オバマ大統領は、連邦債務の上限引き上げに向けた協議について民主党のリード上院院内総務とペロシ下院院内総務と会談をしています。
8月2日にアメリカで債務不履行(デフォルト)が起こるかどうか。いつもはギリギリで合意がとれていましたが、今回は難航しています。
来月、オバマショックが発動される可能性が高まっているとして、行動されたし。
国際決済システムが揺らいだのは今回だけではありません。
リーマンショック後、2008年11月も危機的状況でしたが、問題を先送りして約3年経過しました。
当時のコラム(2008年11月15日)に、よいヒントがあるので、再掲載します。
2011/07/25 橘みゆき 拝
<<ここからが再掲したコラムの内容です>>
【再掲載】ドルの次に基軸通貨となるものはSDRか? (2008/11/15)
サルコジ仏大統領がドルは唯一の基軸通貨ではないと述べた
フランスのサルコジ大統領がワシントンに向かう前(11/13)、「ドルはもはや唯一の機軸通貨ではない」と述べました。
ドルは唯一の基軸通貨ではない=仏大統領
[パリ 13日 ロイター] フランスのサルコジ大統領は13日、ドルはもはや唯一の基軸通貨ではないと述べ、14日からワシントンで開催される緊急首脳会合(金融サミット)でこうした認識を表明する考えを明らかにした。 同大統領は「第二次世界大戦以降ドルは唯一の国際通貨だったが、現在ではそうではないことを、あすワシントンに向かい、(金融サミットで)説明する」と語った。 「1945年(の終戦時)に真実だったことが今日でも真実とは言えない」と述べた。
ブレトン・ウッズ協定 (1944年07月)
「1945年の真実」とは、ブレトン・ウッズ協定のことを指します。
1944年7月にブレトン・ウッズで開かれた連合国通貨金融会議(45ヵ国参加)で締結され、1945年に発効した国際金融機構についての協定である。
国際通貨基金(IMF)、世界銀行、関税および貿易に関する一般協定(GATT⇒1995年以降はWTO)が作られ、いまに至っている。
戦争で疲弊した欧州+イギリス、敗戦国のドイツ+日本を横目に世界のマネーもGOLDもアメリカに集中していた。ブレトン・ウッズ協定により、基軸通貨がポンド・ドルの複数通貨だった戦前の体制が、唯一ドルに変わった。
当時は金本位体制を採用していたため、GOLDとドルとの交換レートのみ決め、各国通貨はドルとの交換レートを決める方法となった。
GOLD 1オンス=35ドルと定め、1ドル=360円の固定レートとなった。
ブレトン・ウッズ体制での国際間のマネーの流れは下図のようになる。
ブレトン・ウッズ協定を協議する際、アメリカ代表のホワイト案と、イギリス代表のケインズ案が出され、最終的にホワイト案が採用された。ここで注目するのはケインズ案に、サルコジ仏大統領が言っている『第二の基軸通貨』があるのです。
この図で注目点は、ドルやGOLDの地位に、国際的に通用する通貨、バンコール(Bancor)を置いていることです。
ニクソン・ショック 1971年08月15日
ブレトン・ウッズ体制は、1971年08月15日に発表された【ニクソン・ショック】まで続いた。ニクソン大統領はドルとGOLDの交換を一時的に停止するとしていたが、一時的とやらは2008年11月15日になっても続いている。
ニクソン・ショックにより、ドルとGOLDに交換できなくなることで、金本位制度は終焉を迎えました。
ニクソン・ショックが発表される前後、大量にドル売り円買いの取引がなされました。イギリスやドイツなど主要国が為替市場を閉鎖したのですが、日本は律儀に為替市場を開け続け、ドルを買い支えしました。大量のドルを買うための円を日銀に発行させたのです。
その結果、大量の円が市場に供給することとなり、当時の日本の物価を大きく上げることとなりました。ちょうど石油ショックと重なったこともあり、1970年代の急激な物価上昇は石油ショックのせいとされていますが、実際は、ニクソン・ショックの際に、じゃぶじゃぶ円を供給したツケが回ったという要因の方が大きいのではないでしょうか。
