新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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輸入すべきでないのは”嫌ワクチンムード”(管理人担当の日経BP連載③)

2009-12-30 11:20:05 | マスコミでのコメント・取材・出演

管理人担当の日経BP連載、第三回目はワクチン関連です。

今回の新型インフルエンザでは、「ワクチン先進国」を自認する国々で、見るもあわれな大混乱が次から次へと海外報道に載ってきました。
UKでは、ワクチン打つ医療従事者は1~2割だとか、Nursing timeが読者アンケートやってみたら打つと答えた医療従事者が23%onlyだとか、カナダ政府が豪政府に頭下げて非アジュバントワクチンを分けてもらっただとか・・・

われわれ日本人は、こうしたものと一線を画してしっかりゆきたいと思います。

URLは↓クリックください。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/topics/200912/513670.html

(以下、コピペ)
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輸入すべきでないのは“嫌ワクチンムード”

近畿医療福祉大学の勝田吉彰氏

 新型インフルエンザワクチン。世界の各地で、これほど侃侃諤諤なものも珍しい。2010年にはいると、海外製ワクチンも入ってくる。これまで世界の中では比較的落ち着いていた日本国内でも百家争鳴状態が始まるかもしれない。まずは基本をおさらいしておこう。

 国産ワクチンは、ウイルスを有精卵で培養して不活化したスプリットワクチンで、アジュバント(免疫賦活剤)が添加されず、製造法も旧来のものだ。この方法で製造できる量は限られ全国民分をまかなうには至らないが、今にして思えば、(“嫌ワクチンムード”吹き荒れる欧米加に比べ相対的に)日本のワクチン接種が整然と進んだのはこの“旧態依然ぶり”が寄与するところ大だったという皮肉なことにもなっている。一部識者による“水みたいなワクチン”なる揶揄も、むしろ安心感につながったふしさえある。

 さて、海外製ワクチン。グラクソスミスクライン社製とノバルティス社製の2種類だが、いずれもアジュバント入りだ。これを添加すれば原料が4分の1で済む(同じ原料で4倍製造できる)という、本来すぐれものだ。が、使用実績が少ないこともあり、何かと冷たい視線を浴びがちで欧米加で“嫌ワクチンムード”の原因の1つともなっている。

 ドイツでは、一般用にアジュバント入りを用意する一方で、メルケル首相以下閣僚用にアジュバント非添加ワクチンをわざわざ米国から輸入していた。それがバレて大騒動、“嫌ワクチンムード”の火に油を注いだ。

 ノバルティス社製は有精卵のかわりに犬腎臓細胞を用いるハイテクも使われている(細胞培養法)。

 いずれも、執筆時点においては従来の季節性ワクチンに比べて特に重篤な副作用が報告されているわけではない。が、新型インフルエンザという病気自体、科学的データとは別に“情緒”の部分が人々の行動に大きな影響を及ぼすという性質を持つ。筆者はこれを「医学的弱毒性、心理的強毒性」と呼んできた。

 ワクチンについても同様だ。「34年前の豚インフルエンザワクチンでギランバレー症候群の副作用が生じたトラウマ」や「湾岸戦争症候群と炭疽菌ワクチンのうわさ」といった過去の亡霊のようなものが出てきて、上記のアジュバントとも結びつき、開発期間の短さも加わって“嫌ワクチンムード”が欧米加では醸し出されている。

 こういうムードも一緒にくっついて入ってくるかもしれないことも想定に入れ、しっかり対応してゆきたい。王道はない。こまめな情報提供と丁寧な説明を心がけてゆこう。


 過去のパンデミック時と今回の大きな違いの1つは、インターネットによる情報提供が力を発揮していることだろう。2003年のSARSの流行時に、北京で日本大使館医務官だった勝田吉彰氏(近畿医療福祉大学)は、「ちぎっては投げ方式でこまめに情報提供をすることで、現地の日本人社会の不安を和らげた」と振り返る。新型インフルエンザが騒がれるようになってからは、このときの経験を元にブログを立ち上げ、日々情報を発信し続けている。勝田氏に「今、忘れてはならないこと」を綴っていただく(「パンデミックに挑む」編集)。

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2 コメント

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明けましておめでとうございます。 (浅見真規)
2010-01-03 00:02:52
明けましておめでとうございます。

>UKでは、ワクチン打つ医療従事者は1~2割だとか

英国は昨年の夏の流行で免疫獲得した人が多く、秋以降は流行が夏の三分の一程度で、英国では一般人でも免疫獲得してるくらいなので医療関係者のほとんどは免疫獲得してるので新型インフルエンザワクチンの接種の必要がなかったのでしょう。(英国HPAサイト記事参照)
http://www.hpa.org.uk/webw/HPAweb&HPAwebStandard/HPAweb_C/1259152450217?p=1231252394302
まあ、西欧やアメリカ・カナダでは子供時代から自分で考えるように教育されてるそうなので、“嫌ワクチンムード”にはそれなりに根拠があるのかもしれません。

>輸入すべきでないのは“嫌ワクチンムード”

江戸時代の種痘も「牛になる」とのウワサがあったそうですが、その効果から接種が受け入れられたそうですので、江戸時代の日本人ですら効果がリスクを大幅に上回っていれば受け入れたので、現代日本人では“嫌ワクチンムード”による悪影響の心配は不要でしょう。問題はリスクが効果を上回る危険と、先生が御指摘されたワクチン安全保障の観点でしょう。ワクチン安全保障の見地からは政府買い上げが妥当としても、リスクが効果を上回るなら国民に接種を薦めずに政府が買い上げたワクチンの廃棄も考慮すべきです。(発展途上国が特に望めば無償援助も選択肢になりうるでしょう。)
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ありがとうございます (管理人)
2010-01-03 09:51:52
ありがとうございます

>政府が買い上げたワクチンの廃棄も考慮すべきです。

はい、これが、粛々と順調に廃棄できれば何の問題もありません。マスコミだって、本来、これぐらいは理解力をもっていると思います。

が、懸念されるのは、わかってない財務省筋あたりが”廃棄→税金の無駄”的、カン違い発言を記者クラブに流してマスコミがそれに乗ってしまう事態、あるいは、”仕分け万歳ムード”の中で、対立会派に向けて”税金の無駄云々”とズレた発言を(ズレてるとわかっていながら)確信犯的に投げつける”政治のおもちゃ化”現象です。こういうものに国民のムードが流されると、将来のワクチン政策に悪影響がなければ(これを背景に財務省がガンガン査定してくる)・・・とは心配の種です。
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