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![](http://takahiko.shirai.as/images/south-east_asia1.jpg)
東アジア・東南アジア全図
(紫色部分は大陸・周辺島嶼間海域)
朝日新聞
中国の影響力、米に危機感 東アジアサミット
2005年05月15日08時41分
12月に開かれる東アジアサミットに、米国が神経をとがらせている。「米国抜き」で、中国がこの地域での影響力を一気に強めようとしているという危機感を持っているためだ。会議の中核となる東南アジア諸国連合(ASEAN)内には、中国との関係を緊密化する国がある一方、米国との安全保障関係の強化を求める動きもあるという。米側の会議への不満は、日米関係にも微妙な影を落としている。
■ 米沈黙、本音は「中止」
「米国がオブザーバーで参加することはない」
東南アジア歴訪中だったゼーリック米国務副長官は10日、シンガポールでの記者会見で東アジアサミットについて、こう語った。
オブザーバー参加は、町村外相が「米国排除」を解消するため、5月初めのASEANと日中韓の非公式外相会合などで提案したものだが、かえって米側の反発を招いてしまった形だ。
「太平洋は米国が所有しているようなものだ。どうして我々が会議の後ろの方に座って、メモをとらなくてはいけないんだ」。ある米政府高官は、こんな不快感さえあらわにする。
ただし、米政府は表向きは一貫して「沈黙」を守っている。本音は「消えてなくなれば良い」(米政府関係者)だが、「『やるな』『やるな』と言うと弱く見えるから」との理由で、あえて口にしていない。
ブッシュ政権が強い懸念を持つ背景には、中国が東アジアサミットを使って、米国が参加するAPEC(アジア太平洋経済協力会議)を形骸(けいがい)化し、米国をこの地域から排除しようとしている、との危機感がある。
米側関係者は、中国がラオス、カンボジア、ミャンマー(ビルマ)などASEANの中でも比較的立場の弱い後発参加国に対し、「東アジアサミットを支持して、日本の国連安保理常任理事国入りを拒否すれば、守ってやる」と持ちかけている、と指摘する。
一方、中国の影響力拡大を嫌う国の中には、米国との関係強化を図る動きも出ている。米空母のために港湾施設を提供しているシンガポールは、米国と戦略枠組み協定を近く締結することで合意した。
さらに、信教の自由を巡って米国と対立していたベトナムは、米国の主張を受け入れる妥協をして戦略協議の開始にこぎ着けた。カイ首相が6月に米国を訪れる。
インドネシアのユドヨノ大統領も、今月末に初訪米して米国との関係強化をうたい上げる予定だ。
■ 「ASEAN主導で」中国政府
「中国は、東アジア共同体から米国を排除するような政策はとらない」
中国の王毅(ワン・イー)駐日大使は11日、東京都内での講演で語った。ただ、「もちろん米国には、この地域の各国の利益も尊重していただきたい」とも付け加えた。
東アジアサミットに関して、中国政府は「ASEANが主導的役割を果たすべきだ」(李肇星(リー・チャオ・シン)外相)との立場だ。しかし、早期開催を求めたり、第2回の自国開催を模索したりするなど、積極姿勢が際立つ。
中国は90年代後半からASEAN諸国との政治・経済関係の強化を進めており、地域での影響力は年を追って高まっている。日中韓3カ国を加えた「ASEANプラス3」の枠組みが、東アジアサミットに結びつけば、外交の基本に据えてきた「多極化」「善隣友好」の路線にもかなう。
日本が米国のオブザーバー参加を提案したことについて、中国では、米国が日本に働きかけた結果と推察したうえで「中国への牽制だろう。我々は日米と主導権を争うつもりはない。一極主義の米国が、ここにも首を突っ込もうとしている」(政府系シンクタンク研究員)と警戒する声も聞かれる。
■ 米中さや当て、日本当惑
日本政府は、自ら主導してきた東アジアサミットが米中のさや当ての場となっていることに当惑を隠せない。政府関係者は「シンガポール、インドネシア、ベトナムが日本や米国に近い立場をとり、タイが中国寄りという分裂の構図になっている」と話す。
政府は(1)日米安保に矛盾することはしない(2)APECなどに屋上屋を架すことは避ける、との基本方針で共同体構想の実現を図ってきた。
米国に対しては、昨年から詳細に説明し、意見も求めた。日本側としては、米側が抱く懸念にも十分配慮したつもりだったが、米国は、どうすべきかといった見解を伝えてこなかった。
そのため、独自の判断で「開かれた地域主義」を提唱。インド、オーストラリア、ニュージーランドなど参加国を拡大し、事実上、中国の影響力を薄める方向で動いてきた。
外務省の担当者は「そもそも東アジアサミット構想がなぜ出てきたかを考える必要がある」と指摘。中国が覇権の確立を目指しているのではなく、この地域で事実上、経済統合が進んでいるため、との見方を強調した。
◇ 東アジア共同体と東アジアサミット ◇
小泉首相は02年、シンガポールで行った政策演説で、東アジアの地域協力を目指す共同体構築を提唱した。具体化の第一歩が、今年12月にマレーシアで初会合が予定されている東アジアサミット。「ASEANプラス3」のほか、インド、豪州、ニュージーランドの計16カ国の首脳が参加する見通しだ。
日本政府は、当面は自由貿易協定や金融面の協力を中心に進め、欧州連合(EU)のような機構の設立は中長期的目標とする、との方針で臨んでいる。