古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

ガダラの豚  中島らも/一年の挨拶

2021-12-31 01:18:13 | 中島らも

さて、2021年も今日で最後である。我らが弱小ブログを

 

読んでくださった方々には感謝いたしまする。

 

来年はいい年になるといいなあ、と個人的に思っているので

 

すが、社会的にも例のあれがですな、完全決着してくれると

 

ありがたいな、と思ってますが、なんだか、違うやつが暴れそ

 

うで暗雲立ち込めていますが。

 

僕はしこしことねぎっこ焼きなんぞを焼いてですな、小銭を稼ぎ

 

つつ、チャンスを窺うってな次第ですかね。

 

いい報告は……こればかりは分かりません。

 

今年もいっぱい本を読んで、楽しかったですねえ。毎日、本を

 

読むことだけはやったでやんすねえ。文学と対峙して、僕として

 

は実り多い一年だったでやんすねえ。

 

では、今は亡き、中島らも氏の書評なんぞを始めちゃいましょうかね。

 

ガダラの豚   中島らも   実業之日本社  1993年

 

最後のところのサブリミカルの効果が疑わしい。いくらサブリミカル

 

効果は実際に結果が出ていると言っても、大生部教授たちも実際に殺す

 

ほどの強制力はないはずだ、と細かいことを言い出せば、呪術に関しても

 

おかしいと言えば言えるわけだ。

 

これは中島らも氏が描いた、長大な598Pにわたる絵巻物的なもの

 

なのだな。一方でよく調べてあるし、深い考察にも及んでいる。

 

まだらも氏が元気なころに書かれたものらしく、筆致も鮮やかだ。簡潔

 

にして、簡明な表現、エンターテインメント小説となり得ているよ。

 

読んでいて、楽しく、一度、中ほどで挫折して、一か月ほど寝かせて

 

いたが、夏前、三カ月ほど前に読み始めて、漸く読み終えた。

 

らもワンダーランドとある通り、逆転もあるし、バキリを虫の力で大生部

 

が蟻で倒すあたり痛快であった。

 

らも氏が52歳で夭折して、ぼくも50になって、初めて読んだ小説が

 

らも氏で良かったと言える。

 

(読了日、2021年  11/16(火)15:15)

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mw ムウ 1・2    手塚治虫

2021-12-30 01:01:00 | 本の紹介

小学館文庫    1995年

 

荒唐無稽なストーリーというか、ご都合主義満載というか

 

自由奔放に手塚氏はこのmwという毒ガスをめぐるストー

 

リーを構築されている。

 

まったくマンガ的というか、あり得ない話がごろごろ転が

 

っている。支店長の娘にカツラを被っただけで、なんで美

 

知夫は似てしまうのか? あり得んだろ。いろんな女にカ

 

ツラを被っただけで似てしまう。おかしな話だ。整合性は

 

まったくないが、マンガの神様だから許されるのだ。

 

これは異世界なのだ。まったく現実とは異なる世界の話

 

なのだ。誰かの夢の中、そう、手塚氏の夢の中をのぞいて

 

見ているのだ。これは、彼が見た白日夢だ。いや、おもし

 

ろかった。……合掌。

 

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迷走録      筒井康隆

2021-12-29 01:01:04 | 筒井康隆

「壊れかた指南」所収。

 

三つのことに復讐しようと誓った男の短篇。親友の

 

裏切り、二は失恋、三は会社での降格。親友の裏切

 

りに関して、親友の家にいくと、すごみからか、

 

特許を返してくれて、殺してくれていい、という。

 

次に、二の失恋の女のところに行く途中で、おばさんに

 

ぶつかってしまい、買い物したものと、小銭がバラま

 

かれて、それを拾うことに。そこら辺ヵら、これは、

 

と思う。結局、夢オチなのだが、夢オチってのも、ちょっと

 

安直すぎやしないか、もうちょっと捻って欲しかった、と

 

思うのだが。例えば、失恋した女に逆に殺されるとか、いろ

 

いろあるではないか。夢オチは...…ないな、と思った。……合掌。

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TANUKI      筒井康隆

2021-12-28 08:26:49 | 筒井康隆

「壊れかた指南」所収。

 

テーマはタヌキといじめである。四男坊が、いじめっ子たちに

 

いじめられている残飯をもらっている家庭の坊ちゃんの代わりに

 

学校に行く。タヌキの子供たちは次々に血ダルマにされてゆく。

 

 

初め、マラソン大会でコケて、大けがをしたっていうことだった

 

のだが、実態はいじめだった。

 

狸吉郎(父親)が校長に化けたり、これは昔話を現代風にアレンジ

 

してあるのかな、と思ったのだけれど、最後の最後でこれが全員タ

 

ヌキであることが告げられる。いったいどういうことであろうか。

 

よくわからない。少なくとも、ぼくにはどういうことだか全くと言っ

 

ていいほどわからない。うーん、考えてもムリそうである。……合掌。

 

 

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御厨木工作業所        筒井康隆

2021-12-27 02:57:59 | 筒井康隆

「壊れかた指南」所収

 

冒頭、チタンの義歯を犬歯のようにしたので、天下無敵、喧嘩

 

でのど笛に噛みついて、致命傷を負わすことができる、とはじ

 

まるが、ここからしてわけがわからない。

 

全体的に意味不明で、その雰囲気を楽しむのだ、と思う。ど

 

こかSFチックで、しかし、なんか江戸時代感もある、っていう、

 

ふしぎワールド。

 

