Takahiko Shirai Blog

記録「白井喬彦」

小泉首相の靖国参拝発言

2005-05-24 20:50:48 | 国際
呉儀副首相を訪日途中で帰国させるというまでに中国政府を怒らせたのは、与党の武部勤、冬柴鉄三両幹事長と中国共産党・王家瑞対外連絡部長との会談で、武部氏と王部長が「内政干渉」という言葉を巡ってやり合ったことが原因と見る向きもあるようだ。

武部幹事長は帰国後、「私は中国共産党の王家瑞対外連絡部長との会談で、靖国神社参拝で「世論調査などに見られる国民の考え方に相互内政不干渉というものがある」という話はしたが、私が内政干渉だと申し上げたことはない」と述べ、自分の発言が呉副首相帰国の原因となった説を否定した。

私も武部発言に原因があったとは、俄かには信ずることができない。そういう衝突があったのは確かだろうが、もともとの原因は、2005年5月16日、衆議院予算委員会で小泉首相が仙石由人委員の質問に答えた「靖国発言」であることは間違いないところだ。中国政府と中国共産党は、今回の「小泉発言」に反撃を加える機会を、5月16日からの一週間、ずっと探り続けてきたのだろう。

中国政府や中国共産党の意志がそれほど堅いものなら、呉儀副首相が小泉首相と会見したとき、彼女は顔を合せている小泉首相に対し、苦情の言葉をぶつけなければならなかっただろう。けれども、直接顔を合せている相手に、その感情を害するほど喧嘩腰の言葉をぶつけるのは、外交関係を損なう重大な非礼行為となる。そこで、中国政府は苦肉の策として、呉儀を帰国させたのではなかろうか。小泉首相との会見を土壇場でキャンセルするのも非礼な行為ではあるが、中国が外交上および対日経済関係上蒙るダメージは遥かに少ないものとなる。

そこで、5月16日の衆院予算委員会における小泉首相の「靖国発言」のどの箇所にいかなる理由で彼らが怒りを抱いたのか、私たち日本人としても冷静な態度で検証しなければならないわけだ。

だが、私たち日本人としては、小泉首相のこの国会発言を隅から隅まで読んでみても、いままで小泉首相が述べていた以上のことと思われる箇所は見当たらないのである。目を凝らして何度読んでもそのことは確かだろうと思うしかない。そればかりか、論旨はいままで通りまことに単純明解であって、彼の過去の発言とのいささかのぶれがあるとも感じられない。

小泉首相の発言の中で唯一思い当る箇所は、「(質問者の仙谷由人氏は)一部の外国の言い分を真に受けて、外国(中国政府)の言い分が正しいといって、日本政府の、私の判断を批判するというのは、(質問者の仙谷由人氏は野党の民主党所属で)政党が違いますから歴史的な認識も違うかもしれません、(質問者の仙石由人氏がどういう歴史認識を持とうと)御自由でありますが、私は、これ(首相の靖国参拝、あるいは靖国参拝を続けるという自分自身の歴史認識)は何ら問題があるとは思っておりません」と述べたくだりである。

この箇所は、質問者の仙石氏の追求そのものが、理屈に合わないと指摘しているだけである。つまり、いわば質問者をからかっているのだ。だが、仙石氏の追求を理屈に合わぬと指摘することを通して、間接的にではあるけれども、我国に対する中国側のやり口が内政干渉に当ることを色濃くほのめかした発言となっている。小泉首相の今回の「靖国発言」の中で中国側を刺激したのは、この「内政干渉」のくだりだったのではあるまいか。

国会で小泉首相がこのような内政干渉発言をしたと伝えられた中国政府は、この小泉発言に対しどう反撃しようかと内々議論を進めていただろう。ちょうどその矢先に、そんな中国側の内部事情をつゆ知らずのまま訪中してきた武部自民党幹事長が、王家瑞対外連絡部長に向って「日本では世論調査でも中国側の内政干渉と感じているという比率が高まっていますよ」といった。だから、王家瑞としては面子上、たとえ表敬訪問を受けていた場とはいえ儀礼的配慮を捨てて、武部発言に噛みつかざるを得なかったのではなかろうか。

あるいは、次のように推論することもできよう。もちろん、この推論が正しいかどうかはわからない。

中国側としては、こういうところまで踏み込んで小泉発言に文句をつけると、逆に日本側から「内政干渉」といわれはしないかとひやひやしていたのではあるまいか。そこへ、たまたま武部幹事長が乗り込んでいって、「日本の国民の多くは中国は内政干渉をしていると感じているようですよ」と一言ぶつけた。つまり、彼は中国側が気にしていた「事実」をずばりと衝いたわけだ。ずばりと衝いたことは衝いたが、それは中国側の迷いを断ち切って実行動へと踏み出させる契機となった。

こんな単純なものではないかもしれない。だが、小泉首相の国会発言から呉儀副首相帰国まで、ちょうど一週間という期間があった。その間、中国政府や中国共産党の動向はあまり伝えられてはいないが、反撃の契機を慎重に探っていたことは間違いない事実だろう。


第162通常国会衆議院予算委員会会議録
(全文)


衆議院会議録
第162通常国会衆議院予算委員会 (2005年5月16日午前9時開議)

小泉首相、仙谷由人氏の質問に答えて

  1.  国民の中でも、(靖国参拝は)すべきである、しない方がいい、した方がいいといろいろな議論があります。しかも、中国が、胡錦濤国家主席との間でも、あるいは温家宝首相との会談でも、靖国の問題が出ました。靖国参拝はすべきでないというお話もありました。しかし、今のような理由(注; 小泉首相自身の言葉による理由説明は、「戦没者の犠牲の上に今日の日本の平和と繁栄がある。その戦没者に対して心からの追悼の誠を捧げるのがなぜいけないのか」)を私は申し上げました。現に東条英機氏のA級戦犯の問題がたびたび国会の場でも論ぜられますが、そもそも、罪を憎んで人を憎まずというのは中国の孔子の言葉なんです。

