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阪神間で暮らす

テレビを持たず、ラジオを聞きながら新聞を読んでます

文子おばあのトーカチ(米寿祝い)@ゲート前(三上智恵)

2017-10-09 | いろいろ

より

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第73回:文子おばあのトーカチ(米寿祝い)@ゲート前(三上智恵)


 9月27日は旧暦の8月8日。「八」が二つ重なって88歳のお祝いの日だ。日本全国に米寿のお祝いはあるが、沖縄では米寿とは言わず「トーカチ」と呼び、特別盛大にお祝いをする。ご存知、日本一有名な「反戦おばあ」となった島袋文子さんのトーカチ祝いは、毎日座り込んで基地建設を止めたい人と機動隊が衝突する、あの辺野古のゲート前で行われた。

 普通は、自宅にお飾りをして黄色い着物を着せられて祝う。最近はホテルで親戚縁者と会食、そして写真撮影なんていう洒落た家も増えてきたが、機動隊とトラックに囲まれたテントで祝った人は沖縄史上初だろう。おばあを慕う仲間たちが数ケ月がかりで準備し、そして400人余りの県民がお祝いに駆けつけ、日中は工事車両を近寄らせなかった。半日とはいえ、またも歌や踊りと笑顔といっぱいの沖縄文化の力で、国の暴力を押し返した格好だ。

 沖縄県警も手出しをしなかった県民的イベント「トーカチ」。それはいったいどんな行事なのか。今回はちょっと民俗学者のふりをして説明をさせてほしい。

 沖縄の長寿の祝いといえば、還暦(60歳)、トーカチ(88歳)、カジマヤー(97歳)が3大行事。親族・地域をあげて歌や踊りを繰り出して寿ぎ、そして「あやかりの儀」といって、長寿のものから目下のものに盃をわたす所作に象徴されるように、長寿という強運と幸福に参列者もあやかる、分けてもらうことが大事なポイントになっている。本人に「おめでとう」というだけでなく、これを祝うことで参加者も長寿にあやかり、みんなの寿命も延びるというWIN-WINの法則なので、我も我もと駆けつける人気行事になっているのだ。

 なぜ、トーカチというのか。トーカチとは、桝に入れたお米を水平にしてすりきり、正確に計測するときに使う「斗掻(とかき)」という道具のことだ。トーカチの祝いでは、かごに米をいっぱい入れて、そこにこの斗掻の竹をいくつも刺して、参列者にそれを持って帰ってもらうという地域もある。ではなぜ、斗掻道具が米寿のお祝いに使われるのか。本土では、八十八が漢字で書くと米になり、米にちなんだ道具だからだと解説する向きもあるが、それだけでは説得力に乏しいだろう。

 大学院で教えていただいた沖縄国際大学の遠藤庄治教授(故人)は7万話を超える沖縄民話を取集した民話研究の第一人者であったが、その遠藤先生が集めた民話で、米寿祝いの由来にかかわるこんなお話を思い出した。

 しかし、この民話には八に八でめでたい漢字であるところの「米」というモチーフは出てこない。でも寿命を決める神さまが人間の命を測り、調整していること。そして心から感謝し願うことで運命は変えられるという庶民の希望が盛り込まれている。この話ともう一つ、古くから伝わる琉歌を合わせて読むと、桝に、命を表す米、そしてすり切って測る道具の斗掻という、米に関する道具のイメージは立体的になってくる。


米のトーカチや
切り升どやゆる
盛着のカジマヤゆ
御願さびら

 人間はそれぞれ大きさの違う桝を持っていて、天が決めた寿命というものがある。そうだとしても、神さまどうか杓子定規に斗掻で「はいここまでね」と決めないでください。うちのばあちゃんにはおまけして、桝の上にお米を山盛りにしてやってくださいね、という家族の思いが込められた歌だと思う。だからこれは私の解釈だが、斗掻というのは命の采配を決める神さまの道具なんだと思う。斗掻の神さま、こんなに長生きさせてくれて感謝いたしますが、もう斗掻は置いて命の期限を測らずに、後は天の恵みの日々を送らせてくださいという気持ちが、沖縄の民話や歌を読み込むと豊かに表現されているのだ。本土の米寿祝でも、米を測る道具は使われている。なのにうまく説明がなされていない。本土で薄れた民俗の意味が沖縄の行事から逆照射できる事例はたくさんある。きっとトーカチもその一つなのではないだろうか。

 なんちゃって民俗学者の解説が長くなったが、もう一つ、VTRの中で爆笑を誘っている、糸満市からやってくる島ぐるみメンバーの出し物について簡単に説明したい。これは本土にもある「戻り駕籠」という滑稽踊りの一つで、沖縄でもよく演じられる。

 この醜女役はたいてい口紅を塗りたくったおっさんが務める。手拭いを開いた瞬間、観衆は大爆笑という塩梅だ。おばあは糸満で育ったので大の芸能好きで、「戻り駕籠」の出し物をとても楽しみにしていた。旧習が残る南部糸満は村行事も多く、芸達者ぞろい。だから期待値も高く、片道2時間近くかけて辺野古まで通ってくれる糸満の人たちに、観客席からはやんやの拍手が送られた。

 名護市の稲嶺市長、ビッグサプライズで登場した歌姫古謝美佐子さん、途中雨に見舞われながらもとても贅沢な見どころ満載の出し物が続き、笑いと熱気でおばあのトーカチは3時間を超えるお祝いとなった。これには寿命の神様も計測を忘れて楽しまれたことだろう。文子おばあは百二十(ひゃくはたち)までの寿命が許されるに違いない。

 私はこの楽しい動画を、沖縄バッシングをする人たちにまず見てほしいと願う。辺野古の基地反対闘争に難癖をつけたい人々は必ず「地元の人はほとんどいない」と決めつける。「プロ市民だ」「セクトが入っている」と言いたがる。今を時めく小池百合子さんは、2010年6月3日のツイッターで「辺野古の座り込みの1列目は沖縄のおじいさんおばあさんだが2列目からは県外の活動家がずらり」「カヌーを漕ぐのもプロ、この図式が報じられることはない」と書ききっている。この動画を見てもはたして同じことがいえるだろうか。「恥ずかしい偏見をばらまいてすまなかった」と言ってくれるのではないだろうか。

 現場に来たこともない、確かめる慎重さもなく、都合のいいフェイク情報をたれ流す程度の政治家を担ぎ上げて、今、大政党が崩壊していく。日本の政治状況は本当にお寒い。このトーカチに集まった人々の言葉、芸、熱気、身のこなし、そこから立ち上がる文化の力、真心、そして背負っている歴史と本土の何倍も平和を求めるエネルギー。これらのものが、「地元の人は最前列だけ」と決めつける人々が目を背けたいものなのだ。

 だから私は動画を撮る。テントに来なくても嘘は嘘と確かめることができるのだから、そのお手伝いができるなら安いもんだ。同じ国に生き、長寿を祝う気持ちになんら変わりはない。米寿の由来も、行事の形も形骸化しているように見える中、深いところで同じ文化を共有してきた月日が柔らかい光を放って横たわっている感触を確かめることができるだろう。

 この国に生きる者たちを結びつける大事なもの。それはなんだろうか。私は、それは足元深く、心の奥深くに眠っていると思う。政策論争なき空中戦で、今月、新しい国の形が決まるのだという。その空中を見つめていても、希望は何も見えてはこない。




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10月22日に安倍総理を辞めさせるシナリオその2

2017-10-08 | いろいろ

ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

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10月22日に安倍総理を辞めさせるシナリオその2

 「希望の党」が仕掛けた現在の政局は、権力を私物化する「安倍一強政治」を終わらせることに目的はある。それを直ちに実現するには民進党を現実主義とリベラルの二つの勢力に分ける必要があった。

 安保法制の強行採決に反対する4野党共闘は間違いではない。しかし安倍総理が延命のために仕掛けた総選挙を倒閣のチャンスにするには、安倍政権に代わる新政権が直ちに安保法制廃止を決定する訳にいかない。それをすれば北朝鮮情勢が緊迫する中で日米関係は混乱し政権交代は失敗する。

 そのため安保法制廃止ではなく「集団的自衛権の限定的容認」の「限定」を強く主張できる体制を作る必要があった。対米従属一辺倒の安倍政権では米国の言いなりになるだけだが、「安倍一強」を解体すれば、安保法制に反対のリベラル勢力と新政権とがかつての自民党と社会党のように水面下で手を組み「限定」を主張することが可能となる。

 そのため民進党を安保法制に柔軟な勢力と共産党や社民党と連携する勢力に分け、政権に参画する議員と政権に反対を唱え続ける議員に「選別」するのが「安倍一強」を終わらせるシナリオの第一段階だった。

 安倍総理が勝てるはずと思って仕掛けた解散・総選挙はそのシナリオによって打ち砕かれたと思う。安倍総理は総選挙の勝敗ラインを過半数としたが、民進党の多くが「希望の党」に入党したことで、過半数は難しくなったというのが大方の見方である。ただし「安倍一強」を終わらせるにはそれだけで十分ではない。第二、第三のシナリオも必要になる。

 小池百合子氏が選挙に出馬し全国を駆け回れば自公は過半数割れが確実視される。しかしそれでも自民党は比較第一党の座を確保する可能性がある。「希望の党」が単独で過半数を制しなければ自動的に小池総理誕生にならない。

 自民党が初めて野党に転落した1993年の総選挙で自民党は過半数を失ったがそれでも比較第一党であった。宮沢政権はどこかの政党と連立して過半数を得れば政権を維持することが出来た。ところが新生党の小沢一郎氏が自民党より先に8党派をまとめ上げ、日本新党の細川護熙氏を総理に担いだことで自民党は野党に転落した。

 あの政権交代は選挙の結果ではなく小沢氏の政治力が自民党を上回った結果なのである。今回も「希望の党」は野党第一党にはなるだろうが単独で過半数を超えたり比較第一党になるのは難しいと思う。従って小池氏がすぐに総理になれるわけではない。

 「希望の党」が安倍総理と盟友関係だった「日本のこころ」の中山恭子氏や「日本維新の会」の松井一郎知事と連携し、あるいは公明党の候補者がいる選挙区すべてに候補を立てず、国会の首班指名でも「山口那津男氏の名前を書く」と小池氏が発言したのも、従来の保守支持層を取り込む狙いがあるのと同時に単独過半数は難しいと思っているからではないか。

 勿論、自民党が過半数割れすれば安倍総理は責任を取らなければならない。しかし安倍総理は07年の参議院選挙で惨敗したにもかかわらず総理の座に居座ろうとした人物である。何をやりだすか分からないところがある。

 ・・・・・。




別Webより Plus

 メディアは小池氏の国政出馬の可能性を連日話題にしているが、5日の昼には前原民進党代表の要請を受けてもなお小池氏は出馬の意思がないと明言した。その際のぶら下がり会見で小池氏は意味深長なことを言った。

 「羽田政権の後、自民党は『禁じ手』を使い、社会党の村山党首を担いで政権に復帰したことを思い出した」と発言したのである。93年に小沢氏の政治力に敗れて政権を失った自民党の反撃は、まず細川護熙氏のスキャンダルを攻撃し、細川氏が政権を投げ出すと、次に政権内部で小沢氏と対立していた社会党とさきがけを引きはがし、社会党の村山党首を担いで自社さ連立政権を誕生させ権力を奪い返した。

 その時、前原氏はさきがけで菅直人氏や枝野幸男氏と行動を共にし、一方の小池氏は小沢氏の側近として新進党にいた。自民党は亀井静香氏や野中広務氏、加藤紘一氏らが社会党を口説いて村山氏を総理に担ぎ、権力を握るためには何でもやるという政治の一面を国民に見せつけた。

 その話を前原氏と語り合ったということは、「禁じ手」を使ってでも「安倍一強」を終わらせる考えのように聞こえる。自民党の中に手を入れ自民党の分裂を誘う政界再編を視野に入れたかのような発言である。一部では石破茂氏の自民党離党が噂され、国会の首班指名で「希望の党」は石破氏を担ぐという説も出てきた。

 また小池氏は5日の会見で「日本維新の会」が松井一郎大阪府知事と片山虎之助参議院議員の二人が共同代表を務めている例にふれた後、誰を首班指名するかはこれから考えると言った。自分は出馬せずに都知事を続け、国会議員の誰かを共同代表にするという意味である。

 これまでメディアは小池氏出馬を前提に、後継の都知事に誰がなるかに注目してきた。元神奈川県知事の松沢成文氏、都知事選挙に立候補したことのある細川護熙氏、果ては小泉純一郎氏、野田聖子氏、蓮舫氏の名前まで挙がっていた。いずれにしても小池氏が都知事を辞めるにはアッと驚く有力後継者でなければ都民も国民も納得しない。

 もし小池氏が選挙に出馬しないとなれば「希望の党」に対する期待は急速にしぼみ選挙結果に大きなマイナスとなるが、そのマイナスを埋めるにはこちらでもアッと驚く有力者が共同代表にならないとシナリオの効果はなくなる。そこのところが前々回のブログで書いた小池氏の「最大の勝負手」になる。

 民進党を二つに分けるために採られた「選別」の手法が「排除」の論理に傾いたため、「希望の党」の入党のハードルが高くなり、それが広く反発を招く結果になったのは93年の教訓とは異なる展開である。小池氏本人はその後「寛容」を口にして反省の姿勢を見せているが、反発を抑える効果的な手を打たないと「安倍一強」を終わらせるシナリオの意味がなくなる。

 これから注目されるのは8日の日曜日に日本記者クラブで行われる各党党首による討論会である。「希望の党」の代表として小池百合子氏が参加することになっているが、それまでに「最大の勝負手」を国民に明らかにしないと、自民党が言うように「希望」が「失望」に代わることになる。
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「稲田朋美」お詫び行脚で語った大臣辞任「裏話」

2017-10-07 | いろいろ

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「稲田朋美」お詫び行脚で語った大臣辞任「裏話」

“防衛省、自衛隊としてもお願いしたい”

 都議選の演説で迷言を放ち、自民党の大敗北に貢献。さらに、PKOの日報問題で、破棄されたはずの文書が実は保管されていたことを知っていたという疑惑が浮上し、ようやく7月末に防衛相を辞任した稲田朋美氏(58)。表舞台から姿を消した彼女はその後、地元の福井1区で、“お詫び行脚”を続けているという。

地元紙記者の話。

「お盆明けあたりから、地元で彼女の姿をよく見かけるようになりましたね。秘書を伴い、市会議員やJA幹部など、後援者ひとりひとりを回っては深々と頭を下げ、『これからは、初心に立ち返って頑張りますので、またよろしくお願いします』と、涙を浮かべていました。当初こそ、頬もこけ、表情もやつれ、憔悴しきっているという印象でした」

 しかし、

「マスコミが衆院解散の第一報を報じた直後、地元の敬老会で挨拶したのですが、選挙モードに切り替わっていましたね。謝罪の言葉もそこそこに、“地元のおっかさんとして頑張ってまいります”と声を張り上げ、笑顔も晴れやかでした」(同)

