一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『シン・ウルトラマン』……長澤まさみファンにはたまらない空想特撮映画……

2022年05月23日 | 映画


※ネタバレしています。

この映画を見たいと思った理由はひとつだけ。
長澤まさみが出演しているから。

長澤まさみといえば、
『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年5月8日公開)
を思い出す人が多いことと思う。


ヒロイン・廣瀬亜紀を演じ、
第29回報知映画賞 最優秀助演女優賞、
第17回日刊スポーツ映画大賞 新人賞、
第22回わかやま市民映画祭 助演女優賞、
第47回ブルーリボン賞 助演女優賞、
第28回日本アカデミー賞 最優秀助演女優賞、話題賞(俳優部門)、
第42回ゴールデン・アロー賞 映画賞

など、多くの映画賞を受賞した。
初期の代表作と言えるだろう。
その後、
『タッチ』(2005年9月10日公開)で、浅倉南を演じ、
同じあだち充原作の『ラフ ROUGH』(2006年8月26日公開)などで、
青春映画のアイドル的な存在になった。


TVドラマでも、
かつて薬師丸ひろ子が主演して記録的大ヒットとなった映画『セーラー服と機関銃』のリメイクとなる連続ドラマ(2006年、TBS)に主演し、
2007年4月クールの月9ドラマ『プロポーズ大作戦』に月9初出演及び初主演(山下智久とダブル主演)するなど、
清純派の若手スターとして輝いていた。


しかし、その後は、
同じような役柄を無難にこなすだけの女優に見え、
〈華はあるけれど、女優としてはこのまま終わってしまうかも……〉
と思った。
その長澤まさみに変化を感じたのは、2011年だった。
映画『モテキ』(2011年9月23日公開)において、清純派を脱皮し、
かつてないセクシーシーンに挑戦し、新境地を開いたのだ。


第54回ブルーリボン賞 助演女優賞、
第35回日本アカデミー賞 優秀主演女優賞、
第3回日本劇場スタッフ映画祭 優秀主演女優賞、
第11回 ニューヨーク・アジア映画祭 スター・アジア・ライジング・スター賞

などを受賞し、新たな評価を得た。
この年はさらに、
PARCO劇場において本谷有希子の作・演出による舞台「クレイジーハニー」で初舞台を踏むなど、
女優としての“覚悟”が感じられるようになった。
その後の映画においては、
私がこのブログのレビューで高く評価した、
是枝裕和監督作品『海街diary』(2015年6月13日公開)で、
第28回日刊スポーツ映画大賞 助演女優賞、
第70回毎日映画コンクール 女優助演賞、
第25回東京スポーツ映画大賞 助演女優賞、
第39回日本アカデミー賞 優秀助演女優賞
を、
黒沢清監督作品『散歩する侵略者『(2017年9月9日公開)で、
第72回毎日映画コンクール 女優主演賞、
第27回東京スポーツ映画大賞 主演女優賞、
第41回日本アカデミー賞 優秀主演女優賞

を受賞するなど、
演技力が凄まじく進歩した。


ミュージカル『キャバレー』(2017年)では歌唱力があることも知らしめ、
その福岡公演を観た私は、
……長澤まさみの生まれ持ったスターとしての輝き……
とのサブタイトルで絶賛するレビューを書いた。(コチラを参照)


2019年は、
『マスカレード・ホテル』(2019年1月18日公開)
『キングダム』(2019年4月19日公開)
『コンフィデンスマンJP -ロマンス編』(2019年5月17日公開)
に出演し、
第44回報知映画賞 主演女優賞(『マスカレード・ホテル』『コンフィデンスマンJP』)
第43回日本アカデミー賞 優秀助演女優賞(『キングダム』)
第62回ブルーリボン賞 主演女優賞(『コンフィデンスマンJP』)
などを受賞し、話題をさらった。


そして、2020年。
初の“汚れ役”に挑戦した『MOTHER マザー』(2020年7月3日公開)では、
普通なら役作りや演技をやり過ぎてしまうものを、
そういった気負いもなく、
スタンドプレイに走ることなく、
男にだらしなく、その場しのぎで生きてきたシングルマザーの秋子を、
静かに、不気味に演じていて、激しく心を動かされた。