     私は、日本の感情として、一個人のために靖国を参拝しているのではありません。心ならずも戦場に赴いて命を犠牲にした方々、こういう犠牲を今日の平和な時代にあっても決して忘れてはならないんだ、そういう尊い犠牲の上に日本の今日があるんだということは、我々常に考えておくべきではないか。現在の日本というのは、現在生きている人だけで成り立っているものではないんだ、過去のそういう積み重ねによって、反省の上から今日があるわけでありますので、戦没者全般に対しまして敬意と感謝の誠をささげるのが、これはけしからぬというのはいまだに理由がわかりません。

     いつ行くか、適切に判断いたします。

  2.  私が靖国神社に参拝することと、軍国主義を美化しているととられるのは、心外であります。なぜ靖国神社を参拝することが軍国主義を美化することにつながるんでしょうか。全く逆であります。

     日本は、戦争に突入した経緯を踏まえますと、国際社会から孤立して米英との戦争に突入した。国連も脱退した。二度と国際社会から孤立してはいけない。そして、軍国主義になってはいけない。だから、戦後、戦争中の敵国であった国とも友好関係を結んできた。そして、国際協調というものを実践によって示してきた。

     軍国主義、軍国主義と言いますが、一体日本のどこが軍国主義なんですか。平和国家として、国際社会の平和構築に日本なりの努力をしてきた。この周辺において、戦争にも巻き込まれず、戦争にも行かずに、一人も戦争によって死者を出していない。平和国家として多くの国から高い評価を受けている。そういう中にあって、なぜ私の靖国参拝が軍国主義につながるんですか。

     よその国が言うから、けしからぬ、よその国の言うことに従いなさい。それは、個人的な信条と、両国間、国際間の友好関係、これはやはり内政の問題と外交関係の問題におきましてはよくわきまえなきゃいけませんが、私は、こういうごく自然の、過去の戦没者を追悼する気持ちと、二度と戦争を起こしてはいけないという政治家としての決意、これを六十年間、みんな日本国民は反省しながら実践してきたじゃないですか。それを、(質問者の仙谷由人氏は)一部の外国の言い分を真に受けて、外国の言い分が正しいといって、日本政府の、私の判断を批判するというのは、(質問者の仙谷由人氏は)政党が違いますから歴史的な認識も違うかもしれません、御自由でありますが、私は、これ(靖国参拝)は何ら問題があるとは思っておりません。

毎日新聞
中国: 呉副首相の緊急帰国 靖国問題で激論、一因?--武部・王会談で
2005年5月24日 東京夕刊

 政府内では24日、中国の呉儀副首相が小泉純一郎首相との会談を取りやめて帰国した理由をめぐり波紋が広がっている。中国を訪問した自民党の武部勤、公明党の冬柴鉄三両幹事長が21日に北京で中国共産党の王家瑞対外連絡部長と会談した際、小泉首相の靖国神社参拝問題について激論を戦わせたことが理由との見方が浮上している。

 政府筋によると、21日の会談で武部氏は、靖国問題について中国側が持ち出すのは「内政干渉だ」と発言。これに王部長が激怒して撤回を要求し、武部氏は「撤回します」と答えたという。

 武部氏は24日の会見で「(会談では)『国民の考え方の中に相互内政不干渉がある』という話はしたが、私(自身)が内政干渉だと申し上げたことはない」と述べ、自らの発言が帰国の理由との見方を否定した。


讀賣新聞
中国副首相帰国、武部幹事長が自身の発言原因説を否定
2005年5月24日13時7分

 自民党の武部幹事長は24日午前の記者会見で、中国での武部氏らの発言が呉儀副首相の帰国につながったとの見方について、「靖国問題については中国側が示した意見については率直に小泉首相に伝えると言ったので、それで日中関係が後退するとか、呉儀副首相が帰ったとは全く考えられない」と述べた。

 また、「私は中国共産党の王家瑞対外連絡部長との会談で、靖国神社参拝で『世論調査などに見られる国民の考え方に相互内政不干渉というものがある』という話はしたが、私が内政干渉だと申し上げたことはない」と指摘した。

来日中の呉儀副首相、緊急帰国(2)

2005-05-24 18:27:53 | 国際
呉儀副首相が帰国することは、帰国当日の5月23日朝になって日本政府に伝えられたらしい。帰国の理由は、細田官房長官の説明では、「国内の緊急公務が生じたため」ということであった。

ところが、翌5月24日午後の中国外務省定例記者会見で孔泉報道局長は、「日本の指導者の最近の言論によって会談に必要な雰囲気がなくなったため」として、前日掲げていた理由をあっさり撤回した。ある記者が、「国内の緊急公務が生じたためだったのでは?」と疑問を呈すると、孔局長は、「私は「緊急の公務」という言い方はしていない」とうそぶいた。

今日掲げた「帰国理由」は中国国内向けであろうが、前日掲げた「帰国理由」は日本向けだったのだろう。日本向けに掲げた「帰国理由」の裏には、日本の言論界と経済界に向けた中国政府のメッセージが籠められている。隠されたそのメッセージというのは、「私たちは日本政府を見限りましたけれど、あなた方言論界と経済界のことは忘れてはいませんよ」という内容だったのではないか。

日本の言論界と経済界はまだ自分たち中国の味方だと中国政府は思っているようだ。それはそうだろう。日本の言論界の多くは長年にわたり歯の浮くような中国礼賛・中国経済礼賛を続けてきた。日本の経済界もまた、中国特需で一段の潤いを見せている。低賃金を武器にした中国の競争力でやられてしまった企業も多いのだが、中国ビジネスに成功して社業を躍進させた日本企業も数多く見受けられる。だからこそ、呉儀副首相は小泉首相との会見はすっぽかしても、日本経団連との昼食会はすっぽかさずに出席したのだろう。もともと呉儀副首相の来日目的は経済的なものだった。

