マンマ・ミーア! Mamma Mia! 2008

2009-02-21 09:22:48 | Weblog
マンマ・ミーア! Mamma Mia!

U.S. Release Date: 2008

■監督:フィリダ・ロイド
■キャスト:メリル・ストリープ/ピアース・ブロスナン/ジュリー・ウォルターズ/クリスティーン・バランスキー
■音楽:ベニー・アンダーソン
■字幕:石田泰子
■お勧め度:★★★★

 「往年の人気ポップグループABBAのヒットナンバーで構成され世界中でロングランとなった傑作ミュージカルを銀幕へと昇華したロマンティック・コメディ。メリル・ストリープら豪華キャストを迎え、ギリシャのリゾート地を舞台に、結婚式を目前に控えた娘とその母親をめぐる24時間の一騒動を歌と踊りで陽気に綴る。監督は舞台版も演出し、これが劇場長編初メガホンのフィリダ・ロイド。
 ギリシャの美しいリゾート地、カロカイリ島。小さなホテルを営む母ドナと2人暮らしのソフィは、恋人スカイとの結婚式をいよいよ明日に控えていた。またそんな彼女には、“父親と結婚式のヴァージン・ロードを歩きたい”という密かな夢があった。しかし、母子家庭で育ったソフィは未だに父親が誰なのかを知らない。そこで母の昔の日記から、父親であろう3人の男性、建築家のサム、銀行マンのハリー、冒険家のビルを探り当て、ドナに内緒で結婚式の招待状を送ってしまっていた。やがて、道中鉢合わせた3人が揃って到着。ソフィは結婚式のサプライズのため、ドナの目が届かない場所に彼らを匿うことに。ところが、ドナが偶然3人を目撃してしまったことを機に、様々な問題が湧き起こっていく…。」(allcinema.net/より。)

なんとなく観るなら面白いし楽しい作品ながら、これもやはり先週の「レボリューショナリー・ロード」と同じで、本来は舞台作品を無理矢理映画作品にしたことでアンバランスな部分が目立つ。ただしいい点としては、最近のミュージカル作品と違って、元のミュージカルをそのまま映画化しようとした事だろう。主演のメリル・ストリープとピアース・ブロスナン以外は、ほとんどをミュージカル専門の役者で占め、本物のミュージカル感を味わえる。ミュージカル役者と映画役者はかなり違って、舞台でやる事からそもそも顔立ちが違うし、演技というか動作が舞台用なので、普段、ミュージカルを観られない場合は、本作品でミュージカルの良さや楽しさがかなり味わえる。ただしそれを映画化すると問題が起きるわけで、端的な例が、何故メリル・ストリープとピアース・ブロスナンなのか。答えは簡単。映画だから。ミュージカルをそのまま映画化するなら、この二人は余計で、ミュージカル役者を主演に使えば何ら問題は起きない。ただしそれだと客が入らない。要するに興業収益の問題。これはおそらく監督ではなくて製作者か配給会社の無理強いだろう。しょうがないので、監督さん、最大限の努力をしたような。たとえばメリル・ストリープの親友役の二人はかなりな実力派のミュージカル役者。特にノッポのクリスティーン・バランスキーは、ミュージカル界ではトップクラスだろう。この二人が歌っている時は綺麗にハモっていていいが、問題なのはこれにメリル・ストリープがリードヴォーカルとして加わった場合。メリル・ストリープは彼女なりに最大限の努力をしているものの、所詮は映画俳優であってミュージカル役者ではない。結果としてバックの二人がハモれない状況になり、お世辞にも歌が巧いとは言えないメリル・ストリープの引き立て役になってしまう。監督としては主演の二人にもミュージカル役者を使いたかっただろうし、その方が作品としてははるかにいい物になっていた事は間違いない。「シネマ歌舞伎」を見れば、この事は一目瞭然だろう。同じことが何故ハリウッド作品で出来ないのか。興業収入。最近の洋画の不調は、ネタ切れのヤキ回りと、ここらへんの根本的な考え方にも問題があるだろう。時代的なものもある。60年代、70年代とかそれ以前にミュージカル映画が盛んだった頃は、歌って踊れる映画俳優はいくらでも居た。それらが主演するのだから、上のような問題はそもそも起きない。その後、音楽自体が下火になるというかダンス系で堕落し、スタンダードとして残るような曲も書けなくなり、むしろそれを補うために映画俳優を使って繕っていたに過ぎない。これが悪循環になって、ミュージカル映画が加速度的につまらないものになってしまった。これを防ぐ試みもなされたが、賛否両論で、結局は定着しなかった。端的な例が、おそらく、特に日本人なら多くが知っている「シェルブールの雨傘」(1963)。この作品では興業収入の関係で主演にカトリーヌ・ドヌーヴを使ったが、歌えないので音楽担当のミシェル・ルグランが、監督を説き伏せて姉きだったか妹だったかににアフレコで歌わせた。作品自体は素晴らしいものの、この事の不自然さでこの試みはボツ。何故できないのか、ミュージカル映画をミュージカル役者で占めるという事が。特に主演クラス。本作品ではむしろ主演の二人がオマケ的で、見所はクリスティーン・バランスキーとかのミュージカル役者になってしまっている。それでも洋画界の現状を考えれば、本作品はミュージカル映画としては最高の出来だろう、この数十年間で。例によって余談ながら、皮肉なのは、ちょうどABBA(これ、「B」をひっくり返せない)が出だした頃が、ちょうど音楽が死に始めたころで、それを題材に選んだというのを、密かな批判と見たい。誰の?踊ってた方々。そう、あなた達なのです、音楽を殺したのは。


ヒアリング度:★★★
感動度:★★★
二度以上見たい度:★★
劇場で見たい度:★★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★★
ムカつく度:
考えさせられる度:★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)