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政策分析 ~ 民主党(2)

2005-08-19 | 国政選挙SP
さて、昨日に引き続き、民主党の政策分析です

【追記】分析に当っての基本的な考え方


昨日のblogにて、「分析に当っての基本的な考え方」を掲載しましたが、1点追記します。

今回は「大きな政府」「小さな政府」のいずれを志向するかという視点にて分析を行いますが、大・小の分かれ目の軸(=センターライン)は「現在の日本」としています。つまり、「今の日本(政府)より社会保障を拡大し、税による富の再配分機能を強める」方向に働くものを「大きな政府志向」、「今の日本(政府)より格差是正機能を押さえ、税による富の再配分機能を緩和する」方向に働くものを「小さな政府志向」とします。

民主党の政策分析(2)「500日プラン」


今日も昨日に引き続き民主党の政策分析です。今日、民主党サイト http://www.dpj.or.jp/ を確認したら、選挙モードに全面リニューアルされていました。ただ、選挙スペシャルをアピールするのは良いのですが、サイトを見る側としては、できれば別ウィンドウで開くのはやめていただきたいのですけれども・・・・。

それはさておき、今日の1つ目の分析は「500日プラン」です。この資料の位置づけをどう捉えるかはやや微妙な面がありますが、ここでは、基本政策の一つとして捉えます。

500日プランに書かれている内容の多くは、「衆院議席過半数確保=政権獲得時における政策実現のためのプロセス」です。当初の内閣スタッフ人選の方法をはじめ、予算編成、法案策定、その他もろもろのステップ等が書かれていますが、これらはあくまでも「プロセス(= How To Do)」に過ぎないため、「大きな政府」「小さな政府」のいずれにも該当はしません。500日プランは「政策(=What to Do)実現のための工程表」と捉えるのが適切でしょう。

民主党の政策分析(3)「2005 年 衆議院選挙マニフェスト 政策各論」


さて、民主党の政策分析の最後は、「マニフェスト」です。このマニフェストには具体的な政策像が示されています。なお、ここでは、国家制度並びに国民全体に関する政策として、「3.社会保障・雇用」「4.子育て」「5.教育・文化」「9.経済・規制改革・中小企業」に加え、今回の選挙での主要争点となると予想される「8.郵政改革」を分析対象として取り上げます。


◆「大きな政府」志向と判断される政策
  • 社会保険庁の廃止と、国税庁を改編した歳入庁による税と保険料の徴収の一体化(3-1-2)
  • 基礎年金国庫負担率の2分の1までの引き上げ(3-1-3)
  • 年金の「所得比例年金」への一元化(3-1-4)
  • 税を財源とする最低保障年金を設け、老後の最低限の年金(月額7 万円)を保障、並びに財源としての年金目的消費税の導入(3-1-5)
  • 年金保険料計算に当って、夫婦の収入を合算し、その2 分の1 ずつを各人それぞれの収入とみなす方式(二分二乗方式)を採用(3-1-6) 「標準治療」として患者が最良の投薬治療を受けられるよう「特定療養費制度」を大幅に拡充(3-2-3)
  • 被保険者と受給者の範囲の拡大(介護保険のエイジフリー化)(3-3-1) 障がい者福祉政策の改革(所得保障制度の確立を含めた、障がい者福祉予算の拡充)(3-3-2)
  • 短時間労働であることを理由とした労働条件についての差別を法律上禁止(3-4-2)
  • 育児・介護休業制度の拡充(3-4-2)
  • 失業給付期間が終わっても就職できない人や、自営業を廃業した人などを対象として、能力開発訓練を拡充し、最大2 年間、月額10 万円の手当を支給する法律を制定(3-4-3)
  • 医療保険料を離職後1 年間軽減(3-4-3)
  • 必要に応じて就労支援手当を1 日1000 円(月3 万円程度)支給(3-4-4)
  • 月額1万6000 円の「子ども手当」を創設(4-1-1)
  • 出生児1 人あたり20 万円の「出産時助成金」を創設(4-1-2)
  • 父母の就業実態にあわせた保育時間の延長などを含め、待機児童解消に向けて、少なくとも960 億円の予算を確保(4-1-3)
  • 義務教育終了年齢までの医療負担を1 割に軽減(4-1-4)
  • 「子ども家庭省」の設置(4-1-5)
  • 「特定暴力情報等からの子どもの保護に関する法律」を制定(4-1-6)
  • 教員養成を原則6 年制とし、教科指導や生活指導などの専門教員認定制度を創設(5-1-1)
  • 私立通学者に対して、直接授業料補助(5-3)
  • 希望者全員奨学金制度を実現(5-4)
  • 国際人権規約「高等教育無償化条項」を批准(5-4)
  • 高速道路を原則無料化(9-1-3)
  • 「ローン利子控除制度」創設(9-1-6)