それにしても、中国政府は日本国民全般をあまりにも甘く見過ぎているのではなかろうか。こういう強引かつ自己本位な外交を続けていけば、やがて日本の世論は急速に中国から離れていくだろう。日本国民の間に次第に反中国感情が醸成されていき、それが日本社会全体を覆う日がこないとも限らない。

その一方で、小泉首相の靖国参拝を非難する声は、これからは確実に減っていくのではないだろうか。その反対に、小林陽一郎(Xerox)や北城恪太郎(IBM)が発言してきた、「中国ビジネスのため、小泉首相は靖国参拝をやめるべきだ。小泉首相はなんて外交音痴なんだ!」などという声は、これからはあまり通じなくなっていくのではなかろうか。

小林陽一郎や北城恪太郎に代表される一部財界人たちは、これまでもアメリカの大企業の中国ビジネスをあまりにも代弁し過ぎている感があった。彼らはれっきとした日本の財界人ではあるが、あまりにも特殊な境遇に育った財界人だったようだ。靖国神社へのこだわりがあれほどまでに希薄なのは、彼らの持つ感情がほとんどアメリカ人の感情そのものだったからだろう。

特殊境遇で育った小林陽一郎や北城恪太郎などとは異なる、純粋な日本育ちの、ごく普通の企業経営者たちは、今回の中国政府の独裁国家的外交姿勢を目の当たりにして、「小泉首相よ! 我々の中国ビジネスの安泰のため、中国政府を怒らせることだけはやめてくれ」とか、「中国で稼いで日本経済に尽しているのは我々なんだ。その我々のことをもう少し考えてくれてもいいじゃないか」などといかにも「ビジネスマン的口利き」をするのは、ちょっと憚らざるを得なくなったのではなかろうか。

今回、中国政府がここまで強引かつ自己本位な外交を見せつけた後は、中国ビジネスを擁護するこういう「ビジネスマン的口利き」は、「それでは日本という国家がなくなっても、対中国ビジネスが残ればよいというのか!」などという誤解を受けかねない。日本社会全般の社会意識がそういう段階にまで立ち至ったかもしれないということだ。

中国政府は日本のナショナリズムの導火線に火をつけたのではなかろうか? 企業経営者はナショナリズムからの攻撃には極めて弱い。日本の対中ビジネスには、今後、何らかの変調の兆しがみられるのではなかろうか。


ロイター
小泉首相と中国副首相の会談、中国側の「緊急公務」により中止
2005年 05月 23日 11:46 JST

 [東京 23日 ロイター] きょう午後に予定されていた小泉首相と呉儀・中国副首相の会談は、中国側が「緊急公務」を理由に中止することが決まった。細田官房長官は、午前の記者会見で、具体的な理由については承知していないとしている。

 細田官房長官は、「けさ、中国側から呉副首相が本国からの指示により、国内の緊急公務が生じたので、(きょう(注;5月23日))午後帰国せざるをえず、小泉首相との会談を中止せざるをえないと通告があった」と説明した。同長官は、公務の具体的な内容について、「承知していない」と答えた。

 また、小泉首相が先に、国会審議の中で靖国参拝に関し、「いつ行くかは適切に判断する」と参拝を示唆したが、これが影響しているかどうかについて、「そのようには考えていない」と否定した。

 今回の呉副首相の来日により、中国人旅行者の観光ビザに関する協議も予定されていたが、これに関して、細田官房長官は、特に影響はしないとしている。同長官は、「国民レベルの交流が、相互理解に役立つ」と語った。

 自民党の武部幹事長と公明党の冬柴幹事長は22日、中国を訪問し、北京で胡錦濤国家主席らと会談。きょう午後、両幹事長が小泉首相に帰国報告する予定。


朝日新聞
呉副首相、経団連首脳には「友好」 昼食会であいさつ
2005年05月23日13時27分

 来日中の中国の呉儀副首相は23日昼、日本経団連主催の昼食会に出席し、冒頭のあいさつで「中国政府と人民は中日関係を重視し、日本との平和共存、子々孫々の友好、互恵協力、共同発展を願っている」と強調した。あいさつでは小泉首相らとの会談中止については言及しなかった。

 呉副首相は「日本は中国の隣人として強固な経済的基盤を有している。中国のように日々拡大する市場で活躍する余地があると信じている」と語り、経済関係の強化に期待感を表明した。一方で「今日の中日関係は厳しいチャレンジに直面しているが、改善と発展のチャンスにも直面している」と述べ、日中関係が不健全な状態にあるとの認識も示した。

 昼食会には奥田碩経団連会長(トヨタ自動車会長)のほか経団連副会長などを務める主要企業のトップが十数人出席した。


共同通信
歴史問題が理由と表明 中国外務省、会談中止で
2005年5月24日 17時:21分

 【北京24日共同】 中国外務省の孔泉報道局長は24日の会見で、呉儀副首相が小泉純一郎首相との会談を中止して帰国したことについて「日本の指導者の最近の言論によって、会談に必要な雰囲気がなくなったためだ」と説明、中止の理由が首相の靖国神社参拝を含む歴史問題であることを初めて明確にした。

 中国側はこれまで「緊急の公務」が帰国の理由と説明していた。孔局長はこれについても「私は『緊急の公務』という言い方はしていない」と事実上撤回。自らの立場は「23日夜の発言で示した」とし、「日本の指導者が靖国参拝問題で日中関係改善のためにならない発言をしたことは非常に不満」とした同日の発言が政府の公式見解であることを強調した。


朝日新聞
中国副首相帰国、「靖国が原因」 緊急公務存在せず
2005年05月24日22時12分

 中国外務省の孔泉(コン・チュワン)報道局長は24日の記者会見で、呉儀(ウー・イー)副首相が小泉首相との会談を取りやめて帰国した理由について、「日本の首相、指導者が呉副首相の訪日期間中、連続して中日関係の発展に不利な発言をしたことが、会談に必要な雰囲気と条件をなくした」と述べ、小泉首相の靖国参拝をめぐる発言などが原因となったことを認めた。「緊急の公務のため」としていた当初の説明については事実上撤回した。

