古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

聡乃学習(サト スナワチ ワザヲ ナラウ) 小林聡美

2024-10-31 21:48:15 | 本の紹介

幻冬舎文庫 2019年

 

いつもこの人の本は、なんとなく読み始め、

 

なんとなく読み終わっている。

 

この人のいいところは、猫を愛しているところ

 

で、ホイちゃんという、ポイと捨てられた捨て猫

 

だからというのでそういう名前にした、という。

 

最後の大トリのエッセイで、そのホイちゃんが

 

大病をして、死んだことが描かれている。

 

それはとても淡々と描かれているだけに、静かな

 

哀しさが漂っている。

 

五十代の老いが描かれていて、いろんなところに

 

来るんだ、五十代。

 

ぼくは、この前、台所の前に置いてあったケースに

 

足を突っ込んで、滑ってコケて、腰をやられてしまった。

 

いや、頭を打って、救急車で運ばれた人もいる、とか。

 

いつどうなることやら分からぬ、毎日がアドヴェンチャー

 

な五十代なのだった。

 

(読了日 2024年10・7(月)18:30)

                (鶴岡 卓哉)

 

 

 

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思い出の作家たち 川端康成 ドナルド・キーン

2024-10-30 01:47:36 | 本の紹介

松宮史朗・訳

 

キーン氏は喋ることは出来たが、書く方は

 

なかなか日本語では難しかったようで、訳

 

となっている。

 

川端氏について、ぼくがいえるのは、ちょっと

 

過大評価じゃないかなあ、ということだ。

 

それで、ノーベル賞をもらって、そのプレッシャ

 

ーで潰れてしまったのではないか、それで、ガス自殺

 

という最悪な結果になってしまったのではないか。

 

しかし、作家にとって自死という選択肢は決して、最悪

 

でもないこともあるのではないか。それは時に、川端の

 

目指していた日本的美と同様、潔い美として認められる

 

得ることもあるということだ。

 

一読して、残念なのはあまり川端について会った時のこと

 

が描かれていないことだ。

 

キーン氏が川端に会ったのは、昭和二十八年、川端はまだ

 

五十四歳で、ぼくと二つしか違わない。しかし、実に

 

老けて脆い感じの人、という印象を受けたという。

 

(読了日 2024年10・6(日)22:50)

                (鶴岡 卓哉)

 

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思い出の作家たち ドナルド・キーン

2024-10-27 12:35:09 | 本の紹介

松宮史朗・訳 新潮文庫 平成17年

 

本書は副題に谷崎・川端・三島・安部・司馬と

 

あるように、それぞれ5人の作家を評している。

 

今回はその谷崎を見てゆこうという趣向である。

 

キーン氏は97歳で2019年までご存命だったので、

 

谷崎とも実際会い、話しを交わしている。

 

キーン氏も悔いているが、それらの時の事書き記して

 

いなかったらしく、忘れ去られたようで、記述も

 

少ない。作品に対する賞賛の記述が多い。1953年

 

末、トルコへ行く道すがら「細雪」を困難を乗り越えて読み

 

「蓼喰う虫」(たでくうむし)の翻訳を谷崎に渡して欲しい

 

とエドワード・サイデンステッカーに依頼され、下鴨の

 

谷崎邸に向かう、それが、初遭遇だ。

 

谷崎は和服姿で、1Hほど気楽に話したそうだが、本当は

 

谷崎氏というのは男に興味はなく、来客嫌いで有名だった

 

と云う。

 

(読了日 2024年10・6(日)15:16)

                (鶴岡 卓哉)

 

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粋で野暮天 出久根達郎

2024-10-26 13:11:03 | 出久根達郎

文春文庫 平成10年

 

始め、猫派、犬派の見解で相違があったが、

 

つつがなく読み進めた。

 

本書は古本屋でもある、ぼくと同業の筆者が

 

出会った本について書いている。

 

