「おいしいおはなし」所収。
茂出木(もでぎ)さんという人をぼくは料理人でもあるのに
しらなくて、たいめいけんをつくった人だ、ということだ。
ていねいな人で、この文章もごていねいだ。気づかいがす
ごくて、洗い場に熱いフライパンをだすときに、柄に塩を
もっておく、なんて、そんなことしらんかった。
ぼくのころには、もうそんな習慣はなくなっていたらしい。
たしかに、料理人は料理を残されることにデリケートである。
ぼくがホテルにいたころ、カルボナーラが全部残されていて、
ショックだったのを覚えている。いや、たぶん、あれは、
マズかったんだと思うよ、いま、思えばね。第一、しょっ
ぱすぎたんだね、そこでつくらされていたパスタって言うのは。
おれも残すと思うもんね。ペペロンチーノなんて、地獄のように
しょっぱかったからさ。だれがこんなもん食うんだよ、って
感じ。あれは黒料理の歴史だよ。
(読了日、2022年11・30 15:07)