 孔局長は23日夜、国営新華社通信を通じて「呉副首相の訪日期間中、日本の指導者が、靖国神社の参拝について連続して中日関係改善に不利となる発言をしたことは大変不満だ」との談話を発表した。

 24日の会見ではこの談話が中国政府の正式な態度表明だと説明。23日午後に出した談話では「緊急の公務」を理由にしていたが、会見では「私は自分の口から『緊急の公務』と言ったことはない」と述べ、「緊急の公務」が存在しなかったことを認めた。

 孔局長は、靖国問題をめぐって「日本の指導者は抗日戦争勝利60周年という状況で、歴史を反省するという約束を破った。A級戦犯がまつられた靖国神社について再三誤った発言をすることは、大変な被害を受けた多くの人々の感情を全く考慮していない」と批判した。ただ、「訪日期間中の日本の指導者の発言」が具体的に何を指すのかは説明しなかった。

 自民党の武部勤幹事長が中国共産党対外連絡部の王家瑞(ワン・チアロイ)部長との21日の会談で、靖国参拝に対する中国側の批判を「内政干渉だという人もいる」と指摘したことについては、会談の具体的内容については触れなかったものの、「日本は戦後、平和の道を歩んできたと何度も言ってきたのに、今になってこのような発言が出るとは大変意外だ」「非常な憤慨を感じる」などと強い口調で非難した。

 会談取りやめについて日本政府内から「おわびがない」などと批判が出ていることについては、「靖国神社について誤った発言をした人は、心の中で少しでもすまないと思っているのか」と応じた。

「コーラン冒涜」誤報事件の結末

2005-05-24 16:29:21 | 国際
ニューズウィーク誌が犯した誤報「グアンタナモ米軍基地におけるコーラン冒涜疑惑」は、アフガニスタンをはじめ各地で暴動が起こるなど、大きな事件を誘発したが、リチャード・スミス会長兼最高編集責任者(Richard M. Smith、Chairman and Editor-in-Chief)の名前で「読者への手紙」(A Letter to Our Readers)を出したことで決着ということになりそうだ。

私のブログではいままで何のコメントもしてこなかったが、そもそもどうしてこういう誤報が報道されることになったのか、強い関心を抱いてきたことは事実である。そういう意味で、リチャード・スミスの「読者への手紙」原文を後日のための資料としてコピーしておくことにしたい。


朝日新聞
匿名情報源を見直し、編集長許可制に ニューズウィーク
2005年05月23日12時01分

 米ニューズウィーク誌は米軍によるコーラン冒涜疑惑を報じた問題で22日、最新号(電子版)でリチャード・スミス会長兼最高編集責任者の「読者への手紙」を掲載し、再発防止策を明らかにした。匿名の情報源を記事に使用したことが問題になっていたが、こういう手法は、編集長か編集者、特に任命する編集者の承認がなければ許可しない、とした。

 問題の記事は9日号に掲載され、キューバのグアンタナモ米軍基地で、収容者を動揺させる狙いから、米兵がイスラム教の聖典コーランをトイレに流したとの内容。情報源は「米政府高官」の匿名だった。反米デモでアフガニスタンで多数の死傷者が出た後、同誌は16日に記事に間違いがあった、として撤回した。

 「読者への手紙」のなかで同誌は、情報収集の過程全体を見直すことを表明。匿名の情報源を使う場合は;
  1. いかに情報を知りうる立場にあるか
  2. なぜ名前を明らかにできないのか
  3. 情報を提供する動機
などを「できるだけ読者に説明する」とした。

 記事のテーマが「慎重な取り扱いを要する問題」の場合、匿名情報が不可欠ならば、その取材元とは別の独立した情報源に確認を求めることを徹底する。取材先が高い地位の人物であっても、記者の確認にコメントしないことを「無言の了解」とは認めない。問題の記事に用いた「複数の筋によると」という表現も使わない、などと約束した。

 「正確さをすべての価値の上に置く」としており、事実を確認するまで記事の発信を可能な限りとどめる。競争に不利になっても、「仕方がない」とした。匿名使用は「これまで重要な記事を打ち出すきっかけになった」としながら、乱用は読者の不信と記者の不注意につながる、と位置づけた。

 同誌に寄せられた2700の電子メールの大半は批判的なものだった。問題になった記事では、コーランをトイレに流した事実が米軍報告書に含まれているという情報の確認を、2人の国防総省当局者にも求めた。1人にはコメントを拒否され、1人はコーランの部分について何も指摘しなかったため、同誌は確認されたと受け取った。


NEWSWEEK
A Letter to Our Readers
Newsweek

May 30 issue - In the week since our Periscope item about alleged abuse of the Qur'an at Guantanamo Bay became a heated topic of national conversation, it will come as no surprise to you that we have been engaged in a great deal of soul-searching and reflection. Since cutting short a trip to Asia on the weekend we published our account of how we reported the story, I have had long talks with our Editor Mark Whitaker, Managing Editor Jon Meacham and other key staff members, and I wanted to share my thoughts with you and to affirm—and reaffirm—some important principles that will guide our news gathering in the future.

As most of you know, we have unequivocally retracted our story. In the light of the Pentagon's denials and our source's changing position on the allegation, the only responsible course was to say that we no longer stand by our story.

We have also offered a sincere apology to our readers and especially to anyone affected by violence that may have been related to what we published. To the extent that our story played a role in contributing to such violence, we are deeply sorry.

Let me assure both our readers and our staffers that NEWSWEEK remains every bit as committed to honest, independent and accurate reporting as we always have been. In this case, however, we got an important story wrong, and honor requires us to admit our mistake and redouble our efforts to make sure that nothing like this ever happens again.

