新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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デングの2回目感染で重症化(出血熱化)のメカニズムが解明された

2017-11-04 17:03:41 | デング熱

デング熱は、初回感染よりも、複数回目の感染の方が重症化(デング出血熱など)しやすいことのメカニズム解明。

  • 米・ニカラグア合同チーム。スタディはN=6700.2~14歳の小児を12年間追跡。年1回採血し、発熱症状があるたびに医学的評価(診察)。
  • 二度目の感染時に、最初の感染による抗体産生が低下しているときにAntibody-dependent enhancementが起こるのが原因(Antibody-dependent enhancement, or ADE as it’s known in scientific circles, can happen, they reported, when subsequent infection occurs at a time when antibodies generated by the prior infection have fallen to a specific low range.)
  • 今回のスタディでは統計学的には3種類のアプローチがなされたが、3つのいずれも結果が一致。「すべての道はローマに通ず」と。重症化につながりやすい抗体価を見つけたのみならず、3つの異なるアプローチで結果がぴったり一致したのも驚きだったと。

  • 以前にデング熱罹患歴のある子どもで、抗体価があるレベルより低下すると、重症化するリスクが高くなることが判明。この、低下した抗体価(anti-sweet spot )になると重症化リスクは8倍になる。

  • 抗体価が低下していると、侵入してきたウイルスを中和することが出来なくなる。しかし、侵入してきたウイルスにくっつき、細胞に侵入しやすくなり複製しやすくなる。あるレベルの抗体があることは、まったく抗体がない状態よりかえって危険であるというのは直観とあわないが、しかしそれこそがデング熱のトリッキーなところである。そしてみなここで立ち往生する。抗体というのは守ってくれるものだと思われているから。

  • ただし、この知見だけですべてを説明できるわけではない。初回感染で重症化するケースもあり、メカニズムはひとつではない。ただし、この説明がヒトだけに説明できるのは確かである。反対に、抗体価が高ければ、重症化の予防になる。 

  • 以前、キューバの報告で、肥満体ではデングが重症化しやすいというものがあったが、これも同様にAntibody-dependent enhancementによるものではないかと推測される。

  • また、今回の知見からは、デングワクチンの接種にも注意が必要であるといえる。すでに罹患歴のある場合には接種して良いが、これまでまったく罹患歴のない対象に対しては、(下手に低抗体価をつけると重症化リスク高まってしまうので)投与すべきではないということになる。

う~ん、と唸る話です。中途半端な免疫をもっていると、かえって重症化リスク高まってしまう。いっそのこと、そんな中途半端な抗体もってない方がリスク低いと言われているようなものです。

デング熱は、渡航医学的にも大テーマです。海外赴任者を送り出すときのトラベルワクチンに、今後もデングワクチンが入りそうにないことはわかりましたが、では、一度感染したことのある人は日本に帰すべきかどうか。何年か前の渡航医学会のやりとりで、そこまでしなくても良いのではという流れになったように記憶しておりますが、それは、この知見でも変わらないのか。(企業経営的にはデング熱にかかるたびに人事異動ではやってられないという声になりそうですが、まあ、それは置いといても)ディスカッションは望まれますね、とりあえず来来週の合同大会懇親会の場ででも。。。

 

https://www.statnews.com/2017/11/02/dengue-second-infection/

Scientists solve a dengue mystery: Why second infection is worse than first


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