一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『百瀬、こっちを向いて。』 ……元ももクロ・早見あかりの初主演作……

2014年05月15日 | 映画
映画を制作するとなると、膨大な時間が必要になる。
立案からとなると、
数年、あるいは数十年を要する作品もある。
それほど手のかかる映画であるが、
世界中で制作されているので、
一般の人から見れば、
「なんとまあ次から次へと制作されることよ」
となる。
ちなみに、最新の「世界の映画制作本数ランキング」では、
1 インド 1288
2 アメリカ合衆国 694
3 中国 475
4 日本 448
5 ロシア 253
となっており、日本は第4位。
邦画だけでも年間400本以上の作品が制作されおり、
毎日一作ずつ見ても、すべてを見ることはできないのだ。
ましてや私のような仕事に追われている人間にとっては、
年間数十本の映画を見るのがやっとだ。

私の場合、
見る映画は、いろんな媒体からの情報で判断する。
「面白そうだな」
と思えば、
他県でしか上映していないあまり知られていない映画でも見に行くことがある。
今回紹介する映画『百瀬、こっちを向いて。』も、
そんな作品であった。

映画『百瀬、こっちを向いて。』を見てみようと思ったキッカケは、
ある雑誌に載っていた耶雲哉治監督のインタビュー記事だった。
そのインタビューで、耶雲哉治監督は、
デビュー作となる自作を熱く語っていた。
その記事で、私は映画『百瀬、こっちを向いて。』の存在を知った。
公式サイトを見てみると、
主役の百瀬陽を演ずる早見あかりの横顔の写真が目に飛び込んできた。


すぐさま始まった予告編での早見あかりに魅せられた。


この時点で、「見てみたい」と思った。
公式サイトにあった「劇場情報」をクリックしてみると、
九州では、なんとまあ、福岡県でしか上映しないとのこと。
で、ユナイテッド・シネマキャナルシティ13まで見に行ってきた。(笑)


『初恋』というタイトルの小説で文学新人賞を受賞し、
母校から講演の依頼がきた相原ノボル(向井理)は、
久しぶりに故郷へと戻ってきた。


変わらぬ風景を眺めるノボルの心に、
高校時代の切ない思い出が蘇る。
15年前、高校に入学したての頃、ノボルは暗くてさえない生徒だった。
女子とは一生縁がないものだと決めつけてもいた。


ある日、幼い頃から知っている先輩の宮崎瞬(工藤阿須加)に呼び出され、
隣のクラスの百瀬陽(早見あかり)を紹介される。


瞬には本命の彼女・神林徹子(石橋杏奈)がいるのだが、
百瀬との交際の噂が一部で立ち、それが徹子の耳にも入っていた。
そこで瞬と百瀬は、噂を消すために、
ノボルと百瀬が付き合っているふりをしようと考えついたのだった。
幼馴染で、しかも命の恩人でもある瞬の頼み事であるため、
ノボルはこれを引き受ける。


恋をしたことのないノボルと、
想いを寄せる瞬のために自身が傷つくことを厭わない百瀬。
「嘘」で始まった「恋」であったが……


原作は、中田永一(人気作家の乙一の別名義)の70頁ほどの短編小説である。
以前読んだことがあるが、
映画の方は原作にあまり忠実とはいえず、
変更している箇所がかなりあった。
だが、それがかえって作品の質を高めていたように思った。


主演の早見あかり(1995年3月17日生まれ)は、
アイドルグループ・ももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)の元メンバー。
ももいろクローバー所属時はサブリーダーを務めており、
イメージカラーはブルー、
キャッチフレーズは「ももクロのクールビューティー」だった。
2011年4月にグループを卒業してからは、
女優やタレントとして活動している。
過去、映画には、
『飛べ!コバト』(2010年)、
『市民ポリス69』(2011年)、
『Cheerfu11y』(2011年)
に出演しているが、『百瀬、こっちを向いて。』が初主演作。
一見、ハーフに見えるが、ハーフではないそうだ。
映画を見た感想はいうと、
この早見あかりが躍動している作品だなと思った。
誤解を恐れずに言えば、「早見あかりがすべて」の映画であった。


耶雲哉治監督は、早見あかりを実に魅力的に撮っている。
監督自身も本作が初の長編映画監督作なのであるが、
ROBOTに所属し、TVCMなどで培った演出力で、
早見あかりの魅力を実に巧く引き出している。
特に光の使い方が上手いと思った。


とにかく映像が美しいのだ。


ワンシーン、ワンシーンが丁寧に撮られている。


それが、「愛すべき佳作」になっている要因だと思われる。


高校生のノボルを竹内太郎が、大人になってからのノボルを向井理が、
高校生の徹子を石橋杏奈が、大人になってからの徹子を中村優子が演じているのだが、
いずれも違和感がなく、キャスティングの良さも感じた。
とくに、石橋杏奈と中村優子の演技が素晴らしく、
早見あかりと共に、強く印象に残った。


中村優子の出演シーンは多く、演技も素晴らしかったのに、
なぜ公式サイトの「出演者」の欄に写真もプロフィールもないのだろう。


私にとって、高校時代はもう40年以上昔のことであるが、
映画『百瀬、こっちを向いて。』は、一瞬にして私を過去へと運び去ってくれた。
映画を見る楽しさは、そんなところにもある。
(上映館は少ないけれど)ぜひ……

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