逝きし世の面影

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世界的な食料不足は続く、暴動のリスクも=国連食糧農業機関(メモ)

2008年04月16日 | 経済
2008年 04月 9日 19:47 JST
[ニューデリー 9日 ロイター] 国連食糧農業機関(FAO)のディウフ事務局長は9日、食料供給の不足は当面続く見込みで、価格も高止まりするとの認識を示した。
 事務局長は当地で記者団に対し「食料価格が急速に上昇し、世界中で非常に深刻な問題となっており、エジプト、カメルーン、ハイチ、ブルキナファソでは暴動が発生した」と発言。こうした暴動が他国にも広がる可能性があると指摘した。

 また、世界の穀物在庫は1980年代以来の低水準にあるとし、「これはインド、中国などの需要増による。こうした国では、8─10%の国内総生産(GDP)伸び率を背景に、増加した所得が食料に回っている」との見方を示した。





WFP 国連世界食糧計画からの緊急アピール。

WFP Japan Office
22 MARCH 2008
穀物高騰 WFPの支援活動にも大きな支障
穀物価格の高騰が続く中、世界中の貧困層がさらなる窮地に立たされています。世界には、1日1米ドル以下の生活費で暮らすことを余儀なくされている人々が10億人以上いますが、このような人々にとって食糧の値上がりは死活問題です。食事の回数を減らすか、安いが栄養価の低い食事に切り替えるか…いずれにしても、行き着く先は同じ、深刻な飢餓です。

一方、食糧支援の必要性が増す中、WFPの支援活動には深刻な影響が出ています。

去年、WFPは、2008年度(1月-12月)には73カ国で7800万人に食糧支援を実施するとの支援計画を立て、その費用は29億米ドルと試算しました。しかし、食糧の購入価格が去年の6月以降だけでも55%増と著しく増大し、同じ規模の支援を行なうには、当初の見込みより少なくとも5億米ドル多い34億米ドル以上が必要となってしまいました。

このまま穀物高騰が続いた場合には、今まで支援を必要としなかった人々すら食糧を買えなくなり、食糧支援を必要とするようになる可能性があります。しかし、この34億米ドルという数字は、当初予定していた支援計画を実施するために必要な金額であり、このような新たに支援が必要とされた場合にかかる費用は含まれていません。

WFPは国連分担金を受け取っておらず、その活動費はすべて政府や企業・個人からの任意拠出金や寄付金で成り立っています。穀物高騰と原油高はWFPにとって世界規模の緊急事態に他なりません。このままの状況が続けば、食糧を配給する人数を減らすか、あるいは1人あたりに配給する食糧の量を減らすかという究極の選択を迫られる可能性があります。

穀物高騰はすでに、世界中の国で人々の暮らしに大きな打撃を与えています。

中米ではこの1年で、小麦とトウモロコシの値段がおよそ2倍に上昇。これに伴い、エルサルバドルの農村地域における平均的なカロリー摂取量は、2006年5月時点と比べて4割減少したことが、WFPの調査で判明しました。

アフガニスタンでは小麦の値段が1年前と比べて6割値上がりしたため、買えなくなってしまった人が続出しました。そのため、政府と国連は共同アピールを出し、アフガニスタンで255万人におよそ9万トンの食糧支援を実施するため7700万ドルが必要だと国際社会に訴えました。現在、必要資金の3分の2が集まっており、3月初旬にはアフガニスタン各地で緊急食糧支援が始まりました。

今後、ジンバブエ・エリトリア・ハイチ・ジブチ・ガンビア・タジキスタン・トーゴ・チャド・ベナン・ミャンマー・カメルーン・セネガル・イエメン・キューバなどでも穀物高騰による深刻な影響が出ると見られています。2008年03月20日


世界的な食料価格上昇と社会不安
 先ずエジプトのパン騒動の話に眼を通して貰いたい。

1。エジプトでパン不足から高まる社会不安、経済的困窮による自殺者は4000人
 2008年03月17日付クドゥス・アラビー紙(ロンドン)
<昨日、エジプトのムバーラク大統領は、パンの価格高騰と貧困地域での品不足という危機的状況を受けて、軍と警察にパンの追加支給への応援を要請した。スライマーン・アウワード大統領府報道官は記者会見で、「防衛相や社会連帯相を含むエジプト閣僚らと会談したムバーラク大統領は、パンの不足問題を解決するために、軍所属の国民サービス機関と内務省所属の製パン所の応援を仰ぐ必要性があるとの要請を出した」と述べた。
<パンを買う順番が来るのを待っている間に起きた喧嘩や事故で先週、2人のエジプト人が殺された。政府補助を受けていないパンの価格は場合によっては50パーセントも上昇しており、危機解決のために政府は最近になって170億エジプト・ポンド、およそ31億ドル相当を支出したと述べている。専門家筋はこのたびのムバーラク大統領の決定は、社会が暴発しかねない危険域にまでパン危機が到達したことを示していると見ている。


2。中東TODAY- NO・955エジプトのパン騒動限界点を超えた?
<エジプトでは各地で、パンの値上げに抗議するデモが起こり、既に死者も出ているという報道がある。
 このパンの値上げ騒動は、貧民層が買っていた最低価格のパンが、10倍から15倍に値上げされたことによって、起こっているということだ。その主な原因は、小麦の国際価格が昨年の夏から、3倍以上には価格が上昇したことだ。
<エジプトを始めとした発展途上国では、食料(パンなど)の値上げは、簡単に暴動に発展し、体制を揺さぶる危険なものなのだ。

