2005年5月27日に中央日報に掲載された金永煕氏のコラムは、私たち日本人が読んでも納得できる内容だった。金永煕氏は谷内次官の発言を肯定的に捉えており、来るべき米韓首脳会談では、盧武鉉大統領が谷内次官が暗示した方向に舵を取るべきであると主張している。
金永煕氏の論点は次のようなものである。
だから、米韓首脳会談を間近に控えた盧武鉉は、極めて苦しい立場にあるといえるだろう。大統領府が谷内発言に苛立つ理由は、本当に苛立っているのかもしれないし、アメリカ政府に何かを伝えようとする演技なのかもしれない。
そう見てくると、谷内発言は偶然出てきたものではなく、我国外務省が久々に放った戦略的失言であったかもしれないとさえ思われてくる。
中央日報
【金永煕コラム】「盧武鉉、ブッシュ間のビッグディール」を期待する
2005年5月27日 10:21:44
韓米関係に対する日本の外務次官の失言が、来月開かれる予定の韓米首脳会談の議題の設定に影響を与えるかもしれなくなったことは皮肉である。
米国が韓国を信用できないため、日本が北朝鮮に関する情報を韓国と共有できないという谷内正太朗外務次官の話は、韓日米情報協調の上で韓国が疎外されていることを意味する。事実だとすれば韓国外しは情報だけなのか…。
谷内外務次官はこうも話した。「6カ国協議で米国と日本は右、中国と北朝鮮は左にたるとすれば、韓国は中間から左にシフトするも同じだ。「客観的な事実がどうであれ、米国と日本が6カ国協議での韓国の立場を北朝鮮、中国の立場と同じであると認識するならば、北核解決に必須な韓日米協調は不可能である。
青瓦台(チョンワデ、大統領府)は谷内外務次官が韓米関係の敏感な部分について失言を吐いたことを、分不相応だと強力に非難し、日本政府の謝罪を要求した。 青瓦台としてはあり得る反応だ。
しかしいま一度考えてみたいと思う。外交上の慣例と礼儀を知らないわけがない日本の最高位外交官がそのようなことを話すのは、米国と日本は、北核問題において、韓国が韓日米協調とは遠い距離を置いていると認識しているという意味ではないのか。
個人関係や国家関係で客観的な事実に劣らず重要なことがその事実に対する認識だ。北核に対する韓日米の認識が同じであるとは限らない。北核解決において韓国の大前提は戦争防止なのに反して、米国のそれは北朝鮮の核保有の非容認だ。 しかし戦争防止と核非容認は相互排他的なことではない。北朝鮮が核武装を強行し、核兵器をテロ集団とならず者国家に輸出までする場合、北朝鮮核施設に対する米国の先制攻撃は現実に起こり得る。 最終的に、韓国の対北朝鮮政策の大前提である戦争防止に向けても北朝鮮の核武装は容認できない。それこそが韓国と米国の利益の接点で、対北朝鮮協調の出発点だ。
米国は2002年4月、大統領候補だった新千年民主党の盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏の人気がうなぎのぼりになり、非常に驚かされた。そのとき国務省ジェームズ・ケリー・アジア太平洋担当次官補はアジア協会の演説でこう話している。「民主主義ではどんなことが起きるか予測しがたいもの。韓国の次世代の指導者が韓米関係の性格を、韓国での米国の伝統的役割に挑戦する方向に規定しなおすかもしれないという点を、米国は肝に銘じなければならない」本当に驚くべき洞察だ。
ケリー次官補や米国の多くの韓半島専門家が心配したように、盧武鉉政府は、韓米関係の性格と米国の役割を「自主的に」再規定しはじめた。 盧武鉉政府は、在韓米軍が韓半島外で起きる紛争にも介入するという戦略的柔軟性に反対し、韓国は韓日米の三角同盟の鎖をはずし、北東アジアのバランサーの役割をすると宣言した。 南北関係では韓米または韓日米協調より民族協調の方に重きを置くという印象を与えた。 中国まで韓国の行きすぎた親北朝鮮姿勢に、北朝鮮を相手に仲裁役割をするのは難しいという不満が聞こえる。