2008年の今、再び国際金融制度が大きく変わろうとしています。日本はワンパターンでドルを買い支え、大損し、急激な物価高騰をもたらすことになると予想します。
失敗に学べば、損失を少なくすることができますが、望みは薄い。
ニクソン・ショック後、ドルの担保はGOLDではなくなった。新たに担保となったのは、他国が追従できないアメリカの軍事力と経済力だった。当時は冷戦真っ只中で、アメリカの言うことを聞かないと東側陣営に負けてしまうという事情があったため、無理が通った。アメリカの都合で国際ルールはどんどん変更され、日本はその都度、大損しながら国際金融システムが破たんしないようにしてきた。
揺らぐアメリカの覇権
21世紀になり、911同時多発テロ事件の後、アメリカは中東で戦争を行い、泥沼にはまり、撤退もままならない状況となっている。アメリカの軍事力にも陰りがでてきた。
一方経済の方は、戦争継続の経費がばかにならないのと共に、世界同時バブル崩壊と実態経済の悪化が進んできていて、いくつもの禁じてをやって、やれるだけのことをやって、やっとのことで崩壊を食い止めている(問題が解決されたわけでも、縮小したわけでもない。むしろ拡大している)。
アメリカの軍事力も経済力も弱まっているのを見て、アメリカの覇権が終わり、群雄割拠の時代が到来すると、多くの国が判断し、生き残りをかけて、行動している。
11月15日にワシントンで開催されている第一回金融サミット(G20)は、国益追求の最前線である。
2008年第一回金融サミット(G20)のサルコジ案
サルコジ仏大統領が提唱するドル崩壊後の基軸通貨は、【ユーロ】ではなく、【複数の通貨バスケット】だという。
つまり、サルコジ大統領は、ブレトン・ウッズ協定を決めるとき、廃案となったケインズ案を復活させようというものである。
現在、これに近い概念のものは、存在している。IMFの SDR(special drawing rights)/特別引出権 である。
現在、SDRは、複数通貨(ドル、円、ユーロ、ポンド)を加重平均して評価した通貨バスケットですが、5年ごとに見直しされます。
サルコジ仏大統領が言う『ドルに換わる機軸通貨』はユーロではなく、この SDR のことを指している。
つまり、サルコジ大統領は、ブレトン・ウッズ協定を決めるとき、廃案となったケインズ案にあった国際通貨バンコールを復活させようというものである。
ドル崩壊の過程で、SDRに組み込まれた通貨が増え、支那や中東産油国、ロシアやブラジルなど新興国も組み込まれ、世界共通通貨を誕生させたいというのが、サルコジ大統領をはじめとする欧州の考えである。
人が決めた仕組みは人が変えればよい
旧約聖書に登場する「十戒」のように神様との契約や、物理法則は人の都合で変えることはできません。ですが、人が決めたことは、人が変えることができます。
人の決めたルールが、世の中の変化が進むにしたがい、うまく機能しなくなっていった場合、利害関係者が集まって、お互い合意がとれればルールを変えてしまえば良いのです。頭が硬い人や、生真面目な人は、一度決めたらどこまでも守ろうとしますが、そういう態度は「変化を拒否する選択」につながります。
一部の人が理解してもらえれば大成功(2008年10月20日のコラム)の最後に、時局を読む力について、お話しています。とても大切なことなので、再掲します。
リーダーは時代の変化を先取りして、組織が変化に対応する時間を確保する必要があるのです。リーダーに必要な能力はいろいろありますが、『時局を読む力』は、『コミュニケーション能力』に次いで重要な能力なのは、そのためなのです。
2008/11/15 橘みゆき 拝
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