした際、背筋はピンと伸び、目線は高く遠くを確保できていた。ブラジルワールドカップで日本が対戦した際のハメス・ロドリゲスのような美しさが、コロンビアの選手達にはあったと思う。技術だけで試合が決まるとは思わないが、開始早々の退場が無ければ、試合の結果も変わっていたかもしれない。

トラップの際、ボールをどこに置くのか、ということについては、そのときの状況によって変わってくるし、正解みたいなものはないのかもしれない。ただ、中盤などで長いボールで大きく展開することが予想される場合には、ある程度の正解はあると思う。「相手に奪われない場所に置く」という大前提を確保したうえで、個人的には、自分がパスを出したい味方選手とボールとを同一視野に入れられるような位置にボールは置くべきだと思う。それが、パスもドリブルも出来るボールの置き場所だと思うし、特に長いボールで大きく展開したい場合には、その位置にボールを置かないと、きわめて展開が困難になる。下を向きすぎないような位置、という基準でもいいかもしれないし、長いボールも短いボールも両方蹴れる位置に置く、という感覚でもいいかもしれない。少なくとも、インステップでも、インサイドでも、アウトサイドでも蹴れる場所におく、というのは最低限の要件になる。

シュートの場面においても、同じようなことが言えると思う。点が取れるチームほど、ボックスの外からのシュートが多くなるが、その前のトラップの位置も、中盤やライン際で切り返した際のボールの置き場所と同じように考えていい。特に、ゴール前では数的に有利ということは基本的にないので、切り返すという仕込みをすることがどうしても多くなるが、その際の置き場所も、中盤で展開する際の置き場所と同じように考えていい。具体的には、聞き足の外側、ということになるとは思うが、ゴールとボールとを同一視野に入れられるような目線や姿勢を確保できる場所にボールを置くべき。もちろん、これには個人差があるので、足元から何センチ離れてばいいとか、何センチ離れていなければダメ、という話ではない。自分が考えているよりも足元に入ってしまった場合でも、ボールを見ずに蹴ったり、個人の技術や感覚でシュートを打つことができる場合も多い。南米の選手だと、わざと置き場所をずらしたりすることもあるかもしれない。これも技術があるからこそ、なせる業だとは思うが。ただ、当然、置き場所がよければスムーズにキックモーションに入ることができるので、最近はボールの置き場所で駆け引きするよりも、シンプルに適切な場所にボールをトラップして、素早くキックモーションに入る、という選手が多い。日本の若手の堂安選手は、まさに現代的なこのタイプだと思うし、堂安選手の足の振りが異常に早いのも、ボールの置き場所の良さが明確な根拠になっているはず。

もちろん、トラップやボールコントロールの技術に優れていなければ、わかっていてもそんな場所にボールを置くことなどできない、という意見や考えもあるとは思う。経験の浅い選手にそんなことを言っても…という気持ちは痛いほど理解できるが、出来なかったとしても、どこに置くべきか、という基準は示していいと思うし、示すべきだと思う。チャンピオンズリーグでバルセロナに所属していたロナウジーニョ選手がチェルシー相手にトーキックで決めたゴールがあったが、そういった映像を見せるのも一つの方法かもしれない。また、ボールコントロールに自信のない選手には「顔が上がる場所でパスを受けるようにしてごらん」というアドバイスもある。「顔が上がる場所」でボールを受けるようにすれば、難しい技術が無くてもなんとかなることも少なくない。いいポジショニングがいいトラップを生み、その結果としていいキックやいいシュートに繋がる…というのは間違いないし、ポジショニングが悪いと難しい技術が必要になるというのは、古今東西にかかわらずサッカーの真理なので、ボールコントロールの練習と並行して、ポジショニングを改善していくのも、急がば回れで、技術レベルが高くない選手には効果的なアプローチだと思う。


日本代表がロシアで成し遂げたこと、特にコロンビアやセネガル、ベルギーから点を奪ったという事実は積極的に評価すべきだとは思うが、他の強豪国から学ぶこと、特に技術面で学ぶことはまだまだ多い。特に、決勝戦を久しぶりに見て、その考えを強くした。まだまだ日本の実力は今が天井ではないはず。焦る必要はないが、高い意識でレベルアップしていってほしい。ただ、地区レベルや育成年代の指導者の方々には、試合結果の一喜一憂だけでなく、そういった部分にも目を向けて、日々コーチングされている方も少なくない。地区や底辺、若年層のレベルが上がれば、必ず日本全体がレベルアップしていく。日本サッカーの未来は明るい。そう信じている。


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。