私は、
……長澤まさみの代表作が誕生した瞬間を目撃……
とのサブタイトルを付してレビューを書いたのだが、
本作で、
第44回日本アカデミー賞 最優秀主演女優賞を受賞した他、
第33回日刊スポーツ映画大賞 主演女優賞(『MOTHER マザー』『コンフィデンスマンJP プリンセス編』)
第63回ブルーリボン賞 主演女優賞(『MOTHER マザー』『コンフィデンスマンJP プリンセス編』)
など、数々の映画賞で主演女優賞を受賞。
名実ともに日本を代表する女優になった。


このように20年近く見続けてきた女優の新作映画『シン・ウルトラマン』も、当然、
〈見たい!〉
と思った。

脚本は、庵野秀明、
監督は、樋口真嗣。


この『シン・ゴジラ』コンビが、
世界観を現代社会に置き換えて「ウルトラマン」をどのように再構築しているのか……




いや、正直、私個人としては「ウルトラマン」にそれほど関心はない。
1966年7月17日から1967年4月9日まで放送されたとき、
私は小学校の高学年になっており、
「ウルトラマン」にも怪獣にも幼稚さを感じ始めていたし、
伊東ゆかり、いしだあゆみ、中村晃子など、大人の女性の魅力に目覚めた頃でもあったので、
ウルトラマンそのものよりも、
桜井浩子(ウルトラマン)や、


ひし美ゆり子(ウルトラセブン)など、


女性隊員の方に興味を持って観ていたような気がする。(コラコラ)

……というワケで、
「ウルトラマン」よりも長澤まさみに逢いたくて、
私は映画館に駆けつけたのだった。



「禍威獣(カイジュウ)」と呼ばれる謎の巨大生物が次々と現れ、


その存在が日常になった日本。


通常兵器が通じない禍威獣に対応するため、
政府はスペシャリストを集めて「禍威獣特設対策室専従班」=通称「禍特対(カトクタイ)」を設立。


班長の田村君男(西島秀俊)、



作戦立案担当官の神永新二(斎藤工)、


非粒子物理学者の滝明久(有岡大貴)、


汎用生物学者の船縁由美(早見あかり)、


が選ばれ、日々任務にあたっていた。
そんなある時、大気圏外から銀色の巨人が突如出現。


巨人対策のため禍特対には新たに分析官の浅見弘子(長澤まさみ)が配属され、
神永とバディを組むことになる。





浅見の報告書に書かれていたのは……「ウルトラマン(仮称)、正体不明」。



現代日本を舞台に、
ウルトラマンが初めて降着した世界を描いた、
「ウルトラマン 創成期」「ウルトラマン The Beginning」とも言うべき作品であった。


まあ、コアな「ウルトラマン」ファンやマニアにとっては賛否があろうが、
私は「普通」に面白かったと思う。





「ウルトラマン」そのものに関しての解説は、
そんなコアな「ウルトラマン」ファンやマニアに任せるとして、(コラコラ)
私にとって注目すべきは、
分析官の浅見弘子を演じた長澤まさみであった。




これが実に良かった。


いや、「良かった」という表現にも、賛否がありそうで、
なかなか「良かった」と言い辛い部分もあるのだが、
それは、庵野秀明、樋口真嗣コンビが、
あまりにも昭和的に長澤まさみを描き過ぎているところにあった。


リクルートスーツ(スカート)姿の長澤まさみをローアングルから撮ることが多く、
長澤まさみの臭いを斎藤工が執拗に嗅ぐという変態的ギャグシーンや、
長澤まさみがお尻をパンと叩いて自分を鼓舞するところなど、
セクハラと言われても言い訳できないようなシーン満載なのである。
庵野秀明、樋口真嗣コンビは、これを確信犯的にやっており、
私など大いに笑わされたのであるが、
これらのシーンを不愉快に思う人々も少なからずいることは理解できる。
まあ、これらのシーンは、私のような下品な人間向けに撮られたシーンであると思うし、
庵野秀明、樋口真嗣両人に代ってお許しを乞う次第。


