「永遠の武士道」研究所所長 多久善郎ブログ

著書『先哲に学ぶ行動哲学』『永遠の武士道』『維新のこころ』並びに武士道、陽明学、明治維新史、人物論及び最近の論策を紹介。

朝日新書でまともな大東亜戦争論が

2007-10-27 11:54:25 | 良書紹介
長谷川煕(ひろし)著『アメリカに問う大東亜戦争の責任』を読んだ。著者は何と!朝日新聞社の記者(1961年~1993年)だった人だが、あえて大東亜戦争という言葉を使い、終戦時12才の「少年」だった自らの実感を元に、体験と思索と学習の中でこの小論を書いている。

全体は、4章に分かれて、「竹槍の覚悟」「日本人の後ろ姿」「連合国を見詰める」「日本の再生とは」と各テーマを記してある。一貫するのは自らが終戦前に「敵兵が上陸して来たなら竹槍で戦う」覚悟をしていた事を、自らと当時の日本人の真実として肯定し、その上で、戦後の欺瞞に疑義を呈している姿である。

作者は、日本の都市に対してアメリカが行った無差別殺戮の空襲や原爆投下の残虐性、終戦後シベリア抑留以外にも南方で降伏した日本軍将兵の内約9000人が帰国前に英蘭軍の残虐性の餌食で犠牲になった事、戦争中の米英兵の日本人捕虜虐殺の事などを告発し、糾弾している。3発目の原爆が8月下旬には新潟に落とされる予定だった事を紹介しつつアメリカが原爆実験場として京都・広島・小倉・長崎・新潟を残して空襲しなかった事も紹介している。

独立ビルマの国家主席バー・モウ氏が終戦後日本に亡命し、昭和20年8月27日から昭和21年1月16日まで新潟県南魚沼郡石打村の真言宗薬照寺に匿われ、バー・モウ氏を守り通すため今成氏が親戚20人で「七生隊」を組織し、女性もいざ何かあった時には殺される前に死のうと青酸カリを着物に縫い付けて世話に当ったという感動的なエピソードも紹介して「とりわけ今成拓三氏とそのグループは少年(自分)の背筋を真っ直ぐに伸ばしてくれる。政治亡命者の庇護は少年の琴線を打つのだ。」と記している。

作者は、日本の敗戦の責任を連合国の東京裁判に委ねた結果、日本人自身が何故敗北したのかと言う切実なる問いかけを発する事がなかった事が、今尚日本人の思考停止を生み出しているとして、民間のみならず、公的機関で大東亜戦争の総括を時間をかけてじっくり行うべきだった、と主張する。だが、その主張はいわゆる反日派の日本糾弾論ではなく、しごく真っ当な論である。

問題とすべき点として、作者は、米内光政が陸軍の和平案を妨害した事。辻正信大佐の事。ヤルタ密約情報隠蔽の疑惑を具体的に提示しており、中々考えさせられる。

朝日新聞社の発行だが、是非、一読を薦める。

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