 これはエジプトだけの特殊例でない。米国について次の報告がある。

3。US food prices increase sharply12 March 2008
《摘要》
1)この9ヶ月間で全球的食料価格は40%増嵩し、他方食料備蓄は30年来の低水準だ。上昇する食料費用が全球的な社会不安と経済的困難の主要な源泉になりつつある。
2)米国の場合、価格上昇が住宅市場崩壊、エネルギー費用上昇と人口の大多数の賃金停滞により生み出された問題を複雑にした。定番のアメリカ製食品の小売価格は昨年二桁増した(連邦労働統計局)。ミルクが26%増、鶏卵が40%高だ。
3)ボストン・グローブ紙によると、米国では食料インフレが石油高騰よりももっと深刻な脅威たり得る。平均的家計にとって食料支出の割合が13%であるのに対して、ガソリンがほぼ4%だからだ。

4)昨年の食料価格上昇は5.8%(上記統計局)、そして今年の予測は4%だ(米国農業省)。弱りつつあるドルが、記録的な原油価格及び全球的食糧需要増と相俟って、今後5年間より高率の価格上昇、ひょっとすると年率7.5%を齎すかも知れない、というアナリストがいる。

5)既にカメルーンやエジプトでは死者を出した。中国では悪天候と一般的なインフレとで食料が23%騰貴し、社会的緊張が高まっている。


 さらに世界規模で見ればー
4。Food prices continue to rise worldwide25 February 2008
《摘要》

1)最近の穀粒市場の展開は長引く国際的な供給不足と価格急騰に向かい、数十億人を飢餓と栄養失調に曝している。

2)世界の食料不足は一時的現象或は単純な需給ジレンマと理解することが出来ない。寧ろ、かなりの数の複雑で相互連関した諸力が展開の背後にあり、その凡てが人類のニーズに対して合理的な計画と供給をする上で、資本主義的市場や制度が無能であることを裏付ける。[WSWSらしい意見ー私]

3)食料価格上昇の政治的帰結は食料の純輸入諸国に限られない。米国の場合、記録的な穀粒価格に従って、小売の肉類、鶏卵、畜産品の価格が大跳躍した。

 最後にもうひとつバンコクポストに今日掲載されたAFP記事、「米価格上昇に伴う社会不安を専門家が警告」を挙げておく。特に貧困国で飢えた人民による暴動という亡霊に直面するだろうと言う。因に現在の米のスポット価格はトン当り700ドル、5年前の3倍であり、1000ドルになるかも知れないとタイ輸出米組合は言う。大産地のインドやベトナムが輸出を減らしているのが懸念材料だと。

 上記記事では脇役扱いだが、石油価格が食料価格上昇に大きな影響を持つのは言うまでもない。食料に関連するエネルギー、運輸、肥料ともに石油価格に依存するからだ。食料問題は直接に生存そのものを脅かす、それだけに人々は生きんとして何でもやることを忘れてはなるまい。

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3 コメント

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食料から燃料を作り出す (kaetzchen)
2008-04-16 17:43:30
なんてことが「エコロジー」だという政治的な思惑のために,市場が追随したんじゃないかと私は考えています.要するに農芸化学の研究者たちが研究費を得るために「エコロジー」=食料からアルコールを得るというプランを政治的に出してきた.それを知ったかぶりのゴア氏が啓蒙してノーベル平和賞を取ったり.

先進国の研究者が,一体自分の研究が市場にどのように影響を与えるかという想像力に欠けた,バイオテクノロジーの暴走だと言って良い.理科系の技術について全く無知な文系の市場関係者は単純に儲けがあるかどうかだけで数字を動かす.かつての公害問題同様に,私たち技術者が考え直さなければならない課題だと思う.
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イラク戦争以上のアメリカの犯罪 (ブログ主)
2008-04-16 17:59:50
数千万人の豊かな北の人間が乗る車のガソリンタンクの腹を満たすために、数十億人の貧しい南の人たちの腹が満たされない。
対テロ戦争は数十万人の犠牲だが、対環境問題(CO2)戦争では最悪数十億人の被害が将来予想される。
9・11の数千人の被害などは、問題にもならない程の小さい事件ですよ。
地球の温暖化問題は、壮大な金儲け計画の一環で、ペテンの可能性が大きい。
南の飢餓問題は、これからどんどん大きな問題とした我々にも関係してきます。
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京都議定書の犯罪 (kaetzchen)
2008-04-16 18:11:22
食糧問題で思いだしたのが,二ヶ月前の自民党・中川秀直元幹事長と小池百合子議員ら自民・公明の30人もの議員連盟の発足である.表向きには京都議定書の勉強会だが,実態は小池百合子の擁立だという見方もある.実際,中川氏は自身の中国訪問に女房役として小池氏を同行させていた.この「環境」議連を気になるのは,彼等が小泉チルドレンだということである.要するに福田政権の次は事実上の小泉政権の復活を狙っているのでは?ということだ.

同様に,民主党を引き込むキーパーソンが「拉致問題」の山崎拓議員だ.民主党保守層(つまり前原氏)を抱き込んで,ついでに自民党へ引き込もうという作戦がミエミエ (経団連の奥田前会長が取り持ったとか).「拉致問題」と統一協会の関係がなぜか共産党=赤旗でも出て来ないのか,私は共産党自体の情報網に疑問を感じている部分が大きい.どうも小泉新党は小泉最高顧問・中川秀直党首・前原幹事長の路線になるのではないだろうか.
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