アパッチ蹴球団-高校サッカー篇:project“N”- 

しばらく自分のサッカー観や指導を見つめなおしていきたいと思っています。

高校サッカー雑感

2021年01月06日 06時30分37秒 | NOTE
今年はコロナウィルスの影響もあって、開催が危ぶまれたが、高体連の先生方や関係者の方々のご尽力もあって高校サッカー選手権が無事開催されている。これは本当にすごいことだと思うし、いろいろな意味で記憶に残る大会になる気がする。一つひとつの試合をゆっくり見ることはできていないが、ハイライトなどを見た印象を簡単に記録しておきたい。

近年の傾向ではあったが、ここまでロングスローを取り入れている学校が多いことに正直少しびっくりしている。これは世界的な傾向というよりも日本における高校生年代に特有なことかもしれない。確かに手で投げられる分、コントロールはし易いのかもしれないが、長い距離でのコントロールは選手の努力の賜物のはず。同時にヘディングの重要性、特に如何に競り勝つか、その競り合う技術も上がってきているように感じる。もっと言えば、予測も含めたこぼれ球に対する反応の差が相手に対する圧力の差となって、グランド上で対戦相手にプレッシャーをかけることに成功しているように思える。この部分が高校生年代で改善されていくことは、日本サッカーにおいてポジティブな影響が将来出てくる気もする。

ポジティブな影響という意味では、ボックスの外からのシュートは確実に増えているように感じるし、シュートレンジが広がってきていることは、日本サッカーにおいて必ずいい影響を与えてくれると思う。自分が指導現場にいた頃は、いわゆる「バー当て」というトレーニングをアップや練習の導入においてやっていた。時間内に3本当てられなければ、足りない数×ダッシュというルールだったが、選手たちは前向きというか結構楽しんで取り組んでくれていた。少しずつ距離を伸ばしてもいいし、最終的にはセンターラインぐらいからバーに当てられるようになれば、ロングキックそのものの練習にもなるし、力を抜きながらコントロールする意識も持てるようになると思う。遠目からシュートを狙える、というのは実力のあるチームのすること、そんな印象もあるが実際は弱いチームというか個人の技術で劣るチームの切り札みたいな武器になる。カウンターの場面で選択肢も多くなるし、相手に与えるインパクトや恐怖もかなり変わってくる。そしてそのプレッシャーが相手チームの判断を迷わせていく。もちろん正確にショートパスを出せる技術も大切だけれど、長い距離を蹴れる技術を練習しておくことで、遠くを見る意識も高まってくるし、ゴールやシュートから逆算して状況判断できるようにもなっていく。自分たちの攻撃の強みが明確でないチームこそ、ロングシュートは練習すべき部分。もちろんダイレクトで精度の高いロングを打てるのが理想ではあるが、実際にはワンタッチしてから~という形でも全然問題ない。ロシアワールドカップにおけるアルゼンチン対フランスのゼ・マリアのミドルはいい参考になると思う。あの試合における彼のシュートは、GKから逃げるようなボールだったが、そんな技術はなかったとしても、あの距離からダイレクトでゴールに突き刺さるようなシュートが打てれば相手GKにとってはかなり脅威になる。そういった長めのシュートをもっていることが、そのあとスルーパスを出したり、ワンツーやシートフェイクからのドリブルなどへの布石にもなっていく。UEFAチャンピオンズリーグなどに比べるとまだまだ日本サッカーのミドルシュートの精度には改善の余地があるとは思うが、高校生年代から失敗を恐れずにどんどん打つ習慣がついてくれば、日本サッカーもいい意味で変わってくると思う。まず、シュートありき。基本はどこからでも狙う。そんな意識が定着しれくれば、日本サッカーもまた一つ高いレベルに到達できるはず。高校生の選手たちには是非積極的にトライしてもらいたいし、選手がロングシュートという閃きを感じた際には、指導者の方々も暖かく見守ってあげてほしい。

最後に、気になった点を少しだけ。ミドルやロングレンジのシュートが決まる、ということは、見方を変えればその瞬間における対戦する守備側の選手の寄せが甘いということでもある。特に感じるのが、ボールより高い位置にいる選手、特に抜かれた後の選手がただ立ったままという場面が多い、ということ。ロシアワールドカップにおいて、日本代表はロスタイムで失点しベルギーに負けてしまったが、最後の失点の場面は昌子選手が後ろからでも、届かないとわかりながらでもあえてスライディングしていたが、正直高校生はあそこまで後ろからプレッシャーをかけることができていないことが多い。守備時においてボールより高い位置にいる選手がどのような形で相手のボールホルダーにプレッシャーをかけられるかは、試合での失点数に大きくかかわってくる。ただ、この部分は技術も必要だけれど、意識を改善するだけでも短期間でかなり変わってくる。失点が多いチームこそ、トライする価値のあるテーマだと思う。

つらつらと高校サッカー選手権を見た上での雑感を書いてきたが、このような状況下において大会が催され、実際に選手達がプレーできていること自体がある意味奇跡のようなものなのかもしれない。夢のようなこの舞台を自分はひとりの観客として楽しみたいと思うし、運営されて先生方に心から敬意を表したい。

最後になりましたが、少しでも早くこの状況が落ち着き、高校サッカーにかかわるすべての人たちに以前と同じような日常が1日でも早く戻りますように。
いつもつたないこのブログを読んでいただき本当にありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。

新出康一