長澤まさみの登場シーンで特に面白かったのは、長澤まさみが巨大化するシーン。
巨大化した長澤まさみが無表情でビル街を歩くのであるが、
ここでもローアングルの撮影が効いていて(小さな人間は巨人を見上げるしかないのでローアングルは当然と言えば当然なのでセクハラとは言わないで~)、大きなスクリーンで、まさに長澤まさみを見上げることを体感できて、長澤まさみファンの私は幸せであった。


この女性隊員が巨大化するのは、前例があって、
それは「ウルトラマン」でフジ隊員を演じた桜井浩子。
第33話「禁じられた言葉」で、
「悪質宇宙人メフィラス星人」に操られ、「巨大フジ隊員」となっている。


その「巨大フジ隊員」は怪獣図鑑にも載っており、
きっちり怪獣の1体として扱われている。(笑)


2016年のインタビューで、桜井浩子は、

あの巨大はね、(「進撃の巨人」シリーズ監督の)樋口真嗣が好きなのよ。ああいう人が好きって言うことは、感性の良さというか、当時作った人にもそういう感性があったということでしょうね。
ただ私自身は迷惑ですよね。だってひどいんですよ。怪獣図鑑にも載るし。

と語っていたが、


メフィラス星人に操られているからか、視線が定まらない表情で、
ビルのミニチュアを手で破壊するシーンなどには、相当の苦労があったそうだ。




長澤まさみも、無表情でビルを壊したりするので、
こういうところにもフジ隊員(桜井浩子)へのオマージュが感じられ、嬉しかった。
長澤まさみ演ずる分析官・浅見弘子もきっと怪獣図鑑に載ることであろう。(笑)



顔の超アップ、
ローアングルからの撮影、
お尻叩き、
巨人化など、
長澤まさみを様々な角度から撮り、






いろんな魅力を引きだしている映画『シン・ウルトラマン』。
長澤まさみファンにはたまらない空想(いや妄想?)特撮映画であった。



本作『シン・ウルトラマン』には、もう一人、魅力ある女優が出演していて、
それは、汎用生物学者の船縁由美を演じた早見あかり。




早見あかりとは、映画『百瀬、こっちを向いて。』で出逢った。
早見あかりの初主演作であったのだが、
そのレビューで、私は次のように記している。

主演の早見あかり(1995年3月17日生まれ)は、
アイドルグループ・ももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)の元メンバー。
ももいろクローバー所属時はサブリーダーを務めており、
イメージカラーはブルー、
キャッチフレーズは「ももクロのクールビューティー」だった。(写真・後列中央)


2011年4月にグループを卒業してからは、
女優やタレントとして活動している。
過去、映画には、
『飛べ!コバト』(2010年)、
『市民ポリス69』(2011年)、
『Cheerfu11y』(2011年)
に出演しているが、『百瀬、こっちを向いて。』が初主演作。
一見、ハーフに見えるが、ハーフではないそうだ。
映画を見た感想はいうと、
この早見あかりが躍動している作品だなと思った。
誤解を恐れずに言えば、「早見あかりがすべて」の映画であった。



耶雲哉治監督は、早見あかりを実に魅力的に撮っている。
監督自身も本作が初の長編映画監督作なのであるが、
ROBOTに所属し、TVCMなどで培った演出力で、
早見あかりの魅力を実に巧く引き出している。
特に光の使い方が上手いと思った。



とにかく映像が美しいのだ。


ワンシーン、ワンシーンが丁寧に撮られている。


それが、「愛すべき佳作」になっている要因だと思われる。(全文はコチラから)


この『百瀬、こっちを向いて。』は初恋の思い出のように私の心に残っているのだが、
本作『シン・ウルトラマン』では、
文部科学省より出向した専従班の汎用生物学者という役柄で、


見た目もセリフも普通なのに、ちょっと変わったクセのある学者を演じており、
新しい早見あかりを発見できたようで楽しかった。



「ウルトラマン」を知らない人も、知ってはいるものの関心がない人も、
十分に楽しめる内容であったし、
女優至上主義の私にとっては、
長澤まさみと早見あかりを大きなスクリーンで見ることができただけでも至福であった。


また機会があれば見たいと思っている。

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