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テレビを持たず、ラジオを聞きながら新聞を読んでます

「山口敬之レイプ疑惑」に新たな事実も!?

2017-09-27 | いろいろ

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「山口敬之レイプ疑惑」に新たな事実も!? 東京新聞・望月衣塑子記者が語る、報道の裏側

 現在、女性の新聞記者は増えてきたものの、その割合は全体の2?3割程度だという。男性ばかりの環境で、積極的に相手に食い込んで取材をしていると話題の東京新聞社会部記者、望月衣塑子さんに、今の政権やメディアの問題点を聞いた。

前編はこちら

日本のマスコミは、なぜ詩織さん事件について騒がないのか?

――元TBSワシントン支局長の山口敬之氏に「レイプされた」として、ジャーナリストの詩織さんが被害届を出した件についても、裏で安倍政権が山口氏のために動いている疑惑があるとも聞きますが、どうなのでしょうか?

望月衣塑子さん(以下、望月) どういう過程でなぜ、逮捕が取りやめになったのか、その経緯は、まだはっきりわかりません。詩織さんのお話では、2人が出会ったのは、2015年3月末、詩織さんが働いているバーに山口氏がお客として来たことがあったようです。翌日、山口氏は詩織さん、TBSのNY支局員とともに食事をします。詩織さんは当時、フリーランスとなって仕事を始めるかTBSで働くかで悩んでおり、山口氏にTBSのワシントン支局で仕事ができないかという相談をしています。その後、山口氏と詩織さんは東京・恵比寿にある2軒のレストランで会食をした後、詩織さんが意識を失い、気付いた時には、ホテルで「レイプをされていた」と訴えています。詩織さん自身は、非常にお酒が強く、取材時に同席されていた友人の話でも、「ワインを2人で何本空けても、詩織さんが酔いつぶれたのは見たことがない」というのです。詩織さんは、「これで就職が決まるかどうかという面接も含んだような飲食の席で、緊張しているのに、大量にお酒を飲み、吐くまで泥酔するということ自体できない」とも話していました。

 また、関係者に取材したところ、事件が起きた日に山口氏と詩織さんが訪れたレストランは、山口氏のお父さんも愛用している「値段のないレストラン」だったそうです。山口氏のお父さんは、有名な元野球選手の顧問弁護士などもやられている方だと聞いています。

 そして、逮捕状が出て執行される予定だった15年6月8日、詩織さんの担当警察官は成田空港の出口で山口氏が降り立つのを待っていたところ、「逮捕はするな」という指示を受けました。TBSの元ワシントン支局長が逮捕されるということで、高輪署、警視庁の捜査一課、広報課にも根回していたにもかかわらずです。逮捕は見送られ、任意での聴取となりました。任意の聴取になった契機は、当時、警視庁の刑事部長だった中村格氏が「山口氏の身柄を取るな」と指示したとされており、「週刊新潮」(新潮社)の取材に中村氏は「(逮捕の必要がないと)私が判断した」と話しています。

詩織さんの件で、新たな事実が浮き彫りになる可能性も

――そうしたことを、詩織さんが顔や実名を出して訴えたのは、大きなリスクを伴いますし、非常に勇気ある行動だと思いました。

望月 そもそも詩織さんの事件は、山口氏が当時TBSワシントン支局長でありながら、「週刊文春」(文藝春秋)に「ベトナムに韓国軍の慰安所があった」という内容の記事を書いたため、会社から日本に呼び戻された際に起きています。山口氏は4月23日に支局長を解任されて営業に異動、その後、自ら会社を辞めています。警察も初めは「TBSワシントン支局長が相手では難しい」「準強姦(ごうかん)罪は動画がないと起訴は難しい」などと、被害届を受けたがらなかったらしいのですが、山口氏が営業に異動になった後、詩織さんや彼女の友人の供述や、タクシーのドライバーの証言、ホテルの防犯カメラに映っていた詩織さんが山口氏に引きずられているように見える動画などの証拠が集まるようになり、捜査が本格化していったそうです。

 詩織さんは準強姦罪の不起訴不当を訴え続けていますが、ジャーナリストとして活動するために、検察審査会に訴えたわけではないと言います。本来は、フリーランスのジャーナリストとしてやっていきたいのですが、この問題で自分が実名で声を上げずに示談で済ませてしまったら、ほかの性被害者の人がもっともっと声を上げにくいような世の中になってしまうのではないかと思ったそうです。一時期は、性被害者の団体に入って、そこの団体をサポートしようとも考えたそうなのですが、やはり日本の社会や法律を変えるために、自分が実名で出ていくことを選んだのだと思います。彼女は、市井の被害者ですが、戦っている相手のバックには、山口氏がかつて深く食い込んでいた安倍首相はじめ、強力な安倍政権があると感じており、権力を敵に回すのはとても恐ろしいはずです。28歳の女性にその覚悟ができるのは本当にすごいことで、かなりの覚悟と勇気が必要だったでしょう。しかし、話を聞くほど、彼女には自分のこと以上に、社会を変えていきたいという使命感のようなものが強くあると感じました。

 一方、山口氏は、詩織さんの実名告発会見を受けて、フェイスブック上で「私は法に触れる事は一切していません。ですから、一昨年の6月以降当局の調査に誠心誠意対応しました。当該女性が今回会見で主張した論点も含め、1年余りにわたる証拠に基づいた精密な調査が行われ、結果として不起訴という結論が出ました。よって私は容疑者でも被疑者でもありません。もちろん、不起訴処分の当事者は皆、検察審査会に不服申立する権利を有していますから、申立が行われたのであれば、私は今まで通り誠心誠意対応します」と反論しています。

 事件に関し、先日「ニューヨーク・タイムズ」の記者と話したところ、「アメリカだと、このような事件は政権が崩れるほどの超政治問題になるのに、日本のマスコミはなぜ騒がないのか」と、何度も何度も繰り返し質問されました。加計学園の疑惑はテレビで扱っていますが、詩織さんの場合は日本テレビ以外のテレビ局では、ほぼ放映されていません。取り上げない大きな理由のひとつには、一度不起訴になった人はたくさんいるので、なぜ、あえてこの件を取り上げるのかという指摘があり、新聞で書くにも壁があるのは確かです 

 しかし、この件に関しては、複数の国会議員が疑問視しており、今後、国会の場なども含めて議題として取り上げられ、新たな事実が浮き彫りになってくる可能性もあります。


女性だからグイグイ質問できる部分がある

――取材対象である政治家には男性が多い中、女性だからやりづらいと感じたことはありますか?

望月 体力勝負になるところやセクハラ的なものがあるなど、大変さもありますが、基本的には女性も男性も「これを取材したい」「報じなければいけないと」いう思いでは同じだと思います。ただ、どちらかというと女性だからグイグイいける、女性の方が単刀直入に聞いていけるのかなと思うことはあります。例えば、菅官房長官の会見だと、普段から菅さんと付き合いのある記者さんたちは「あまりご乱心させてはいけない」と気に掛けている面もあると思うのですが、私にはそのような配慮は、付き合いがないからこそ、ありません。毎日取材で顔を見せて会っていたら、私のようには、なかなか追及しづらいのだと思います。人それぞれですが、男性でガンガンストレートに聞く人は少ない印象です。でも稲田朋美防衛相の失言時は、防衛記者クラブでの質問は、男性記者がかなり執拗に追及していたと感じました。官邸の会見でも「ジャパンタイムズ」の男性記者は問題だと感じた場合、「それおかしいでしょ!」とストレートに怒りをぶつけていました。

――「菅官房長官が警察組織を使って、望月さんの身辺調査をするよう命じた」という報道もありましたが、実際に危険な目に遭ったりはしていませんか?

望月 疑惑について次々に質問を重ねているので、何か動きがあるのかもしれませんが、目に見える形にはなっていないので、今のところ危険な目には遭っていません。目立つと、やはり危ないことに巻き込まれる可能性は出てくるとは思っていますが、前川さんや詩織さんの話を聞くにつけ、私でなくても結局、誰かが声を上げなければいけなかったのではと思っています。日本の政治や社会を作っていくのは、政治家ではなく、私たち国民の意識なのだということを改めて認識していく必要があると思っています。

――新聞記者として、今後はどのような報道をしていきたいですか?