 もっとも、まだここまでなら他の“しくじり先生”らの振る舞いと大差はない。

「先日会った際、大臣辞任の経緯について本人の口から説明があったのですが、その内容が驚くものでして」

 とは、彼女の有力後援者。

「彼女曰く“官邸が岡部さん(陸幕長)だけじゃなくて、黒江さん(防衛事務次官)まで辞めさせると聞き、官邸にすぐにアポを取り、総理に自分も一緒に辞任することを申し出た”そうなんですが……」

 稲田氏の辞任裏話は続く。

「“安倍総理は、『稲田さんまで辞める必要はない』と、何度も突っぱね、辞任をなかなか許してくれなかった”と」(同)

 それでもなお、

「“自分の信条として、あの2人が辞任するのに、自分だけ大臣の座に残ることなんて絶対にできない。辞めさせてくださいと懇願し、ようやく総理に辞任を認めてもらえた”と仰るんですが、果たして安倍さんがあの時、そこまで彼女を庇うものかと、さすがに疑問に思いました」(同)

 政治ジャーナリストが呆れる。

「この期に及んで安倍首相からの寵愛をひけらかし、虎の威を借るあたり、自分が犯した失態を早くも忘れているとしか思えません。今回の選挙もさしたる対抗馬が出ず、楽勝ムード。当選して禊ぎが済めば元通り、と勘違いしているのでは」

 政治家、人間としても、一からの出直しをお願いしたい――。
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歴代官房長官会見を500回以上取材した記者が見た“ガースー決壊”

2017-10-06 | いろいろ

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歴代官房長官会見を500回以上取材した記者が見た“ガースー決壊”

菅官房長官記者会見はどこまで「強権化」されるのか 南 彰

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 衆議院が解散され、国会議員の姿もまばらになった東京・永田町。その一角で続く数少ない政治家による定例記者会見が、首相官邸での官房長官会見だ。平日の1日2回。あらゆるテーマの政府見解を問うことができる。

 10月2日は「希望の党」を立ち上げた小池百合子・東京都知事の衆院選出馬に関する質問が出た。菅義偉官房長官は「まず小池都知事の出馬はご自身で決める問題であって、政府としてコメントすることは控えるべきだ」と断った上で、「国を思うのであれば堂々と出馬宣言されて、真っ正面から政策論争をやっていくことが必要だというふうに、私自身、心から思っております」と自身の感想を述べた。

私には答えない権利がある

 第2次安倍政権になって4年9カ月。一貫して「政府のスポークスマン」を担う菅氏のバイブルの一つが、アメリカのパウエル元国務長官が記した『リーダーを目指す人の心得』だ。

 記者会見に臨むコツとして、「1.彼らは質問を選べる。君は答えを選べる。2.答えたくない質問には答えなくていい」と書かれたくだりがある。

 記者には質問する権利があるが、私には答えない権利がある――。

 こう受け止めた菅氏は、インタビューなどで「これを読んで気が楽になった」とたびたび口にしている。

 そんな菅氏が最近、本格的に「答えない権利」を行使し始めている。

 質問を求める記者が手を挙げているにもかかわらず、会見場を後にするようになったのだ。長官会見は記者クラブの主催で、これまで時間制限はなかった。自民党、旧民主党政権を通じて、これまで500回以上は参加している官房長官会見で初めて見る光景だった。

 自身も、9月12日の記者会見で「打ち切り」にあった。国会での説明を覆す「新事実」が次々と明るみに出ている森友学園の国有地売却問題に関して尋ねていた時だ。「すいません」と言って手を挙げていたが、菅氏は、主催者である記者クラブ幹事社の番記者を見つめ、同意を求めた。

 「(もう)いいでしょ」

 記者が押されるように「いいですか」と口にすると、間髪入れずに司会の官邸スタッフが「はい、ありがとうございました」と終了を宣言した。

東京新聞・望月記者の「追及」が生まれた理由

 これまで「鉄壁のガースー」と呼ばれてきた菅氏が、会見を早く切り上げたい心情はわかる。

 「全く問題ない」「指摘は全くあたらない」――。そうして記者の質問を一刀両断する菅氏の答弁スタイルが、安倍首相の友人が理事長を務める加計学園の獣医学部新設問題をきっかけに通用しなくなったからだ。

 今年5月、「総理のご意向」と書かれた文部科学省作成の文書が報道で明るみに出た当初、菅氏は「怪文書みたいな文書」といって一蹴しようとした。ところが、前川喜平・前文科事務次官が文書の存在を証言。菅氏は前川氏に対し、「地位に恋々」と政府の会見では異例の個人攻撃まで行い、火消しに走ったが、前川氏に続いて現職官僚の証言も相次いだ。政府見解の信用性が揺らぐなか、東京新聞社会部で加計問題の取材を進めてきた望月衣塑子記者が長官会見に参戦し、1日に23問の質問を重ね、政府は文書の再調査に追い込まれる。

 それを契機に、森友・加計問題に限らず、「安倍1強」で起きている様々な問題への質疑が望月記者を中心に活発に行われるようになり、菅氏が連日のように矢面に立たされることになったのだ。

 こうした追及が長官会見に集中する背景には、首相に対する日常的な取材の場がなくなったこともある。

 「私がごちそうすることもあるし、先方が持つ場合もある」

 安倍首相は7月24日の衆院予算委員会で、加計学園理事長との食事代についてこう説明した。首相は自身が議長を務める会議で獣医学部新設に道を開いた昨年後半に会食を重ねており、関係業者からの供応接待を禁じた大臣規範に反する可能性が生じる答弁だ。日々のぶら下がり取材があれば、鳩山由紀夫元首相が母親からの多額の資金提供の問題で追及を受けたように、費用負担の詳細が連日問われただろう。しかし、菅直人内閣だった2011年、東日本大震災への対応を理由に中止され、安倍内閣もそれを踏襲した。官邸への取材機会が狭まる中、長官会見にまで事実上の時間制限が設けられようとしているのだ。

6年前の会見ルール強化と「質問打ち切り」

 疑問や政府答弁の矛盾が積み上がっているのに、問うべきことが問えない。

 いま痛感するのは、6年前の判断ミスだ。

 私は野田佳彦内閣で1年4カ月間、官房長官の番記者を務めた。

 当時、司会の官邸スタッフに「挙手の上、社名と氏名を名乗ってから質問して下さい」と求められるようになっていた。私は先輩記者から「長官に質問者の指名権を与えるようなことをせず、矢継ぎ早にどんどん質問しろ」と注意されたが、「時間の制限はなく、全ての質問に答えているので、あまり波風立てなくても…」と要請を受け入れてしまった。

 ところが、安倍内閣になり、この要請はより厳格となる。

 関連質問であっても、1問ごとに社名と氏名を改めて名乗らなければ、司会者が質問を途中で遮ってくる。疑惑の追及には更問いが不可欠だが、そのリズムも悪くなる一方だ。そして、8月後半から「公務があるのであと1問」と司会が時間制限できるルールが設けられ、打ち切りも頻発するようになった。

 指名権を握った菅氏は記者を選別し、時に「質問に答える場ではない」と言い放つような記者会見の現状は、6年前の延長線上にある。

このままでは「第二の望月記者」は現れない

 慣れない官邸での会見に1人で乗り込み、「総理のご意向」文書を政府に認めさせる原動力となった望月記者の登場から4カ月。官邸報道室は望月記者の細かいミスを捉えて、「国民に誤解を生じさせるような事態は断じて許容できない」と東京新聞に抗議文を送るようになった。「鉄壁」と言われた菅氏も会見で「臆測に基づく質問には答えない」など、個人の感情をむき出しにするようになっている。

 「長官は、女性からは矢継ぎ早にどんどんどんどん言われるよりも、やはりちょっと控えたほうがお好きなんでしょうか」
 「まぁ、そっちのほうがいいですね。へっへ」

 フリーの女性ジャーナリストの質問に一人で大笑いする場面もあった。そうした菅氏の姿に、近くで取材していて同情する番記者もいるだろう。また、「ジャーナリストの鑑」として評価された望月記者に嫉妬を感じる記者も少なからずいる。

 時間制限のルールは、政治部の番記者の質問がひととおり終わった後に、司会が「公務があるのでご協力を」とアナウンスするのが通例で、適用されるのは望月記者ら少数だ。しかし、この新たなルールが定着すれば、「第二の望月記者」は現れない。やがては番記者の質問も打ち切られる日が来るだろう。

 菅氏の「答えない権利」を放置せず、政府に説明責任を果たさせるよう力を合わせるのか。

 それとも「質問に答える場ではない」と言われるような記者と「私は違う」と思うのか。

 「小池劇場」に揺さぶられる政治取材の現場で、一人一人の記者の判断が問われている。
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啄木が似合わない橋下徹と小池百合子(佐高信)

2017-10-05 | いろいろ

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啄木が似合わない橋下徹と小池百合子(佐高信)


山本有三の名作『女の一生』に、主人公の允子が旧制高校に入った息子がハイネの本を読んでいるのを知って微笑む場面がある。自分も若いころ、ハイネの恋愛詩を胸をときめかせて読んだのを思い出したからである。

しかし、息子が読んでいたのは、革命詩人となった後期のハイネだった。

日本が軍国化していく中で、「危険思想」をもつ息子は逮捕される。允子は安心していたのにである。

「前期のハイネ」と「後期のハイネ」のコントラストは忘れがたい印象を残すが、石川啄木の場合も「前期の啄木」と「後期の啄木」は違うと言えるだろう。数え年でもわずか27年の生涯の啄木を「前期」と「後期」に分けるのは無理があると思うかもしれないが、後期の社会化した啄木と前期の啄木は明らかに違う。

その啄木に「性急な思想」と題した小論がある(岩波文庫『時代閉塞の現状 食うべき詩 他十篇』所収)。

「最近数年間の文壇及び思想界の動乱は、それにたずさわった多くの人々の心を、著るしく性急にした。意地の悪い言い方をすれば、今日新聞や雑誌の上でよく見受ける『近代的』という言葉の意味は、『性急なる』という事に過ぎないとも言える」

こう書き出されたその論は「近代人の資格は神経の鋭敏という事であると速了して」といった皮肉を入れながら、「性急な心! その性急な心は、或は特に日本人に於て著るしい性癖の一つではあるまいか、と私は考える事もある。古い事を言えば、あの武士道というものも、古来の迷信家の苦行と共に世界中で最も性急な道徳であるとも言えば言える」と続く。

私も十二分にセッカチだが、一般的に性急はタカ派と結びつき、他人が自分の思い通りに動かないのが気に入らない。のんびりとした人間にイライラし、統制もしくは矯正して秩序の中にはめ込みたがるのである。

「大阪維新の会」を始めた橋下徹がその典型だろう。自民党よりタカ派の性急な思想を彼は持っている。同じく“東の維新”の小池百合子も政党を渡り歩いたことでわかるように、そうした傾向を持っているのではないか。

小池は橋下よりタヌキだから、それを煙幕に包んでいる。彼らには、たとえば啄木の次のような歌は似合わない。

◯いらだてる心よ汝はかなしかり
いざいざ
すこしあくびなどせむ

◯路傍に犬ながながとあくびしぬ
われも真似しぬ
うらやましさに

啄木の「性急な思想」から、もう少し引こう。

「性急な心は、目的を失った心である。この山の傾きから彼の山の頂きに行かんとして、当然経ねばならぬところの路を踏まずに、一足飛びに、足を地から離した心である。危い事この上もない。目的を失った心は、その人の生活の意義を破産せしめるものである。人生の問題を考察するという人にして、もしも自分自身の生活の内容を成しているところの実際上の諸問題を軽蔑し、自己その物を軽蔑するものでなければならぬ。自己を軽蔑する人、地から足を離している人が、人生について考えるというそれ自体が既に矛盾であり、滑稽であり、かつ悲惨である」

学生時代に入っていた寮の日誌に、ある友が女性の似顔絵を描き、啄木の歌を添え書きしていた。

◯世の中の明るさのみを吸ふごとき
黒き瞳の
今も目にあり

これはやはり「前期の啄木」の歌なのだろう。

(さたか まこと・『週刊金曜日』編集委員)
※原文では「あくび」は漢字表記
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解散は詐欺師の手口 和田秀樹氏が懸念する感情的な日本人

2017-10-04 | いろいろ

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解散は詐欺師の手口 和田秀樹氏が懸念する感情的な日本人

 テレビでもおなじみの人気精神科医である和田秀樹氏は、この国の現状を憂えている。近著「この国の息苦しさの正体」で、日本人が感情に支配されるあまり、生きづらい社会になってしまったメカニズムを鋭く分析。急転直下の解散・総選挙になったが、最近は国政選挙で与党が3分の2議席を占めたり、都議選では小池百合子都知事の「都民ファーストの会」が圧勝したりと、極端な結果が出る傾向にあるのも、「感情的」な国民性によるものだという。

■自公政権を支える「現状維持バイアス」

  ――「感情的」というと、すぐに激高するような人が思い浮かびますが、そうではない大多数のおとなしい国民も感情的なのでしょうか。

 有名人の不倫で1億総バッシングが起こり、SNSがすぐに炎上するのは大多数の国民が感情的になっているからというのは、分かりやすい事例だと思いますが、空気に逆らえず、周りに同調してしまう人も感情的です。森友学園問題で注目を集めた「忖度」も、相手を不快にしてはいけない、喜ばせないといけないという強迫観念になると、報復や村八分を恐れて言いたいことも言えなくなる。そういう同調圧力に屈し、感情を押し殺して泣き寝入りすることこそ感情的といえます。

  ――感情に支配されてしまう原因はどこにあるのですか。 

 まず、社会が不安定になり、国民の不安が大きくなっていることですね。人間は不安になると、感情的な判断をしやすくなる。損をしたくないという理由から変化を忌避する心理を「現状維持バイアス」というのですが、これによって、かえって損になる選択をしてしまうことは珍しくありません。自公政権への支持というのも、下手に政権が代わって暮らし向きが悪くなっては嫌だという感情が大きく影響していると思います。実際は、安倍政権が続くかぎり、今より生活がよくなることはあり得ないのに、不安感情が理性的な判断を抑え込んでいる。きわめて感情に支配された状態だといえます。

  ――もし野党に政権交代してしまったら大変なことになるという不安感情が安倍政権を支えているのですね。


 しかし、民主党政権時代が「暗黒だった」というのも感情的な判断です。株価は安く、デフレが続いていましたが、生活実感としては、物価が安くて暮らしやすかったという人も多いのではないでしょうか。民主党時代にドルベースで6兆ドル以上あったGDPが、第2次安倍政権になって2兆ドル近くも減ってしまった。国際的に見れば、日本は急激に貧しくなっています。非正規雇用率や相対的貧困率も増えている。安倍首相は「暗黒の民主党時代」というレッテル貼りに成功し、それで自分の失策も隠しおおしてきましたが、統計的に見れば、「民主党政権暗黒説」は的外れもいいところです。

  ――言ったもん勝ちのイメージ操作が横行しているきらいはありますが、簡単に信じてしまう国民の側にも問題がありますね。

 民主党政権で野田首相は「ウソつきと思われたくない」と言って解散に踏み切り、政権から転落しました。普通の家庭に育てば、「ウソをついてはいけない」と親から教えられる。安倍首相の場合は、「ウソをついてでも権力を維持することが大事だ。どうせ大衆はすぐに忘れる」と家庭で教えられてきたんじゃないでしょうか。そうでないと、あそこまで堂々とその場しのぎのウソや言い逃れを連発することはできません。僕だって心理学をやっているから、人を騙すことは可能だろうけど、やりません。良心や羞恥心の問題ですが、安倍首相にはそれがないのだと思います。