One of the frustrating aspects of our initial inquiry is that we seem to have taken so many appropriate steps in reporting the Guantanamo story. On the basis of what we know now, I've seen nothing to suggest that our people acted unethically or unprofessionally. Veteran reporter Michael Isikoff relied on a well-placed and historically reliable government source. We sought comment from one military spokesman (he declined) and provided the entire story to a senior Defense Department official, who disputed one assertion (which we changed) and said nothing about the charge of abusing the Qur'an. Had he objected to the allegations, I am confident that we would have at the very least revised the item, but we mistakenly took the official's silence for confirmation.

It now seems clear that we didn't know enough or do enough before publication, and if our traditional procedures did not prevent the mistake, then it is time to clarify and strengthen a number of our policies.

In the weeks to come we will be reviewing ways to improve our news-gathering processes overall. But after consultations with Mark Whitaker and Jon Meacham, we are taking the following steps now:

We will raise the standards for the use of anonymous sources throughout the magazine. Historically, unnamed sources have helped to break or advance stories of great national importance, but overuse can lead to distrust among readers and carelessness among journalists. As always, the burden of proof should lie with the reporters and their editors to show why a promise of anonymity serves the reader. From now on, only the editor or the managing editor, or other top editors they specifically appoint, will have the authority to sign off on the use of an anonymous source.

We will step up our commitment to help the reader understand the nature of a confidential source's access to information and his or her reasons for demanding anonymity. As they often are now, the name and position of such a source will be shared upon request with a designated top editor. Our goal is to ensure that we have properly assessed, on a confidential basis, the source's credibility and motives before publishing and to make sure that we characterize the source appropriately. The cryptic phrase "sources said" will never again be the sole attribution for a story in NEWSWEEK.

When information provided by a source wishing to remain anonymous is essential to a sensitive story—alleging misconduct or reflecting a highly contentious point of view, for example—we pledge a renewed effort to seek a second independent source or other corroborating evidence. When the pursuit of the public interest requires the use of a single confidential source in such a story, we will attempt to provide the comment and the context to the subject of the story in advance of publication for confirmation, denial or correction. Tacit affirmation, by anyone, no matter how highly placed or apparently knowledgeable, will not qualify as a secondary source.

These guidelines on sourcing are clearly related to the Guantanamo story, but this is also a good time to reaffirm several larger principles that guide us as well. We will remain vigilant about making sure that sensitive issues receive the discussion and reflection they deserve. While there will always be the impulse to get an exclusive story into the magazine quickly, we will continue to value accuracy above all else. We are committed to holding stories for as long as necessary in order to be confident of the facts. If that puts us at a competitive disadvantage on any particular story, so be it. The reward, in accuracy and public trust, is more than worth the price. Finally, when we make a mistake—as institutions and individuals inevitably do—we will confront it, correct it quickly and learn from the experience.

I have had the privilege of being part of NEWSWEEK's proud editorial tradition for nearly 35 years. I can assure you that the talented and honorable people who publish NEWSWEEK today are dedicated to making sure that what appears on every page in the magazine is as fair and accurate as it can possibly be. Based on what we know now, we fell short in our story about Guantanamo Bay. Trust is hard won and easily lost, and to our readers, we pledge to earn their renewed confidence by producing the best possible magazine each and every week.

Richard M. Smith
Chairman and Editor-in-Chief

来日中の呉儀副首相、急遽帰国(1)

2005-05-24 15:20:52 | 国際
中国政府は外交儀礼にもとる極めてえげつない態度を示した。

与党の武部勤と冬柴鉄三両幹事長の訪中と中国の呉儀副首相の訪日が、たまたま同じ時期に重なっていた。だが、中国側が今回見せたこの神経質な動きは、直接的原因が何にあるか、いまのところよくわからない。

いずれにせよ。5月16日の国会予算委員会における小泉首相の靖国発言が中国政府を刺激したのであろうことは間違いない。

この「来日中の呉儀副首相、急遽帰国(1)」では、関係記事の貼付だけに止める。今後、新しい情報が入ってくるであろうから、そういうものをもひっくるめて分析し、改めて別に「来日中の呉儀副首相、急遽帰国(2)」を作り、そこで今回の外交トラブルについての私の考察を述べることにしたい。

【朝日の記事で追う日中関係ー2005年5月22日~24日】
  1. 靖国参拝、改めて慎重な対応要求 中国の唐国務委
       (2005年05月22日01時30分)
  2. 靖国参拝・歴史教科書「目にしたくない」 胡主席が批判
       (2005年05月22日22時02分)
  3. 呉副首相、経団連首脳には「友好」 昼食会であいさつ
       (2005年05月23日13時27分)
  4. 呉副首相、小泉首相との会談中止 「緊急の公務」と帰国
       (2005年05月23日21時48分)
  5. 中国、靖国対応に強い不満 副首相帰国の「原因」と示唆
       (2005年05月24日11時48分)
  6. 「常識はずれのマナー」 中国副首相帰国を閣僚が批判
       (2005年05月24日12時12分)
  7. 「内政干渉」発言に中国が反発 訪中の武部幹事長と応酬
       (2005年05月24日13時09分)
【他紙よりの補足情報】
〈讀賣〉 首相と会うリスクより外交的ダメージ、中国選ぶ?
      (2005年5月24日14時6分)
〈産経〉 「おわびのひと言もない」町村外相が批判
      (2005年5月24日)
〈毎日〉 副首相帰国: 日本の政府閣僚から批判噴出
      (2005年5月24日 13時50分)
〈日経〉 中国副首相の帰国、閣僚から批判相次ぐ
      (2005年5月24日)


朝日新聞
靖国参拝、改めて慎重な対応要求 中国の唐国務委
2005年05月22日01時30分

 中国を訪問中の自民党の武部勤幹事長、公明党の冬柴鉄三幹事長らは21日夜、北京の釣魚台国賓館で、唐家璇(タン・チアシュワン)国務委員(副首相級=外交担当)と会談した。武部氏や出席者によると、唐氏は、小泉首相の靖国神社参拝問題を念頭に「継続して参拝されるのはいかがなものか。信念や信仰、伝統、文化ではなく日本の将来にとって重大な問題だ」と述べ、改めて慎重な対応を求めた。両幹事長らは22日には胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席とも会い、日中関係改善の糸口を探る。

