古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

お別れの音     青山七恵

2018-09-03 23:33:30 | 青山七恵
文春文庫   2008年~2010年


読んだ感触はすごく静かな感じ。深く底の奥に流れる感情が


脈々と流れているのを確に感じる。そこには、最後には、必ず


音があって。


ボクが六編の中で、好んだのは、「お上手」という、靴の修理屋


との奇妙な関係を描いた作品と、ちょっと趣を異にした「役立たず」


と言う作品だ。


阿久沼がほのかな恋心を抱いている弥生の友達を想う復讐と言った作品。


この作品に思わず、「いいぞ、青山女史!」と喝采をあげてしまった。


意外性というか、オチがちゃんとついているところがなんとも小気味良い。


青山女史は苦労も知らないで、若いころから活躍していて凄いな、といつも


感心するが、この人はこの人で凄い努力してんだろうなあ、と読む作品ごとに


想う。


ただでこんなスゲえ作品が書けるわけがないんだから。
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わたしの彼氏      青山七恵

2018-07-31 07:09:18 | 青山七恵
講談社    2010年


飾りのないタイトルだが、主人公は鮎太郎というイケメンだから


、女性側、つまり、カノジョの立場に立ったタイトルになってい


る。そこはちょっとひねってあるね。


鮎太郎の女の受難の数々を描いているが、イケメンというのもタイ


ヘンなんやなあ、と大阪弁になってまうくらいだ。



鮎太郎には三人の姉がいるのだが、その姉たちもストーリーを描く上で


欠かせない存在だ。


青山女史の作品には三姉妹が多いが、ご自身は三姉妹なのだろうか、と


妄想してしまう。


けど、鮎太郎いい奴だなあ。

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風     青山七恵

2018-06-27 09:40:09 | 青山七恵
「ダンス」なんとしても踊りたくないのか、踊れないのか? 踊らない女の辿る運命。


「二人の場合」結婚する相手はみんなスポーツマンタイプだという。いやいや不細工


もでもちゃんといますよ。ハゲだっているでしょう。スポーツマンタイプなばっかり



なわけないでしょう。



「風」は55才の妹と三つ上のブクブクに太った姉。その姉妹げんかが読みどころの


なんか妙にイキイキしてる短編。表題作だけあって、一番良かった。躍動していたよ



うに思う。そこには、確かに資産家の醜い二人が浮かび上がってきたのだった。



評価Aの作品だ
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やさしいため息 青山七恵

2018-06-20 09:07:30 | 青山七恵
河出文庫 2008年5月


やはり創作とはわかっていても、実際、と思ってしまう。


まどかのようにふらっと知りもしないような男のところに素泊まり


して、やっちゃう女っているのかな、と。ちょっと話しに即して


都合がよくしちゃったのかな、と。


ボクの知る限りでは、そんな女はいない。


いや、この世は広いので、青山女史なんかも、その手の女なのかも


しれない、などと思ってしまうんであるが。けど、真面目そうだしな


あ、それはありえんだろうなあ。


それも、一回っきりで捨てられちゃうんだぜ。ほとんどありえんだろ?


そんな男と寝るなんてことは、と思うが、一人の女の変わってゆく様と


その裏切れる感じを描いている。


松かさ拾い、は小日向さんの息女のために、松ぼっくりを拾う、ただそ



れだけのことの日常をスナップ写真のように拾い上げたお作品である。


これを読むとやさしいため息は一生懸命冒険したのかなあ、と思えてくる。


行儀の良い短編小説である。


青山女史の育ちの良さを物語っているようなね。だから、冒険すると違和


感が出てきちゃうんだろうね。実際、青山女史にそんな大冒険はムリでし


ょ。
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かけら   青山七恵

2018-05-23 10:25:03 | 青山七恵
新潮文庫    2009年


「かけら」が川端賞を受賞している。「かけら」では家族全員で


出かけるはずだったさくらんぼ狩りに父娘二人で行くことになった


顛末が描かれている。


桐子はカメラ教室に通い始めていて、その課題に「かけら」をテー


マに撮って来い、というのがあるところから、このタイトルである。



人間にフツーの人なんていないってことは当然のこととしても、こ



のお父さん「遠藤忠雄」も確たる一個の人間として描かれている。


しかし、通勤すれば、通勤する人に紛れて分からなくなる、という


風体である。たぶん、この人は、というか、文学というものすべてに


言えると思うんだけれど、人生を描きたいんだ、と。



そこには元カノを想う男がいたり、西表島から大学を見に来た従妹を



もてなす、若夫婦が現実と向かい合い、戦う姿が描かれる。


虚構でありながら、リアルを追求する姿勢こそ、想像力を喚起され、


果ては自分を豊かにしてくれる何かであるはずなのだ。

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窓の灯    青山七恵

2018-05-22 09:47:14 | 青山七恵
河出書房   2005年


この作品は解説にもあるように、整合性に欠けるという


指摘がある。でも、小説って、そういうもんだけじゃな


いおもしろさも時に必要になってくる。


ワクからはみ出たおもしろさっていうものが、この作品


にはある。


それは若さが時にもたらす、けた違いのエネルギーからくる


ものなのかもしれない。


22歳でこれだけの文章を書けるなんて、早熟な人なのだろう。



ときに詩的に、ときに骨太な文章で、実に読ませてくれる。
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すみれ      青山七恵

2018-05-18 10:01:30 | 青山七恵
文春文庫  2012年。


少女でもなく、思春期でもなく、微妙なお年ごろの時に


レミちゃんというパパとママと同い年のちょっとフツー


ではない女の人と暮らしたことが描かれている。


高校受験の時っていったら、一番人生でナーバスな時期に、



こんなおとなになり切れない、ヘンなおとながそばにいたら、



やねこいだろうなあ(あ、これ広島弁で、メンドクサイみ


たいな意味ね)と思う。



そして、結局、パパとママからも見放されてしまう。その前に



憂子自身が見放してしまっていた。



ボクらはいつになったら、人を救うようになれるのだろうか。



誰しもが、自分のことで精いっぱいで、人を救っている余裕



なんてない時代……いや、時代のせいにするのはやめよう。



ボクらは少しでもマシになるために頑張っているのに、その



ために碌でもなくなっているという事実……とほほ。
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ひとり日和     青山七恵   

2018-04-26 09:39:17 | 青山七恵
河出書房   2007年作品。


駅のすぐそばにあるけれど、すぐには行きつけない一軒家に


吟子さんの家はあった。それは、別れが繰り広げるだろう駅


という舞台にすぐ行けない、みえているのに、近づけない、


真実のような気もしてくる。吟子さんは七十一歳だ。ボクの


ハハが七十二歳だから、それよりも若い。うちのハハはすごく


元気なので、ボクは、おばあさん、だとはあんまり思わないが



二十歳くらいのコからしたら、すごくおばあさんに思えるの


かもしれない。でも、吟子さんも、バレンタインにホースケ


さんにチョコを買ってあげるくらい若々しく描かれている。


二十歳で、二人の恋人と別れる。そりゃ、40にもなったら、


老けて、ババアにもなろうというものだ、と納得がいった。


世の女性もタイヘンであるな、と感じ入った。まあ、小説


世界の話ではあるがね。それとも、サセコの気味もあるこの


主人公が悪いのだろうか、そりゃ、させれば、すぐに男は


飽きるわな、それが分かっていないという風に描かれている。


けなげというか、バカというか……二十歳って、ホント、バカ


だよねえ、という風に描かれているのであった。




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