◆「小さな政府」志向と判断される政策
  • 積極的な医療情報の開示、説明と同意の原則の徹底、患者の自己決定権(リビングウィル)の尊重とセカンド・オピニオンを得るためのルールづくり(3-2-1)
  • 患者に対するカルテの開示と医療費明細書の発行を義務づける法律案を次期通常国会に提出(3-2-4)
  • 郵便事業への民間事業者の参入要件を緩和(8-3)
  • 民間事業活動に関する規制の撤廃、公正競争の環境確保(9-1-8)
  • 独占禁止法の抜本改正並びに、官製談合防止の視点から、公務員の関与に関する罰則強化(9-1-8)


◆いずれとも判断されない政策
  • 議員年金の廃止と公的年金加入(3-1-1)
  • 納税者番号制度の導入(3-1-8)
  • 新たな高齢者医療制度の創設を含む医療・医療保険制度の改革(3-2-2)
  • 無年金障がい者に対する基礎的な所得保障の実施(3-1-9)
  • 「ドクターヘリ」などの救急専用のヘリコプターを全都道府県に配備(3-2-1)
  • 全国360 カ所のがん拠点病院に「情報センター」を設置(3-2-3)
  • 郵便貯金の預入限度額を引き下げ(8-1)
  • 道路特定財源制度の廃止、自動車関係諸税の軽減・地球温暖化対策税の創設(9-1-4)
  • 株式の長期的保有を促進・拡大するための配当課税の廃止・軽減(9-1-7)
  • ベンチャー企業に対する投資額の一定割合の税額控除(9-1-7)

上記の分析の中で、「保険方式(受益者負担方式)から税方式」への移行と捉えられるものは「大きな政府志向」に分類しています。また、「社会保険庁の廃止と、国税庁を改編した歳入庁による税と保険料の徴収の一体化」については、結果として「保険料の租税化」が進むことが予想されることから、大きな政府志向へ分類しました。

このように並べてみると、民主党の基本スタンスとしては「各側面での社会保障を充実させる」方向に向いているようです。そのための財源は歳出削減で賄うとしていますが、社会保障の拡大は「富の再配分機能の拡大」に働きますので、長期的には租税負担が拡大する方向に向かいます。これに呼応する動きとして「7.財政健全化」の章に「31 特別会計63 勘定の特別会計をすべてゼロベースで見直し」という政策が見られます。

ただし、医療や郵政などの個別論では、比較的「小さな政府」志向と判断される政策が見受けられます。

全体としては「サラリーマン家庭」を念頭においていると思われる政策が多いのも特徴的です。特に、「年金保険料計算に当って、夫婦の収入を合算し、その2 分の1 ずつを各人それぞれの収入とみなす方式(二分二乗方式)を採用」という政策は、夫婦双方がサラリーマンであり、かつ世帯で家計を共有(share)していることが前提とされていますが、多種多様な世帯構成の中で十分な機能が担保されるかどうかは検証が必要と思われます。この他の政策でも、「世帯」の考え方を踏襲している部分が見られます。

以上、民主党の政策分析でした。

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