ここのところデング熱関連の報道は「ボルバキア蚊」にフォーカスが当たっています。
「デング熱をおさえる蚊」などで検索すると日本の各社横並びでたくさん出てきます。
ボルバキア蚊の研究は以前からなされてきましたが、デングの日本国内発生をうけて、今回脚光をあびています。ブラジルで1万匹放しましたと。
管理人もある電話取材でコメント求められたのをきっかけに、メリット・デメリット考えてみました。
【メリット】
*自然なやり方。殺虫剤噴霧と比べて「他の生物を殺す物質」をまかないので生態系へ影響が少な い。
*生きとし生けるものを殺さなくても済む。ある宗教関係者に聞いた話ですが、いま、全国の宗教関係者はかなり悩んでいる。鎮守の森をはじめ神社や寺院や研修施設などなど、蚊対策をしなければならない場所は膨大にある。信仰心なき近隣住民がモンスター的にクレーム入れてくることも想定しなければならない。他方、日本の宗教はどこも多かれ少なかれ「不殺生戒」あるいはそれに類似のものがあります。生き物を殺す物質を大量に散布することに(ある程度仕方ないとしてしても)心理的抵抗はあるようです。
【デメリット】
経済的なところで、相当な葛藤の種になるであろうことは管理人にもすぐ思いつくところです。
*生産量が限れれる
「蚊」という生物と、「ボルバキア菌」という生物、工業的につくれるわけではない2つの要素、大きな律速段階があります。インフルエンザワクチン生産量が「有精卵」に左右されるのはよく知られたところですが、さらに難しいはず。インフルワクチンの細胞培養法のような技術出来るのか否か。
*コストと施設
実験段階ではなく実用化となると、ボウフラを大量に飼って「蚊」を大量に培養する施設が必要。大量のプールに水質管理に温度管理。ボウフラのエサたる大量のプランクトン。蚊が絶対に外に漏れない厳密なハコモノ(トタンと金網の鶏小屋みたいにゆかない)。
それがクリアするとして、BSL-4を造ったのに稼働できないように、地域エゴがモンスター級な日本で稼働できるのか。
*分配の問題:誰が恩恵を受けられるのか?
こうして造られた高価な高価なボルバキア蚊、どこに放つのか。日本の国土は37万平方キロあります。日本の人口は、これが実用化される何年か後までに人口減少しても1億人は下回っていないでしょう。この高価な蚊の恩恵を受けられるのは誰か。おそらくは、インフルエンザのプレパンデミックワクチンのような優先順位論議が必要になってくるのでしょう。権力機構が集中する千代田区? 少子化対策がうまくいって子供の多い地域? はたまた既得権益層の多い地域?
あるいは、高価なボルバキア蚊は基本的に受益者負担のコマーシャルベースです! ということにしたら、田園調布と芦屋の蚊はデングがいないけど、一般庶民は殺虫剤を一生懸命まいているとか。はたまた、過疎化対策に悩む自治体がボルバキア蚊を負担してデングフリーな住宅地として誘致するか・・・
管理人自身、まだこの問題については、ある取材を機に頭の回転が「始まったばかり」です。
これからいろいろディスカッションが必要となってゆきます。
なお、ボルバキア蚊の原理については、わかりやすい解説としては(蚊の話ではないですが)東大杉本氏らのペーパー
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2012/20120106-1.html
の右上の図
さいえんす徒然草にもわかりやすい図があります。
http://blog.goo.ne.jp/itokin_of_joy_toy/e/b540c51b00e1d2292bab2e73ae68119b
報道は日本語報道多数。
http://jcc.jp/news/8781318/
http://digital.asahi.com/articles/ASG9W23G5G9WUHBI004.html
http://gigazine.net/news/20140925-eliminate-the-dengue/
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1409/1409072.html
http://kenkounews.rotala-wallichii.com/inoculated-mosquito_dengue/