ヒアリ系、Solenopsis属の死亡例をめぐって、日本国内では情報が混乱しています。「米国でヒアリで死亡100人」は確認できませんでしたということで、環境省が記述をそっくりそのまま削除、記者会見。
するとネットの世界では、「死亡例はなかった」だとか挙句に「ただの蟻だった」とまで言い出す有名サイトまであらわれています(http://netgeek.biz/archives/99669 )。
いきなりHPから削除してしまう環境省のリスコミ不在、「ガセだった、ただの蟻だった」と言い放つ人気サイト。今後、アナフィラキシーの手遅れ症例でも万一出ようなら、世論は反動パニックになりそうです。(「これはアナフィラキシーショックであって、ハチやソバと同じであって、ヒアリに”食い殺された”わけじゃありません」という説明は、当サイトに来られるみなさんには理解可能でありましょうが、世間一般的には「やっぱり殺人毒アリだった!」という事に多分なりましょう)
我々はヒアリ(Solenopsis属)一般に、「アナフィラキシーは報告により2~7%起こること」「アナフィラキシーは手遅れになると犠牲者がでること」「だから必要な理解(エピペン、ひあり おくやみ)」を淡々と粛々と理解して発信してゆきましょう。
今回はヒアリ犠牲者の症例報告@USA。
- 3カ月女児。
- ベビーシッターが目を離して一人寝させていた。激しく泣いていたが、腹痛だろうと思って放っておいた(!)。
- その後、ベッドのところに行ってみたら、赤ちゃんは呼吸停止し、全身にアリがたかっていた(!)
。蘇生術がおこなわれたが成功せず。 - 剖検所見では皮膚所見40か所の刺し痕、膿瘍ともなわず。軽度の喉頭浮腫。tryptase 23.9 ng/mL radioallergosorbent test (RAST) 1.4%
Solenopsis richteri 毒へのIgE抗体陽性(Solenopsis invictaへは陰性)。 - 現場からはSolenopsis xyloni回収。これは米国南東部に土着のヒアリ(a native fire ant endemic to the southwestern United States)。一部の土着ヒアリは、蟻塚を形成せずに、膿瘍もできない。
- Solenopsis属相互間で交叉反応あり。輸入ヒアリから抽出成分による減感作療法は土着ヒアリにも有効。
Solenopsis属があれやこれや定着してしまってる米国は大変です。3カ月の赤ちゃんが家の中で蟻に全身たかられて亡くなってしまう、映画のようなシーンが現出するのもヒアリの世界。ゆめ油断されませぬよう・・・
ソースは
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19749619
Am J Forensic Med Pathol. 2008 Mar;29(1):62-3. doi: 10.1097/PAF.0b013e3181651b53.
Fatal anaphylaxis to indoor native fire ant stings in an infant.