道しるべの向こう

ありふれた人生 
もう何も考えまい 
君が欲しかったものも 
僕が欲しかったものも 
生きていくことの愚かささえも…

エピソード①…はじまり

2019-06-16 12:36:00 | 想い出
【エピソード①…はじまり】
 
 
 
彼女は
僕を狙っていた
 
僕を狙いすましていた
それは僕にもわかった
 
サーブを打つ前
僕の位置を確認するように見据え
お互いにシッカリと目が合っていた
 
そして
難しいサーブが僕をめがけてきた
 
素人が取れないような…
ゆらゆら曲がるような軌跡の…
 
ボールは
レシーブしようと構えた僕の腕の片隅に当たると
大きく逸れてコートの外へ…
 
悔しかった…
 
恥ずかしかった…
 
まともにレシーブできなかったことが
ただひたすら…
 
 
そのシーンは何度も繰り返された
彼女のサーブ順が回って来るたび
再生ビデオのように…
 
(なんでオレばっかり…)
 
それにしても
いくらバレーボール部員とはいえ
たかが同い年の女子の打つサーブ
一度も返すことができないなんて…
 
自慢するほどじゃないけど
僕も運動神経は悪くはなかったはず
なのに…
 
 
 
 
高校に入学してから
いつの間にか
ずっと気にし始めていた彼女
 
それほど美人じゃなかったけど
惹きつける何かがあった
 
僕以外の男子生徒にも
概ね人気があったようで
可愛かったということか?
 
たしかに…
 
成績は良くも悪くもなかったけど
運動神経が良さそうで
実際に足が速く
体育祭のリレーの時には
他選手を追い抜くスピードに驚かされた
 
(陸上部でもないバレーボール部なのに…)
 
 
 
 
そんな彼女から放たれた難しいサーブ
何度も受けそびれたけれど
あの時に上手くレシーブできなかったのは
彼女との定められた運命を
暗示していたのかもしれない
 
そう…
そんな運命だったのだろう…
 
 
 
 
 
高1の終わりに近い
3学期のある日の出来事
 
それまでにないほど強い印象で
心の中に残ることとなった
 
どうして
彼女は僕ばかりを狙って
サーブを打ってきたのだろう
 
 
 
 
 
 
そして高2になる前の春休み
気になっていた彼女からの手紙が家に届いた
 
小学校を卒業したばかりの妹が
オマセにもラブレターが来たよとハシャギながら
彼女からの手紙を差し出した
 
 
その時ばかりは
偶然っていうか
神様っているんだなぁと心から思った
 
僕の方こそ
彼女に手紙を書こうかと迷っていたから…
 
 
 
 
 
*** to be continued ***
 
 
 
 
 
ケータイやスマホもなければ
気軽に告白する慣習など勿論…
 
どうしようもない切ない想い
何度も書き直し
震えながら綴った宛先
 
まだ彼女の手元にあるのだろうか
 
僕の手元に彼女の手紙は
ただの1通も残ってない
 
それが良かったのか悪かったのか
僕にはわからないけど…