ぼくはでもこんな空気感がけっこう好きだ。これは筒井氏に

 

しか描けないだろう。SFの長所を存分に発揮させたイミフ

 

SFの誕生だ。……合掌。

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稲荷の紋三郎      筒井康隆 

2021-12-26 13:35:56 | 筒井康隆

「壊れかた指南」所収。

 

モテモテの吾妻屋のお民はいいよってくる男ども

 

をしりぞけてくれと、妻恋山の稲荷に願う。

 

お民は結婚していて、ダンナは伊勢参りをしに行っ

 

ていてその留守を狙って、男どもはいいよってくる

 

そこへ、狐の紋三郎がボディガードだ、よろしく、玉

 

を切るわ、ケツの穴へ化けて挿れさせるわ、よくわか

 

らんことになってくる。

 

結末も良くわからなく、京極夏彦がなんとか、かんとか、

 

それなら、そんなことを書くなら、いっそダンナがお民が

 

ピンチだということを知ったところで終わらせてくれたら

 

よかろうものを、と思うが、そこが筒井流、ドタバタ的な

 

話ですな。小品だが、昔話的な感じもあって、今、ぼくは

 

昔話にハマっているのである意味、良かったです。……合掌。

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今夜すべてのバーで      中島らも

2021-12-25 07:10:56 | 小説の紹介

講談社文庫      1991年

 

日本文学には、たしかに病気文學というジャンルがあるらしい

 

が、これは飲酒文學とでもいったらいいのか。35歳で肝硬変に

 

なりそうになり、コーラ色になって、入院したときのことが描か

 

れている。

 

あとがき的に山田風太郎氏との対談がのっていて、ガンガン飲んでいて

 

ぜんぜん治ってへんやん、、52歳でしぬはずや、とツッコミを入れ

 

ておいた。

 

この小説では、ふらっと外にでて、呑んで帰ってくると、医師の赤河が

 

いて、遺体安置所にメチルアルコールを呑みに、連れていかれると、

 

17歳のその前の日にも喋ったりしていた少年が死んでいて、お前の

 

腐った20年をくれてやれよ、と言って殴り合いになる場面がグッと来た。

 

この小説の一番いい場面だ。

 

中島美代子女史の本を読みながらだったので、深く読めた。

 

吉川英治文学新人賞を獲った出世作でもある。……合掌。

 

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余部さん      筒井康隆

2021-12-24 01:26:52 | 筒井康隆

「壊れかた指南」所収     文春文庫 2012年

 

「あまりべさん」と読むらしい。なにかと思ったら、ワープロが

 

使えなくなり、仕方なく手書きに変えて、書くと現実の35枚の

 

最後の35枚目が余ってしまった、そこで、余部さんの登場だ。

 

なぜ余ったから余部さんなのかはよくわからない、とにかく、

 

余部さんは求婚してきた男性の喉笛に食いつくくらい怖い女である。

 

先生の生原稿を初めて拝見した編集者は大層よろこんで、実家

 

のやっている養卵場の卵を先生に送ったあたりから、また、おかしく

 

なってくるが。筒井ワールド全開! ……合掌。

 

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らも  中島らもとの三十五年  中島美代子

2021-12-23 02:58:17 | 本の紹介

集英社文庫    2013年

 

中島らもの妻の描いたらも氏との生活三十五年。この人は

 

元々やリマン気質らしく、誰とでもやっちゃう人らしい。

 

ホントにメチャクチャな人だ。だからこそ、らも氏は惚れた

 

のだろう。やリマン伝説を自分で披瀝してしまうほど、あっ

 

けらかんとしたダメな人でもある。薬中で、やリマン、どうし

 

ようもない人だ。らも氏に愛されていなかったら、逆にヤバかった

 

んじゃないかと思う一方、らも氏に愛されたからこそ、やリマンに

 

なったとも言えるわけで。まあ、ぼくが思うに、格好つけでこうい

 

うのを書いているらしいが、ぜんぜんカッコ悪いよ。ちゃんと

 

生活してる人に詫びて欲しい。一生懸命きちんとライフを送れよ、と

 

言ってみたくなる。

 

最後の手紙めいたものでお茶を濁された感があるが、ハチャメチャな人生

 

もあったもんだ、とあっけにとられる。そういう時代でもあったって

 

ことだろうね。……合掌。

 

 

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あれも嫌い これも好き     佐野洋子

2021-12-22 03:36:50 | 佐野洋子

朝日文庫    2003年

 

佐野女史の本は全部読んだ、と思っていたが、この本の

 

取りこぼしがあったようだ。

 

このエッセイの中で心に残ったのは、「食べて下さい、残

 

して下さい」だろう。実の父が病気になり、実にうまそうな

 

うなぎを買いに走らされる。父上はうなぎ屋の娘がげっそり

 

していたのが、しばらくして行ってみると、ぷっくりとしてい

 

るのを見てからうなぎ信奉者なのだ。そのうなぎを父上は

 

食べるわけだが、洋子女史の分はない、なにせボンビーだ。

 

そして、父上の様態が悪化していくと、半分残す。残したのは

 

子供たちが分けて食べるわけだが、うなぎはほんとにうまいが

 

父上の病気が悪くなっていくことも気がかりだ。食欲と、親への

 

心配の気持ちがないまぜになって、実に切ないエッセイだ。

 

そこに、子供ながらに、佐野女史がよく表れていると思う。

 

つれないけど、かわいいやつ、そんなひとだね。……合掌。

 

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