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会社と車:飲酒運転対策と企業対応(2)

2006-10-10 | 飲酒運転特集
10月3日のエントリの続きです。今日は「自動車通勤への対応」について考えたます。

やや古いデータになりますが、平成12年国勢調査における“従業地・通学地集計”の結果 によると、「通勤・自家用車だけを利用する15歳以上の通勤・通学者は、全体の44.3%」という非常に高い数字がはじき出されています。18歳未満の通学者が統計データに含まれていることや、他の交通機関と自動車を併用している人を合わせて考えれば、おおよそ働いている人の2人に1人は「自動車通勤」をしているということがいえるかと思います。そうなると、「会社と車」の関係にを考える際にはやはり『自動車通勤への対応』ははずせないポイントとなります。

「自動車通勤への対応」でまず考えなければならないのが、通勤途上であっても、事故が発生した場合には会社に使用者責任が問われる可能性があるということです。

使用者責任とは民法に定める損害賠償責任に関する定めの一つです。簡単に言えば、「会社で使用している人(従業員など)が起こした損害は、従業員個人だけではなく、会社自身も賠償責任を負う」ということを定めたものです。そして、過去の判例では「通勤」についても「会社で使用している」とするケースがほとんどです。したがって自動車通勤への対応上は「通勤中も仕事中と同じく、会社の責任になる」と考えて対応をした方が間違いありません。(なお判例実務の中では、自賠責法との関連も争点となっています。)

では具体的にどのような対応が求められるのでしょう。自動車通勤へのリスク対応については、大きく分けて『自動車通勤者の特定』『万一の事故への備え』に分けられます。

まず、『自動車通勤者の特定』では、自動車通勤できる人を会社として特定しておくことが求められます。通常は「自動車通勤の原則禁止 ⇒ 許可者に対して解除」という形を取ることが多いでしょう。この際、自動車通勤許可者については、“自動車通勤申請書”を提出させるとともに、少なくとも以下の事項の確認をまず行うことが求められます。
○運転免許を保持していること(更新期限を含めて管理)
○通勤に使用する車両を特定すること
○通勤時に使用する経路を特定すること


さらに、運転免許については、更新期限が到来した際には会社での再確認を行うことが効果的でしょう。また、事故や交通違反などによる免許停止・取消しも考えられることから、就業規則(又は他の社内規程)上の手当てとして『自動車通勤者は、業務上外に関わらず、事故を生じた場合や運転免許が停止・取消された場合には、直ちに(3営業日以内に等)会社に届け出ること』という定めを行っておくことが求められます。さらに実効性を高めるであれば、前述の規定違反に対する懲戒処分(解雇を含む)についても、きちんと就業規則上に定めておくことが望ましいでしょう。

また、交通違反による免許停止・取消し処分を届出た者への対応としては「自動車通勤の許可の一時停止又は取消し」という対応が必要となります。この際、免許停止中の期間はもちろんですが、会社として独自に自動車通勤許可の停止期間を延ばしたり、常習性のある者であれば、許可取消しまで視野にいれた対応も可能となります。これは“自動車通勤をしなければ実質的に通勤できない”という場合であっても、従業員に対して『通勤の代替手段が全くなくなってしまう』というような極端な不利益となるような状況にならなければ、許可停止期間の延長や取消しや差し支えないと考えられます。

会社にとっては、「自動車通勤を認められる人にだけ、モレなく認めていく」ということが重要なのであり、決して懲戒処分対象者を出したいということではありません。しかし、このような届出義務違反に懲戒を牽制力として、「確かに自動車通勤を認めても良い人であること」を担保することが可能となります。また、免許停止や取消しになるような状況については、「会社の仕事に関連した車の使用を認めない」ということで、“会社として適切に出来る範囲”でコンプライアンス対応を行うことが出来るでしょう。また、これらの対応を“社内標準”として銃要員の間に広めていくことで、従業員に対して飲酒運転を含めた自動車運転時の注意を喚起する効果が期待できると私は考えます。

やや長くなりましたので、今日はここまで。次回は「万一の事故への備え」について考えます。

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