望月 加計疑惑をみると、現状は、官邸・内閣府と文科省の双方が「言った」「言わない」の議論に陥っているかのように見えますが、現時点で「加計ありきで進んでいたのではないか」という国民の疑念に対し、政府は納得のいく説明や客観的な資料をまったく示せていません。報道によって、政府がどのように何を説明でき、何を説明できていないのか、これを繰り返し繰り返し紙面やSNSなどを通じて、有権者である国民に伝えないといけないと感じています。

 06年の第一次安倍政権時に教育基本法が改正され、「愛国心」や「伝統」「公共の精神」が盛り込まれ、ナショナリズムが喚起される方向に変わったように思います。私が取材している武器輸出の問題でも、第二次安倍政権の閣議決定により、武器を他国に売らない国から、武器を売って稼ぐ国づくりへ大きく転換させようとしていることが見えてきます。

 2年前に筑波大学の学生新聞が行ったアンケート調査では、軍事研究賛成派の学生が反対派を上回ったという結果が出ています。筑波大はどちらかというと政府系の研究所やシンクタンクが多いということもありますが、そのような結果が出たのは衝撃的でした。今年になって、日本の科学者を代表する団体である「日本学術会議」で、軍事研究を禁止する1950年・67年の声明を継承していくとする決定が出たことを受け、同大の永田恭介学長は「軍事研究を禁止するルールを作っていく。学生とは一から議論していきたい」と会見で発表しました。NHKで一部報道されていましたが、名古屋大の大学院生らの中には「(実際の)戦争が起こらないのであれば、助成金をもらっていてもよいのではないか」「国防のためには軍事研究は必要だ」と言う学生もいたそうです。

 私が子どもの頃は、戦争の悲惨さを訴える番組がよく放送されていた記憶があります。でも、戦争を経験した世代が亡くなり、戦争の記憶が生々しく語り継がれていく機会が減っているという現状があります。今の若い学生さんほど、戦争に対するリアリティを持てないのでしょう。世代間の差が見えます。ここをどう埋めていけるか、戦争の記憶を引き継いだ私たち大人に課された課題だとも感じています。

 国民は身の回りの生活が干上がってくると政治に怒りを持つけれど、自分たちの周りが豊かなうちは、ちょっとくらい国の方向性が右や左にそれようが、実感としてはよくわからないのかもしれません。日本経済団体連合会(経団連)に属する大手企業の幹部たちも、話を聞くと、みんながみんな安倍首相の国家観がよいと思っているわけではないことがわかります。ただ、経済効果を数字で出し、株価を維持することが大切だと考える経営者は多く、富の格差が広がっていることは明らかですが、今は有効求人倍率の数字などは良く、経済成長が大きく後退しているようには見えないので、今の政権に対して経済界も妥協しているのかなと、取材していて実感します。でも、この国の形をつくるのは、私たちの民意です。今の政権の抱えている問題点について、一人でも多くの人たちに考える契機を持ってもらえるよう願っています。

(姫野ケイ)

 望月衣塑子(もちづき・いそこ)
 1975年、東京都生まれ。東京新聞社会部記者。慶應義塾大学法学部卒業後、東京・中日新聞に入社。千葉、神奈川、埼玉の各県警、東京地検特捜部などで事件を中心に取材する。2004年、日本歯科医師連盟のヤミ献金疑惑の一連の事実をスクープし、自民党と医療業界の利権構造を暴く。また09年には足利事件の再審開始決定をスクープする。東京地裁・高裁での裁判担当、経済部記者などを経て、現在は社会部遊軍記者。防衛省の武器輸出、軍学共同などをテーマに取材している。二児の母。趣味は子どもと遊ぶこと。
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東京新聞・望月衣塑子記者が語る、安倍政権の裏側――記者がスパイのように……

2017-09-26 | いろいろ

より

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東京新聞・望月衣塑子記者が語る、安倍政権の裏側――記者がスパイのように……

 安倍晋三首相のスポークスパーソンである菅義偉官房長官の記者会見で、何度も食い下がって質問を続けるひとりの女性記者が注目を集めている。その取材の様子が話題となり、最近はテレビや雑誌にもたびたび登場している東京新聞社会部の記者、望月衣塑子さんだ。なぜ菅官房長官にしつこく質問するのか、政治取材の現場はどういうところなのか、そして安倍政権の裏側について、望月さんに聞いた。

記者クラブの会見では、指名される人が決まっている

――菅官房長官への記者会見で毎回食いついていますが、望月さん以外の記者は、あまり切り込んだ質問をしていないように見受けられます。安倍政権に批判的な質問をしてはいけない“暗黙の了解”のような雰囲気が記者クラブにはあるのでしょうか? また、そもそも記者クラブとは、どういう集まりなのでしょうか?

望月衣塑子さん(以下、望月) 記者クラブとは、総理大臣をはじめ各官庁、政党を担当している(大手メディアのテレビや新聞などの)政治部記者が入っている記者会で、そのうちの大きなひとつが「内閣記者会」(官邸クラブ)です。最初は私も「批判的な質問をしないのが普通なのかな?」と思っていたのですが、菅官房長官の会見では、手を挙げている記者の質問には、批判的な内容でも全部きちんと答えています。一方、安倍首相の記者会見では、司会者は絶対に安倍首相のお気に入りの記者しか指名せず、NHKなどは手を挙げてもいないのに指されると聞きました。菅官房長官の会見に関しては、官邸クラブが中心ではありますが、フリーの記者でも金曜午後は入れるようになっており、ある程度開かれてはいます。

 かつては政権に批判的な記者の質問も多かったと聞きましたが、最近は、あまり官邸に抵抗できないという空気感がクラブにあると思いますね。加計学園疑惑の話は、マイルドな聞き方をされていますし。

――望月さんは政治部ではなく、社会部の記者ですよね。ほかの部の記者でも入れるんですか?

望月 明確に記者会所属の記者しか出てはいけないという規定はないので、内閣記者会に会社が登録し、国会記者証を持っているなどいくつか条件をクリアしていれば、フリーの記者も含めて会見には入れます。官邸は週刊誌などのマスコミも、どんどん来ていいというスタンスとも聞きますが、内閣記者会側が既得権にこだわっており、フリーの記者が金曜日の午後会見以外に出ることには否定的だと聞いています。

――官邸クラブの記者は、政府の「御用記者」のような感じなのでしょうか?

望月 政治部と社会部では、目指している方向が、そもそも違うのだと思うので、批判的な質問をしない政治部記者が問題だとは思いません。政治部記者の中では、社会部的な疑惑の追及より、北朝鮮や中国との関係をはじめとする国際情勢や、経済政策などの政治情勢がどんどん動いていくから、それを日々追って、菅長官のコメントを取ることの方が重要なのだとも思います。

 だから、稲田朋美防衛相など、選挙での政治情勢に影響する失言などには、とても敏感だし、ツッコミも入るのですが、加計疑惑や下村疑惑(下村博文議員が加計学園から闇献金を受けたといわれる疑惑)などの社会部的な疑惑をいちいち掘り下げていくという雰囲気ではないのだと思います。政治部記者としては、日々目まぐるしく回っていく政治をどうフォローしていくかが主眼で、疑惑の追及が重要ではないというスタンスなのかもしれません。そのため、疑惑を掘り下げている社会部の記者こそが、怒りをもって追及していけるのだと思います。

同じ回答しかしない政治家を、国民に見せることが大事

――望月さんは、会見時に菅官房長官に何度も質問をされていますが、それに対し、菅官房長官は質問の答えになっていないような回答ばかりされていますよね。

望月 今では、その様子を国民に見せることが必要だと思っています。国民は、何を質問しても、菅官房長官がうろたえて同じ答弁を繰り返すのを見て、「さすがに『加計ありきでない』という言い訳は苦しいよな」と思い始めているのではないでしょうか。

――NHKや民放をはじめとしたテレビには、すべてをきちんと放送できない事情があるのでしょうか?