日本ほど感情的な選挙を行う国はない

  ――勝てば官軍の発想ですね。今回の解散・総選挙も詐欺的です。

 心理学のテーマとして、詐欺師について研究したことがあるのですが、歴史的な詐欺師に高学歴の人はほとんどいない。人を騙すのに必要なのは理論ではなく、感情に働きかけることだからでしょう。たとえば、振り込め詐欺は、基本的に3つのテクニックで構成されます。「不意打ちにして考える時間を与えないこと」、「不安感情で揺さぶること」、そして「情報の遮断」です。今回の解散・総選挙は、この3つの詐欺テクニックそのものですね。不意打ちで即断即決を迫り、北朝鮮のミサイル危機を煽って不安感情に訴えれば、国民はコロッと騙されると考えているのでしょう。

  ――ずいぶんナメられたものですが、メディアが政府の言い分を垂れ流せば、判断材料も奪われてしまう。情報の遮断です。

 ジャーナリストを萎縮させているのも不安感情です。記者クラブでの孤立を恐れ、たがいに同調し合う傾向に陥っている。会見で権力者を怒らせるような質問をすると、その記者を排除しようとする過剰な忖度も働いています。マスメディアが闊達さを失うと、不安感情であれ、嫉妬であれ、人々はメディアが発信する感情の通りに動かされやすくなる。高齢者による自動車事故をメディアが頻繁に報じれば、「免許を取り上げろ」という魔女狩りのようなことも起こります。きちんと統計にあたれば、実際は高齢者よりも25歳以下の若者の方が事故を起こす確率が高いのに、免許取得年齢を引き上げろとは誰も言わない。統計ではなく感情で政策が決まる稀有な国なのです。

■弱者に冷たい「男性ホルモン欠乏政治」

  ――感情的な投票行動は、結果的に国民が損をすることになりそうですが……。

 これほど感情的な選挙を行っている国は、おそらく他にありません。いまの日本という国家を家族に例えるならば、こういうことです。安倍首相を“お父さん”としましょう。この家の収入は50万円なのに支出は100万円もあって、1000万円もの借金を抱えている。そのうえ両親は寝たきりで、医療・介護費の負担は年々、増えていく。子どもは学力が低く、教育費もかさむ。そんな満身創痍の状態なのに、隣の家族がガラが悪くて物騒だからと、お父さんは自宅のセキュリティーシステムや、不審者を返り討ちにするための護身具にバンバンお金をつぎ込んでいる――。一家の大黒柱がそんなむちゃをしていれば、普通は「そんなムダ遣いして!」と文句のひとつも言いたくなるでしょうが、「さすがうちのお父さんはスゴイ」と拍手しているのが日本の有権者ではないでしょうか。

  ――冷静に考えれば、いつ来るか分からない泥棒を恐れて警備に散財している場合ではない。

 このままでは早晩、この家は行き詰まります。隣家の脅威よりも、足元の生活が揺らいでいることが問題で、そこを立て直すことこそが家族の「命と安全を守る」ことなのに、本当にあるかどうかも分からない外の脅威に大騒ぎして、目の前の深刻な問題への対策を放置しているのが日本の現状です。たしかに北朝鮮の核・ミサイル開発はけしからんことですが、社会の底が抜けるかもしれないという足元の脅威の方が起きる確率が高いのに放置し、北朝鮮の暴発という確率の低いことに必死で対策している。それも、役に立つかも分からないミサイル迎撃システムに数千億円を投じるくらいなら、核シェルターを全国に整備した方がはるかに現実的です。

  ――外部に敵をつくることで求心力を高めようとしているだけで、本当に国民の方を向いた政治が行われていない。

 興味深いデータがあります。男性ホルモンが多いと性欲や攻撃性が強くなると思われていたのですが、最新の研究では、人づきあいが円滑になったり、奉仕の精神が生まれやすいことが分かってきました。男性ホルモンが減ってくると、女性だけでなく、人間そのものに対する興味や、ボランティアの心がなくなってくる。安倍首相をはじめとして、弱者に冷たい今の日本の政治は、総じて男性ホルモンが欠乏している状態だといえるでしょう。そういう政治が続いていいのかが、来る国政選挙で問われているのだと思います。

 (聞き手=日刊ゲンダイ・峰田理津子)

 ▽わだ・ひでき 1960年大阪府生まれ。東大医学部卒。米国カール・メニンガー精神医学学校国際フェローを経て、現在は精神科医。「感情的にならない本」「『高齢者差別』この愚かな社会」など著書多数。
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長谷部・杉田 考論  衆院選 どう向き合う

2017-10-04 | いろいろ

より

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長谷部・杉田 考論  衆院選 どう向き合う

 衆院総選挙が10日公示される。安倍晋三首相による唐突な解散に正当性はあるのか。結果次第で大政翼賛的な政治が生まれる危険性をもはらむ総選挙に主権者はどう向き合うべきか。長谷部恭男・早稲田大教授(憲法)と杉田敦・法政大教授(政治理論)に語り合ってもらった。


審議せず冒頭解散 それ自体争点 杉田
首相が自由に解散 主要国で例外 長谷部

 杉田敦・法政大教授 今回の解散に正当性があるのか、まずは考えてみましょう。憲法53条には、内閣は一定数の国会議員の要求があれば臨時国会を開かなければならないとある。にもかかわらず、安倍内閣は3カ月も放置しました。

 長谷部恭男・早稲田大教授 53条の規定が設けられた趣旨については、現憲法草案が議論された第90回帝国議会で金森徳次郎国務大臣が説明しています。当時は国会常設制、つまり、内閣に召集されなくても、国会自身がいつ活動を開始していつ終わるのか決められるようにすべきだという意見が有力でした。これに対し金森は、常設制は現実的ではないので、代替手段として、一定数の国会議員の要求があれば国会を召集しなければならないことにしたと言っている。召集要求を無視する内閣が出てくることは想定していなかっただろうと思います。

 杉田 憲法施行後に出された政府見解は、53条に基づく要求があったとしても、内閣は諸般の条件を勘案して、合理的に判断して召集の時期を決めることができるとしています。では今回のような、森友、加計学園をめぐる疑惑を追及されたくないというのは、勘案してしかるべき「諸般の条件」に含まれるのか。

 長谷部 常識で考えれば、含まれません。

 杉田 国権の最高機関である国会の審議機能を実際上、行政の長が妨害した。憲法違反ではないですか。

 長谷部 53条との関係で言えば、合理的と考えられる時期、準備に必要な2、3週間を超えて召集を引き延ばすのは憲法違反だというのが学界の通説です。

 杉田 そしてようやく国会を開いたら、何の審議もせずに冒頭解散です。解散権は首相の「専権事項」と言う人もいますが、憲法にそんな規定はありませんね。

 長谷部 首相の専権事項というのは間違いです。政府の有権解釈でも、実質的な解散決定権は内閣にあると言っている。現実には、首相は解散に反対する閣僚がいれば罷免(ひめん)して解散を決めることはできるので、首相に主導権があるとは言えますが、専権ではない。首相が自由に議会を解散できるという主張が臆面もなくなされる日本は、主要先進国の中では例外的な存在となりつつあります。

 杉田 かつて日本は、首相の権力が弱いと言われていた。ところがその後、1990年代の政治改革などで首相に権力が集中していくのに解散権は制約されず、首相が過剰に強くなってしまった。少なくとも、党派的利益に即した解散を制約する必要があります。

 長谷部 上策は、憲法改正してその旨の条文を加えることですが、かなりの時間と労力を要します。現実的な策は、解散権の行使を制約する法律をつくることでしょう。

 杉田 野党側は当初、この解散自体を争点化しようとしていました。選挙の構図が流動化するなか後景に追いやられた感もありますが、選挙ではしっかりと問われなければなりません。

 長谷部 憲法違反すれすれの無体な解散をした政党には、主権者国民がお灸をすえるしかないというのが、52年の吉田茂内閣による「抜き打ち解散」の合憲性が争われた「苫米地判決」の趣旨です。高度に政治的な事柄なので司法に判断はできない、主権者国民が最終的に判断しろと。


中道左派 置き去り 杉田
右回転 止めないと 長谷部

 杉田 希望の党は、最終的にどうなるかはわかりませんが、憲法改正と安全保障を「踏み絵」にしてリベラル派を排除し、右に位置取りをしようとしているようにも見える。しかし自民党が安倍時代に右に傾いた結果、世論分布では中道左派の有権者が取り残されている。そこにリベラル新党をつくる余地があるという声も出ていますが、どうでしょう。無党派層はリベラルな政策との親和性が高いが、理念にこだわる人たちだから、小さなスタンスの違いが気になる。大きく支持が広がるとも思えません。

 長谷部 風を吹かせるためには理念も政策綱領もあいまいにしておく必要があります。左派はおおむね、政策や綱領を明確にしなければならない、いい政策をつくれば支持者が増えると思っている節がありますが、それでは風は吹きません。ポピュリズムは全否定されるべきものではなく、世界的にみれば、右派の専売特許でもない。ぼんやりしたポピュリズムでいけば、フランス大統領選で圧勝した中道のマクロンのように集票できる。風をなんとかうまく吹かせて、可能な限り良い結果に向けて努力する。もちろん結果について責任は間われますが。

 杉田 「安倍政権を終わらせる」は、野党が選挙を戦う上での大義になり得るでしょうか。

 長谷部 なり得るのでは。政策があいまいなまま、とにかく何かの旗の下に結集するのはポピュリズムの常套手段です。「いまなら勝てる」と解散した首相に対抗し、組織力以上の議席を獲得するために、風にはためく旗を立てる。選挙至上主義は問題ですが、選挙に勝たなきゃ始まらないのも一面の真理です。

 杉田 ただ、選挙結果次第では、自民、公明と希望の大連立など、様々な動きが出てくると思われます。大政翼賛的な政治が生まれ、憲法改正が「数の力」で成される危険性も大いにはらんでいる。リベラルな有権者ほど投票先に迷ったり、棄権に走ったりするかもしれません。

 長谷部 安倍さん自身が、今回の選挙では私への信任も問われると言っている。いま右回転しているモーターの電源を切るかどうかが最大の焦点です。ひとつ切ったところで、また別のモーターが右回転し出すかもしれない。その時はまた切るしかありません。次なる夜が訪れることを恐れて、朝が来なくてもいいと考えるのはおかしい。夜が明けないことには何事も始まりません。


政党劣化 みな自己利益追求 杉田
無党派の棄権 自公に好都合  長谷部

 杉田 お灸をすえるには「受け皿」が必要です。小池百合子都知事を代表とする希望の党が結党され、野党第1党だった民進党が合流へ動いた。この間の動きに、政党政治の劣化を感じます。自民党も民進党も希望の党も、意思決定過程が不透明です。そもそも政党や政治家は自己利益のためでなく、公的利益の実現のために存在しているという建前を掲げておかなければまずい。ところがいま、みんな自分の生き残りしか考えていないことを自日の下にさらしてしまっている。

 長谷部 社会の利益より政治家の利益。それがとても端的な形で表れているのが、憲法を改正して「合区」を解消しようという自民党の議論です。政治家が自己保身のために憲法を変える。すごいことです。

 杉田 政党は本来、理念や政策を共有する人たちの集まりです。政党は単なる選挙互助会だと言ってしまうと、そんな特定の「業界」のためになぜ何百億円もの税金を使って選挙を行い、人々がわざわざ投票しに行かなきゃならないのか、理由を説明できなくなる。政治的シニシズム(冷笑主義)が広がり、民主主義が成り立ちません。

 長谷部 しかし安倍さんはむしろ、政治的シニシズムが広がることを狙っているのかもしれません。どの政党にも風が吹かなければ、公明党とタツグを組んでいる自民党は有利です。今回の民進党をめぐる騒動を受けて、左派リベラルの無党派層が、くだらない、自分の受け皿はどこにもない、棄権するぞと思ってくれれば好都合だと。善悪を別にすれば、極めて合理的な判断です。

 杉田 日本政治の将来を考えると、その時々に急ごしらえの新党を待望するのではなく、普段からまともな野党を育てるという意識を有権者が持つ必要があるのでは。政党政治の基本は多元性です。各政党が異なる価値観をぶつけ合うことによって初めて妥当な結論が導き出せます。

 長谷部 フランスの政治学者・トクビルは、それぞれの部分利益を追求する政党や結社が競合することが、ひいては人民一般の利益を確保することにつながると言っています。

 杉田 そこに、政権党とは異なる部分利益を代表する野党の存在意義がある。ところが、民進党は長期にわたり支持率が10%に満たなかった。野党第1党がここまで弱っては、小選挙区制の下で頑張れない。結局人々は、自民党が暴走した時に、お灸をすえるという役割の範囲でしか野党を求めていないのではないか。

 長谷部 ただ、民進党が支持されなかったのは、やはり政権を担った時のパフォーマンスがあまりにも悪かったからでしょう。官僚組織とけんかして、自分たちで電卓たたいて予算案を書き直すとか、そうしたことへの嫌気がいまも相当残っていると思います。

 杉田 民主党に政権交代する際、ハードルを上げ過ぎたことも否めません。政策実行に必要な財源の根拠を全部示せ、マニフェストに何をいつまでやるか全部書き込めと。そんなこと、できるはずがありません。

 長谷部 メディアも世論も子どもでしたね。
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ナチ研究の第一人者が看破 自民案「緊急事態条項」の正体

2017-10-03 | いろいろ

より

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ナチ研究の第一人者が看破 自民案「緊急事態条項」の正体

「(政治は)結果が大事だ。何百万人殺したヒトラーは、やっぱりいくら動機が正しくてもだめだ」。派閥会合でこう発言し、撤回を余儀なくされた麻生太郎副総理。4年前にも「ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に代わった。あの手口に学んだらどうかね」などと、安倍政権の改憲を後押しするためにナチスを例に挙げて批判を浴びた。

 ユダヤ人の大虐殺(ホロコースト)や近隣諸国に侵略して第2次大戦を引き起こしたヒトラーの動機を「評価」し、「手口を学べ」とは正気の沙汰とは思えないが、そのヒトラーが独裁のために乱用したのがワイマール憲法第48条の「大統領緊急措置権」。いわゆる自民党の改憲草案98~99条に規定された「緊急事態条項」だ。北朝鮮情勢の緊迫化を口実に好戦姿勢を強め、改憲をもくろむ今の安倍政権は、ドイツ近現代史の専門家である東大大学院教授の石田勇治氏の目にどう映っているのか。

■麻生発言は国益を損なう

  ――麻生副総理の発言をどう捉えましたか。

 ナチ・ドイツやヒトラーの歴史の受け止め方というのは、国や地域によって異なるとはいえ、国連総会がアウシュビッツ収容所の解放日にちなんで「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」(1月27日)を定め、人権侵害の再発防止を世界中に呼びかけている。そんな中で、肯定的とも受けとれる言葉でヒトラーを引き合いに出して自分の考えを伝えようとした。それも、政権中枢にいる副総理が、2度もです。今回の失言も全世界に配信されましたから、国益への打撃は大きいと言わざるを得ません。