韓米首脳会談を目前に控えた時期に、日本の高位官僚が韓国にとって韓米関係を真剣に省みる契機を作ってくれたことをありがたく思う。 首脳会談の最も大きい議題は北朝鮮核問題だ。 しかし韓米協調、引いては韓日米の協調なしでは北核解決を期待することはできない。
盧大統領とブッシュ大統領の間にビッグディールが必要だ。何を与え、何を受け取るのか。 盧大統領は、多くの誤解を産んで民族的ロマンチシズムに流れた自主的対米政策を、実用主義的に再検討すると約束することだ。 北東アジアバランサー論と在韓米軍の柔軟な役割、作戦計画5029に対する反対がその内容だ。その代わり、ブッシュ大統領からは北朝鮮に6カ国協議参加の確実な名分を与え、北核問題を包括的に解決するという約束をもらうことだ。
ビッグディールの土台は韓米間の信頼なのだ。北朝鮮も口では「わが民族同士」と強調するが、米国が不信に思う韓国から得られるものは肥料とコメと開城(ケソン)工業団地と金剛山(クムガンサン)で得られる収入だけだと考えるだろう。
首脳会談の準備は、韓国に対する米国の信頼を回復する方法を探すところから始めなければならない。
金永煕氏の論点は次のようなものである。
- 北朝鮮の核問題の解決においては、韓国の大前提は戦争防止なのに対し、米国のそれは北朝鮮の核保有の非容認である。 しかし、戦争防止と核非容認は相互排他的なことではない。
- もし北朝鮮が核武装を強行し、テロ集団とならず者国家に核兵器を輸出する危険が生ずれば、アメリカ軍による北朝鮮核施設に対する先制攻撃が現実に起こり得る。従って、韓国の対北朝鮮政策の大前提である戦争防止に向けても、北朝鮮の核武装を容認することはできない。このことこそが、韓国と米国の利益の接点で対北朝鮮政策協調の出発点となる。
- 首脳会談の最も大きい議題は北朝鮮核問題である。しかし、韓米協調、ひいては韓日米の協調なしには、北朝鮮の核問題の解決を期待することはできない。
- 盧大統領とブッシュ大統領の間には(互いに多くを与え、多くを受け取るという)ビッグディールが必要だ。そのためには、民族的ロマンチシズムに流れた自主的対米政策(北東アジアバランサー論、在韓米軍の戦略的柔軟性理論、作戦計画5029などに対する反対)を見直すと約束することが必要だ。その代わりにブッシュ大統領からは、北朝鮮に6ヶ国協議参加の名分となるものを与え、北朝鮮の核問題を包括的に解決することについての約束をもらうことだろう。
だから、米韓首脳会談を間近に控えた盧武鉉は、極めて苦しい立場にあるといえるだろう。大統領府が谷内発言に苛立つ理由は、本当に苛立っているのかもしれないし、アメリカ政府に何かを伝えようとする演技なのかもしれない。
そう見てくると、谷内発言は偶然出てきたものではなく、我国外務省が久々に放った戦略的失言であったかもしれないとさえ思われてくる。
中央日報
【金永煕コラム】「盧武鉉、ブッシュ間のビッグディール」を期待する
2005年5月27日 10:21:44
韓米関係に対する日本の外務次官の失言が、来月開かれる予定の韓米首脳会談の議題の設定に影響を与えるかもしれなくなったことは皮肉である。
米国が韓国を信用できないため、日本が北朝鮮に関する情報を韓国と共有できないという谷内正太朗外務次官の話は、韓日米情報協調の上で韓国が疎外されていることを意味する。事実だとすれば韓国外しは情報だけなのか…。