望月 これは、私がテレビ関係者から聞いた話ですが、例えば、国会が開いている間は加計学園疑惑がこぞって放送されていました。しかし、国会が閉じてしまうと加計疑惑について報道するかどうかは各局の判断になるそうで、そこから、各局の政権に対する忖度のスタンスがよくわかるというのです。ある番組ではトップで扱っているものが、別の番組では三番手扱いのニュースになっているとか。また、ある民放局では、コメンテーターに官邸の見解を話す人を入れるよう、上から指示が来たという話があるとも聞きました。

 テレビと比較すると新聞は、そのようにあからさまな圧力は受けていません。数年前、衆議院議員選挙を前に、萩生田光一官房副長官が民放各局の番組担当者や編集局長などに宛てて、「公平中立、公正な選挙報道を」という内容の文書を送りつけています。このように政権が選挙報道側に規制を前提とするような圧力をかけることはありませんでしたから、極めて衝撃的な文書であり、安倍一強の下での政権のテレビメディアへの関与、圧力があからさまになった出来事でした。しかし、そのときも、すぐに騒ぎにはなりませんでした。やはり、テレビは電波を総務省に握られている(電波法に基づいて放送免許を与えられている)ことも関係あるのかもしれません。

 本来は、このような圧力があったら、テレビメディアは断固として闘うべきでしょうが、それはなかった。逆に、あの萩生田文書を契機に、テレビメディアの忖度が急速に進展していったのではないかという気がしています。これは民主主義や言論の自由にとって大きな危機だったと感じています。

官邸が記者をスパイのように使っている!?

――なんだか独裁国家のような感じですね。

望月 恐怖政治のようにも見えるかもしれませんが、問題とされるべきは、政権だけでなく、メディア側の姿勢にもあると思います。関係者を取材すると、官邸側は反政権的な官僚や政治家、マスコミ関係者などについて、出身官庁からの情報など、あらゆるチャンネルを使って調べているとも聞きます。韓国・釜山の総領事の森本康敬氏が異例の交代となった背景には、マスコミ関係者と森本氏が会食した際、政権に批判的な発言をしたことが、官邸に伝わったためとも聞きます。ある元自民党議員は、取材に対し「政治部記者に官邸批判をしていたら、その話がすべて官邸に筒抜けになっていて恐ろしかった」とも言っていました。前川喜平・前文科省事務次官は、一部メディアで報道が出る前に、新宿のバー通いについて官邸の杉田和博副長官から指摘を受けていました。

 どこのメディアでもそうですが、その部署に50人の記者がいれば50人分、取材対象から聞き取った内容のメモができます。マスコミのある社では、かつてはそのメモを記者全員で共有していたそうですが、今は「反政権的なことを言っている官僚や政治家がいます」と、官邸サイドにその話が筒抜けになるのを防ぐため、キャップやサブキャップ以外にメモをシェアしない形を取るようになったとも聞きました。これは、政権が怖いということ以上に、権力側に気に入られ、権力に食い込もうとするがために、記者が自ら進んでメモを権力に差し出していると推測させることを示しています。こういう状況は、かなり危機的ではないかとも感じます。どんな立場にいようと、最後はメディア、そして記者は権力の監視・チェックをし、権力の暴走を防ぐために存在するということを肝に銘じる必要があると思っています。

――権力を監視するはずの記者が、その役割を果たしていないということでしょうか?

望月 記者としては政権の内部に食い込みたいから、そのメモを官邸サイドに渡すのでしょうが、結局それは、官邸が記者をスパイのように使う材料にもなっているわけです。前川前次官に聞きましたが、文科省の文化功労者選考分科会の委員の人選で、閣議決定が必要なものがあったため、事前に官邸にお伺いを立て、人事のリストを見せた時、杉田副長官から「この学者は安保法制反対の学者の会にいるよね」とか「この人は政権にあまり賛成していないね」と指摘を受けたと話していました(杉田副長官は否定)。前川氏は、「要は、委員のメンバーからは外せと言いたかったのでは」と話していました。この話を菅官房長官にぶつけると、「それはない」と激しく否定し、指摘されたことをとても嫌がっていました。内閣人事局を掌握し、2014年以降、霞が関の部長級以上の官僚5,600人の人事権を握るようになったことは、今の政権の力の源泉です。その内幕のような話は、最も触れてほしくない部分なのでしょう。

 前川氏によると、安倍政権前のかつての自民党でも似たようなことはあったが、審議会の人事に少しくらい反政府側の知識人がいても、官邸がそこまで口出しをすることはなかったそうです。民主主義的な議論をするには、ある程度、さまざまな立場の意見がある方が、議論に多様性があっていいじゃないですか。でも今、安倍首相の作り出す会議は、みんな安倍首相の色に染まった人ばかり。加計学園の民間の諮問会議のメンバーしかり、「NO」と言う人は周りに絶対寄せ付けたくないという感じがあります。メディアの使い方にしてもそうです。本来は国会の場など誰に対しても開かれている公平な場でこそ、自らの狙いや心情を打ち出してしかるべきなのに、読売新聞の一面で憲法改正議論を5月3日に出して、国会で「読売新聞を読んでください」と言い放ったり、改憲案を秋の臨時国会で提出することを「正論」懇話会が主催したイベントで言ったりとか、そういうのは非常におかしな話だなと思います。

今、政治がどうなっているのか知ること

――おかしなところが多い今の政権に対して、国民はただ見守ることしかできないのでしょうか?

望月 まずは知ることです。今、政治がどうなっているのか知ることで、選挙の際の一票につなげてください。支持率の低下は、政権にとって大打撃なんです。加計疑惑の中身をきっちりと知れば、今の政権がなんでもありのおかしな政権になりつつあるのではないか、という疑念が解消されるか、逆に疑念が深まるかということが、少しずつ見えてくると思うんです。人事権を握られた現在、霞が関の官僚はひたすら忖度に動いてしまい、「総理が言っているんだから」で済まされ、本来は司司であるべき官僚の姿勢さえもゆがみかねないという、政治の現状を理解することができてくると思います。官僚側に立てば、反対意見を述べて自分たちが左遷されるのが一番怖いということなのでしょう。

 かつて、小泉政権下で打ち出した教育政策が、当時文科省の一課長だった前川氏の考える教育理念・政策の在り方に合わないと、ご本人がブログを書いて反論していたことがあったようですが、小泉改革の中でも、彼が左遷されることはありませんでした。今は、そういうことがあるとすぐに、課長は飛ばされてしまいます。ものを言えない空気が霞が関官僚の中に漂っていて、官僚の間に不満もたまっていると思います。

 (後編へつづく)
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選挙中に武力衝突が起こったら、安倍首相はどうするのか。ハッキリと言明しておく責任がある。

2017-09-25 | いろいろ

白川勝彦氏の「永田町徒然草」より

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選挙中に武力衝突が起こったら、安倍首相はどうするのか。ハッキリと言明しておく責任がある。

17年09月24日

No.1934


 北朝鮮情勢が、狂っている。アメリカと北朝鮮の指導者双方に、それぞれ原因がある。言葉の上だけの戦争だという人が多いが、私はあまり軽く考えていない。武力衝突や戦争になる可能性が、十分ある。これが、率直な北朝鮮情勢の現実である。こういう中で、わが国は米国と同じ立場に立っている。北朝鮮もそう考えるであろうし、国際社会もそう見るであろう。それを決定付けたのが、今回の安倍首相の国連総会での演説であった。外務省の罪は、重いぞ。

 全てが狂っている中で、明日、安倍首相が衆議院の解散を表明するらしい。解散の理由のひとつに、北朝鮮問題があるという。また何らかの位置付けをしなければ、おかしいであろう。解散から投票日までに武力衝突があったら、安倍首相は、いかなる行動をとるのだろうか。少なくともそのことだけは、ハッキリと言明して欲しい。また、その責任がある筈だ。

 安保法制の改定を踏まえても、現在のところ取り得る措置は、“専守防衛”しかないであろう。もし、それを超えるようなことをしようというのであれば、明確に言明しておいてほしい。これは、北朝鮮問題という新しい危機が持ち上がったのだから、安倍首相が解散総選挙に踏み切ったのは、仕方がない、あるいは理解できると主張しているすべての政党は、ハッキリと言明すべきである。これは、マスコミの責任である。

 今日は、このくらいにしておこう。それでは、また。
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選挙演説まがいの国連演説につくづく米国は情けない  (抄) Plus

2017-09-25 | いろいろ

ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

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選挙演説まがいの国連演説につくづく米国は情けない

 トランプ大統領の初の国連総会演説はまるで支持者を前にした選挙演説のようだった。国連加盟国である北朝鮮、イラン、シリア、ベネズエラ、キューバを「ならず者国家」と名指し、中でも北朝鮮を「完全に壊滅させる」と威勢良いところを見せた。

 しかし支持者を前に本当のことを言う政治家などフーテンは見たことがない。支持者を前にすれば喜ばすために嘘を言うのが政治家の本性である。従って選挙演説を信じて一票を入れる国民は大体がバカを見ることになる。