  ――麻生発言に対して中国や韓国は即座に反発しました。

「やはり日本は信用できない国だ」「そういう政治家を選挙で選んだ国民も問題だ」と近隣諸国から指摘されかねません。

  ――ナチ・ドイツを評価する発言の真意はどこにあると思いますか。

 麻生氏の発言は歴史家が検証してきた史実から乖離している部分も多く、勝手に思い描いたナチ・ドイツのイメージに彼がどんな憧れや共感をもって発言しているのかは不明です。しかし、「緊急事態条項」を日本国憲法に加えたいと主張する自民党の政治家が「ナチスの手口」を学ぶべきだと公言したことを見過ごしてはなりません。ナチスは「大統領緊急措置権」すなわち「緊急事態条項」を乱用して独裁への道を開いた。つまり「ナチスの手口」とは、ずばり「緊急事態条項」のことなのです。

  ――自民党の改憲草案の解説書「Q&A」では「緊急事態条項」を盛り込む必要性について〈東日本大震災における政府の対応の反省も踏まえて〉と述べています。2015年11月にパリ同時多発テロが発生した際、オランド仏大統領は非常事態宣言を出しました。日本でも当時、改憲して「緊急事態条項」の規定を盛り込むべき――といった声が出ましたが、どこが問題なのでしょうか。

 オランド大統領が出した非常事態宣言は、憲法ではなく、法律に基づくものですから、これを持ち出して改憲論議を進めるのは筋違いです。憲法上の「緊急事態条項」は、国難に直面した際、優れた指導者がきちんと判断してくれることを期待して国民が持つ権利を停止し、あらゆる権力を政府に委ねること。つまり、性善説に立っています。

  ――あくまでも為政者が誤った判断をしないだろうと信じて一時的に強権力を与えるのですね。

 しかし、憲法に基づいて政治を行う、立憲主義を止めてしまうわけですから、それまでの民主的な統治形態を放棄してそのまま恒久的な独裁に転じる危険性を秘めている。憲法で国民の自由を保障したまま、法律によって、緊急時にのみ「例外的に」「一時的に」自由の制限を行うことと、「緊急事態条項」を憲法に書き込むことは大きく異なるのです。1933年に首相となったヒトラーは、ワイマール憲法48条を徹底的に乱用しました。例えば、新聞に少しでも批判的な記事を載せたら、たちまち拘束するなど言論統制を進めました。そして「国会議事堂炎上事件」が起きると、緊急事態を宣言して、国民の基本権を停止しました。「一時的な措置」だとされましたが、結局、1945年の終戦まで独裁は持続し、ホロコーストに帰着しました。

自民党改憲案は実に乱用しやすい内容

  ――確かに今の日本で政権や政治家に性善説を求めるのは難しいですね。

 問題が起きても真実はごまかし、国民の目からそらしてばかり。これから10~30年後、あるいはもっと先にどんな政治家が現れるのかを考えた時、従来のような性善説に立った発想で権力を委ねていいのでしょうか。仮に日本国憲法に自民党改憲案のような「緊急事態条項」が盛り込まれ、悪意ある政治家、あるいは悪意はなくとも、時の為政者の誤った判断で乱用されたら、取り返しのつかない事態に陥ります。そんなリスクの高い独裁権力を政府に与える必要はありません。大災害に備えるためというのであれば、現行の災害対策基本法などを周知徹底し、法律を整備して対応すればいい。それで十分です。

  ――それでも安倍政権は改憲して「緊急事態条項」を盛り込みたい考えです。とりわけ最近は北朝鮮のミサイル・核開発の危険性をあおり、世論を喚起するような姿勢が目立ちます。ナチ・ドイツがワイマール憲法48条を乱用していった時と今の日本の状況は似ているのでしょうか。

 今の政権を見ていて、確かに政治姿勢やメディアの使い方、ポピュリズム的な対応の部分で危険な兆候が見られます。しかし、今の日本がナチ前夜の状況なのかと問えば、それは違う。なぜなら、日本国憲法のなかに「緊急事態条項」が存在しないからです。仮に日本国憲法に自民党改憲案のような権力の集中に対して警戒心の薄い「緊急事態条項」が盛り込まれたら、たちまちナチ前夜のような危機的な状況になるかもしれません。「ナチスの『手口』と緊急事態条項」の中で憲法学者の長谷部恭男さんと議論したことですが、緊急事態の期間の設定の仕方や司法によるチェックに重きを置いた、米独仏などの「緊急事態条項」と比較すると、自民党改憲案のそれは政権に対して甘い内容、実に乱用しやすい内容なのです。

  ――安倍首相は5月に独自の改憲案を新聞発表し、高村副総裁は来年の通常国会に改憲原案を提出したい意向を示しました。安倍首相はなぜ、これほどまでに改憲したいのだと思いますか。

 ひとつには、「アメリカに憲法を押し付けられた」というルサンチマン(恨みつらみ、憤り)でしょうか。しかし、憲法というのは、世界の人権の歴史とほぼ一緒に発展してきた普遍的なものであって、日本固有なものが必要だという考え方は理解しがたい。もうひとつは、日本をいざとなったら戦争態勢だってとれる「普通の国」にしたいのでしょう。「緊急事態条項」は9条の問題とリンクしていると思います。「緊急事態条項がなければ戦争はできない」と為政者が考えても不思議はありませんから。

■ドイツは日本と違って過去の問題を避けなかった

  ―――北朝鮮問題に対し、ドイツのメルケル首相は一貫して「平和外交」を強調し、「圧力を強める」と声高に叫んでいる安倍首相の姿勢とは真逆です。同じ敗戦国でありながら、依然として中国や韓国とギクシャクしている日本はドイツと何が違うのでしょうか。

 ドイツは地理的に遠いので、北朝鮮への対応が違うのは当然でしょう。ただ過去の問題への対応も違います。ドイツでは1960年代から、ナチ時代を反省する声が出てきました。どの国も自国の負の部分については目を背けたいもの。しかし、ドイツでは政治家も国民も、ナチ問題は国の根幹にかかわる深刻な問題として受け止めました。そして1990年の東西ドイツ統一をきっかけに加害の過去と向き合う公的規範ができあがりました。一方、日本の場合は、かつての軍部独裁や、南京虐殺、731部隊などの戦争犯罪が提起する問題に、政治家も国民も十分に向き合ってこなかった。ドイツが日本と異なるのは、そうした過去の問題を避けなかったことです。

  ――「緊急事態条項」を阻止するためにメディアは何をするべきだと思いますか。

 メディアは単に情報提供するのではなく、アジェンダセッティング(議題設定)もジャーナリズムの重要な役割です。「緊急事態条項」についても性善説で論じられる問題や危うさをきちんと報じるべきです。この条項が憲法に書き込まれ、いつか発動されたとき、真っ先に失われるのは言論・報道の自由だと思います。

 (聞き手=本紙・遠山嘉之)

 ▽いしだ・ゆうじ 1957年、京都府生まれ。59歳。東京外国語大卒。東大大学院社会学研究科修士課程修了。独マールブルク大博士号取得。東大教養学部助教授を経て05年から現職。ベルリン工科大客員研究員、ハレ大客員教授を歴任。著書に「ヒトラーとナチ・ドイツ」(講談社現代新書)、「過去の克服 ヒトラー後のドイツ」(白水社)など多数。最新刊(憲法学者の長谷部恭男氏と共著)は「ナチスの『手口』と緊急事態条項」(集英社新書)。
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10月22日で安倍総理を辞めさせるシナリオ  (抄) Plus

2017-10-03 | いろいろ

ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

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10月22日で安倍総理を辞めさせるシナリオ

 「希望の党」が安保法制や憲法改正を巡る考えを入党の条件とする考えを示したことで、民進党内部や共産党、社民党との間に軋轢が生まれている。安倍政権の安保法制強行採決に反対し4野党共闘を進めてきた側から反発が出る心情は理解できるが、しかしそれはあまりにも短絡的で感情的な政治の見方である。

 現下のシナリオは10月22日に自公政権を過半数割れに追い込み、歴代どの政権より劣悪な安倍政治をその日で終わらせるためのプランである。つまり政権交代を本気で実現しようとしている。だから安倍政権の安保法制強行採決は許されないが、しかし翌日から政権を担うための現実的対応にも備えるのである。

 安倍総理の臨時国会冒頭解散は「森友・加計問題」を臨時国会で追及される前に選挙で過半数の信任を得、国民から支持されたとして居直る狙いがあった。そのため消費増税の使い途と北朝鮮情勢をこじつけて解散の大義とした。

 「希望の党」の出現がなければ総選挙で自公が過半数を超えることは誰が見ても確実な情勢である。だからこそ安倍総理は解散に踏み切った。そして11月初旬にはトランプ米大統領を迎えて日米同盟の強化を国民にアピールし、それによって「森友・加計問題」を国民の念頭から消し去るつもりだった。

 しかし「希望の党」はそれを阻止する構えである。そのためには政権を獲得したその日から米国や韓国と共に北朝鮮情勢に対応しなければならない。その時に2年前の安保法制強行採決はけしからんと言って安保法制廃止の閣議決定を行えば、日本の政治は鳩山由紀夫元総理が辺野古基地移設に反対を唱えた時と同様の大混乱に陥る。

 辺野古基地移設は沖縄県民の反対を無視する政治の暴挙である。従って移設に反対を唱えることは正論である。しかし政治は正論を唱える事ではない。それを実現することである。実現の手段も持たずに正論を主張すれば混乱するだけというのが未熟な民主党政権の過去の教訓である。

 安倍総理に代わる新総理は11月初旬にトランプ米大統領を迎え協力関係を国際社会にアピールしなければならない。その時の政権与党が安保法制廃止を主張したのではその政権も短命に終わる。それが占領されてから戦後一貫して米国の影響下に置かれてきた日本政治の現実である。

 従って新政権は直ちに安保法制を廃止することはしない。しかしそれは安倍政権の安保法制強行採決を是とすることを意味しない。立憲主義を否定したやり方に反対することと現状ですぐ法律を廃止しないことは政治的に何も矛盾しない。

 問題は「集団的自衛権を限定的に容認する」とした「限定的」の中身にある。安倍政権の米国に対する従属姿勢は歴代政権の中でもとびぬけて強い。表現は悪いがまるで足の裏を舐めるようである。従って米国はこの政権を「使い走り」に使う。都合が良いから安倍総理に良い顔をして見せるが腹の中では馬鹿にしている。

 そういう総理が集団的自衛権を容認したことは自衛隊を米国に差し出したに等しく極めて危うい。同じく集団的自衛権を認めるにしても日本の国益を最大限に考慮して対応する総理でなければ困る。そして日本の国益を確保するにはかつての自民党と社会党が水面下で手を組み「絶妙の外交術」を駆使して米国を翻弄したのと同じ構図が必要になる。

 ・・・・・。




別Webより  Plus

 「絶妙の外交術」とは米国の歴史家マイケル・シャラーが『日米関係とは何だったのか』(草思社)で使った言葉だが、かつての自民党は米国の軍事的要求に抵抗するため社会党と水面下で手を組み、社会党に平和憲法に基づいた反対運動を起こさせ、それを口実に軍事負担を少なくして経済成長を達成したことを指す。

 そのため自民党は社会党の議席を減らさないようにした。かつての中選挙区制は自民党同士の戦いが激しく、その間隙を縫って社会党は3分の1を超える議席を獲得することが出来た。自民党はそれを容認することで対米外交を日本の国益に近づける「絶妙の外交術」を駆使したのである。

 「安倍一強」の政治ではそれが出来ない。

 すでに自民党単独では選挙に強くないのだが、公明党が選挙協力をするので勝てる。しかも野党がバラバラに候補を立ててきたため自公政権は選挙に勝ち続けることが出来た。

 さらに安倍政権は「内閣人事局」を作って霞が関を完全支配し、それが安倍総理による権力の私物化に拍車をかけた。「森友・加計問題」はその結果である。

 これを打ち破るのに正論を主張するだけでは全く無理である。現下のシナリオは米国の足の裏を舐める安倍総理に代わり、米国と協調しながらも日本の国益を損なわない政権を作ることにある。従って次期政権は安保法制を認めながら歯止めをかける勢力をも必要とする。

 「希望の党」が安保法制や憲法改正で「選別する」としていることはそのためのステップと捉えるべきである。つまり野党第一党になる「希望の党」は政権を取ったその日から米国と混乱なく対応できる体制を取り、一方で「選別」によって出来上がるリベラル勢力の塊とは対立しているように見せながら、かつての「絶妙の外交術」を再現するのである。

 小選挙区制で自公を選挙で打ち破るには「1対1」の構図を作ることが必要である。「希望の党」とリベラル勢力が競合すればこのシナリオは失敗に終わる。そうなれば「安倍一強」の政治がこれからも続くことになる。問題は総理夫人やお友達の関わる事業に税金が不当に使われようとした歪んだ政治を日本国民が認めるかどうかにある。

 次の選挙で自公が過半数を取ればそれが認められたことになる。それを認めないのなら現在のごたごたを一過性のものとして、野党議員は「希望の党」を第一党に押し上げ、次いでリベラル勢力の塊を作り、さらに水面下の候補者調整で「1対1」の構図に近づける努力をすべきである。

 小池百合子東京都知事は拉致問題で安倍総理と盟友関係にあった中山恭子氏を引きはがしたのに続き、同じく盟友関係にあった大阪府の松井一郎知事と選挙での棲み分けを約束した。ここでも安倍総理周辺に楔が打ち込まれた。大阪の選挙区に「希望の党」は候補者を立てず「日本維新の会」の力によって自民党を抑え込もうとする。

 従って大阪の小選挙区で立候補予定だった辻元清美氏は「希望の党」入りをしない。彼女は「小池氏と私は右と左から挟み撃ちで安倍政権を打倒する」と言った。それが次の選挙の意義を正しく言い当てている。

 安倍総理を10月22日で退陣させるのが選挙の目的でそれは右からでも左からでもよい。

 権力の私物化という歪んだ政治を終わらせるのである。
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 理想的な展開は田中氏の言うようなことかもしれないが、小池はただの極右で田中氏が考えるような政治にはならないだろう。

「大山鳴動して、〇狐一匹」だけは止めて欲しい。

2017-10-02 | いろいろ

白川勝彦氏の「永田町徒然草」より

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「大山鳴動して、〇狐一匹」だけは止めて欲しい。

17年10月01日

No.1935


 この数日、希望の党と民進党の関係がどうなるのか、私はずっと注目していた。現在時点でも、最終的な結論が出ていない。だから、今回の解散総選挙の見通しを述べることは難しい。“革命”は、予定通りには進まないものである。あまり細かい段取りを付けても、なかなかその通りには行かないものである。しかし、革命を進める理念や哲学はシッカリとしていなければならない。

 前原民進党代表や小池百合子希望の党代表が、どのような理念や哲学で“合流”を行おうとしたのが、最初から明らかでなかった。中国の国共合作には、日本の帝国主義的侵略にまず打ち勝つという極めて現実的な課題があった。今回多くの国民が安倍政権を倒したいと望んでいる具体的課題は、何と言ってもモリ・カケ疑惑である。この問題は、国家の在り方を問う極めて具体的な問題なのである。

