アパッチ蹴球団-高校サッカー篇:project“N”- 

しばらく自分のサッカー観や指導を見つめなおしていきたいと思っています。

やり切る 出し切る

2017年01月20日 10時11分36秒 | 人として
指導をしていた頃、選手たちによく伝えていたのが、「やり切れ」「出し切れ」という言葉だった。当時は本当にぎりぎりで、いろいろな意味で常に終わりを意識していた。終わりを意識していると、どうしても「やり切り」たくなるし、何よりも「やらせ切りたくなる」。「出し切れていない」選手を見ていると、とてももどかしく感じたし、様々な方法でなんとか「出し切らせる」ことができないかを考えていた。

試合でやり切り、出し切ることで、その試合は伝わるものになる。伝わるものであれば、勝っても負けても、応援してくれた選手も試合に出場した選手も何かを共有することができるし、大切な何かが必ずお互いの気持ちの中に残る。そのために必要なのは「やり切ること」であり、「出し切ること」。余力をのこしていたり、戦っていなかったり、そういう姿は試合に出ていない選手からすると、どうしても割り切れないものが残ってしまう。正直、「なぜ?」「どうして?」という気持ちを持ってしまう。そんなプレーを見せられては、チームが勝っても負けても、納得できるはずもない。おそらく試合に出場した本人でさえ腹の底では全く納得していないはず。勝ったら納得できるわけでも、負けたら納得できないわけでもない。大切なのは、持っているものを出し切って全力で相手にぶつかっていくこと。相手が格上でも、逃げずに出し切ろうとすること。もちろん、試合のときだけ、「やり切ろう」「出し切ろう」としてもできるはずもなく、練習でもがいてもがいて、出し切ろうとして、出し切ろうとし続けて、初めて練習中に「やり切った」「出し切った」という感覚が持てるようになる。そして、その練習で感じた感覚を何度か持てるようになってくれば、試合でも少しずつ、本当に少しずつだが、試合の中で自分の持っているものを出し切れるようになっていく。とにかく、大切なのは、練習でやり切ろう、出し切ろう、とすること。

もちろん、言うのは簡単だが、実際に行うのは言うほど簡単ではない。自分なりに、スイッチをどう入れるか、いつ入れるか。なんでもありの修羅場のような状況を自分で意図的に作りだし、その中で、常に狙いを持ちながらも、本質的な部分を意識してプレーし続ける。それは簡単なことではない。自分の中の頭のイメージとしては、滑り始めたジェットコースターに乗りながら、どう狙いをもって、自分なりに意味を付けていくか、そんな心理状態に似ている気がしている。ジェットコースターという相手に乗りながら、相手に振り回されながらも、狙いと本質的な思考や判断を失わず、駆け引きを忘れずに最後までやり切る。相手のペースに合わせて最後まで受け身で乗り続けるのではなく、相手に振り回されるときがあったとしても、あくまでも自分なりに勝負所をしっかり意識しながら、そのゲームに自分で意味を付けていく。受け身ではなく、とにかく能動的に、積極的に。「やりきること」も「出し切ること」も、きわめて能動的な行為。練習中から受け身で自分なりに意味付けをすることができなければ、「出し切ること」や「やり切ること」などできるはずもない。

もちろん、試合では身体がぶつかり合い、走り続けながらなので「出し切る」「やり切る」ということも力任せなものと考えがちだが、そうではない。むしろ、力まず、ときには肩の力を抜きながら、深呼吸も入れながら、自分の意識に集中していくこと。自分の意識や行動が仲間や相手のプレーにどんな影響を与えていくのかということを冷静に観察し、また自分の感覚や狙いをさらにそこに付け加えていく。できることなら、本質的思考や俯瞰の意識が持てればベストではあるが。ただ、どんどん進む時計の中で何を残せるのか。何を伝えるのか。どんな意味付けをその瞬間瞬間にしていくことができるのか。肩に力が入って視野が狭くなってしまってはこういったことができるはずもない。おそらく集中しているという状態は思っている以上に、力が抜けて、リラックスしている状態なのだと思う。ただ、身体の力は抜けていても、頭の中はすごいスピードで回転している。色々なストーリーを同時にいくつも描きながらも、同時に修正し続けている。そんなイメージかもしれない。少なくともサッカーにおいては。

新年、最初の記事もただ思いつくままにだらだらと綴る文章になってしまったが、サッカーの指導でかかわった選手たちが今いる場所で「やり切り」「出し切る」ことを続けていってほしいと思うし、サッカーに関わる全ての人達が今自分がいる場所で「やり切り」「出し切って」ほしいと心から思っている。そして自分自身も「やり切り」「出し切れる」ような一年にしていきたい。
今年もよろしくお願いします。


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。