 問題は無知な大衆を前にした選挙演説と世界193か国が加盟する国連総会演説とでは意味が異なる。トランプが支持者の前でどんな嘘をつこうが米国民が選んだ大統領だからお好きにやればと思うが、国連総会の演説でお好きに嘘を言われたのでは世界各国は迷惑だ。トランプの演説を聞いてフーテンは臆病で情けなくなった米国の姿を感じた。

 1991年に旧ソ連が崩壊し冷戦が終わった時、米国議会情報を日本に紹介する仕事をしていたフーテンにとって米国の一挙手一投足はすべてが新鮮で驚きだった。ワシントンは新たな時代を迎える緊張感に満ち議会でまず議論されたのはCIAの見直しだった。

 CIAは冷戦で生み出され対ソ諜報を担う組織だから廃止を前提に見直すというのである。冷戦によって作られた組織や仕事をすべて見直すという米国の徹底ぶりに驚き、それならソ連を仮想敵とした日米安保体制も見直す必要があるとフーテンは思った。

 そうした議論の中で米国が最も懸念したのはソ連の核技術流出である。にわかに中東と北朝鮮の核疑惑に目が向けられた。北朝鮮は旧ソ連の技術で原子力発電を行っていたが、旧ソ連は平和利用以外認めず、北朝鮮はNPT(核拡散防止条約)を締結しIAEA(国際原子力機関)の監視下に置かれていた。

 ところが93年に北朝鮮はNPTを脱退する。クリントン政権は94年に北朝鮮の核施設空爆を決断するが、韓国に甚大な被害が及ぶことから爆撃は直前に停止された。米朝交渉によって一時的に危機は回避され北朝鮮もNPTに復帰した。

 北朝鮮が再びNPTを脱退するのは02年にイラク、イランと並びブッシュ(子)大統領によって「悪の枢軸」と名指しされた後である。しかも米国は03年に国連に対し「イラクに大量破壊兵器がある」と嘘の報告を行い、先制攻撃によってサダム・フセイン大統領を捕らえて死刑にした。

 それを見せつけられ金正日は05年に核保有を公式に宣言、06年にはミサイル発射と一回目の核実験を行う。核を持たなければサダム・フセインの二の舞になるというのが理由である。つまり北朝鮮を核武装させたのは他ならぬ米国なのだ。一方でその頃から米国と北朝鮮の間には水面下の交渉パイプが出来た。

 ブッシュ(子)大統領のイラク戦争は中東にISを誕生させ、アフガン戦争も米国をベトナム戦争以上の泥沼に陥れた。そのためオバマ大統領は中東からの軍撤退に全力を注ぐことになる。軍事的にも財政的にも「世界の警察官」を務めることは無理となり、北朝鮮との二正面作戦などできない話だった。

 ・・・・・。




別Webより Plus

 米国が「世界の警察官を辞める」というのは人的財政的負担を他国の協力に委ねるという話である。その米国の思惑にすっぽり嵌ったのが日本の安倍政権である。15年に成立した安保法制は日本の自衛隊が地球上のどこでも米軍に協力する道を開いた。

 それなら二正面作戦もできる。トランプの頭の中にはそうした計算が働いている可能性がある。オバマ大統領が撤退を決めたアフガニスタンへの増派と同時に北朝鮮と事を構えようとする姿勢の中に何でも言うことを聞く安倍総理の顔がちらついているかもしれない。

 北朝鮮問題に軍事オプションなど考えられない。まず米国にとって核兵器は全く使えない兵器である。広島、長崎に落として以来、朝鮮戦争にもベトナム戦争にも最近のアフガンやイラク戦争にも使用していない。

 朝鮮戦争ではマッカーサーが核使用を進言して解任され、インドシナ戦争ではフランスが米国に核使用を要求して断られ、その腹いせに米国に対抗する形で自ら核武装した。アフガンやイラクでの核使用など話題にもならない。米国が広島と長崎に落としたのは戦争を終わらせるためではなく人体実験のデータを得たかったからだとフーテンは考えている。 

 米国は旧ソ連と危険な核のゲームを行ったが本当に使う気があったのかは疑わしい。「ペンタゴンのヨーダ」と呼ばれた冷戦の戦略家アンドリュー・マーシャルによれば、「スター・ウォーズ計画」という誇大妄想的な兵器によって旧ソ連にさらに軍事負担を負わせ、経済的に破たんさせたことが冷戦を終わらせる結果になったと言う。

 米国はほとんど当たらないミサイル防衛を日本や韓国に買わせて利益を得る一方、中国に北朝鮮経済を締め上げさせ経済的破綻を狙っているように見えるが、しかし中国にとっては北朝鮮問題を終わらせないことが利益になる。

 そのためロシアを巻き込んでできる限り北朝鮮を存続させる。それが出来なくなれば米中ロの3国で朝鮮半島をどうするかを話し合い、それぞれが利益を得る方法を考えることになる。

 安倍政権は「日米韓三国の結束」としきりに言うが、それは北朝鮮問題で米国が利益を吸い上げるための構図であり、日米間でこの問題を解決することなどどこから考えてもできない。北朝鮮と国境を接しているのは中国とロシアだから中露が参加しない枠組みなどありえない。

 北朝鮮問題とは東アジアの将来をどうするかという問題である。それを米国の言いなりになるのでは話がおかしくなる。一時期は世界の一極支配を夢見た米国が四半世紀を経て中東と北朝鮮で躓き、どうにもならないから強がりを言って問題解決を他国に押し付けようとしている。

 その挙句に国連加盟国の中で気に食わない国を「ならず者国家」とトランプは批判したが、多くの国はその演説に眉をひそめ、「ならず者」とトランプとがダブって見えたのではないか。そのトランプの「使い走り」をしている安倍総理を各国はどのように見ているのか、フーテンは恥ずかしく思うしかない。
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古賀茂明「“究極の演技派”泉田前新潟知事の裏切りで笑う安倍自民党」

2017-09-24 | いろいろ

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古賀茂明「“究極の演技派”泉田前新潟知事の裏切りで笑う安倍自民党」

 自民党は9月13日、衆議院新潟第5区の補欠選挙(10月22日投開票)の公認候補に泉田裕彦前新潟県知事(54)を推すことを決めた。

 報道では地味な扱いだったが、実はこれは今後の政局に大きな影響を与える事件だ。

 支持率が大きく低下し、「安倍一強」の危機と言われるが、その最大の原因は、都議選大敗で、「選挙に強い安倍」というイメージが崩壊したことにある。

 仮に、10月22日に青森、新潟、愛媛で行われる3つの衆議院補選で自民が1勝2敗以下の戦績となれば、「安倍ではもうダメだ」という印象を決定づけ、来年の総裁選の見通しは極めて暗くなる。逆に、3戦全勝となれば、「選挙に強い安倍」というイメージが復活するかもしれない。

 補選が行われる3県はいずれも自民党が強い地方の選挙区だが、最近の新潟は例外だ。2016年夏の参議院選挙では、野党連合の森裕子氏に敗れ、また同年10月の新潟県知事選では、民進党抜きの弱小野党連合候補の米山隆一氏に大差で敗北を喫している。

 泉田裕彦氏は、新潟県知事を12年間務めた実績もあり、抜群の知名度を誇る。しかも、保守政治家でありながら、脱原発の野党や左翼系の市民にまで幅広く支持されるスーパースターだ。安倍自民としては、喉から手が出るほど欲しい候補である。

 民進党も、立候補を要請したが、あっさりと断られ、先の見通しは立っていない。

 このまま行けば、新潟での自民党勝利は固い。愛媛と青森で1勝1敗なら、全体では2勝1敗の勝ち越し。うまく行けば、3戦全勝も視野に入って来る。

■“反原発”とは言わない、実は「再稼働容認派」

 泉田氏が自民から出馬と聞いて、「反原発の泉田氏が原発推進の自民から出るのはおかしい」と思った方も多いだろう。

 私は、経済産業省時代に泉田氏と一緒に仕事をしたこともあり、彼が県知事になってからも折に触れて連絡を取ってきた。昨年の知事選前後も会食や電話などで連絡を頻繁に取った。

 そんな私にとって、今回の「自民から立候補」という話を聞いての印象は、「ああ、やっぱり」というものだ。

 私が知る泉田氏は、「反原発」でも「脱原発」でもない。ただ、「反東電」ではあった。中越沖地震で起きた柏崎刈羽の火災事故の際の東電の対応や、福島第一原発事故後の東電の嘘と情報隠蔽への泉田氏の反発は特に強かった。泉田氏は、「福島の事故の検証が終わっていないのに再稼働の議論をすることはできない」とか、「避難計画が万全のものになっていないまま再稼働できるはずがない」と繰り返し述べ、東電の廣瀬直己社長(当時)に非常に強い口調で批判をしていたので、いかにも「脱原発派」だという印象を国民に与えていた。

