共同通信からご依頼いただいた管理人の原稿、配信されています。
各地方紙で見ることができますが、m3にも配信されていてびっくりしました。
前半は、季節性ワクチン接種是非の件、これは当ブログに寄せられた質問で最多、また、9月の「季節性ワクチンヤブヘブ報道@カナダ」が群を抜いたアクセス数を示したことからの「需要応需型」の記述です。
後半が管理人の主張の部分。日本のワクチンメーカーしっかり育てておかないと、将来(強毒含め)新興再興感染症のとき大変だよ・・・とワクチン安全保障論です。
以下、コピペです。
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季節性の接種は自己判断で 国内メーカー育成が必要 近畿医療福祉大教授 勝田吉彰 識者評論「インフルエンザワクチン」
2009年12月25日 提供:共同通信社
新型肺炎(SARS)が流行した2003年、わたしは外務省医務官として北京に勤務し、社会的混乱を目の当たりにした。その経験から、新型インフルエンザに関する情報を集めて、ウェブサイトで発信している。
そこに最近、季節性インフルエンザのワクチンを接種すべきかどうか、という質問が数多く寄せられている。それに対する答えは「接種するかどうかは自己判断すべきだ」ということだ。
実は季節性ワクチンの効果をめぐっては、いろいろな報告が出ている。
まずカナダでは「季節性ワクチンを接種すると新型に感染するリスクが2倍になる」という報告が出た。これを受け、季節性ワクチン接種を中止したり、延期したりする州が続出した。
それに対しメキシコからは「季節性ワクチンが新型にもある程度効く可能性がある」とする報告がある。さらに米疾病対策センター(CDC)からは「季節性ワクチンは新型とは無関係」との報告が出て、三つどもえ状態にある。
ただし、いずれの報告も決定的ではない。従って季節性ワクチンを接種するかどうかは、自分で判断するしかない。
流行しているインフルエンザは大部分が新型とみられる。新型が出ると、それまでの季節性が速やかに退場するというのが、これまでの歴史だった。季節性にかかる割合は恐らく数%だろう。
(1)インフルエンザが重症化しやすい高齢者かどうか(2)重症化しやすい、ぜんそくなどの持病があるかどうか(3)受験生やプロジェクト責任者などインフルエンザにかかると困る事情があるかどうか-といった点が判断の基準になりそうだ。
一方、新型インフルエンザのワクチンをめぐっては「ワクチン先進国」の欧米各国で混乱が続いた。欧州では"嫌ワクチン"のムードが広がっている。英国の業界誌の調査によれば、看護師で接種すると答えた人は23%だった。
ドイツでは一部で副作用が指摘される免疫増強剤(アジュバント)の入ったワクチンを、一般国民向けに用意する一方で、首相など閣僚向けにアジュバントの入っていないワクチンを米国から輸入していたことが明るみに出て、大きな騒ぎになった。
カナダでは、発注した5千万人分のワクチンのうち3500万人分が使われずに余りそうで、政府が接種キャンペーンに力を入れている。米国では供給が遅れて、接種できない人が続出し、社会問題化した。
そうした混乱を横目に、中国ではワクチン接種が整然と実施されている。効果や副作用を含めて膨大な臨床データが一流の医学誌に掲載され、世界を驚かせた。
日本も整然と接種が進んでいる国の一つといえる。問題は供給体制だ。日本中のワクチンメーカーが束になっても需要を満たすことができず、輸入に頼らねばならないことが明らかになった。
将来、もっと致死率の高い病気が現れたら、ワクチンを生産している国は自国向けを優先し、輸出を絞ることになるだろう。そのときになって慌てても遅いのだ。
国内で必要になる量のワクチンは製造できるよう、国内のメーカーをきちんと育てていく必要がある。この機会に「ワクチン安全保障」をしっかり考えるべきだ。