古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

寝ても覚めても本の虫  児玉清

2023-10-30 05:54:28 | 本の紹介
新潮文庫  平成13年

ぼくは大きな勘違いを致しておったのだ。児玉氏

を局アナだとずっと思っていたのだが、俳優でい

らしたのですね。こんな本好きだとも知らなかった。

原書でお読みになっていらしたらしくて、そこいらは

ホンモノ感がある。あの2000年頃のアメリカの

文壇はけっこうキワモノみたいな作品が多くて、ぼくも

よく読んでいたから知っている。あれから米の文壇が

どうなっていったのかはぼくはよく知らないんだけれ

どね。あの90年代後半は、けっこう激しめで翻訳とか

されていて、相当ひどい翻訳物もけっこう読まされて

いたね。この文庫本のあとがきを書いた五年後に亡く

なっている。R.I.P.

       (読了日 9・8(金)22:30)
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木を植えた人  ジャン・ジオノ 原みち子・訳

2023-10-28 06:56:04 | 小説の紹介
こぐま社  1989年

40Pあまりのこの本、まだバブル冷めやらぬ頃に

出されている。今では、たぶん、出版できないだ

ろう。バブルの良き遺産だ。木を13万本植えて

山を再生させる。世界を変える人、っていうのは、

こういうエルゼアール・ブフイエのような人のこと

を言うのだろう。

本当に豊かな人生とはどういうものなのか、敢えて

バブル期に問いたかったのではないのか? おカネ

などだけでは世界は絶対に変わらない、ということ

を痛感する。ぼくらは後の人たちになにを残せるのか?

そういうことを考えてこれからは生きていかないと

いけないのではないか。

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三陸海岸 大津波 吉村昭

2023-10-27 05:33:41 | 小説の紹介
文春文庫 2004年

三陸海岸で起きた明治二十九年、昭和八年の大津波

を中心に、それはそれは恐ろしい大津波についての

本である。大津波が来るときは砲撃のような音がする

といい、潮も一時、一気に引くという。そういう細部が

とても恐ろしい。人間もさりとて、大津波にやられてば

かりではなく、防潮提を作ったりするので、被害は年を

経る毎に減じているらしい。

子供の書いた大津波の作文もそのままのっていて、生の声

を聞くようでとても恐ろしい事態が起こったのだと、

実感する。家族全滅された方もいらしたりして、一名だけ

生存したりして、悲惨だ。

吉村氏は毎年三陸海岸に行っていたらしく、土地勘も

あり、土地の感じがよくでているのは、取材をたゆまず

されたたまものだろうなあ、と思うのだ。

     (読了日 2023年8・31(木)19:10)
                    (鶴岡 卓哉)      
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三陸海岸 大津波 吉村昭

2023-10-27 05:33:41 | 小説の紹介
文春文庫 2004年

三陸海岸で起きた明治二十九年、昭和八年の大津波

を中心に、それはそれは恐ろしい大津波についての

本である。大津波が来るときは砲撃のような音がする

といい、潮も一時、一気に引くという。そういう細部が

とても恐ろしい。人間もさりとて、大津波にやられてば

かりではなく、防潮提を作ったりするので、被害は年を

経る毎に減じているらしい。

子供の書いた大津波の作文もそのままのっていて、生の声

を聞くようでとても恐ろしい事態が起こったのだと、

実感する。家族全滅したりされた方もいらしたりして、

一名だけ生存したりして、悲惨だ。

吉村氏は毎年三陸海岸に行っていたらしく、土地勘も

あり、土地の感じがよくでているのは、取材をたゆまず

されたたまものだろうなあ、と思うのだ。

     (読了日 2023年8・31(木)19:10)
                    (鶴岡 卓哉)      
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リンボウ先生 イギリスへ帰る 林望

2023-10-25 01:47:21 | 林望
文春文庫  1997年

私、個人のことなのだが、文学賞がボツになって、この

本を読んでいて、いくつか気づいたことがあり、私の

文章の欠陥というか、まだまだ、だな、というところ

が理解できたような気持ちになった。いや、ボツにな

るのには、やはり、それなりの理由が存在するのであり、

そこいら辺を修正していき、更なる高みへ昇っていけたら

と思っておる。

さて、この本、日本とイギリスとのドアの開閉の向きにつ

いて言及されている。それは、雨だ、というのだ。滴が

中に垂れないように、外開きが日本だということらしい。

銀行サービスについても、言及されていて、そのいい加減な

イギリスのサービスが、愛すべき信頼感を生んでいる、という。

いや、それだけでは伝わらないか、本書を読めば、イギリス気質

というべきものが、よく理解できるだろう。

とても為になったし、外国はあまり好きではないが、良書だった。


     (読了日 2023年8・30(水)13:25)
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ねじまき鳥と火曜日の女たち  村上春樹