 しかし、彼は自身でも認めていたが、決して「反原発」でも「脱原発」でもなかった。条件さえ整えば、再稼働しても良いという「条件付き再稼働容認派」だったのだ。

■究極の演技派? 新潟知事選直前の辞退は出来レース

 泉田氏は、世の中では、原発再稼働を止めている知事として有名だったが、それ以外はあまり知られていない。しかし、私の印象では、彼はどちらかというとタカ派的な保守政治家だ。国政にも強い意欲を持っていたが、出るなら当然自民党ということになる。その観点から見れば、昨年の知事選辞退騒動は、彼にとっては非常に合理的な選択だった。

 昨年春には、近々、柏崎刈羽原発再稼働が原子力規制委員会の審査で認められるという見通しだった。これは泉田氏にとって非常に厄介な問題だ。一般には、泉田氏が原発を止めていたという印象が広がっていたが、実は、止めていたのは規制委であって、泉田氏は外野から東電批判をしていただけだった。

 しかし、規制委がゴーサインを出せば、次は県知事の同意という段階になる。それは県知事に「原発を止めるか動かすか」の踏み絵を迫る。不同意なら、安倍政権とは決定的な対立となる。将来、自民党から国政に転出したい泉田氏としては、非常に困る。

 一方、再稼働に同意すれば、市民から「嘘つき」というレッテルを貼られる。そのどちらをも避けるには、知事を辞めるしかない。「逃げるが勝ち」ということだ。

 その場合、彼としては、当然、保守層の支持を維持するとともに、野党支持者や無党派層の支持も減らしたくない。彼は、選挙直前に出馬辞退を表明することで、この相矛盾する要請を両方満たす答を出すことに成功した。

 彼は最後まで、なぜ出馬を辞めたのかという問いに対して、地元紙・新潟日報との対立という理解不能な言い訳を述べるだけで、最後まで有権者を納得させる答をしなかった。

 当然、世間では種々うわさが飛び交った。さらには「命を奪われるような怖ろしい脅迫を受けた」という話がまことしやかに広がった。

 泉田氏は、「私からは具体的には何も言えないが、いろいろなことがあるんです」というような思わせぶりな発言をして、こうした噂が広がることをむしろ助長していた感がある。

 これによって、彼は一気に「悲劇のヒーロー」となった。いわば、市民がだまされるのを放置したのである。

 これを称して、「究極のペテン師」ということもできるし、それが言い過ぎだとしたら、少なくとも、「究極の演技派」とは言えるだろう。

 一方、選挙直前の辞退によって、自民党は非常に有利な立場に立ち、逆に野党側は不戦敗さえ懸念された。泉田氏としては、自民党に大きな恩を売った形である。

 実は、この時から泉田氏と二階氏の間には、国政進出を二階派丸抱えで支援するという密約があったという説があるが、その後の展開を見ると、非常に納得のいく説である。密約がなかったとしても、少なくとも、泉田氏が、後の展開を予想して、うまく立ちまわったということだけは言えると思う。

■私が泉田氏に抱いた二つの疑念

 その後、米山隆一氏(現新潟県知事)の出馬で情勢は急転するが、その選挙戦で私が非常に不審に思ったことが二つある。

 まず、泉田氏が市民連合の再三の求めにもかかわらず、再稼働慎重派の米山氏を支持することを最後まで断り続けたことだ。今から考えれば、自民党との関係で米山氏支持は打ち出せなかったということなのだ。

 さらに不思議だったのは、泉田氏は、選挙戦終盤で、二階俊博自民党幹事長の求めに応じて、官邸で安倍晋三総理と会談した。これを受けて、菅義偉官房長官が、「知事にお越しいただいたことは大きい」と述べて、泉田氏と自民党の蜜月ぶりをアピールした。

 これは、二階氏が要請したものだが、それに乗った泉田氏は、明らかに将来を考えて、二階氏と安倍総理に恩を売ったのである。

 この時、私は彼が二階派から国政に出るつもりなのではないかという疑念を抱いた。人気抜群の泉田氏だが、実は、いつも「お金がない」と漏らしていた。資金面の面倒を見てくれそうな二階氏とのタッグは「願ったりかなったり」のものだったのだろう。少なくとも、彼にそうした思惑があったとしても何ら不思議はない。

 地元の自民党関係者やマスコミの話では、この夏前までに、泉田氏は、5区ではなく4区から立候補することになっていたそうだ。泉田氏は元々4区の加茂市出身。既にかなり積極的な選挙準備の活動が展開されていたという。

 そこに突然の5区長島忠美議員の死去で、5区候補として急浮上したのである。

 泉田氏としては、今5区で出ても、すぐにもう一度衆議院選がある。ここは自重して、4区から出る方が得だ。5区から出れば、4区で活動している後援者たちへの裏切りとなる。

 実は、泉田氏が最後まで迷ったのは、「脱原発派への裏切り」の問題ではなく、「4区への裏切り」問題だった。結局5区から出ることにしたのは、二階氏や安倍総理への大きな貸しになるからであろう。

■泉田氏の裏切りと言い訳とは?

 泉田氏は、「4区支持者との関係で、大義名分が必要」と繰り返していたそうだが、今回彼は、しきりに故・長島忠美衆議院議員(5区の補選は同氏死去によるもの)及び山古志村との関係を強調している。彼の口からは、知事になって最初に公務で会ったのが当時の山古志村の長島村長で、一緒に震災対応を不眠不休でやったとか、最後の公務で訪れたのが山古志村で、住民から感謝と激励の言葉をもらったなどの話が出て来る。そうした「深い縁」が大義名分になるということなのだろう。

 裏切りと言えば、もう一つ、「原発推進の自民党から出るのは、脱原発を願う県民への裏切りだ」という批判への言い訳も必要だ。

 そこで、彼が用意した言い訳は、二つ。

 まず、「自民党を変えなければ脱原発は実現しない」というものだ。しかし、彼が自民党で脱原発を叫んだとしても全く意味がないだろう。永田町で彼に一目置く政治家など皆無だ。私が良く知る経産省OBの政治家も、泉田氏のことを「ああ、あの人ね」と見下している。自分が自民党を変えるなどと言うのは、選挙のセールストーク。本気で言ったら、「寝言」だと馬鹿にされるだけだ。

 もう一つの言い訳は、「米山知事の裏切りを止める」である。泉田氏は、最近、米山知事批判を強めている。彼によれば、米山氏は、再稼働を止めるためのいくつかの歯止めを少しずつ外しているというのだ。そこで、県庁にいろいろ言っても、自分は無役で影響力がない。国会議員になれば、地元選出の国会議員の声を無視するわけにはいかなくなるので、自分が再稼働を止める役割を果たすというようなことを言っている。これもかなり苦しい言い訳だ。そんな批判をするなら、なぜ、知事を辞めたのかという批判がでるだろう。

 ちなみに、最も重要なポイント、泉田氏の「再稼働反対は嘘だったのか」という疑問に対する言い訳が気になるかもしれないが、実は、その言い訳は必要なさそうだ。

 なぜなら、泉田氏は、今も支持者たちに、「これまでの自分の考えは微動だにしない。現状での再稼働には反対だ」と言い続けているからだ。選挙中もそういう路線で行くのだろう。それなら、言い訳は不要だ。

 自民党の政策との整合性が問われるが、実は、当選さえすれば良いというのが自民党の懐の深いところ。河野太郎外相も、大臣になる前までは、いつも原発反対と言う主張を繰り返していたが、党議拘束に反する行動さえしなければ、不問に付されていた。泉田氏が当選すれば、選挙期間中の発言がもんだいになることはないのだ。

■苦境の民進党は森裕子参院議員に泣きつく

 泉田氏の自民党からの出馬によって、追い詰められたのは民進党だ。幹事長候補山尾志桜里氏の不倫スキャンダルで出ばなをくじかれた前原誠司新代表にとって、この三補選は最重要課題だ。少なくとも、野党側が連勝中の新潟では何としても勝ちたい。

 しかし、今の民進党には魅力がなく、民進党県連は独自候補を立てられず、野党・市民連合の事実上のリーダーである森裕子自由党参議院議員に泣きついた。もちろん、野党共闘前提だ。今後、民進党は主導権を失い、森裕子氏らが市民連合と連携しながら、候補者選びを行うことになるだろう。

