古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

生きてるだけで、愛     本谷有希子

2019-01-27 06:30:20 | 本谷有希子
新潮文庫   平成18年7月


この人のこの手の作品はまさに「激情」、原色の「赤」である。


劇画タッチで次々に問題を起こし、読み手を飽きさせない。


この手の作品を苦手とする人も多いだろう。


好みを二分するだろうからだが、ボクはわりと好きで、ボクが


いかれているからか、その世界を割りとすんなりと理解できる。


装丁の赤く染まった富嶽36景の絵がこの作品を印象づける。


五千分の一秒を正確に描いた北斎のように、瞬間の沸点を確かに


描いて見せた、本谷女史の快心の一作。



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ぬるい毒    本谷有希子

2018-09-06 11:03:07 | 本谷有希子
新潮文庫   2011年


全体的に「重く」感じた。熊田という女の思い込みか


、ハメたり、ハメられたり、あまり気持ちの良いもの


ではない。


心理劇といえて、そこには生きる決意があるわけだが、


「恥」という人間の持つ弱さをかきむしるところが、


なんか痛かった。


熊田という女は結局、一発逆転はできなかった、と


ボクは見た。結局、おとしめられ、狂ってしまい、


精神病院か何かにはいってしまった、と。


向伊という男は、ホントに計算ずくで恐い男である。


それが魅力ある男とは、ボクにはとても思えんがね。


それは、ボクがおじさんだからかねえ。
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腑抜けども、悲しみの愛を見せろ  本谷有希子

2018-08-20 19:33:29 | 本谷有希子
講談社文庫  2003年


非常に演劇的というか、少女マンガ的とでも言えそうである。


激情に次ぐ、激情なのだが、そこには、それをちょっと俯瞰


してみてる他者がいるのだ。


それを介しているために、ポップ文学となり得ているのだ。


本谷文学というのは、不思議な作風、不条理劇であると同時に


ポップ文学としての側面も併せ持っているのだ。


この作品に出てくる、澄伽という冗談のような女に振り回される


まわりの家族、そして、クールな目で観察する妹の清深、ボクは


少女マンガは読まないが、いかにもありそうなはなしではないか。



それを文学的処理をして、昇華させると、本谷女史の見てる景色


も見えてくる。



そこには新しい地平が拓けているだろう。
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異類婚姻譚    本谷有希子

2018-08-17 13:01:34 | 本谷有希子
講談社     2014年~2015年


ダンナに似てきてしまった妻、似てきた二人、というと


一般論的でおもしろくはない。


しかし、このテーマで本谷女史に書かせると実にふしぎな



おもむきのストーリーができあがる。



まさに「奇才」と呼ぶにふさわしいだろう。


はなしのリアリズムなんて、どうでもいいことなのだ。


本書所収の藁の夫にしても、そんなことありえへんわ、


で終わってしまう妄想を形にし、作品にまで昇華させ


てしまうこの才能は驚くべきものを感じる。


この衝撃は川上弘美女史を読んで以来のものであった。
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嵐のピクニック   本谷有希子

2018-08-05 02:38:03 | 本谷有希子
講談社   2012年



21才の時に、「劇団 本谷有希子」を旗揚げって、21才? と



思い、TVなどにも出ているようだし、ミーハー気分で読んでみた。



帯には、「傑作である」とある。内容は誇大妄想とかをテーマに



していると言っていいか、イメージの飛躍があって、良いのでは



ないか、と思ったが、本谷女史はアウトサイダーなのだろうか。


まあ、アウトサイダーでもなければ、劇団なんて立ち上げないよな。



どの作品もイメージとして頭に残るものばかりだが、特にイメージして



形にしてみておもしろくなったのが、「人間袋とじ」だろう。



足の指をくっつけてみて、恋人にしもやけみたいのを剥がさせる。



その恐怖……中に宇宙人でも入っていて食べられちゃうんじゃないか、


と思わせる妙技。イメージを膨らませる、とはこのことだろう。



この人のイメージに終わりはないのだろう。
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