両親と3人で暮らす、45歳の野田正男(大地康雄)。
農家の長男ゆえに嫁をもらえず、今度こそはと思った景子(富田靖子)との縁談も
破談になってしまった。その後フィリピンパブで働くリバティ(ルビー・モレノ)
と付き合い、結婚式を挙げるためにフィリピンへ向かうも、
待っていたのは結婚詐欺という辛すぎる現実。
失意に沈んだ正男は、数年後、フィリピンでやくざまがいの仕事に就いていた。
そんな彼は、ある日、故郷の風景に似た農村で稲刈りをする
クリスティナ(アリス・ディクソン)と出会う。
彼らの収穫を手伝ううちに、正男は失った農業への情熱を取り戻していく。
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名脇役としていつも主役を食うほどの存在感を見せる大地さんを
よく目にはするものの、そのむさくるしい風貌ゆえ(失礼)
『トマトを育み、愛を育んで大きく実らせる』という
ラブストーリーってどーなん!?大丈夫なん!?と、半信半疑だったのですが、
そのオヤジ味ゆえに『農家の長男』はハマリ役で
演じている、というより実在する人物に見えてくるほど!
献身もカッコつけてるキレイ事に見えず、彼独特の優しさや、
不器用な一生懸命さがひしひしと伝わってきて、
人間の魅力は容姿ではなく生き様、というコトを証明してくれます。
クリスティナ役のアリス・ディクソンも美人なうえに、表情が素晴らしい。
彼女が微笑む、彼女が歩く、彼女が農作業する。それが美しい。
心の美しさが表情と動きに出る、という感じ。
そんな二人の気持ちが美しい自然の中で、少しずつ寄り添っていく過程は
感動的で、『オヤジの純愛』に何度も泣きそうになりました。
素敵で濃密な作品で、日本映画もすてたもんじゃない!と実感できる傑作です!!
それにしても、『食べ物をつくる』という人間にとって一番大切で
尊い仕事をしている人たちが抱える、嫁不足と後継者不足という問題が
想像以上に厳しかったことに衝撃を受けました。
つい最近、日本は『先進国の中で食料自給率が最低』で
将来、食糧不足に陥ることは避けられない、というコトを知ったのですが
この作品は『これからの日本をどうするのか』それも問いかけています。
泣いてばかりいられないゾ。