 一方、だらしない民進党の動向よりもはるかに大事なのは、泉田氏の「裏切り」に対して、一般市民がどのような反応を示すかである。泉田氏を信じたいという人もまだまだ根強く存在するが、そんな泉田ファンには、是非以下のことを考えていただきたい。

 まず、泉田氏に自民党を変える力があるなどと言うのは幻想に過ぎないことは前述したとおりだ。

 そして、何よりも、泉田氏が当選して誰が喜ぶのかを想像するべきだ。泉田勝利は、脱原発の野党候補敗北を意味する。

 選挙後の安倍総理のコメントはこんなものになるだろう。

「わが自民党は、昨年、参議院選挙と県知事選で、新潟県民から大変厳しい審判を受けました。しかし、今回は、我々自民党の政策を新潟の方々に理解していただくことができた。心から感謝します。これまで通り、原子力規制委員会が安全だと判断した原発に限り、安全第一で、しっかり再稼働を推進して参ります。」

 脱原発の最後の砦とも言われる新潟での自民党勝利は、全国の原発再稼働の流れを決定的なものにするだろう。

 それだけではない。3補選で自民が2勝あるいは3勝すれば、安倍政権は息を吹き返す可能性が高い。

 問題は、こうした複雑な状況を有権者が正しく理解して投票できるかどうかだ。選挙が近づくと、マスコミは当たり障りのない報道しかしない。泉田氏を支持するにしても、野党候補を支持するにしても、十分な情報が提供されたうえでの判断となるように期待しつつ、これから約1カ月後の開票日まで、新潟5区の動向を注視していきたい。
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 解散総選挙となるので補選自体がなくなり総選挙に紛れ込む、その場合泉田前知事は地元の4区から出るのが筋のように感じるが。

夏のドキュメント番組だけは凄い “国営放送”NHKの正体

2017-09-23 | いろいろ

より

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夏のドキュメント番組だけは凄い “国営放送”NHKの正体

安倍政権と対峙したくないのがホンネ

 北朝鮮情勢の緊迫化もあってか、大新聞・テレビがこれまで以上に安倍政権ベッタリの報道を続けている中、このところ、ヤケに「NHK番組」の評判がいいらしい。

 例えば、8月15日の「終戦の日」に報じた「戦慄の記録 インパール」。大量の餓死、戦死者を出し、「陸軍史上最悪」と呼ばれた旧日本軍のインパール作戦を扱った内容で、無謀な作戦に至った経緯などについて、新映像や関係者の証言を織り交ぜながら丁寧に掘り下げていた。

 同13日に放送された「731部隊の真実~エリート医学者と人体実験~」では、入手した音声データや隊員らの証言を報じ、大きな話題となった。

 今月10日夜の「沖縄と核」では、米国が1300発もの核兵器を沖縄に配備していた衝撃の実態を、元米兵士の証言をもとに報道。冷戦下で東西陣営の緊張が高まるたびに沖縄が核の“標的”とされていたことや、米軍統治下の1959年6月19日、米軍那覇サイト(那覇空港)で核弾頭を搭載したミサイルが誤射され、那覇沖合に着水した不発ミサイルを米軍が回収した――という驚愕の新事実を明らかにした。間違いなく、今年一番の大スクープと言っていい。

 NHKは、福島原発についても、膨大なデータを独自解析し、メルトダウンの経緯や廃炉問題について専門家を交えて多角的に分析する報道を続けている。沖縄、核兵器、福島原発……。なるほど、国民にとって関心が高い問題ばかりだ。まさに「公共放送」の面目躍如で、巷では、安倍政権との“癒着”批判が噴出した籾井勝人前会長時代とは大違い――との声も出ている。

「OBとして情けない」

 だが、果たして本当にそうなのかと言えば、クビをかしげざるを得ない。取り上げているのは決まって、ドキュメンタリー番組の「NHKスペシャル」であって、一般のニュースではほとんど報じられないからだ。

「沖縄と核」で明らかになった核ミサイルの誤射事故なんて、それこそ朝晩のニュース番組で大々的に報道し、多くの国民に伝えるべき内容だ。まかり間違えば、当時の沖縄に死の灰が降り注ぎ、大量の犠牲者が出ていたかもしれないのだ。1000発を超える核兵器はその後、どう処理されたのか。現在は危険はないと断言できるのか――など、北朝鮮の核ミサイルが現実味を帯びてくる中で、取り上げるのが当然だ。

 ところが、NHKにそんな姿勢は見られない。おそらく、考えられる理由は安倍政権と対峙したくないからだろう。とりわけ沖縄は、米軍普天間基地の移転やオスプレイ墜落問題でグチャグチャになっている。そんな時に核兵器配備や誤射事故を大きく扱えば、日米両政府の「核兵器の密約」どころの騒ぎじゃない。沖縄県民、国民の対米感情を今以上に刺激するのは容易に想像できる。かといって、重大な新事実であることは間違いないから、じゃあ「Nスペで」とお茶を濁したのではないか。そんな思惑が透けて見えるのだ。

 元NHK政治記者で評論家の川崎泰資氏はこう嘆く。

「重大な事件について、新事実が明らかになればニュースで報道するのが当たり前です。しかし、それをしない。おそらく政治部や上層部におもんぱかっているのでしょう。今のNHKに果たしてマトモなジャーナリズムの精神が残っているのか。OBとして情けなくなります」

森友疑獄も加計問題も深く掘り下げずウラで政権と手を握る

 よくよく考えると、森友疑獄、加計問題だって、NHKは取り上げてはいるものの、出来事を淡々と伝えるだけで深く掘り下げようとはしない。加計問題では、前川喜平前文科次官が真っ先にインタビューに応じたのはNHKだったにもかかわらず、中身はいまだに放送されていないし、流出した文科省の内部文書も〈官邸の最高レベル〉を黒塗りで伝えていた。週刊誌に、内部文書を「怪文書」扱いして黒塗りを指示したのは4月に報道局長に就いた政治部出身の小池英夫氏だったと報じられたが、さもありなんである。ワインセラーなどの豪華設備や高過ぎる建設費が問題になっている愛媛・今治市の獣医学部の設計図面だって、どの報道機関よりも早く入手したのに、前川インタビューと同じで沈黙したままだ。

 森友疑獄では最近になって、籠池泰典前理事長と近畿財務局担当者が「値引き交渉」していた様子の音声データの存在が明らかになったが、NHKでは一切触れていない。つまり、「脱籾井」路線は“演出”に過ぎず、ウラでは政権とコッソリ手を握り、怪しい安倍サマに協力して重大事実を葬り去ろうとしているのではないか――。そう見えてしまうのだ。

政権もNHKも利用し合っている

「NHKvs日本政治」(東洋経済新報社)の著者で、カリフォルニア大のエリス・クラウス教授は、NHKが予算の承認や経営委員の人事権を国会に委ねているという〈マスコミの一番弱い環〉を歴代自民党が利用し、さまざまな悪質な戦略を仕掛けて「国営放送」化を図ろうとしていたことを解説し、こう書いている。

〈自民党の幹部や議員は(略)(NHKが)国家への義務に背くようなニュースや情報番組、それに政治活動を行ってならないとするのである〉〈このような態度はもはやメディアに対する嫌悪や偏向への批判を越えているように思われるが、自民党内部ではどこでもみられるものである〉〈これらの保守系政治家はNHKについて固定的な考えを持っている。戦前、国家の従事者として認識されていた放送の役割に近い〉

 要するに「予算」と「人事」を国会に握られ、がんじがらめのNHKが真正面から政権批判するわけがないのだ。さらに、エリス・クラウス教授はNHKの体質の問題についても、こう指摘している。

〈NHKもまた政治部記者を利用する〉〈NHKのなかには、自民党や野党と話をしたり聞いたりすることを職務とする特殊な人員がいる(略)スペシャリストとなるのは、その職務上国会議員と親しくなるような政治記者の経歴の持ち主だという〉

 なるほど、確かにNHKの解説委員は政治部出身の記者が少なくない。安倍に寵愛されたといわれる岩田明子解説委員もそうだ。政権とズブズブの関係を築く政治部記者だけが出世するのであれば、ベッタリ報道になるのも当然だ。岩田解説委員は、最新号の文芸春秋で「驕りの証明」と題した一文を寄稿し、反旗を翻した――なんて言われたが、本心は怪しいものだ。市民団体「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」の共同代表で東大名誉教授の醍醐聰氏がこう言う。

