新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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パパのいないクリスマス・・・海外駐在員家族引裂き問題(管理人担当の神戸新聞連載⑦)

2009-12-24 20:44:11 | マスコミでのコメント・取材・出演

 年初以前からの永い常連さんは、”パナショック”という言葉をご記憶の方も多いと思います。まだ、新型インフルエンザ=死亡率60%の怖い怖いH5N1という想定だった頃、製造・商社・・・いくつかの企業が、海外駐在員の家族を引き上げ単身赴任を強いるということを企てました。
 その後、新型インフルは皆様ご存知の弱毒豚由来と判明、空港検疫はじめ国の処置もいろいろ見直されてきました。当然、「海外駐在員家族引裂き問題」も見直されたものと思っていました。
 が、しかし、当サイトにポツポツいただくお便りから、春どころか、秋以降もそうではないという事がわかりました。引裂かれた家族の悲痛な叫び、心が痛みます。
見直しもなく漫然とこんな事を続けている企業経営者には強い義憤を禁じ得ません。

で、管理人は考えました。お借りした「新聞のペン」を使ってこの問題を世間に知らしめようと。 イブの夜、夕刊一面にこれをドン!と載せる。 寂しい聖夜をすごす子供たちへの、ささやかなプレゼントです

(以下、元原稿よりコピペ)
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パパのいないクリスマス

 きっと君い~は来ない♪ ひとりきりのクリスマスイブ~♪
というメロディを耳にしながら迎えるこの日も帰国後4回目となった。
山下達郎の名曲。ここでいう「君」は誰のことでしょう? 
「海の向こうのパパだ」・・・と淋しそうな子供たちの声が聞こえてきそうな聖夜。

 今年は年初から異変があった。新型インフル対策として、海外駐在員の家族を強制帰国させるという計画を立てる企業が続出した。年初といえば、鳥インフルH5N1が新型インフルになり死亡率60%の怖い病気が来るのではと恐れられていた頃だ。パンデミックとともに航空機運航が停止して帰国出来なくなる・・・という事態も当時は想定されていてそういう事になった。かなり有名な電器会社が先陣をきって大きく報じられたが、商社、製造、さまざまな企業が追随した。

 あれから1年、新型インフルも豚由来の弱毒性と判明し、空港から水際作戦の重装備も姿を消した。が、それでも、いくつもの会社でこの「駐在員家族引き裂き政策」が継続している模様で、筆者のサイトにも時折お便りが届く。突然壊された家族の平衡に崩壊しそうな一家、予期せぬ単身赴任のメンタル危機、やっと海外の学校に居場所を見つけた障がい児が引き戻されいじめに遭っている、育児パートナーを失い“育児ノイローゼ”をうったえる声・・・読んでいて心が張り裂ける思いだ。

 経営者の皆さんにうったえたい。強毒性前提で立てられた計画が見直されず漫然と続いている。この「駐在員家族引き裂き問題」が次世代を担う子供たちのこころに取り返しのつかない傷を与えている。新型インフルは弱毒性だ。フライトが停止したりはしない。子供たちに笑顔を返してほしい。聖夜のお願いです。

(神戸新聞2009年12月24日夕刊)

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「海外駐在員家族引裂き問題」については↓参照
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/topics/200904/510168.html


 

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