 この問題のケリを付けるのは、安倍政権の打倒しかないだろう。二大政党制でなければケリを付けられない問題でもないし、ましてや憲法問題でもない。北朝鮮の核・ミサイル問題を解決するために安保法制に対する考えが何か関係するのだろうか。憲法に抵触する恐れのある安保法制を作って、野党が特に反対もしてないのに、何故一向に解決しないのかをこの際、改めて考え直す必要さえある。

 「北朝鮮問題に対する国民の信を問う」、安倍首相は言っているが、具体的に何をどうしようとしているのかが示されなければ、解散理由にならないではないか。この問題に対する私の考えは、トランプ大統領が不用意に発する武力行使にキチンと釘を刺しておくことだ。安倍首相は、これを歓迎しているようであるが、極めて危険なことである。憲法9条にモロ違反する。

 安倍首相が解散を口にしたころから、前原代表は「モリ・カケ疑惑隠し」を強調していた。そう、それで良いのだ。今回はこの一点で自公“合体”政権と闘えばよいのだ。政権交代可能な二大政党制もこういう闘いを積み重ねることによりはじめて実現されていくのだ。

 ところが、小池代表らの“選別発言”以来、今回の解散の論点が完全に狂ってきた。小池代表は曖昧な言葉を駆使しながら、今回の具体的課題から保守2党制を訴え、その代表になろうとしている。安倍首相も保守政治を詳しく論じること出来ないが、小池代表も同じであろう。現在のわが国の政治の状況を国際的に見れば、右翼反動が主導権を争っているように見られるであろう。自由主義国家で、リベラルが元気でない国などない。

 公示の10月10日までに事態がどう変わっていくか、なかなか推測できない。しかし、希望の党騒動の内実は、深刻である。結局は、都知事選と同じで安倍首相を間接的に助けることになるのではないかという惧れがある。そうなると「大山鳴動して、〇狐一匹」という歴史の笑い話になる。このことだけはハッキリと言っておく。

 今日はこのくらいにしておこう。それでは、また。
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安倍自爆解散の結末を大胆予想 混沌の先に何がある

2017-10-02 | いろいろ

より

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安倍自爆解散の結末を大胆予想 混沌の先に何がある

民進解体、希望“合流”で自民党は右往左往

 ついに安倍政治に怒りの鉄槌が下されるのか。

 28日正午の本会議で衆議院が解散され、事実上の選挙戦に突入したが、東京都の小池知事が代表就任を発表した「希望の党」と民進党の“合流”が急転直下で決まり、自民党議員は右往左往だ。

「総理が解散を決めた1週間前は、楽勝ムードでした。北朝鮮のミサイル危機で内閣支持率が上向き、小池新党の準備も整っていない。『絶好のタイミングだ』と、党内は総理の判断をおおむね好意的に受け止めていた。ところが、25日に小池さんが新党の代表に就任すると発表した瞬間から雲行きが怪しくなってきた。安倍政権との対立軸を打ち出した小池さんに話題をかっさらわれ、あれよあれよで民進党と合流、100人規模の野党勢力ができた。予想外の急展開で、こんなことなら、解散なんて打たない方がよかったんじゃないか」(自民党ベテラン議員)

 1強多弱にあぐらをかいた安倍は、野党の共闘態勢が整っていない「今なら勝てる」と冒頭解散の奇襲に打って出た。森友・加計疑惑で追い詰められ、総選挙に勝利して“リセット”する必要があったからだ。自民議員も「これは総理とお友達のための解散だ」と認めていた。それでも勝てるなら文句はないのだろうが、小池新党の勢いに押され、解散を延期するという情報まで流れる混乱ぶりだった。

 衆院解散後、恒例の記者会見を取りやめた安倍は、街頭に出て「寄せ集めの政党から生まれるのは希望ではなく混乱だ」と批判していたが、自民党が有権者に訴える政策は何もなく、防戦一方になるのは間違いない。

「油断させておいて、水面下で周到に準備を進め、一気呵成に攻めてきた小池知事の方が一枚上手だったということでしょう。自民党にとっては完全に誤算です。明らかに雰囲気が変わりつつあります」(ジャーナリスト・横田一氏)

 すっかり小池のペースになっている。


大幅議席減で安倍退陣か小池出馬で政権交代か

 希望の党に最も警戒感を強めているのが自民党だ。政権を奪還した2012年や、横綱相撲だった14年の解散時の雰囲気は今回、ガラリと様変わりし、衆院本会議場から出てくる自民議員の顔に笑顔は見られなかった。

 そりゃあそうだ。7月の都議選で、自民は小池率いる都民ファーストに大惨敗を喫した。無党派層が多い都市部選出の議員にとっては“悪夢再来”と戦々恐々になっているに違いない。政治評論家の小林吉弥氏は、現時点で小選挙区、比例区で「自民が30~50議席を失う可能性がある」と指摘していたが、小池自身が出馬すれば全国的に小池旋風が吹き荒れるのは確実。「魔の2回生」どころか、ベテラン議員だって危うくなるのだ。政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏はこう言う。

「小池知事が(首相に就いて)国政のかじ取りをできるチャンスは今しかない。出馬する可能性は高いでしょう。そうなれば、(小池旋風で)自民批判票をごっそり奪う。今後の展開次第では、政権交代もあり得ると思います。他方、自民は勝ったとしても、大量の落選者を出せば地方組織から安倍首相の責任を追及する声が上がるのは必至です。選挙後、安倍政権が退陣して総裁選――の可能性もあります」

 辛うじて勝った自民の政権たらい回しか、小池首相の誕生か――。


民進候補者に踏み絵を踏ませる小池新党の魂胆

 それにしても、である。衆参合わせて130人以上の国会議員が在籍し、年間100億円近い政党交付金を得ている民進党が、ヨチヨチ歩きどころか、産声を上げたばかりの一文無しの新党に「カネ」も「ヒト」も差し出すのだ。自民党の伊吹文明元衆院議長は「かつての政権党が、10人くらいのバブル企業に身売りするのはちょっと分からない」と皮肉っていたが、垣間見えるのは、小池のシタタカさだ。

 民進、希望の合流話が27日、急浮上した際には、民進の議員は党籍を残したまま、希望の公認を得て選挙に臨む、と報じられていた。ところが、28日になると一転、民進を離党して希望に参加し、公認対象の選別は小池が行う――となったのだ。しかも、すでに民進を離党した希望の細野元環境相は「安保法に白紙撤回を言い続ける人は厳しい」なんて言い出す始末。露骨な「踏み絵」だ。

「どんな手段を使っても安倍政権を倒す」(前原民進代表)ハズが、いつの間にか小池新党入りの「ハードル」にすり替わり、どんどん高くなっているのだ。これじゃあ、ヘタをすれば民進分裂の可能性も出てくる。一体、小池の狙いはどこにあるのか。

「『選挙互助会』といった批判を避けるため、ある程度の線引きが必要と考え、今のところ、敷居を高くしているのでしょう。しかし、今後、どうなるのかは分かりません。小池知事だって、選挙に勝つためにはどうすればいいのかは十分、分かっていると思います」(鈴木哲夫氏=前出)

 野合、バラバラは自民だって同じ。とにかく「打倒安倍」の力の結集が必要だ。



解散直前の大仕掛けを裏で仕切ったのは誰なのか、それを上回る小池百合子のタヌキぶり

 誰もが必要だと分かっていながら、これまで進まなかった「打倒安倍」勢力の結集が、一夜にして実現。この壮大な仕掛けをまとめ上げたのは誰なのか。政界関係者は「こんなことをやってのける剛腕は、あの男しかいない」と口をそろえる。もちろん、自由党の小沢一郎代表のことだ。

 小沢は民進党の前原代表と何度も会合を重ね、野党結集についてのアドバイスをしてきた。希望の党の小池代表とも新進党時代からのパイプがある。黒幕は小沢というのが、衆目の一致するところだ。

「たしかに、野党第1党の民進党が新党に合流するという離れ業を、解散直前の短期間でまとめ上げるのは、小沢氏にしかできない芸当だと思います。野党結集は、“オリーブの木構想”を訴え続けてきた小沢氏の持論でもある。ただし、現状は小沢氏が描いていたシナリオと変わってきている可能性もあります。小池氏が、小沢氏の構想に乗っかる形でうまく利用したのか。キツネとタヌキの化かし合いではないですが、政界にはよくあることで、その真相が分かるのは先のことでしょう。内幕を軽々に語らない政治家同士だからこそ、秘密裏に合流の話が進んだのだと思います」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)

 解散当日、自由党の両院議員総会で、小沢は「民進もいま何かやってる最中なんで、その経過を見ながら今後のことを決める」と言い、我関せずといった態度で、昼食のカツカレーを頬張っていた。


自民惨敗ならばモリカケ疑惑で逮捕者も

 突然の解散の狙いが、モリカケ疑惑の“リセット”であることは明白だ。野党の足並みが揃う前に不意打ちで解散。ここで大勝して権力基盤を強化すれば、捜査機関もおいそれと手を突っ込めなくなる。しかし、民進・希望の“合流”で自民惨敗の可能性が高まっている。

 森友学園問題を巡っては、大阪地検特捜部が財務省職員を背任容疑で捜査していたが、選挙戦に突入したことで、「選挙妨害」のそしりを免れるため捜査をストップ。加計問題にしても、新設する獣医学部の建築費を水増しし、補助金を不正受給した疑惑がくすぶったままだ。

 自民が大負けし、「安倍1強」が崩壊すれば、捜査機関は“忖度”をやめ、モリカケ疑惑に堂々と切り込んでいくだろう。下手をすれば、逮捕者が出る可能性もある。

「森友の国有地払い下げ問題では、財務省の言い分を覆すだけの証拠が出揃っています。加計問題でも、補助金不正受給疑惑に加え、加計孝太郎理事長が安倍首相に億単位の接待、利益供与をしていた疑いもある。ある捜査関係者は、『これだけ証拠が揃っていれば贈収賄に問える』と豪語していました。自民が大負けすれば、捜査が一気に進む可能性があります。財務省職員や政府高官が逮捕されてもおかしくありません」(横田一氏=前出)

 モリカケ疑惑解明のためにも、安倍を勝たせてはダメだ。


デタラメ暴政と大義なき解散…憲政史上最低首相の大罪

 第2次安倍内閣発足以降、5年にも及ぶ暴政の結果、日本は内政も外交もメタメタだ。

 アベノミクスをド派手にぶち上げたものの、デフレ脱却はいつまで経っても「道半ば」。実質賃金も下がり続けた。日銀の異次元緩和で円を大量に刷り、上場投資信託(ETF)を購入させた上、国民の年金が原資のGPIFまで株式市場に突っ込み、株価上昇を演出してみせた。

 秘密保護法を成立させ国民の知る権利を奪い、共謀罪法成立で監視社会までつくり上げた。果ては、権力者を縛るはずの憲法を“骨抜き”にして集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、日本を「戦争のできる国」に仕立て上げたのだ。外交面でも盲目的にトランプ米国にベッタリで、北朝鮮の脅威をいたずらにあおり続けている。

 それが支持率低迷で行き詰まると、国会も開かずに自己都合で解散を断行。この5年間は一体何だったのか。

「安倍政権は『待機児童ゼロ』や『女性活躍』『人づくり革命』など、お題目だけは立派ですが、何ひとつ内容が伴っていません。待機児童は目標年次を先送りし、女性の活躍も進まず出生率も上がらない。人づくり革命については、ブチ上げただけで何もしていません。成果はなく失点だらけの5年間でした。憲政史上最低の政権であったと言わざるを得ません」(高千穂大・五野井郁夫教授=国際政治学)

 国民の生活を危機にさらした罪は重い。


どんな選挙結果になっても憲法がオモチャとなる懸念

「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むという考え方、これは国民的な議論に値するのだろうと思います」

 5月3日。安倍が改憲派の集会で公表した独自改憲案のメッセージだ。「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と時期まで踏み込んでいたのに、国会で詳しい説明をすることは一切なかった。

 特定秘密保護法、集団的自衛権の行使容認、安保法、共謀罪……など、振り返ると安倍政権は国会を軽視し、好き放題してきた。森友疑獄、加計問題では、憲法53条に基づいて野党が要求した臨時国会開催も開かずに放置。今度の総選挙は、安倍政権が蹂躙してきた立憲主義を取り戻す機会なのだが、希望の小池は「これまで合憲と言っていたのに、3項を付け加えるのは理解に苦しむ」「安保法制に賛成しないという方は、そもそも(新党参加の)申し込みをしてこないと思う」などとノラリクラリ。安倍の憲法観との違いは不鮮明のままだ。これでは、どんな選挙結果になっても再び、憲法が政争の具になりかねない。九大名誉教授の斎藤文男氏(憲法)がこう言う。

「安保法や改憲、9条に対する考え方など、本来は大きな選挙争点、対立軸になっても不思議ではないのに、安倍自民も小池新党もスタンスに大差がないからぼんやりとしているのでしょう。しかし、これではリベラル派がいなくなってしまう。最終的にはタカ派同士の政党がくっついてしまう懸念も出てきます」

 有権者はふわふわとした形容詞にダマされてはいけない。


まだ一波乱も二波乱もある与野党政界再編の予兆

「非自民勢力の結集」と言われても、民進党議員は疑心暗鬼になっている。自分は希望の党の公認をもらえるのか。安保と憲法の踏み絵で、リベラル系は排除されるのではないか――。

「かつての民進党ができた原点は、“リベラルの旗を立てる”ということでした。政権交代可能な2大政党というのなら、保守に対抗するのはリベラル勢力というのが本筋です。前原代表が決めた民進党を解体して希望の党に合流する手法は、極右と極右の2大政党になってしまいかねず、ひどい話だと思いますが、これでスッキリしていくのかもしれない。自民党も穏健な保守を捨て去っているところへ、筋金入りの右翼が保守を名乗って登場した。これは、あまりに異常な状況です。今回の総選挙で新党がある程度の議席を得ても、リベラル新党をつくらなければならないという機運が盛り上がってくるはずです」(ジャーナリスト・高野孟氏)

 一党独裁の長期政権は必ず腐敗する。それは安倍政権が証明している。政権交代可能な勢力ができることは、この国の民主主義にとって必要なことだが、2大極右政党では、あまりにいびつだ。リベラルの揺り戻しもあるだろうし、混乱はしばらく続く。まだ一波乱も二波乱もありそうだ。

「政権交代可能な2大政党制に向けた政界再編の第一歩と考えるなら、今回の解散・総選挙は大きなチャンスです。選挙後には、自民党が割れる可能性もある。何年先かわかりませんが、健全な2大政党制に収斂していく第一歩になるのではないでしょうか」(山田厚俊氏=前出) 

 これは与野党政界再編の予兆。民進党は歴史的使命を終えたということか。


民進は乗っ取られたのか、名も実も取られる懸念はないのか

「どんな手段をつかっても、安倍政権を止めなければならない」

 民進党の両院議員総会で語った前原の言葉に嘘はないと思いたい。前原はこうも言った。

「理想の社会をつくるため、好き勝手な安倍政権を終わらせるため、もう一度2大政党をつくるために、名を捨てて実を取る」

 相手は勝つためならなんでもアリの自民党。歴代ワルの中でも憲法さえ無視するのが安倍政権だ。とにかくマトモじゃない。本気で倒そうと思えば悪魔とでも手を結ぶ必要がある。政権交代の手段が他にないのなら、座して死を待つよりは、たとえ悪魔だろうと小池新党と組むしかない――。