「民放よりも、お金と時間があるNHKが腰を据えてやれば、特番で良質の番組を作るのは可能でしょう。ただ、過去の出来事を取り上げるのも大事ですが、森友、加計など現在進行形のニュースの方が重要ではないでしょうか。政権の中枢にいかに切り込むか。そこが報道機関の真価が問われる部分だと思いますが、NHKの政権にすり寄る体質は何も変わっていない。とくに今の政治部記者は官邸のスポークスマンのようになっている。北朝鮮に対して強硬姿勢を取る安倍政権と同調するかのように国民不安をあおる報道は戦前の翼賛報道とまったく同じです」

 結局、お上の宣伝機関という中身は変わっちゃいないのである。
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「日本一の反戦おばあ」の涙~島袋文子さん国会前へ

2017-09-22 | いろいろ
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第72回:「日本一の反戦おばあ」の涙~島袋文子さん国会前へ~(三上智恵)



 先週末、長野県佐久市で『標的の島 風かたか』の上映会とトークがあった。私が出版でお世話になっている大月書店の岩下結さんのご両親が主催者の一人なのだが、岩下さん一家は、以前から基地反対を訴え続けてきた「反戦おばあ」島袋文子さんとは家族ぐるみのお付き合いをしてきた。だから、おばあは私が名古屋に行くと聞きつけすぐ電話をしてきた。

 「あんたが長野に行くなら、私も行こうかねえ」。こうしてパタパタと文子さん4度目の長野訪問が決まった。

 おばあは88歳、血圧も高いし足が悪くて旅行は車椅子になる。それでも辺野古の窮状を訴えるためと、空の旅で内地に行くことは年に2、3度ある。しかし心配は尽きない。直前に取りやめになることも当然あるし、おばあは沖縄の宝なのに何かあったら…と考えると、私は自分から彼女を内地に誘うことはしなかった。しかし今回は、自ら長野に行きたいと言うことだ。せっかく羽田を経由するなら、おばあの夢をひとつ叶えられないかと、私は考え始めた。

 おばあのやりたかったこと。「国会の前に行って総理大臣に直接訴えたい」。彼女は10年以上前から、そう私に言っていた。辺野古に暮らす彼女が基地反対を表明して20年、ころころと総理大臣の顔は変わった。鳩山総理の時のことは前にもここに書いた。県外移設を掲げながら辺野古案に回帰したことを撤回して欲しいと、文子さんは来沖中の総理一行の黒塗りの車列を命がけで止めて直訴しようとした。その後、辺野古に数度通い、謝罪をしてくれた鳩山さんとおばあは、今では並んでテントに座る仲になっている。

 そんな風に、彼女にとって総理大臣というのは常に、真っ向から勝負する相手だ。戦中戦後の哀れを耐え、復帰の希望は打ち砕かれて戦争の島を返上できず、さらにまた防波堤になれと言われる今の状況を命がけで変えようとするおばあは、「命は惜しくない」「総理大臣と刺し違えても」という覚悟で、日々憤まんやるかたない思いを抱えてゲートに通っているのだ。

 「刺し違えても」。今の世の中では、共謀罪でお縄になりそうな表現だ。でもおばあが主人公の前作『戦場ぬ止み』でも、文子さんの台詞にこういうくだりがあった。

 「ダイナマイト持ってこい、と私はいつも言うのよ。そんなものどうするの? って、もう、座り込んでも止められないなら、ダイナマイト抱いて国会前に行った方が早いんじゃないか」

 この台詞を入れることで彼女の身に何か降りかかるかも知れないことについて、議論になった。90歳近い老女をも過激派に仕立て上げかねない国のなりふり構わぬやり方は、警戒しなければならない。しかし、壮絶な戦争体験から基地闘争真っ只中の現在の生活まで、一直線に戦場を生き続ける文子おばあの半生をたどるドキュメンタリーで、命がけのその覚悟を表現しておかなければ、平和に関してどうにも鈍いアンテナしか持ち合わせない大半の日本人に、沖縄の苦しみが響かないのではないか。

 そして、この台詞を残した理由はもう一つある。辺野古の基地建設に反対する東海岸の老女たちの声を報道してきた20年の間に、わたしは同じ趣旨の言葉を何度も聞いているのだ。

 嘉陽のSさん「海を埋めるなら、私を埋めて下さい。そうなったら、海に入りますよ!」

 辺野古のTさん「いざとなったら、おばあたちと一緒に海に入っていきます、人柱になって。怖くはないですよ」

 瀬嵩のFさん「クリントン大統領に会わせてくれないかね? 身体にダイナマイトを巻いて抱きついたら、この基地の話は終わりにならないかね」

 嘉陽のMさん「絶対に許さない。そうなったら私を殺してからやりなさいと出ていくよ」

 書ききれない。まだまだあるのだが、今、思い出すために昔のノートをめくっていて、涙腺が決壊し進めなくなった。彼女たちの半数はもう後生(グソー=あの世)に行ってしまった。「基地建設白紙になったね!」という瞬間を見せてあげられなかった。安心して旅立ってもらえなかった。そのことを考えたとき、自分の無力さが呪わしいし、のたうち回るほど苦しい。

 名護市東海岸の女性は、言葉は荒いが、情熱的で、まっすぐだ。底抜けに優しく堂々と正しいことを主張してきたキラキラしたおばあたちに会うことが、軟弱だった私の芯を強くしてくれた。最近、辺野古の問題を聞きかじったような人たちが、「地元は賛成しているのに一部の過激派が…」などと問題の本質をねじ曲げようとしても、そんなフェイクが木っ端みじんになるほどの地域の声を私は聞いてきたから、揺らぐことはない。戦争を原点に、そして「普天間移設」の欺瞞と辺野古の苦悩を私が伝えなければならないと思うだけだ。

 子や孫のために身体を張ってきた多くの先輩たちの溢れる思いを、まさに今、体中で体現していらっしゃるのが島袋文子さんだと私は思う。だから東海岸のおばあたちの声を、文子さんの台詞で代弁してもらいたかった。彼女にばかり負荷がかかるのは申し訳ない。が、彼女にはそれをはねのけて余りある力がある。

 「ダイナマイトを持って国会へ」は物騒だが「言葉の爆弾を抱いて国会の前へ」行けたら、おばあの積年の思いは少しでも晴れるだろうか。政治家も国民も、彼女の声を直に聞いたらもっと変わるかも知れない。辺野古の埋め立てが進み、日々逮捕者が出ていても全く全国ニュースにならない現状に、一石を投じられるのでは。そんなことを悶々と考えていた私は、大月書店の岩下結さんに相談した。岩下さんも、文子おばあの思いは痛いほどよく知っていらっしゃるので、何か形にしたいと早速仲間たちに呼びかけて、文子おばあを迎える有志の会を結成してくれた。そして短期間のうちに、参議院議員会館でのおばあの講演と、官邸前でのアピールが実現した。議員会館の講堂はみるみる溢れ、念のためにモニターを置いた別室もあっという間に埋まり、控え室まで開放して、500人を超える人々が文子おばあと同じ空間で彼女の話を聞こうと集まってくれた。企画は大成功だった。

 そこで彼女が何を話したか、20分弱にまとめたのでこれは是非、冒頭の動画を見て欲しい。前半は笑顔を交えて、努めて冷静に戦争や基地のことを話し、さらなる支援を呼びかけて聴衆に手を振った文子さん。私はマイクの音が聞きづらい彼女のお手伝いと聞き役として隣に座ったが、戦争体験の話になると心が不安定になってしまう場面を何度も見て来たので、今日は頑張って落ち着きを保っているのだなあと半ば安心していた。様子が変わったのは、後半の高校生との対話の場面だった。

 壇上に上がってくれたのは、これまでも沖縄に足を運び、沖縄戦や基地のことを熱心に学習していた自由の森学園の生徒二人。自分の学習体験を話し、率直な質問をぶつけた。

 「戦争体験の話の中で、アメリカが命の恩人とおっしゃってましたが、心からそう思うのですか?」

 それに応えようとする文子さんは、やがて目が左右に揺れ、時空が歪んで魂があの阿鼻叫喚の地獄に吸い寄せられたのか、堰を切ったように言葉を吐き出し始めた。ああ、始まってしまった、と私は覚悟をした。どこで止めよう? いや、一度ここに辿り着いてしまったら、あとの苦しさは一緒なんだから、最後まで話して聴衆に伝えた方がいいのか? 私だけは冷静にコントロールしないと会場も高校生も不安になってしまう。経験値があるお前が考えろ! と自分に何度も言い聞かせるのだが、おばあの悔しさや深い悲しみが隣からびんびん伝わってくるので、やはり私も泣いてしまう。司会者失格だ。