さすがは本のプロ、その読む本も幅広い。

 

ひとつひとつ拾っていてはキリがないが、

 

例えば、お礼の声では、山城隆一氏のお別れ会

 

のご案内をいただいた、からに始まり、一切

 

啼かなかったオシボリと云う猫が、最後の

 

お別れになろうという時に、ニャーお、ニャーお

 

と二度大きな声でないたという、猫好きなら、涙

 

ぐんでしまう挿話だ。それぞれが5Pほどでまとめ

 

られていて、切れ味も鋭く、読み心地も爽やかだ。

 

この人はきっと、猫派なのだろう、と思う故、ぼくは

 

安心して読めるのであった。

 

(読了日 2024年10・6(日)12:10)

                (鶴岡 卓哉)

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釣り時どき仕事   夢枕獏

2024-10-23 01:01:29 | 本の紹介

中公文庫  1997年

 

この頃の獏氏は釣りキチだったらしく、仕事

 

の合間を縫って、釣りをしていたらしい。

 

また、環境保護にも造詣が深く活動していた

 

らしい。今は、獏氏は癌になってしまった

 

らしい。

 

日本の文学に、三大テーマとして、上げると

 

すると、病気、料理、釣りとなるだろう。

 

ぼくはどのテーマも同じく好きだが、実は

 

病気と云うのが、一番好きである。

 

川釣りをメーンにやっていて、特に鮎釣り

 

に興じていたらしい。

 

ぼくは鮎釣りはしたことはないが、川釣りは

 

子供の頃、庄内古川とか古利根川があり、釣り

 

キチみたいにやっていたが、今はほぼ興味がない。

 

釣り人の心理というものを、この本ではよく言及

 

されているが、そういうもんかしらねえ、と自分

 

だけ釣れない悔しさというものも、良く分からない

 

ものだった。

 

他の人と競って釣っても大して面白くもなかろう、

 

と思うのだ。自分は自分、ということをおとなになって

 

ぼくは徹底しているので、人と比べたことは、あまりな

 

いし、悔しいと思ったこともないのだった。

 

(読了日 2024年10・4(金)1:23)

              (鶴岡 卓哉)   

 

 

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ぷるぷる・ぴぃぷる 中島らも

2024-10-20 11:19:56 | 中島らも

集英社文庫 1988年

 

帯には、90秒に一度は笑える、とあったが、

 

笑ったのは、4,5回かな。

 

「バッカじゃないの」と云う通り、あまりにも

 

バカバカし過ぎるせいだ。笑いの程度は小4、5

 

くらいのものだろう。でも、その笑いの幼稚さ

 

嫌いじゃない。

 

口に指を入れて拡げて、「学級文庫」と言って

 

みる、というくだりはもろ、小4だ。

 

落語も載っているが、その悪ノリぶりは、ホントに

 

バカげていて、文学という文脈を逸脱している。

 

リリパット・アーミーという劇団を主宰していた

 

というらもさん。ホントにくだらなかったんだろ

 

うなあ、と失笑を禁じ得ないが、何度も言うようだが

 

嫌いじゃない。ホントか?

 

(読了日 2024年10・2(水)21:20)

               (鶴岡 卓哉)

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日本三文オペラ  開高健

2024-10-17 04:10:10 | 開高健

新潮文庫 昭和34年

 

開高氏、初期の創作もの。泥沼の中から鉄板を

 

掘り出す。ある意味、スカウトされて引っ張って

 

いかれた部落の醜悪、醜怪な男の陥るハラハラワ

 

クワクするディストピア的世界。

 

その垢に塗れ、汚猥と汚物にもみくちゃにされたよう

 

な世界観に、とことん麗しい美の世界を見い出すところに、

 

開高氏のセンスが顕著に現れ出るところだろう。

 

ぼくはこういう大阪の裏路地的なカオスな世界

 

観が大好きなので、読んでいて楽しい時間だった。

 