 唐氏との会談で両幹事長は、靖国問題や中国各地での反日デモなどで冷え込んだ日中関係などについて意見交換した。

 靖国問題に関する唐氏の発言に対し、武部氏は「戦没者の慰霊と不戦の誓いのためであって、直接、軍国主義の美化にはつながらない。(日本は)60年間、平和国家として歩んできた」と説明し、理解を求めた。

 また、唐氏は、台湾をめぐる問題について「一つの中国」の原則を守るよう日本側に求めた。

 この会談に先立つ中国共産党対外連絡部の王家瑞(ワン・チアロイ)部長との会談では、武部氏が反日デモについて「日本人の心を和らげるメッセージがあってしかるべきではないか」と述べたが、王氏からの反応はなかったという。冬柴氏は、過去の問題に関連し「過去に政策の誤りがあり、大変な損害や苦痛を与えたという事実はおわびしないといけない」と述べた。

 王氏は、日中の政党間交流について、すでに設置で合意している政策担当者レベルの協議会に加え、「毎年1回、定期的に幹事長レベルで会合を持ちたい」との考えを明らかにした。

 また、王氏は北朝鮮の核問題をめぐり、先にニューヨークで行われた米朝の接触について「評価する。米朝のさらなる歩みを期待する」と述べた。


朝日新聞
靖国参拝・歴史教科書「目にしたくない」 胡主席が批判
2005年05月22日22時02分

 中国訪問中の自民党の武部勤、公明党の冬柴鉄三両幹事長は22日夕、北京の人民大会堂で胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席と約1時間会談した。胡主席は日中関係改善を重視する立場を示したうえで、「目にしたくない動き」として、小泉首相の靖国神社参拝、歴史教科書、台湾問題の3点を具体的に挙げ、日本政府の対応を批判した。

 両幹事長によると、胡主席は「日本の指導者がA級戦犯をまつっている靖国神社に参拝すること、侵略を美化する教科書の問題、日米の(安全保障の)共通戦略目標に台湾を書き込んでいること」について、「中国人民を含むアジアの人民の感情を傷つけ、長期安定的な日中関係の発展に悪影響を及ぼす」と指摘した。

 昨年11月のチリ・サンティアゴでの小泉首相との会談で、05年が戦後60年にあたることから、日中関係への配慮を求めたことにも言及。「日本側は約束を守っていない」と不満を表明した。また、「中日関係の発展は大きなビルの建設だ。れんがを一つひとつ積み上げないとできないが、そのビルは一瞬で壊すことが可能だ」とも述べた。

 一方、胡主席は会談の冒頭、「政権与党が対話と意思疎通を強化することが、中日関係を健全で安定した発展の方向に推し進めるうえでとても重要な意義を持つ」と両幹事長の訪中を歓迎。政党間の交流の重要性を強調した。

 武部氏は「首相から『胡主席と合意したことは着実に進めたい』というメッセージを受けてきた」と伝え、「日本は平和国家として歩み続けてきたことを自負している。胡主席の発言は、与党として真剣に受け止め、首相にもしっかりと伝えたい」と応じた。台湾問題については「『一つの中国』という立場に、いささかも変わりはない」と指摘。冬柴氏は「中国に侵略で多大な迷惑をかけた。この侵略の時代を日本国民は忘れてはならない」と伝えた。

 日本側の説明では、北朝鮮の核開発や日本の国連安保理常任理事国入りの問題は取り上げられなかったという。


朝日新聞
呉副首相、経団連首脳には「友好」 昼食会であいさつ
2005年05月23日13時27分

 来日中の中国の呉儀副首相は23日昼、日本経団連主催の昼食会に出席し、冒頭のあいさつで「中国政府と人民は中日関係を重視し、日本との平和共存、子々孫々の友好、互恵協力、共同発展を願っている」と強調した。あいさつでは小泉首相らとの会談中止については言及しなかった。

 呉副首相は「日本は中国の隣人として強固な経済的基盤を有している。中国のように日々拡大する市場で活躍する余地があると信じている」と語り、経済関係の強化に期待感を表明した。一方で「今日の中日関係は厳しいチャレンジに直面しているが、改善と発展のチャンスにも直面している」と述べ、日中関係が不健全な状態にあるとの認識も示した。

 昼食会には奥田碩経団連会長(トヨタ自動車会長)のほか経団連副会長などを務める主要企業のトップが十数人出席した。


朝日新聞
呉副首相、小泉首相との会談中止 「緊急の公務」と帰国
2005年05月23日21時48分

 23日午後に予定されていた小泉首相と中国の呉儀(ウー・イー)副首相との会談が、「国内の緊急の公務のため」とする中国側の申し入れで急きょ中止になった。細田官房長官が同日の記者会見で明らかにした。副首相は河野衆院議長との会談など昼までの日程を予定通りこなした後、同日午後に帰国した。首脳級の会談が直前で中止されるのは極めて異例。小泉首相は記者団に「会いたくないのを会う必要はない」と述べ、不快感を示した。

 呉儀副首相は今月17日に来日し、愛知万博(愛・地球博)のナショナルデー記念式典などに出席。24日に日本からモンゴルへ向かう予定だったが、これを変更し、23日に遼寧省・大連に入った。モンゴル訪問の予定変更は伝えられていない。

 細田官房長官によると、中国側は同日朝、「呉儀副首相は本国の指示により、国内の緊急公務のため、本日午後に帰国せざるを得なくなった」と伝えてきたと説明。副首相も同日昼、記者団に「国内に用事がある」と述べた。

 中止になったのは、午後4時過ぎから予定されていた小泉首相との会談のほか、その後の岡田民主党代表との会談。一方で副首相は同日午前、河野衆院議長と議長公邸で会談し、昼には日本経団連の奥田碩会長らとの会食に臨んだ。

