新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

ワクチン接種で注射器使いまわしてしまった米コロラドのクリニック

2011-04-14 07:51:49 | マスコミを考える

米コロラドのある学校。インフルエンザワクチン接種にあたったアシスタントが何を勘違いしたか、半量だけ接種して”second dose"とラベルされた箱に入れたので、その注射器で2回接種されちゃった・・・というお話。 記事の書き方も考える要素あるので、紹介。

  • 米コロラドFort collins
  • 数十人の子供たちが、HIVや肝炎やその他の重篤な疾患の脅威にさらされる。
  • 接種を担当したアシスタントのミスで、同じ注射器(注:syringe。needleでないに注意)で2人の子供に接種されてしまったとレターが保護者に送られてきた。
  • 実際に重篤な疾患の脅威にさらされたかどうか不明ながら、現時点と6カ月後に検査受けるよう示唆。
  • ことの顛末は、このアシスタントは、ワクチンを小児量に分けるのは自分の仕事だと勘違いして、注射器に充填されたワクチンを半分だけ接種して"second dose"とラベルされた箱に入れた。針は新しいものに取り換えて。
  • その箱から、取り出されたワクチンが別の子供に接種された。

つまり、こういうことです。
本来は、すでに小児量が充填された注射器から1本接種して終わり、医療廃棄物処理箱に放り込んでおしまいです。 でも、このアシスタント氏は注射器に成人量が入っていると勘違いしたので半分だけ接種して(半分だけ残った状態で)"second dose"の箱に入れてしまった。”second dose"は2回目接種の意味だから、2回目接種の担当者は、その、半量だけ残った注射器(針は新品)から注射した。だから、注射器(くどいですが注射針ではない)が2回使われ、接種されたワクチンは本来の半分量しか注射されなかったということです。

 さて、この件紹介するのは、この報じ方がかなりヘンでメディアリテラシーの練習問題に使えそうだから。

  • 再使用されたのは、注射”器”であって注射”針”ではない。インフルワクチン注射法は筋注か皮下注で静脈注射では”100%”ない。被接種者の血液が注射”器”まで逆流することは”こちらは100%とはいわぬが99.9・・・%”なかろう。
  • ここで冒頭のリード部。「数十人の子供たちがHIVや肝炎やその他の重篤な疾患にさらされたかもしれない(Dozens of children in northern Colorado may have been exposed to HIV, hepatitis and other diseases)」
  • かなり問題な印象操作ですね。「該当児童・親の不安を高める」のがひとつ。もうひとつ「northern Coloradoの子供たちにはHIVや肝炎がいっぱい蔓延していて、ちょっと注射器間違えたらたちまちエイズがうつる」かの印象も、northern Coloradoを知らない人には与えてしまう。流言の種にも。

震災から1カ月、原発がらみでは、ツイッターはじめネット上で「日本のマスコミが信じられなくて、欧米のマスコミに書いてあることがreliableである」という論調がかなり目立つ今日この頃です。でもそうじゃなくて、「欧米のマスコミ」も結構変だよ。欧米発だからってのじゃなくて、自分自身のメディアリテラシーをしっかり磨こうね・・・はい、これが本日言いたかったことです。

ソースは4月13日付abc↓
http://www.thedenverchannel.com/news/27531972/detail.html

Flu Vaccine Syringes Shared Between Patients

Fort Collins Med Peds Clinic Sent Letters To Parents About Mistake

 

 

 

 

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