オジサマ専科 Vol.2 Memories母の手帳の設定を超改変してあります。なのでネタバレも含まれております。BOYSLOVEテイストにしてお届けなので、実際の商品とは一切何も関係ありません。もぐ菜は古川透CV:中田譲治しゃん推しなのでよろ。それと古川透氏は黒髪サラサラ和装で物静かな優しいアーカード様をイメージしてねんVv。
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どれぐらいの距離を宛(あ)てどもなく歩いて来たのだろうか??着のみ着のままで、飛び出したので都心と言えども身体が冷える。
古川の自宅からかなりの距離は歩いた。電車に乗ろうとしたが、財布と携帯電話が無いので歩く。
歩道の脇にある地区案内地図を見ると、まだまだ自分の家には、かなり遠いので根気よく歩かないとダメと思う藤宮。
何せ携帯電話がないので友人に、連絡が摂(と)れない。どうしても、疲れたなら交番で電話を借りて友人に連絡をしようかっと考える。
このまま歩くと家に着くのは朝方になりそうだっと。大通りに添いながら藤宮が歩いて居ると、後ろから車のクラクションが何度も鳴らされた。
振り返ると高級外車で藤宮は不審に思う。車が歩道の脇までゆっくりとした運転で近付いて来た。車は止まりドアが開くと、斉藤が運転席から手招きをして居る。
「どうした?? そんな薄着で、どこへ行く??近くなら送って行くよ。」
見慣れた人懐っこい笑顔で藤宮はホッとする。でも、あの時にみたいな事をされるのは嫌。藤宮がまごついて居ると、斉藤は苦笑いをする。
「あの時は君には悪い事をしたね。ほら、乗りなよ。おイタはしないからさ。」
片目をつぶりウインクをする斉藤。
「あの、」
「オジサマが声をかけた時は遠慮はしちゃダメ。」
斉藤は後部席のドアを開く、藤宮の身体にそっと腕を廻し車内に乗る様に促す。すんなりと藤宮は車に乗せられてしまう。
そんな藤宮の顔を見つめ斉藤は察した。
泣き腫らした瞳だな。透が泣かしたか?? あいつでも、人を泣かすんだな。
斉藤も運転席に乗りドアを閉めてシートベルトを着用し、車道の安全確認を済ませハンドルを握り車を発進させ走り出す。
「お坊ちゃんは、どこへ行くのかな??」
藤宮は声を上げて泣き出ししばらくすると静かになる。土曜の夜中にしては車の交通量が多く何度も赤信号で停まる。
「おいおい、そうだ、オジサマは暇で独(ひと)りぼっちなんだ。松に遊ぼうと電話したら、今日は接待を受けるからうんぬんと言ってさ。俺をその接待に誘うんだぜ。せっかくの休みなのに、なぁんで俺が松の為に仕事をせねばならんちゅーの。透にも電話したけど電話出ねぇし。明日の夕方までプール貸し切ったんだ。一緒に泳がない??」
赤信号で停まり運転席から斉藤が振り返ると、後部席で藤宮は横になって泣き疲れ寝て居た。
「寝る子は育つと言うけどなぁ。しゃあないね。」
斉藤が明日の夕方まで貸し切ったプールはホテルのスイートルームの宿泊付きのプール。
斉藤は宿泊するホテルに向かう。
幼い寝顔の藤宮に初恋の女性の面影(おもかげ)─────────
泣いた子を相手に聞ける訳はないと。なぜ、泣いたのかさえも分かる。 忘れる訳がない、あの人の名前を……
斉藤は囁く様に名前を呼ぶ。
彩子─────────────
その名前を呼ぶと彼女が振り返え、自分を見つめる幻影が過(よ)ぎる。斉藤は藤宮が自分の子供であったのならば??
それをどう決めるかは、藤宮自身であると自分に言い聞かせる。
もし、藤宮が泣いてなかったら母親の事を聞きたかったが、藤宮が泣いて居る事情を察すると聞くのは宜しくないと結論に達した。
先に泣かすなよ、透め。俺だって知りたいんだ。あんだけ、色々と調べたのに何も分からなかった彼女の居場所。
斉藤は通り過ぎて行くヘッドライトを見つめ、ため息に似た吐息(といき)をついた。空は深夜の闇へと変わり始めた。
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