 小泉首相の靖国神社参拝に関する発言が影響したのではないかとの見方について、首相は記者団に「わかりません」と述べ、「私は悪い影響を与えないように今までしてきた。何で中止したのか。私はいつでもお会いしますよと言ってきた」と語った。

 細田長官も靖国問題の影響について「そのように考えていない」と否定。外務省関係者によると、中国は中止の理由について「靖国ではない」と説明しているという。

 小泉首相は、呉副首相との会談が実現すれば中国人団体観光客への査証(ビザ)発給の対象地域拡大を伝える方針だった。これについて細田長官は「日中担当者間で十分話を進めている。国民レベルの交流は相互理解に役立つ」と述べ、当初の方針通りに実施する考えを示した。


朝日新聞
中国、靖国対応に強い不満 副首相帰国の「原因」と示唆
2005年05月24日11時48分

 中国外務省の孔泉(コン・チュワン)報道局長は23日夜、呉儀(ウー・イー)副首相の訪日に関連して「呉儀副首相の訪日期間中、日本の指導者が、靖国神社の参拝について連続して中日関係改善に不利となる発言をしたことは大変不満だ」と、小泉首相の対応を批判する談話を発表した。呉副首相が小泉首相との会談を取りやめて帰国したのは、小泉首相の靖国参拝をめぐる発言などが原因であることを示唆した。国営新華社通信が伝えた。

 孔局長は「中国政府は中日関係を大変に重視しており、関係改善と発展のために努力をし、呉儀副首相の訪日はそれを十分表していた」とし、呉副首相の訪日中の対応に誤りはなかったことを強調した。小泉首相との会談取りやめの事実には触れなかった。

 中国共産党関係者は、呉副首相の対応について「外交の常識からみるとはずれているが、それだけ強いメッセージを送った。日本に真剣に受け止めてほしいという信号だ」と語り、中国側は会談を取りやめることによって、靖国参拝問題に対する強い不満を表明したとの考えを示した。


朝日新聞
「常識はずれのマナー」 中国副首相帰国を閣僚が批判
2005年05月24日12時12分

 中国の呉儀(ウー・イー)副首相が、小泉首相との会談予定をキャンセルして帰国したことについて、24日の閣僚の記者会見では、対応を批判する声が相次いだ。町村外相は「おわびの一言もない。『外交的なマナー』なんて言葉を使わなくても、人と人とのつきあい方、信頼すべき人間同士のつきあい方がこういうことか、という思いがする」と強い不快感を示した。

 麻生総務相も「この種のマナーとしては常識を外れているし、対中感情が悪くなるのを助長するのに貢献したと感じる」。小池環境相も「理由が明確でなく、外交上、中国にとってはマイナスだ。対話が重要なのだが、意に沿わない発言をするからと対話を切ってしまえば、ますます(関係改善が)遠のいてしまう」と語った。

 一方、呉儀副首相と会談した中川経産相は「率直にいって大変びっくりしている。個人的にはショックを受けている」と述べ、東シナ海のガス田開発問題などについての今後の中国側との話し合いについては「決してプラスにはならない」と語った。


朝日新聞
「内政干渉」発言に中国が反発 訪中の武部幹事長と応酬
2005年05月24日13時09分

 自民党の武部勤幹事長が先の北京での中国共産党対外連絡部の王家瑞(ワン・チアロイ)部長との会談で、小泉首相の靖国神社参拝に対する中国側の非難を「内政干渉だという人もいる」と指摘、これに対し王氏が激しく反発していたことがわかった。与党関係者が24日、明らかにした。政府・与党内では、中国の呉儀(ウー・イー)副首相が23日に小泉首相との会談を当日になってキャンセルし、帰国した原因のひとつではないかとの見方が広がっている。

 関係者によると、武部氏は21日に行われた会談で、「首相の靖国神社参拝に対する中国側の批判は、内政干渉だという人もいる」と述べた。

 これに対し王氏は「それは(内政不干渉の原則を確認している日中平和友好条約の)新しい解釈なのか」と激しく反論。さらに、靖国神社にA級戦犯が合祀(ごうし)されていることを念頭に、「(A級戦犯という)国際的に決着したことを内政干渉の範囲に入れる解釈を、与党の幹事長がするのか」と詰め寄った。

 武部氏は、王氏の反論には直接には答えなかった。これ以外は会談は和やかに進み、こうしたやりとりがあったことは、公表しないことで双方が合意した。この内容は、23日に武部氏らから小泉首相にも報告されたという。

 これについて武部氏は24日の記者会見で、王氏とのやりとりについて「『世論調査等にみられる国民の考えの中に、相互内政不干渉がある』ということは話したが、私が内政干渉だと申し上げたわけではない」と説明。「約2時間の会談で、いろいろなやりとりがあったのは事実。率直な意見交換の後、最後には2国間関係を発展させることが大事だと一致した」と述べ、呉副首相の帰国との関係については「靖国問題が理由ではないと受け止めている」と語った。

 これに関連し、外務省幹部は24日、「相当激しいやりとりだったと聞いている」と語った。また、細田官房長官は同日午前の記者会見で、これが呉副首相の帰国の原因かどうかについては、「どういう影響を与えたのか、よく承知していない」と述べるにとどめた。




讀賣新聞
首相と会うリスクより外交的ダメージ、中国選ぶ?
2005年5月24日14時6分

 【北京=末続哲也】呉儀副首相が小泉首相との会談を中止したのは、胡錦濤指導部が、会談を行う政治的リスクの大きさは、突然の会談キャンセルに伴う外交的ダメージよりも大きいと読んだためと見られる。

 小泉首相が衆院予算委員会で、靖国参拝について「いつ行くのか適切に判断する」と述べたのは16日だった。この発言は17日、中国主要紙が報じ、呉副首相は、この日、微妙な雰囲気の中で日本に到着した。