 前原の捨て身の覚悟に一瞬、胸を打たれた有権者も多いだろうが、「反安倍」と言いながら、安保や憲法の踏み絵で平然とリベラルを切り捨てる小池流には、戸惑いの声が上がっている。

「まるで魔女に魅入られてしまったかのようです。民進党は、理念も政策もない新党に身売りしてしまったようにしか見えない。小池人気というものが本当にあるのなら、それを利用して政権交代にまで持って行ければいいのですが、今後の交渉で民進党が主導権を握れなければ、乗っ取られたも同然の状態になってしまいます」(高野孟氏=前出)

 非自民の結集は亡国政権に致命傷だろうが、この混沌の先に何があるのか。希望か、それとも絶望か……。有権者の時代を見据えた覚悟も試されている。


日本を「リセット」するのに「保守」? “改革保守”小池百合子の言語矛盾

2017-10-01 | いろいろ

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日本を「リセット」するのに「保守」? “改革保守”小池百合子の言語矛盾


「信用できない人」たちだらけの今週の珍言・暴言総ざらい


小池百合子 東京都知事、希望の党代表
「日本をリセットするために希望の党を立ち上げる」

NHK NEWS WEB 9月27日

 名言、珍言、問題発言で1週間を振り返る。衆院の解散が発表された今週、主役として日本の政界をひっくり返したのは、解散をぶち上げた安倍晋三首相ではなく、小池百合子東京都知事だった。

 9月25日、小池氏は記者会見を行い、新党「希望の党」を立ち上げることを発表した。先行して小池氏に近い若狭勝氏と民進党を離党した細野豪志氏が新党設立を進めていたが、小池氏は会見で「リセットして私自身が立ち上げる。直接絡んでいきたい」と述べている(ハフィントンポスト日本版 9月25日)。堂々、党首として新党の舵取りを行うという宣言だ。

 27日午前にも記者会見を開いた小池氏は、冒頭で「しがらみのない政治、そして大胆な改革を築いていく新しいステージ。まさに日本をリセットするため、この希望の党を立ち上げます」とあらためて宣言(ハフィントンポスト日本版 9月27日)。ここでも「リセット」という言葉を用いてみせた。

 7月に「都民ファーストの会」の代表の座から降りたときは「知事に専念する」と断言しており(日本経済新聞 7月3日)、9月中旬にも「国政はやらないわよ」と語っていた(『週刊文春』10月5日号)。まさしく前言撤回。22日の段階で、新党への関与について「(知事の仕事と)矛盾するものとは考えていない」と意欲を示していたが(時事ドットコムニュース 9月22日)、ここまで堂々と小池氏自らが中心になって国政に進出すると予測していた人は少なかっただろう。

 小池氏の代表就任に関しては、自分一人で決断を下したという。日本経済新聞のインタビューでは、「いわゆる(私の頭の中で決める)AI(人工知能)だ」と答えている(9月25日)。やっぱりAIなのか……。細野氏も、既に新党の届け出が出されたことを記者団に知らされ、「もう出したの?!」と逆質問する始末だった(『週刊文春』10月5日号)。いずれにせよ、新党が小池氏の独裁体制なのは間違いない。

 記者会見では「国政進出で知事が二足のわらじをはくことで、東京都の改革のスピードが落ちる」と懸念を示されたが、小池氏は「その懸念はまったく当たらない」と菅義偉官房長官ばりに一蹴(毎日新聞 9月25日)。自らが国政に関与することが「都政にとってもプラス」と言い切ってみせた(ハフィントンポスト日本版 9月25日)。いったいどんな根拠があるのだろう? 都知事としての実績も、まだほとんど無に等しいというのに。

 27日の記者会見でのスピーチでは「しがらみのない政治」と「改革する保守」を強調。会見で配布された「希望の党」の綱領にも「寛容な改革保守政党を目指す」と書かれていたが、「改革保守」が一体何のことかさっぱりわからない。そもそも、日本を「リセット」するのだから「保守」ではない。言葉そのものが矛盾だらけだ。政治ジャーナリストの黒瀬徹一氏は、「『改革保守』とか『しがらみ脱却』やら、抽象的なキャッチコピーではなく、具体的な政策議論がほしい」と疑問を呈している(ダイヤモンド・オンライン 9月29日)。

 小池氏率いる「希望の党」は、憲法改正への積極姿勢や現実的な安全保障政策を打ち出しているが、それでは安倍首相の掲げる政策と差異が乏しい。そこで今回の選挙で訴えているのが「消費増税凍結」と「原発ゼロ」だ。

 安倍首相は2019年10月に消費税を10%に引き上げることを宣言している。一方、小池氏は「実感の伴う景気回復を確保するまで消費増税は立ち止まる」と言い切った(日本経済新聞 9月25日)。また、安倍政権が原発を「重要なベースロード電源(季節や時間帯に関わらず安定的に発電する電源)」と位置づけているのに対して、小池氏は「30年の原発ゼロに向けて工程表を作る」と明言(毎日新聞 9月28日)。小池氏は会見後、原発ゼロを訴えている小泉純一郎元首相と面会するなど、「原発ゼロ」支持者である子育て世代の女性層を取り込むアピールに余念がない(ホウドウキョク 9月26日)。

 しかし、小池氏が「原発ゼロ」に言及するのは今回が初めてだ。小池氏は2012年の衆院選での毎日新聞によるアンケートで「2030年代の原発稼働ゼロを目指す政府の目標について、支持しますか、しませんか」に「支持しない」と明確に回答している。東京電力福島第1原発事故直後にも「稼働中の原発は安全性を総点検した上で運転を続けていいと思います」と語っていた(『アエラ臨時増刊』2011年5月15日号)。

 また、過去には「軍事上、外交上の判断において、核武装の選択肢は十分ありうる」(『VOICE』2003年3月号)とまで語っている。2003年11月に毎日新聞が行ったアンケートでも日本の核武装について「国際情勢によっては検討すべき」と回答していた。「原発ゼロ」からは最も遠い人物と言っていい。小池氏は新党旗揚げに際し、自身のオフィシャルサイトに掲載されていた『Voice』誌の記事を削除している。

 なお、小池氏は2012年の毎日新聞のアンケートで、「政権公約(マニフェスト)通りに政策を実行しないことをどう思いますか」という質問に対して「柔軟に対応すべきだ」と回答していた。別に公約なんか守らなくたって屁とも思わないのだろう。民進党の板橋区議会議員・中妻じょうた氏はブログで小池氏のことを「信用できない」と切り捨てた(9月28日)。そういえば、安倍政権の支持率が急落した理由も「信用できない」というものだった(朝日新聞 7月11日)。10月の衆院選は「信用できない」人が率いる「憲法改正」を目指す保守政党同士の対決ということなのかもしれない。


安倍晋三 首相
「国難突破解散だ」

共同通信47NEWS 9月25日

 9月25日、首相官邸で会見した安倍晋三首相は、28日の臨時国会の冒頭に衆議院の解散に踏み切ることを正式に表明。28日に解散が行われた。

「モリカケ隠し解散」「ミサイル解散」「自己保身解散」など、さまざまな呼び方がされていた今回の解散だが、25日の記者会見で安倍首相が語ったのは「国難突破解散」。いずれの呼び方をも遥かに凌駕する大げささに驚いた人も少なくない。ツイッターには瞬く間にハッシュタグ「おまえが国難」が出来上がった。

 安倍首相が挙げた「国難」とは、具体的に言うと「少子高齢化」と「北朝鮮」だ。前者については、「2020年度までに3~5歳の幼稚園・保育園費用の無償化」など、子育て世代への投資拡充に向けた消費税の使途の見直しについて「国民の信を問いたい」と述べた。後者については、「こういう時期にこそ選挙を行うことによって、北朝鮮問題への対応について国民に問いたい」と語っている(ハフィントンポスト日本版 9月25日)。

 ただ、どちらも解散の理由としては弱い。少子高齢化については通常の国会で議論できる。教育社会学者の本田由紀・東大教授は「ずっと前から『国難』ですよ。それを今さら解散の言い訳にしようというのはまるで茶番です」「『国難』は安倍政権5年間の的外れな政策の結果」と辛辣に批判している(毎日新聞 9月27日)。また、自民党の税制調査会は26日の会合で、安倍首相が会見で語った消費税の使いみちについては、衆院選後にあらためて議論することを確認した(NHK NEWS WEB 9月26日)。首相の言ったことがひっくり返った格好だ。じゃ、何について「国民の信」を問うの?

 北朝鮮についても同じだ。首相は会見で「民主主義の原点である選挙が北朝鮮の脅かしで左右されてはならない」と語ったが、何を言っているのかよくわからない。そもそも選挙をするのは安倍首相の判断であり、北朝鮮は一切かかわりがない。北朝鮮のミサイル発射や核実験は「国難」かもしれないが、こちらもずっと前から続いていることだ(毎日新聞 9月27日)。

「国難」という言葉は、戦前によく使われていたものだ。1931(昭和6)年に満州事変が始まり、33年に日本が国際連盟を脱退して孤立を深めた頃、さかんに「国難」が強調されたという(朝日新聞デジタル 9月27日)。近現代史研究家の辻田真佐憲氏は「国難突破」の4文字に、国威発揚を狙う戦前の国民歌を想起したという。「あえて使った首相に戦前回帰との批判もあるが、もっと意図的だと思います」「右寄りの支持者にも歓迎されると考えたのではないか」と指摘している(毎日新聞 9月27日)。
自民党のキャッチコピーと大川隆法総裁の著書名がほぼ一致

 自民党の衆院選のポスターやビラに使用するキャッチコピーが「この国を守り抜く」になったのも、安倍首相の「国難」という表現を踏まえたものだ(時事ドットコムニュース 9月26日)。なお、このコピーを目にした幸福実現党の釈量子党首は、「大川隆法総裁の愛読者のレベル」と喜びをあらわにした(ツイッター 9月26日)。どうやら大川氏の著書のタイトルがほとんど同じだったらしい。

 はたして今回の選挙は本当に「国難突破解散」なんだろうか? 自民党のあるベテラン議員は「“安倍の安倍による安倍のための解散”だ」と身も蓋もない表現で批判した(日テレNEWS24 9月18日)。自民党の選挙対策副委員長を務める平将明衆院議員は、解散について「(党内での)コンセンサスもクソもなかった」と打ち明けている(Abema TIMES 9月26日)。評論家の荻上チキ氏は「野党の足並みがそろわないという政局がほぼ全てだろう。選挙さえ終われば政権の全てに信任が得られたかのような議論はやめるべきだ」と指摘した(時事ドットコムニュース 9月25日)。とはいえ、「希望の党」が出現したことで、「安倍の安倍による安倍のための解散」になるかどうかも怪しくなってきたような……。


前原誠司 民進党代表
「もう一度我々の理想の社会を作る。そのために名を捨てて実を取る」

ハフィントンポスト日本版 9月28日

 なんと、野党第一党の民進党が、事実上解党した。民進党は9月28日午後、両院議員総会を開いたが、この中で前原誠司代表が総選挙に向けて、小池百合子東京都知事率いる「希望の党」への事実上の合流を提案、その提案が了承されたのだ。

 前原氏による提案は以下のとおり。

 一、今回の総選挙における民進党の公認内定は取り消す。

 二、民進党の立候補予定者は「希望の党」に公認を申請することとし、「希望の党」との交渉及び当分の間の党務については代表に一任する。

 三、民進党は今回の総選挙に候補者を擁立せず、「希望の党」を全力で支援する。

 前原氏は「他党に合流するということではありません」と述べたが、どう見ても「合流」だ。毎日新聞、産経新聞は事実上の「解党」と報じている。前原氏自身は無所属で出馬する意向を固めたという(毎日新聞 9月27日)。

 今後、民進党の議員は「希望の党」に公認申請を出すことになる。ただし、公認するかどうかは「希望の党」、つまりは小池氏の一存にかかっている。前原氏は「小池氏にお願いするのでなく対等だ」と語っていたが(毎日新聞 9月28日)、どう考えても対等ではない。

 小池氏は同党参加の条件として、改憲と安全保障に対する姿勢を重視する考えを示している(朝日新聞デジタル 9月27日)。自分と異なった考え方の持ち主はいらないということだ。29日、前原氏との会談後、小池氏はあらためて「全員を受け入れる考えはさらさらない」と記者団に明言した。「リベラル派は排除する」とも言い切っている。(産経ニュース 9月29日)

 民進党の両院議員総会で提案された事実上の「解党宣言」は、特に異論もなく了承された。前原氏は、「どんな手段を使っても、安倍政権を止めなければいけない」「もう一度、政権交代を実現して安倍政権を退場に追い込みたい」と熱弁をふるい、場内からは万雷の拍手が巻き起こったという(産経ニュース 9月29日)。選挙後、民進党はどうなっているのだろうか? もはや、多くの人は気にしていないと思うが。


麻生太郎 副総理・財務相
「武装難民かもしれない。警察で対応するのか。自衛隊、防衛出動か。射殺ですか」

朝日新聞デジタル 9月24日

 もはや何を言っても平気な麻生副総理。「何百万人殺したヒトラーは、やっぱりいくら動機が正しくても駄目だ」と言ったり(時事ドットコムニュース 8月29日)、「気違いみたいな人ばっかり」(愛媛新聞ONLINE 9月3日)と言ったりしても、どこ吹く風だ。

 今回もまた物議を醸す発言をぶっ放した。23日、宇都宮市で行われた講演で、朝鮮半島から大量の難民が日本に押し寄せる可能性について語った。「向こうから日本に難民が押し寄せてくる。動力のないボートだって潮流に乗って間違いなく漂着する。10万人単位をどこに収容するのか」と指摘した麻生氏は、「向こうは武装しているかもしれない」とした上で、「防衛出動」に言及した。

 ロンドン大学高等研究院難民法イニシアチブの橋本直子氏は、ブログにて「武器を保持していようがいまいが難民は難民です。一旦日本の領域や領海内に入ったら、彼らを人道的に保護する法的義務が日本政府に発生します」と指摘。「漂着民が武器を持って入域・入国したからといって、本当に難民なのかどうかの審査もせず『射殺する』などといった極端な措置をとる必要は一切ありません」と述べている。一言で言えば「難民を射殺することは殺人で犯罪」なのだ(9月26日)。

 朝鮮半島地域研究を専門とする木村幹・神戸大教授は、「北朝鮮から日本に大量の難民が押し寄せる、というのはちょっと考え難い。中国か韓国に向かうに決まっている」と、難民の数を「10万人単位」とした麻生氏の発言を根本から否定した(ツイッター 9月24日)。武装難民が日本に押し寄せる可能性を想定したほうがいいという声に対しては、「巨大UFOに乗った火星人の武装難民が来る時の対策もしておいたほうがいいですよ」と述べている。

 木村氏は「大前提として、なんで麻生さんは自らの職責でもない北朝鮮問題について話したんだろう」と疑問を呈している。菅義偉官房長官は記者会見でよく「仮定の問題なので控えます」と言っているのに、麻生氏は専門外の仮定の話で「防衛出動」だの「射殺」だのと言ってしまったようだ。要するに勇ましいことが言いたいだけなんだろうか?