2023-10-20 03:10:12 | 小説の紹介
「パン屋再襲撃」所収

うっすらと、淡雪の如くの狂気、ねじまき鳥

クロニクルの冒頭から部分からそう感じるのだ。

ぼくは20年前くらいに読破したが、よく覚え

てはいなかった。「路地」のような閉鎖された

道のイメージは覚えていたし、猫のことも読めば

思い出した。クロニクルも読めば、すぐに思い出

すだろう。全体的に剣呑で、この短編では、

ファミリー・アフェアが好きだった。いや、この

短編集も数十年前に読んでいるのだ、やれやれ。

ぼくも歳を取るはずだ。ぼくは51歳なのだが、

中島らも氏は52歳で亡くなっているし、石原裕二

郎や美空ひばりも52歳で亡くなっている。

まあ、だからなんだっていうんだってことだけれどさ。

それはそれで、感慨深いものがあるってことだな。






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ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界 村上春樹

2023-10-18 03:46:46 | 小説の紹介
文藝春秋 1986年

かつてこのように長いタイトルの短編があっただろうか。そ

れも、それらの事実にひとつも触れられていないのだ。まさに、

ーのようなもの的世界だ。強い風が吹いてくるのだが、それが

なにかにひとつづきになるのか、といえば、特に、そういうこ

ともないらいしいのだ。相変わらず、女とテキトーにやって、

ついでにセックスするという生活態度。

当時から、偉い人たちが、春樹氏に対して、なっとらん、と

怒ったのも頷ける。きっと春樹氏という人は日本文学の文壇の

文脈とは違う所から生まれた人なのだろう。だから、芥川賞も

獲らせてもらえなかった。というか、文壇から、冷ややかな目

でその当時迎えられた、とこういうわけだろう。



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双子と沈んだ大陸 村上春樹 

2023-10-15 00:19:05 | 小説の紹介
「パン屋再襲撃」所収 1985年

笠原メイとの出会いが出てくる。笠原メイはたしか、

ねじまき鳥クロニクルにでてくるキャラクターだ。

もっとも、ねじまき~ではもっと幼いと思うが、メイ

という名前は同じだ。

双子というキャラも1985年ころからたびたびでてくる

春樹氏のモチーフだ。ぼくは、双子というものに対する

性的なものは大して思い入れがないので、分からないが、

春樹氏は双子という存在に並々ならぬ思いというものが

おありになるのだろう。夢の話は、数十年前に一度、

読んだが覚えていた。二重になってるやつ。重要で

印象的なモチーフで溢れている。




 
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ファミリー・アフェア 村上春樹

2023-10-13 09:24:41 | 小説の紹介
文春文庫    1985年

1Q84から初めて春樹氏を読んだというひとは

かつて、こんなに最速のウィットの持ち主だった

なんて信じられないかもしれない。あれは、ひど

かったけど、このファミリー・アフェアは、なんと

も偏狭な主人公が、とてもおもしろいことを次々と

発言する。あー、そうだよ、春樹氏ってこうだった

よ、と思わざるを得ない。時間という凶器によって

春樹氏も滅多打ちにされてしまった、という感がある。

彼は次々とセックスして、名前もよく知らない女とも

セックスする。そこに肉体なんて、ないかのように。

エイズもなんのその。そんなことどうだっていいのだ。

気持ちよければ、我々は疲れていたってセックスする

のだった。なんせ我々は若かったんだから、といいた

くなってくる。


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パン屋再襲撃 村上春樹+人生論

2023-10-09 04:57:58 | 小説の紹介
人生というものを最近、よく考える。とくに時間に

ついて。人生は長い、が、あっという間でもある。

人生でなにを為すか、為さないのか。それが、問題

だ。

人生、100年時代といわれている。ということは、

丁度、折り返し地点。後半、どういうことが、待ち

構えているのか。誰にも分からないだろう。

分からないから、生きていくのだ。生きていくという

ことは、と、簡単に言えないから、おもしろいのだ。

今日のレビューはパン屋再襲撃ですよ。

文春文庫   1985年

ぼくの評価では、この短編はA+だ。こまかい芸がいたる

ところに張り巡らされ、文章も非常に凝っている。

それでいて、あっさりと読めるという。もちろん、常識的に

不可解な点がないわけじゃないが、そこは、文学的処理に

よって無になるだろう。いや、この不可解な点。例えば、

散弾銃を持っていたり、プレートにガムテープを貼ったりする

技をなぜ備えているのか、という点において、ぼくらはとても

自由にこの短篇に入っていけると思うのだ。

1985年、まだ、文学に対して溢れるような若さと才気を

もっていた春樹氏の一瞬の輝きを見るだろう。このあとに、

数々の名作をものにしていくことを思うと、この短編の持つ

意味は大きいと思う。








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