 ただ、呉副首相は、表面上は穏やかに、「愛・地球博」(愛知万博)の記念式典など日程をこなす。中国側はその間、訪中した自民党の武部幹事長らに対し、参拝中止に向け説得を試みた。22日には胡国家主席が会談、中国側にすれば最も重みのある対応を取った。だが、中国側には、武部幹事長から返ってきたのは、理解を求める声ばかりに映った。

 中国指導部は、経済発展に極めて重要な日中関係の改善を望んでいる。しかし、靖国問題では、先月激しい反日デモにまで発展した強い反日世論の圧力を前に、強硬姿勢を崩せない状況にあると見られる。

 中国は、いま呉副首相が小泉首相に会えば、小泉首相が「参拝継続」を言明したままでも、首脳級の相互訪問が可能との「誤ったシグナル」を日本側に送る恐れがあると見ている模様だ。それ以上に、自国民に「弱腰」の印象を与えかねない。党内外の対日強硬派から指導部の責任を追及する声も上がりかねない。

 一方、中国の対応について日本の外務省幹部も24日、「副首相が日本に来て、首相に会って靖国参拝の話をされたらたまったもんじゃないと中国側は考えた。そのリスクと会わないリスクを比べ、会わない方を選んだのだろう」との見方を示した。

 日中両国は4月23日に小泉首相と胡主席が対話強化で一致し、関係改善に踏み出したばかりだった。会談キャンセルで、「再び、日中関係は冷却化しかねない」との見方が広がっている。


産経新聞
「おわびのひと言もない」町村外相が批判
平成17(2005)年5月24日

 中国の呉儀副首相が小泉純一郎首相との会談を土壇場でキャンセルしたことについて、町村信孝外相は二十四日の記者会見で、「先方から小泉首相に会いたいという希望があったから日程を入れた。連絡はあったが、おわびのひと言もない。人間同士でも都合が悪くなるとかいろいろあるが、ひと言悪かったとか言わないと人間社会は成り立たない」と中国側の対応を改めて強く批判した。

 また、在京の中国大使館から二十三日午前にキャンセルの申し入れがあった際、「靖国神社参拝問題が原因ではない」と説明されたことを明らかにしたうえで、中国外務省の孔泉報道官が首相の靖国神社参拝に関する発言が会談中止につながったとの考えを示唆したことについて、「それは彼ら(中国)が否定している」と述べた。

 これに関連して、細田博之官房長官は会見で、中国報道官の指摘に対し「特にコメントすることは控えたいと思う」と述べるにとどめた。中国側が表向きの帰国理由を「緊急の公務」としていることについても、「(本当の理由の)確認をわざわざする必要は感じていない」などと、事態を荒立てない姿勢をみせた。

 一方、自民党の武部勤幹事長は会見で、自らの訪中時に靖国問題への中国側の対応を「内政干渉」と指摘したことがキャンセルの原因とする見方について、「国民の考え方の中に内政干渉(との認識)があるということは話したが、私が内政干渉と申し上げたことはない」と釈明。キャンセルの原因も「靖国問題を理由としたものではない」と強調した。

 政府内では、中国の姿勢について「中国らしい(やり方)。北朝鮮と通じるものがある」(政府筋)とみる一方、反日デモで日本大使館が破壊活動を受けたことなどを踏まえ「中国に対する国際世論は厳しいものになっている」(外務省筋)と分析している。


毎日新聞
副首相帰国: 日本の政府閣僚から批判噴出
2005年5月24日 13時50分

 町村信孝外相は24日午前の記者会見で、中国の呉儀副首相が小泉純一郎首相との会談を中止して帰国したことについて「(緊急の)用があるのは仕方ないが、一言、悪かったと言わないと人間社会は成り立たない」と述べ、中国側から謝罪のないことに不満を表明した。会談中止の理由に関しては「分からない。問い合わせをする気にもならない」と語った。

 麻生太郎総務相は「この種のマナーとしては常識を外れている。(日本国内の)対中感情が悪くなることを助長するのに大いに貢献した」、中山成彬文部科学相も「礼を失している。もともと中国は礼の国だった」と会見で皮肉まじりに中国側の対応を批判。小池百合子環境相は「外交上、中国にとってマイナスではないか」と指摘した。

 一方、細田博之官房長官は会見で「いろいろな都合で日程を切り上げて帰国するケースは外交上あるので、そのことをもって何かを申し上げるつもりはない」と冷静に受け止める姿勢を強調した。


日本経済新聞
中国副首相の帰国、閣僚から批判相次ぐ
2005年5月24日

 中国の呉儀副首相が小泉純一郎首相との会談を直前に中止し帰国したことを巡って、24日の閣議後の記者会見で閣僚から批判する発言が相次いだ。麻生太郎総務相は「マナーとしては常識を外れている。対中感情が悪くなるのを助長するのに貢献した」と指摘。中山成彬文部科学相は「礼を失したことだ」と非難した。

 町村信孝外相は「おわびの一言もないのが実態だ。普通の人間同士でも一言『悪かった』とか言わないと人間社会が成り立たない」と重ねて批判。中国外務省の孔泉報道局長が首相らの靖国問題発言が原因と示唆したことには「推測することは差し控える」と述べるにとどめた。

訳詩鑑賞『ルバイヤート』(10)

2005-05-24 01:22:42 | 文学
Edward Fitzgerald "Rubáiyát of Omar Khayyám"
矢野峰人訳 『四行詩集』から





   第十九歌

ふたりいこへるこの河岸きし

さみどりにほふ若草も、

(そとりたまへ)麗人の

くちより萌ゆるものならめ。




       19

And this delightful Herb whose tender Green
Fledges the River's Lip on which we lean―
Ah, lean upon it lightly! for who knows
From what once lovely Lip it springs unseen!



   第二十歌

過ぎし日の悔、明日の日の

うれひをはらふつき満たせ、

明日とや、げにも明日われは

七千年の齢経む。




       20

Ah, my Belovéd, fill the Cup that clears
TO-DAY of past Regrets and future Fears―
To-morrow?―Why, To-morrow I may be
Myself with Yesterday's Sev'n Thousant Years.