谷内外務次官はこうも話した。「6カ国協議で米国と日本は右、中国と北朝鮮は左にたるとすれば、韓国は中間から左にシフトするも同じだ。「客観的な事実がどうであれ、米国と日本が6カ国協議での韓国の立場を北朝鮮、中国の立場と同じであると認識するならば、北核解決に必須な韓日米協調は不可能である。
青瓦台(チョンワデ、大統領府)は谷内外務次官が韓米関係の敏感な部分について失言を吐いたことを、分不相応だと強力に非難し、日本政府の謝罪を要求した。 青瓦台としてはあり得る反応だ。
しかしいま一度考えてみたいと思う。外交上の慣例と礼儀を知らないわけがない日本の最高位外交官がそのようなことを話すのは、米国と日本は、北核問題において、韓国が韓日米協調とは遠い距離を置いていると認識しているという意味ではないのか。
個人関係や国家関係で客観的な事実に劣らず重要なことがその事実に対する認識だ。北核に対する韓日米の認識が同じであるとは限らない。北核解決において韓国の大前提は戦争防止なのに反して、米国のそれは北朝鮮の核保有の非容認だ。 しかし戦争防止と核非容認は相互排他的なことではない。北朝鮮が核武装を強行し、核兵器をテロ集団とならず者国家に輸出までする場合、北朝鮮核施設に対する米国の先制攻撃は現実に起こり得る。 最終的に、韓国の対北朝鮮政策の大前提である戦争防止に向けても北朝鮮の核武装は容認できない。それこそが韓国と米国の利益の接点で、対北朝鮮協調の出発点だ。
米国は2002年4月、大統領候補だった新千年民主党の盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏の人気がうなぎのぼりになり、非常に驚かされた。そのとき国務省ジェームズ・ケリー・アジア太平洋担当次官補はアジア協会の演説でこう話している。「民主主義ではどんなことが起きるか予測しがたいもの。韓国の次世代の指導者が韓米関係の性格を、韓国での米国の伝統的役割に挑戦する方向に規定しなおすかもしれないという点を、米国は肝に銘じなければならない」本当に驚くべき洞察だ。
ケリー次官補や米国の多くの韓半島専門家が心配したように、盧武鉉政府は、韓米関係の性格と米国の役割を「自主的に」再規定しはじめた。 盧武鉉政府は、在韓米軍が韓半島外で起きる紛争にも介入するという戦略的柔軟性に反対し、韓国は韓日米の三角同盟の鎖をはずし、北東アジアのバランサーの役割をすると宣言した。 南北関係では韓米または韓日米協調より民族協調の方に重きを置くという印象を与えた。 中国まで韓国の行きすぎた親北朝鮮姿勢に、北朝鮮を相手に仲裁役割をするのは難しいという不満が聞こえる。
韓米首脳会談を目前に控えた時期に、日本の高位官僚が韓国にとって韓米関係を真剣に省みる契機を作ってくれたことをありがたく思う。 首脳会談の最も大きい議題は北朝鮮核問題だ。 しかし韓米協調、引いては韓日米の協調なしでは北核解決を期待することはできない。
盧大統領とブッシュ大統領の間にビッグディールが必要だ。何を与え、何を受け取るのか。 盧大統領は、多くの誤解を産んで民族的ロマンチシズムに流れた自主的対米政策を、実用主義的に再検討すると約束することだ。 北東アジアバランサー論と在韓米軍の柔軟な役割、作戦計画5029に対する反対がその内容だ。その代わり、ブッシュ大統領からは北朝鮮に6カ国協議参加の確実な名分を与え、北核問題を包括的に解決するという約束をもらうことだ。
ビッグディールの土台は韓米間の信頼なのだ。北朝鮮も口では「わが民族同士」と強調するが、米国が不信に思う韓国から得られるものは肥料とコメと開城(ケソン)工業団地と金剛山(クムガンサン)で得られる収入だけだと考えるだろう。
首脳会談の準備は、韓国に対する米国の信頼を回復する方法を探すところから始めなければならない。