松浦正人 山口県防府市市長
「抗議文ではなく『お願い』として送った。(教科書の内容が)『反日極左』と感じた」

毎日新聞 9月26日

 山口県防府市の松浦正人市長は、25日の定例記者会見で、慰安婦問題に言及する特定の歴史教科書を採択した複数の中学校に対し、採択中止を求めるはがきを送っていたことを認めた。

 会見によると、自らの事務所に「採用を即刻中止することを望む」などの文面と宛名が既に書かれたはがきが送られてきて、内容に賛同した上で「防府市長 松浦正人」と記入して複数の学校に郵送したという。松浦氏が採択中止を求めたのは「学び舎」が発行した歴史教科書。

 同社の教科書を採択した神戸市の私立灘中学には、組織的とみられる同じ文面の抗議はがきが200通以上届き、自民党の県議や衆院議員からも問い合わせの電話があったことが明らかになっている。灘中学の和田孫博校長は「政治的圧力だと感じざるを得ない」と述べている。また、「学び舎」の教科書を採択した全国の国立、私立中11校にも抗議のはがきが大量に送られていた。

 福岡市教育委員長時代に採択を経験した八尾坂修・開智国際大教授は「社会科では脅しのような行為がしばしばあるが、採択は風評に流されず厳正、中立に行われるべきだ」とコメントしている(産経ニュース 8月10日)。「反日極左」の反対語は「愛国極右」だろうか。ジャーナリストの津田大介氏はツイッターで「中道右派ではない『ソフト極右』が、世界中の政治のトレンドになりつつあるのだなぁ……」と語っていたが(9月25日)、「ソフト極右」時代の表れのような松浦氏の発言と行動だ。
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希望の党と民進党の合流は大政翼賛会だ!

2017-09-30 | いろいろ

より

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希望の党と民進党の合流は大政翼賛会だ! 騙されるな、小池百合子が原発ゼロや消費増税ストップをやるはずがない

2017.09.28


 民進党・前原誠司代表が小池百合子率いる「希望の党」に民進党が合流する方針を打ち出した。前原が代表に選ばれたときから、保守連合的な流れに傾く可能性は想像していたが、まさかここまでとんでもない展開になるとは……。民進党の有田芳生参院議員が指摘していたように、これはまさに悪魔と手を結ぶ行為以外の何ものでもない。

「前原代表は完全に小池代表にやられた感じですね。希望の党は準備期間が短すぎて、全国で候補者を立てるのは不可能な状況だった。そこで、小池代表は、壊滅必至で焦っていた民進党と前原代表につけこみ、民進党の全国組織と候補者、政治資金をそのままのっとろうと考えたわけです。小池氏は現段階では表向き衆院選での出馬を否定していますが、これは嘘。5日に、都知事辞任と衆院選出馬を表明するのは確実です。民進党との合流の動きが出てきたことで永田町では一気に与野党逆転、小池首相の誕生もあり得るという見方が広がっています」(全国紙・野党担当記者)

 しかし、本サイトで再三指摘してきたように、小池百合子代表と希望の党の本質は安倍自民党とほとんど同じ極右、ヘイト肯定の歴史修正主義者で、弱肉強食の新自由主義者でしかない。そんな連中が中心となって、与野党逆転が起きたとして、今の状況が変わるのか。二大極右政党制、そして日本を戦争に引きずり込む大政翼賛会が生まれるだけではないか。

 実際、小池代表は昨夜、BSフジの番組『プライムニュース』で合流の条件として、“改憲と安保”を踏み絵に迫ることを宣言した。さらに、旧社会党系を排除することも宣言した。

 だが、こんな状況にもかかわらず、リベラルなメディアや識者からも、今回の希望の党と民進党の合流の動きを歓迎する声が出てきている。すでに一部のリベラル系ジャーナリストや元官僚などが希望の党のブレーンとして協力しているという話も伝わってきた。彼らの論理は“希望の党の綱領や、政策には原発ゼロなど、いい政策も多い。安倍政権を倒してこうした政策を実現してくれるなら、応援してもいいのではないか”というものだ。

 たしかに、希望の党が掲げている原発ゼロや消費増税見送り、情報公開の推進などの政策は、実現するならそれは大歓迎だ。小池首相誕生の価値はあるといえるだろう。

 だが、はっきりいうが、小池代表が仮に総理になっても、本気でこうした政策に取り組むとはとても考えられない。というのも、希望の党が掲げている「いい政策」は、小池氏の過去の言動や政治姿勢と明らかに矛盾しているからだ。これらがいかに選挙目当てのインチキにすぎないか、ひとつひとつ検証してみよう。

東京への核配備を主張していた小池が「原発ゼロ」などやるはずがない

 まず、目玉公約としてぶちあげている「原発ゼロ」。マスコミはまるで、小池氏がもともと脱原発的スタンスであったかのようなトーンで報じているが、小池氏はこれまで、原発に対して批判的スタンスをとったことなど一度もない。昨年の都知事選でも、原発再稼働に対し「安全確保が第一」と容認していた。
 
 都知事になって以降も同様だ。そもそも、東京都は東京電力の株を1.2%保有する、上位4位の大株主だ。つまり、東京都知事である小池氏は、東京電力に対し、原発再稼働反対や脱原発を要求することのできる立場にある。しかし、小池氏は一切そのような行動をとっていない。

 25日にかかげた政策で「原発ゼロとゼロミッション社会への工程作成」と曖昧なことしか書いていなかったが、早期に原発ゼロを目指すのであれば、まず真っ先にすべきは再稼働の阻止だろう。現在、株主である東京電力の柏崎刈羽原発がまさに再稼働待ったなしの状況になっているが、もし小池氏の言う原発ゼロが本気なら、とっくに大株主として東電に再稼働するなと言っているはずだ。しかし、小池氏の口からそんな言葉が出てきたことは一度もない。

 しかし、それも当然だろう。本サイトでも報じてきたように、そもそも小池氏は脱原発どころか、核武装論者なのだ。

 たとえば、小池氏は保守論壇誌「Voice」(PHP研究所)2003年3月号では、現在の日本会議会長である田久保忠衛氏、救う会会長の西岡力氏と鼎談しているのだが、そのなかで“東京に核ミサイルを配備しよう”という計画までぶちあげている。

 タイトルは「日本有事 三つのシナリオ」。内容は小池、西岡、田久保の3氏がそれぞれ議題を提示して討論するという企画なのだが、「東京に核ミサイルを」なる小見出しの項で、小池氏はこう言い放っていた。

 「軍事上、外交上の判断において、核武装の選択肢は十分ありうるのですが、それを明言した国会議員は、西村真悟氏だけです。わずかでも核武装のニュアンスが漂うような発言をしただけで、安部晋三官房副長官も言論封殺に遭ってしまった。このあたりで、現実的議論ができるような国会にしないといけません」

 さらに西岡氏が “東京核ミサイル配備”というトンデモ提案をはじめると、それをなだめるどころか、記事の最後で「ところでこの座談会、北朝鮮側に読ませたくないですね(笑)。手の内が分かってしまうので」などと、おおはしゃぎで賛意を示したのだ。

 しかも、小池氏はこの鼎談がよほど気に入ったのか、当時、自分のホームページにテキストを全文転載し、無料公開までしていた。

 ちなみに、昨年の都知事選時のテレビ討論で、この核武装発言について鳥越俊太郎氏につっこまれた小池氏は、厚顔にも「捏造です」と強弁。いまでは、ホームページからも削除してしまった。

 しかし、このテレビ討論で、都知事になったら非核都市宣言をしないのかと問われ、「いたしません。明確に申し上げます」と答えていたように、小池氏の本音はまったく変わっていない。小池は希望の党旗揚げ直後、小泉純一郎元首相と会っているが、原発ゼロをもちだしたのは、小泉元首相を取り込むための作戦。そんな人間が原発ゼロに本気で取り組むはずがないだろう。

「情報公開」などとどの口が、小池が都政でやってきた情報の隠蔽

 さらに、噴飯ものなのが、27日に発表された綱領でも謳われている「情報公開の徹底」だ。

 小池は25日の会見でも、「特区の問題についても必要だが、情報公開やお友だち関係でやっている間は特区の意味がない」などと加計問題をもちだし、安倍政権の情報隠蔽を批判していたが、小池氏に安倍政権の情報隠蔽を批判する資格などまったくないだろう。

 先の都議選で、小池氏率いる都民ファーストは「情報公開が一丁目一番地」と掲げていたにもかかわらず、小池はまったく逆の情報隠蔽を行ってきた。

 小池氏は築地と豊洲市場の併存方針を打ち出したが、その検討記録は残っていなかったことが情報公開請求によって判明。そのことを追及されると、こんな信じられない開き直りを見せた。

 「それは(私が)AIだからです」
 「最後の決めはどうかというと、人工知能です。人工知能というのは、つまり政策決定者である私が決めたということでございます」

 安倍首相の「我々の説明はまったく正しいと思いますよ。私は総理大臣なんですから」にも通じる、肥大した自己評価の末の全能感。「徹底した情報公開」を求めても「私はAIだから」の一言でシャットアウトされるだけなのに、それを政策に盛り込む厚顔さに反吐が出る。

 また、都民ファーストの議員たちにも一切取材に応じさせず、代表も独断で降りたりすげ替えたり、党運営においても情報隠蔽が徹底されている。

 これでなぜ政策や綱領に「情報公開の徹底」などと掲げられるのか。小池氏が、公約を軽んじるどころか、なんとも思っていないことがよくわかる。

 そういう意味では、消費税増税凍結も、まったく信用できない。「実感の伴う景気回復まで消費増税は立ち止まる」などと語っているが、市場問題で「豊洲移転は立ち止まる」と言っておきながら結局は豊洲移転だったことを彷彿とさせる。

 そもそも、小池氏は弱肉強食、弱者切捨てを主張する露骨な新自由主義者だ。過去には「国家に依存し、保障を要求するような社会を抜け出せ」だの「優しすぎる社会は国を滅ぼす」だの「社会保障より安全保障」だの「自助の精神を失ったら、日本は危ない」だのといった主旨の、社会保障を否定する発言を再三行ってきた。

 逆進性の消費税増税見送りと再配分を本気で考えているなら、富裕層への増税や法人税、相続税アップを主張するのが普通だが、小池氏は先の会見で、トランプ米大統領の法人税減税を評価する発言をしていた。

 かけてもいい。もし、小池政権になれば、さらなる法人税減税と富裕者優遇が進み、そのうち、さらに逆進性の消費増税、大幅な社会保障カットが行われるだろう。

小池の本質は極右ヘイト、歴史修正主義

 しかも、小池氏の問題点はたんに「いい政策」を反故にするだけではない。小池氏が政権をとれば今以上に、極右ヘイト、歴史修正主義が広まる可能性もある。

 小池氏は都知事として今年、関東大震災で虐殺された朝鮮人犠牲者への追悼メッセージを拒否。しかも、「関東大震災という非常に大きな災害、それに続く様々な事情によって亡くなられた方々」などと言い、朝鮮人虐殺というヘイトクライムの歴史事実を否定した。

 しかも追悼文拒否の背景には、「日本女性の会 そよ風」という極右ヘイト団体の存在があったと言われる。「そよ風」は在特会の関連団体で、慰安婦問題や関東大震災朝鮮人虐殺の否定などを主張しており、2013年には大阪・鶴橋で「いつまでも調子にのっとったら、南京大虐殺ではなく『鶴橋大虐殺』を実行しますよ!」などとジェノサイドを先導したヘイトデモに協力している。また、「そよ風」北海道支部長の女性は桜井誠・前在特会会長の「日本第一党」の副党首まで務めている人物だ。「そよ風」は、関東大震災の朝鮮人虐殺を否定する歴史修正運動とロビー活動に熱を上げており、各地の朝鮮人慰霊碑の撤去を求める街宣や東京都に対する公開質問状の送付などを行なっているのだ。そして小池氏自身、2010年にこの「そよ風」主催で在特会女性部協賛の講演会をおこなうなど、もともと浅からぬ縁がある。

 26日の都議会でも、朝鮮人虐殺について質問されたが、小池氏は「様々な内容が史実として書かれていると承知している。だからこそ、何が明白な事実かは歴史家がひもとくものだ」などと答え、虐殺の史実を認めなかった。言っておくが、関東大震災時の朝鮮人虐殺をなかったなどという歴史家は保守派にもいない。ネトウヨ御用達のトンデモ本くらいだ。

 さらに数々の公約を反故にしている小池氏だが、ヘイト公約だけはきっちり実行している。それが、「韓国人学校への都有地貸与の撤回」だ。

 小池氏は都知事選に突如名乗りを挙げた際に、真っ先に公約として「韓国人学校への都有地貸与の白紙化」を語っていたが、この政策自体が小池氏の差別意識にもとづいたものだった。

 韓国人学校問題の経緯をあらためて振り返ると、舛添要一前都知事が韓国政府の依頼に応えるかたちで新宿区にある都有地を韓国人学校増設のために有償で貸し出す方針を打ち出した。しかし、ネット右翼たちがこれに反発。「朝鮮人へのえこひいき」などと差別的言辞を投げつけながら都庁に抗議が殺到し、ヘイト団体「頑張れ日本!全国行動委員会」も都庁前で抗議デモをおこなった。また、産経新聞をはじめとする保守メディアも「保育園不足よりも韓国人学校か?」とバッシングを展開した。

 もともとこうしたレイシストたちに応えたかたちでのヘイト公約だったわけだが、小池氏は昨年12月の所信表明のなかでも自身の功績としてこう誇ったのだ。

 「都民ファーストの観点から、地域住民の声も反映し、韓国人学校への都有地貸与の撤回なども行ってきた」(産経ニュース12月1日付)

「希望の党」の反作用として期待されるリベラルの結集

 韓国人学校の土地貸与撤回は「都民ファースト」──。この発言は、東京都に住み、住民税をおさめ、韓国人学校に通う人々を「都民ではない」と言っているようなものだ。さらに、韓国人学校を槍玉に挙げ、「都民ファースト」の名のもとに土地貸与を撤回したことを手柄として誇る行為は、小池の特定民族に対する差別を表明しているようなものだ。しかも、東京都に住む「都民」たる韓国人への嫌悪感情をより一層煽る、政治家にあるまじき悪質な言動である。
 
 レイシストに媚び、ヘイトクライムの過去を真摯に反省することなく、韓国人への憎悪感情をさらに煽る。小池氏は新党で「わが国を含め、世界で深刻化する社会の分断を包摂する」などと言っているが、やっていることはむしろ差別を助長することばかりだ。小池氏は都知事選で「ダイバーシティ」を連呼していたし、希望の党綱領でも「国民が多様な人生を送ることのできる社会を実現する」などと謳っているが、本当の意味で多様性など考えていないのは明らかだろう。

 小池氏は都知事選の公約で「ダイバーシティ」を「ダイバー・シティ」と誤表記して笑い者になっていたが、ようするに、小池氏の多様性への意識などその程度のものなのである。

