「サルのマラリアに感染してしまったドイツ人」の2例報告。Plasmodium knowlesi。
- 73歳男性。タイとミャンマーに3週間旅行。ドイツに帰国後翌日から、発熱・悪寒5日間続き地元の病院受診。入院後に意識障害と呼吸不全認められ、ヘリコプターで拠点病院に転送される。拠点病院ではキニーネとドキシサイクリン投与をうけ解熱。急性腎不全のため透析を要したが、こちらは5週間透析継続の後、なんとか回復。
- 52歳女性。タイに3週間旅行。ドイツに戻って16日後から発熱・悪寒。外来受診。artemether/lumefantrine経口投与で回復。
- 両ケースとも確定診断は18S rRNA PCR [1] and DNA sequencing of amplicons confirming more than 99 percent nucleotide concordance with _P. knowlesi_ strains from Thailand and Malaysiaによる。どちらも、他の4タイプは陰性で、サルマラリアの単独感染。顕微鏡診断では他の4タイプと鑑別しにくく、PCR必要。
- サルマラリア(Plasmodium knowlesi)は、熱帯熱・卵型・三日熱・四日熱に次ぐ第五のマラリアとして最近注目されている。特に、ここ最近のエコツーリズム流行など旅行パターン変化により、流行の濃くない地域でも感染可能性あり要注意。
これは教訓的。
渡航先がタイとミャンマー。これは、日本の経済界の「チャイナ・プラス・ワン」の潮流から、日本企業が熱い視線を注いでいる国々で、これらの国々へ派遣される日本人はますます増えてゆきます。H26年版外務省海外在留邦人数調査統計によれば、ミャンマー在留邦人数は対前年度比+42%!と、ものすごい数字になっています。タイも+10%。こうした国々に駐在すると、休日の過ごし方として「エコツーリズム」ということがあります。日本から旅行するのに比べ、そういう奥地に行くのが(起点がそれぞれの国内であるだけに)気軽ですし、その国に住み慣れているだけに気軽になるのです。管理人が中国在勤中も、休日にはチベットに行ったり九寨溝に行ったりする同僚は多々おりました。もちろん日本からの旅行者だって大勢いるでしょう。BE-PALの読者層あたり。
つまり、日本でもサルマラリアの輸入例は増えるだろうということです。
金満国ドイツでは、マラリアを疑いヘリコプターで緊急移送!という事が展開しましたが、日本ではそういう事が出来るのか。
いろいろ懸念は思い浮かぶ報告です。
ソースはProMED
http://www.promedmail.org/direct.php?id=3091357
Published Date: 2015-01-14 13:58:29
Subject: PRO/AH/EDR> Malaria, P. knowlesi - Germany: ex Thailand
Archive Number:20150114.3091357
MALARIA, P. KNOWLESI - GERMANY: ex THAILAND
なお、サルマラリアの動画はこちらです(アルジャジーラ)。
どのような環境にあるのか、マカク猿、「ときどきジャングルに入るよ」とこともなげに語るおじさん・・・
https://www.youtube.com/watch?v=QA7UGyxprdI