道しるべの向こう

ありふれた人生 
もう何も考えまい 
君が欲しかったものも 
僕が欲しかったものも 
生きていくことの愚かささえも…

エピソード③…17才の夏

2019-06-19 20:42:00 | 想い出
 
 
やがて訪れた高2の夏休み
 
17才…
 
(そんな歌が流行ってたっけ?)
(とか言うと年齢バレちゃう?)
 
 
いま思えば
その頃が一番楽しい時期だったのだろうか?
受験の心配もまだ本格的ではなく…
 
そうかもしれない
 
そうなのだろう
いまとなっては…
 
 
 
 
2年生になってから
僕は勉強そっちのけで
流行りのフォークギターを弾くようになっていた
自作の歌も作ったりして…
 
髪も長く伸ばしはじめ
そのせいか幾度か女の子に間違えられることも…
 
(こんなに背の高い女の子は滅多にいないはずなのに…)
(知らないオジさんの痴漢にも遭遇してしまうことに…)
 
 
彼女の方は
3年生が受験のため部活を抜けたため
部長になって部員たちをまとめるなど
夏季合宿とかもあったりして
バレーボールに何かと忙しそうで…
 
(強くもない進学校のバレーボール部…)
 
 
そんな中で初めての
僕たちの初デート…
 
初デート…?
と言えるのだろうか?
 
 
 
それは
ただひたすら歩くだけのつまらない?
そして長い1日になることに…
 
いや
つまらないことはなかった!
 
何の目的もなく
ただ一緒に居たいからというだけで
彼女と僕は逢っていた?
としても…
 
(遠い昔の高2だぜ…?!)
(純情すぎて涙が出るよ…)
 
 
そして
僕たちの初デートは
お昼過ぎから夕方まで
ずっと歩きっぱなしの1日になっていた
 
何時間歩いただろう?
何キロ歩いただろう?
 
街中も
海も…
 
歩きながら
汗が止まらなかった
 
暑いだけじゃなく
いろんな意味で…
 
 
 
それでも僕は幸せだった
彼女が僕の隣を歩くだけで…
 
二人が並んで歩く姿
誰が見ても初々しいカップルの影
 
に違いなかった
 
 
でも
彼女と何を話したのか
何を考えて長い間歩いていたのか…
 
時おり話したり
ずっと黙ったり
しながら…
 
 
 
日焼けした浅黒い顔の彼女が被った
リボンのついた麦わら帽子
その下からのぞく
くったくない彼女の笑顔
 
そして
自転車を押しながら
黙って歩く僕の肩にかかる夏の陽射し
 
そんな幸せが
永遠に続くように思われた
 
とある夏の日…
 
 
僕たちの初デートは
そんな風にして終わった
 
駅で見送った彼女の笑顔
手も握れなかったけど…
 
何か
気の利いた何かを
すれば良かったのだろうか?
 
そんなことを思いつつ
彼女の乗った電車を僕は見送っていた
見えなくなってもずっと…
 
見送りながら
自分でもどうしようもない想いに
心を震わせていた
 
夏休みが終わってしまう…
 
 
 
 
そんな
17才の夏…
 
だった
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2学期が始まって
このまま幸せな日々が続くと思っていたとき
思いもかけない不意の嵐が吹き始めることに…
 
すでにこの頃から
僕は多情というか
いまのエロジジイの片鱗が芽生えはじめていたのかも…
 
 
 
だからこそ…
 
彼女の
浅黒く灼けた笑顔と麦わら帽子が…
 
いまとなっては
かけがえのないほど…