こういう取りこぼし的なものに最近良く出会うので

 

嬉しい限りだ。日本三文オペラ、いや、決して、

 

三文ではない、一級品のオペラだと思う。

 

(読了日2024年 9・26(木)21:40)

                (鶴岡 卓哉)

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なつかしい芸人たち  色川武大

2024-10-16 16:55:22 | 色川武大

新潮文庫 平成元年

 

色川氏が亡くなって、けっこう経つがたまにこういう

 

生前、昔に書かれたものに出くわす。

 

ぼくは色川氏の芸能の話が大好きで、大抵読んでいる。

 

昔の芸能人のいいのは、顔と声で、昔の嵐寛とか、佐分

 

利信とかの顔は今の人にはないものがある。

 

今のアイドルの顔はサイボーグみたいで、アニメみた

 

いな感じで、あまり好ましくない。という割に、アニメ

 

はけっこう見たりするアニヲタなのだが。

 

けど、人間的な感じが全くしないという点で、人間的魅

 

力に欠けるのではないだろうか。

 

昔のぼくも知らないような芸能史の一端をこの本は

 

つまびらかにしてくれる。

 

左卜全なんて、ドキドキしてくるワードがたんまり

 

詰まっている。全く素晴らしい人物だ、という人が少

 

ないのも特徴だ。ひと癖もふた癖もある人間臭い、

 

まだ人間だった時代と言えるのではないだろうか。

 

(読了日 2024年9・25(水)15:10)

               (鶴岡 卓哉)

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プリンスの言葉 NEW BREED WITH TAKKI

2024-10-14 09:32:01 | 本の紹介

秀和システム 2016年

 

ファンと呼ぶのを嫌って、ファムとファンの事を

 

呼んでいたということは、僕は確かにファムだ。

 

プリンスはぼくに影響を与えた、大いなるヒーロー

 

のひとりだ。

 

ぼくと同じく、影響を受けた多くの人たちがいること

 

を知った。自分が自分でいて、いいんだ、と気づかせて

 

くれた人。

 

日本人の多くは、プリンスをキワ者とか、ただのエロい人

 

とか思っているかもしれないけど、プリンスは本当に素晴

 

らしいクリエイターだった。全ての楽曲をひとりで演奏し

 

作曲し、アレンジして、多重録音で作ってしまう驚異の

 

才能を持った男だった。

 

理解するのにも才能が必要なのかもしれないが、比類な

 

きものがあるとすれば、それは、プリンス、ただひとりだ。

 

(読了日 2024年9・23(月)2:50)

               (鶴岡 卓哉)

 

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わたしの流儀 吉村昭

2024-10-13 22:34:56 | 本の紹介

新潮文庫  平成10年

 

吉村氏はすこぶる常識人であり、道理の分かる人だ。

 

始めエッセイとしてはどうかとも思ったが、リアリ

 

ストはリアリストとしての面白さがある。

 

帯にもあるが、男の品格、ということなのだろう。

 

本を読まない人が60数パーセントもいるという。

 

ぼくは文学をやっているし、読書家であると、自認

 

しているのだが、こんな面白いことをぼくだけが

 

楽しんでいいのだろうか、と思う。いや、いいのだ。

 

思う存分、楽しむがよい、と自分に言ってあげようで

 

はないか。

 

吉村氏は酒豪だったそうで、毎晩飲んでいたらしい。

 

父上を17、8歳の時に亡くし、53歳だったそうだ。

 

その当時の寿命だ、と言うが、ぼくなんて、あと1年

 

しかないのですが。よく警察官とかに間違われ、近所

 

の八百屋の主人だと思われていたこともあるし、養豚

 

業者だと思われていたこともあったらしい。

 

昭氏は2006年に亡くなっていて、奥さんは作家の

 

津村節子女史で、96歳でご存命ナウだそうだ。

 

(読了日 2024年9・17(火)21:30)

                (鶴岡 卓哉)

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