 もはやこれ以上の説明の必要はないだろう。核兵器保有、社会保障否定、ヘイト肯定の極右思想をもち、自らの権力保持のために平気で嘘をつきまくってきた人物が、原発ゼロや消費増税ストップ、情報公開などを、やるわけがないではないか。

 そもそも小池は反安倍を演出しているが、安倍と同じ改憲派なのはもちろん、違憲の安全保障法制にも、特定秘密保護法にも衆院議員として賛成しており、今も安全保障法制も特定秘密保護法も共謀罪も廃案など一切語っていない。それどころか違憲の安全保障法制にいたっては、容認を党参加の踏み絵にしているほどだ。

 繰り返すが、こんな人間に率いられた希望の党が民進党をのみこみ、与野党逆転を果たしたとしても、そこに誕生するのは、極右二大政党制、そして大政翼賛会の再現でしかない。

 ただ、救いはある。民進党のリベラル派や自由党の一部がこの流れに反旗を翻す動きがあるからだ。希望の党と民進党の野合が、リベラル勢力の結集につながり、私たちが支持すべき政治勢力を明確にしてくれる可能性が高い。

 マスコミ報道はおそらく希望の党一色になるだろうが、騙されてはならない。私たちが応援すべきは、希望の党になびくことなくリベラルなスタンスをつらぬく政治勢力だ。
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安倍政権打倒に賭けた小池百合子の勝負手

2017-09-29 | いろいろ

ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

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安倍政権打倒に賭けた小池百合子の勝負手

 安倍総理が臨時国会での冒頭解散を宣言した25日、ニュースの主役は安倍総理ではなく小池百合子東京都知事だった。

 安倍総理が消費税の使途と北朝鮮危機をこじつけて「国難突破」と銘打つ解散宣言を行ったのに対し、小池氏は「消費増税凍結」と「原発ゼロ」を掲げ、次の選挙を「政権選択選挙」と宣言した。

 「政権選択選挙」とは安倍政権を打倒する意味である。そのため安倍総理が消費増税を前提に教育費無償化を打ち出したのに対抗して消費増税凍結を打ち上げた。国民が安倍総理の公約を支持すれば国民は増税を認めたことになる。政府は大手を振って増税を行うことが出来る。小池氏はそれをさせないと公約したのである。

 次に安倍政権を支えるキーマン今井尚哉総理秘書官は原発再稼働推進の中心人物だから安倍政権が続く限り原発再稼働は止まらない。これに対して小池氏は原発ゼロを公約に掲げた。消費増税凍結と言い原発ゼロと言い、これほど明確な安倍政権との対立軸はない。

 さらに安倍総理を総理の座に押し上げた第一の理由である拉致問題で安倍総理と盟友関係の「日本のこころ」代表中山恭子氏を小池陣営に引き入れた。拉致被害者の家族会には安倍総理に対する不満がくすぶる。拉致問題で国民の人気を得ながら問題を解決できないからだ。中山氏を安倍総理から引きはがしたことは国民が考える以上に安倍総理を痛撃する。

 そしてこの日、小池氏は小泉純一郎元総理と面会する予定を入れ、それを堂々とではなくさりげなく取材させて小泉氏から選挙で応援を受ける可能性を匂わせた。小池氏の後ろには細川護熙元総理がいる。細川氏は小泉氏の支援を受け3年前に反原発の立場で都知事選を戦った。自民党の舛添要一氏に敗れはしたが、細川氏には小泉氏だけでなく小沢一郎氏の支援もあった。

 まだ裏舞台は審らかでないが、小池氏はおそらく都議選で圧勝し、安倍総理の支持率が急落した7月から安倍政権打倒のチャンス到来と見て準備を進め、細川氏や小泉氏、それに小沢氏などと連携して構想を練ってきたような気がする。

 詳細は言えないが中山恭子氏の引きはがしには小沢氏が関与したと思える節があり、また小池氏は安倍総理が臨時国会の冒頭で解散すると狙いを定めその時期を9月下旬と見て準備していた可能性がある。

 私は自分が主宰する政治塾で7月25日に安倍総理が早期解散に踏み切る可能性に言及した。その当時は内閣支持率が30%を割り込み、選挙をやれば不利だと思われたが、退陣するしかない状況に追い込まれれば権力者は乾坤一擲の勝負に出るものだ。

 7月の24日と25日に開かれた閉会中審査で安倍総理は「加計学園が今治市に獣医学部を作ることを今年の1月20日に初めて知った」と驚くべき発言を行った。2年前の4月に今治市の職員が総理官邸に呼ばれ、総理秘書官から加計学園の獣医学部を今治市に新設するよう要求されていたにもかかわらずである。

 総理の「嘘」は臨時国会最大の追及材料となる。「1月20日」をどう言い逃れるかで苦しい国会になるはずだった。しかも自民党議員3人の死亡によるトリプル補選が10月22日に行われ、一つでも取りこぼせば政治責任を問われる情勢だった。

 ところが麻生副総理の推す愛媛3区の候補者の苦戦が伝えられ、安倍総理と共に麻生副総理もまた政治的に追い込まれていた。そのため臨時国会冒頭解散はありうる選択肢だった。7月末に解散の可能性を念頭に置いてみていると、8月9日夜に麻生副総理が安倍総理の私邸を訪れ会談した。解散を巡る相談に違いなかった。

 8月23日には二階、井上両幹事長が会談し9月25日の週に臨時国会召集を決めると、翌24日に安倍総理は今井秘書官に臨時国会冒頭解散を準備するよう指示する。すると8月30日に日本記者クラブで記者会見を予定していた小池百合子氏が急きょ日程を9月28日に繰り下げたのである。そのあたりが解散時期と踏んだのだろう。奇しくもその通りになった。

 9月1日には民進党代表選挙があり前原誠司氏が代表に就任する。そして山尾志桜里氏を幹事長に内定すると「週刊文春」が不倫疑惑を報じ、山尾氏は離党を余儀なくされた。内定段階で報じられたことは民進党に対するダメージが少ない。

 前川喜平前文科次官と同様に官邸のゲッベルスと言われる官房副長官のリークなら幹事長に決まってからの方が打撃が大きく効果的だと思い、私は民進党内部からのリークを疑った。しかしその後「週刊文春」は前原代表と野田聖子総務大臣のスキャンダルを続けて報じたから、安倍総理のライバルを狙い撃ちする官邸のリークの可能性もあると考えを改めた。

 山尾スキャンダルとそれに続く民進党からの離党者続出が冒頭解散を決定的にする。9月10日の安倍総理と麻生副総理の会談で最後の詰めが行われ、翌日に安倍総理は二階幹事長と公明党の山口代表に冒頭解散の意向を伝えた。

 解散とは総理が衆議院議員全員をクビにすることである。それ相応の理由がなければクビになる方は納得できない。通常は政府の考えと国会の考えとが食い違い、対立が収まらないので国民に聞いてみようということになるが、今回は消費増税の使い道と北朝鮮危機が理由とされた。

 しかし消費増税の使い道には与党の中に総理と異なる考えを持つ議員もおり、その人たちはクビになることに納得できない。また北朝鮮危機になるとなおさらクビになる理由が分からない。

 そして本当の理由が安倍総理夫人が関与した森友学園問題と、安倍総理のお友達に関わる加計問題からの追及逃れだと考えればクビにした権力者への反感が生まれる。選挙が終わるまで恨みつらみは言えないが、選挙が終われば不満が噴き出す可能性はある。

 小池氏は「改革保守」として「しがらみ政治からの脱却」を主張する。この「しがらみ」は森友学園や加計学園と安倍夫妻の癒着を指すようだ。「経済特区」を「改革」のためと言いながら内実はしがらみと癒着に過ぎない。その主張が選挙で国民に浸透すれば選挙で過半数を制したとしても安倍政権には逆風が吹く。

 しかし小池氏にも弱みがある。国政と都政の「二足の草鞋」を履き続けられるのかという疑問と批判である。それをどうかわすのか、かわせるのかが小池氏にとって最大の勝負手になる。おそらく選挙が公示されるまでにその一手は見えてくる。

 第一次安倍政権を終わらせたのは当時国対委員長だった二階俊博氏と防衛大臣だった小池百合子氏だというのが年来の私の主張である。海上自衛隊のインド洋での給油活動ができなくなることが分かり安倍総理は政権を投げ出したが、その背景には参院選に惨敗したのに居座ろうとした安倍総理を辞めさせる自民党内の政治力学があり、その渦中に二階、小池の二人がいた。

 今回はその二人が敵味方となって雌雄を決する。私にとって久々の大政局が幕を開けた。それが消費税と原発を巡って戦われるところに日本の岐路を感じさせる。
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受信料を取る資格のないNHKの国連総会フェイクニュース  (抄) Plus

2017-09-28 | いろいろ

ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

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受信料を取る資格のないNHKの国連総会フェイクニュース

 安倍総理の国連総会一般討論演説でNHKニュースはとんでもない印象操作を行った。前日のトランプ米大統領の演説を前に抗議の退場をした北朝鮮大使が安倍総理の演説には熱心に耳を傾けたかのようなニュースを伝えたのである。

 NHKはトランプ演説の前に退場する北朝鮮大使の姿を流した後に、北朝鮮代表団席でメモを取る男の映像を流し、前日は退席した北朝鮮大使も耳を傾けたとコメントした。しかしメモを取る男は北朝鮮大使ではなく記録係と思われ、それも一人しかおらずに周囲はガラガラの空席状態だった。

 前日のトランプ演説をフーテンは生中継で見たが、それが歴代大統領と比べてどれほど程度が低いかは前回のブログに書いた。演説後にCNNのニュースコメンテーターたちはトランプ演説が「ダークサイド」であったと口をそろえた。

 映画「スターウォーズ」を観た方はご存知と思うが、宇宙のエネルギー(フォース)には光(ライト)と暗黒(ダーク)の面(サイド)があり、恐れや怒り、憎しみ、攻撃性という暗い感情から力を引き出すことを「ダークサイド」と言い、冷静で穏やかに心を開いて力を得ることを「ライトサイド」という。

 トランプ演説は北朝鮮に対する恐れ、怒り、憎しみ、攻撃性に彩られ確かに「ダーク」であった。それを聞いている側の映像も放送されたが北朝鮮代表団の席に大使ではないが官僚と思しき複数の男がいて周囲は満席状態だった。議場がガラガラの安倍総理演説とは対照的だった。

 国際社会は誰も安倍総理演説に関心を持たなかったことが一目瞭然だ。トランプ大統領の「使い走り」に過ぎないことを知っているから当然なのだが、それをカバーしようとしたのか、NHKは北朝鮮大使が会場から去る1日前の映像と安倍総理演説のメモを取る記録係をつなぎ合わせ、あたかも安倍総理の演説に関心が寄せられていたかのような印象操作を行ったのである。

 折から衆議院解散が決定的となり事実上の選挙戦がスタートしているさなかである。選挙を意識するがゆえに安倍総理は国民に北朝鮮に対する憎悪を煽り、2年前に成立させた安保法制を正当化しようとしている。そのためには国連総会での活躍を国民に印象づけたかった。

 従ってこのフェイク(騙し)は政府与党を有利にするための印象操作と考えざるを得ない。NHKは極めて悪質な編集を行い選挙に影響を及ぼそうとした。それが公共放送を名乗り国民から受信料を徴収して良いものだろうか。日本の国家構造の中で最も闇の部分と思われるNHKの実態を再度指摘しておく。

 03年に米国が国連に嘘の報告を行いイラクに先制攻撃を仕掛けた時、真っ先に賛同したのは英国のブレア政権と日本の小泉政権だった。しかし「大量破壊兵器がイラクにある」という戦争の大義が嘘であることはすぐに明らかになる。この時、英国の公共放送BBCは徹底的にブレア政権を批判、ついに任期途中でブレア首相を退陣させた。

 ・・・・・。





別Webより Plus

 しかし日本の自称公共放送はつゆほども小泉政権を批判することはなかった。米国でもブッシュ政権の嘘はメディアに厳しく批判されていたのにである。NHKは過去から現在に至るまで時の政権を批判したことが一度もない。それが「公平中立」「不偏不党」を掲げるNHKの実態なのである。

 BBCは政権批判を堂々と行う。政治権力に屈しないメディアと考えるから国民は受信料を支払ってでもBBCを支える。

 一方のNHKは政権批判を一度も行ったことがない。政治権力の言いなりで国民の側に立つことなどほとんどない。それなのに国民に受信料支払いを迫り職員は日本一高い給与を受け取る。

 NHK職員の平均年収は1700万円強と言われる。民放各局は足元にも及ばない。おそらく日本の全産業中トップクラスの給与である。それは政治権力によって確実に守られる組織であるからだ。BBCとNHKの違いは免許を与えているのが誰かによる。

 BBCは王室から免許されるため政治権力の影響を免れる。王室は国民の支持がなければ存続できないことを知っているから政治権力より国民の側に立つ。一方NHKは総務省から免許される。総務省は政府与党の影響下にあり、さらにNHK予算は国会でチェックされるから国会は企業の株主総会に当たる。企業が大株主の意向に逆らえないようにNHKは多数の議席を持つ与党に逆らえない。

 この違いを日本人は理解できない。

 天皇より政党や官僚が国民に近く国会に監督させることが民主主義だと錯覚している。民主主義の長い歴史を持つ英国はそうではない。民主主義の弱点を知っていて「君臨すれども統治せず」の君主制をうまく取り入れ政治権力の暴走を抑える。

 戦後の占領期にはNHKが新聞と並び米国の宣伝機関として利用された。日本軍の悪辣さを国民に植え付ける洗脳教育により「南京大虐殺」や「マニラ大虐殺」が「戦争の真相」として報道された。

 一時は労働組合の影響力が強く左傾化していると批判されたこともあるが、それを大転換させたのが「戦後政治の総決算」を掲げた中曽根内閣である。高度経済成長により経済で日本が米国を追い抜く勢いになった時、GHQによって軍国主義の宣伝機関として解体された同盟通信の復活が目論まれた。

 それがNHKを巨大化させるプロジェクトとなる。

 米国が打ち上げなかったBS(放送衛星)を買ってきてNHKに打ち上げさせ、同時に民間子会社38社を所有することを認めた。世界のどの国もやっていないBS放送が日本で開始され、世界の趨勢と異なり新規ベンチャーが参入するケーブルテレビやCS放送は放送の主流になれなかった。

 今ではNHKの子会社の総売上高が民放全局を上回ると言われ、前述の通り職員の平均年収が日本のトップクラスになるなど肥大化が著しい。そして戦前の同盟通信と同じく政治権力を握る者にとって最も利用価値のある組織になったのである。

 批判をかわすため時折はヒューマンな感動物語を放送して国民の支持を得るが、しかし本質は戦前に大本営発表で国民を騙した同盟通信の戦後版である。それが安倍総理の指示によるのか、あるいは安倍政権の意向を忖度したのか、国連総会のニュースで政府与党を有利にする印象操作を行った。

 これを些末な話と片づけてはならない。そこにはNHKという世界に例のない妙な組織の本性がある。そしてそのことに国民の多くが気付いていないところにこの国の闇をフーテンは感じてしまうのである。
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