 その内容。ここは活字にしたくないので、どうか20分、時間を作って見て欲しい。こういう場をわざわざ永田町でつくり、高齢の女性をはるか南の島から招いて辛い話をしてもらい、そして撮影して、大事なところを時間をかけて編集して、こうしてパソコンや携帯で無料で見られる形にまで私たちがしているのはなぜなのか。少しでも思いを致して下さるなら、20分くらい作って欲しい。

 今の日本で一番、身体を張って安倍政権と対峙しているのは88歳の島袋文子さんだろう。政府が今さらに沖縄に押しつけようとしている軍事的な負担は、72年前から戦争と共に生きる苦しみを強いられてきた県民にとってどれほど残酷なことなのか。それを文子さんは直接政府に訴えたいと思い続けてきた。国会の中で10分でいい、彼女こそ全国民の中で誰よりも意見を言う機会を与えられるべき人だと思う。しかしそれが叶わない。ならば官邸前で、議員会館で、我々が聞こうじゃないか、発言してもらってみんなの力で政府に届けようじゃないかという、このうねりの一部にみなさんにも参画して欲しいのだ。映像を見ることでその場にいなかったみなさんにも共有してもらい、共謀し共犯者になってもらいたいのだ。それは大それた望みだろうか?

 夕方、首相官邸前に移動してからも、大勢の支援者が文子さんを迎え、思いの丈を聞かせて下さい、とマイクを渡した。

 「沖縄から参りました、島袋文子です。きょうは、文句を言いにきました!」

 やんやの大拍手。

 「私があなたに手紙を託した島袋文子でございます。その手紙を読んでどう思いましたか?」


 「あんたの思うとおりに沖縄を潰そうとしてもそうはいきません。絶対に負けませんからね、見て下さい、こっちに来て!」

 そう言っておばあは「勝つまであきらめない」と書かれたTシャツを示して胸を張った。途中胸が詰まって話せなくなるも、また勇気を振り絞るように顔を上げて文子さんは叫ぶ。

 「本当に憎ったらしいったら、あんたたちは! 安倍さん、菅さん、麻生さん、三名! 三羽ガラス! 撃ち落とさないと私は気が済まないからね!」

 沖縄のおばあらしいユーモアで笑いを誘い、真正面から切なる思いを永田町の空に響かせた。かっこよかったよ、おばあ。いつもまっすぐで正義感の強い少女のようなその感性が大好きです。あなたのそんな姿に、目の見えない母と10歳の弟の手を引いて砲弾をかいくぐって進む責任感の強い15歳の少女の影が重なって、わたしはあなたを抱きしめたいほど愛おしいと思うのです。




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告発受理。でも、別に期待してませんし(笑)

2017-09-21 | いろいろ

ラテンアメリカと日本を拠点に活動する音楽家・作家 「八木啓代の独り言」 より

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告発受理。でも、別に期待してませんし(笑)

 山尾志桜里議員の不倫などは、私にとってはどうでもいいことでしたが、イタリア料理店での会話が店員が、色々証言したってのはアレですねえ。

 ちょうど少し前に、某ミステリ作家の方と、「合理的な殺し方」について議論していたのが、よりにもよって恵比寿のイタリア料理店だったことに気づいて、なんとーも嫌な気分になったのは、実はあたくしです。(爆)

 さて、私が代表をつとめる「健全な法治国家のために声を上げる市民の会」が、佐川元財務局長・現国税庁長官ら7名を特定して、公用文書等毀棄罪で刑事告発してから、4ヶ月。

 この間、いつ確認のお電話を差し上げても、「検討中です」と、検察は、なかなか受理してくれませんでした。

 わからないでもありません。
 受理してしまえば、現職の国税庁長官らを取調べする必要が出てきます。

 でも、不起訴にしてしまえば、当会が検察審査会申し立てを行うことは、火を見るより明らかです。

 陸山会事件の田代虚偽報告書事件のときは、補助弁護士に元検察高官を送り込むという苦し紛れの超裏技を使って、不起訴不当どまりで強制起訴を免れたものの、さすがにメディアから大きく批判された検察当局。
 さすがに、もう同じ手を使うのは無理でしょうね。

 しかも、より国民の怒りを買っている森友事件で、姑息な手を使うのも、なかなか難しいかと。
 かといって、強制起訴された挙句に、有罪判決でも出ようものなら、世論は特捜廃止にまっしぐらになりかねません。

 だって、そうですよね。弱い者いじめはお得意だけれど、巨悪はみすみす見逃して不起訴にしちゃったという、ものの見事な実例になっちゃうわけですから。

 とはいえ、完璧に、しかも何重にも法律要件を満たした告発状を不受理にもできず、彼らは必死で時間稼ぎをしていたわけですが、この店晒しっぷりがさすがに4ヶ月にも及ぶというのは怠慢としか申せません。

 さすがに、今週に入ってから、この件を問題視された記者の方々からお問い合わせがあったり、当会会員の皆様からも、いろいろと検察に受理のご確認や激励のお電話を差し上げたりということがあったようです。

 というわけで、来週には、皆様に楽しんでいただけそうな次の一手も水面下で準備しておりましたのですが、法曹チームの先生方から、「次のアクションに移る前に、担当検事さんに予告をしておいたほうがいいですよ。すみやかに副部長に報告なさると思いますので」とのアドバイスを頂いたこともあって、午前中に念のため、特捜に電話をしましたら、担当検事さんが「取り込み中なので、午後5時半にお電話をください」とのご伝言。

 で、午後5時半にお電話を差し上げようとしたところ、先にあちらから、お電話を頂戴いたしまして、告発を受理した上で、大阪地検特捜部に移送したことを、非常に丁重にお知らせいただきました。

 どうやら、お昼のうちに、大阪特捜と東京特捜で必死でババ抜きをなさって、東京が大阪に押し付けた模様でございます。

 すでに、大阪地検特捜部が、籠池夫妻の詐欺や近畿財務局の背任で捜査を行っており、同一の事件なので、との名目ではありますが、それならば、もっと早く5月末にちゃっちゃと受理して大阪回しにすればよいことでした。

 そもそも、公用文書等毀棄は、近畿財務局の犯罪というより、佐川局長の国会答弁に端を発した東京在住の財務省官僚を告発対象とした犯罪です。(なので、当会は、東京地検に告発状を出したわけです)

 まあ、籠池夫妻に対しては、単なる補助金不正(しかも返金済み)を詐欺で起訴する一方で、近畿財務局には、背任を捜査をしているにもかかわらず、ガサ入れの一つもしないのですから、大阪地検特捜部が本気で背任を立件する度胸などないことは、とっくに明らかではあります。当会の公用文書等毀棄に至っては、ましてや、現職の国税庁長官を取調べたり、財務省をガサ入れする根性などないでしょう。

 とはいえ、籠池氏の裁判では、現在、黙秘中の夫妻が、次々に爆弾証言を噛ましてくださりそうですし、これからもいろいろ録音も出てきそうですし、背任の分も含めて、検察審査会は、大注目をあびることになりそうです。

 ですから、あとはちゃっちゃと不起訴にしていただきたいと思っております。あんたらにはもう誰も期待してへんし。

 お楽しみはそこから、ですので。
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この解散、何も言いたくないが、やはり狂っているね

2017-09-20 | いろいろ

白川勝彦氏の「永田町徒然草」より

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この解散、何も言いたくないが、やはり狂っているね。

17年09月19日

No.1933


 わが国の政治は、もう狂っているので、何が起きても驚かないが、臨時国会冒頭が決まったようである。これだってまたどなるか分からない。わが国の最大の政治課題は、なんといっても北朝鮮問題である。そしてアメリカ等と力を合わせて最終制制裁決議を作ってきた。そしてその実施を一つひとつ行っていくことが、アメリカや日本の役割となった。

 現に安倍首相などは、インドまでいって、制裁案実施の協力を求めた。河野外相もアラブの国に行って同じようなお願いをしてきた。それなりの成果があったと聞いている。北朝鮮は、120カ国と国交を持っている。国交のないわが国が、そういう国に出向き、制裁に協力を求めることはそんなに簡単ではない筈だ。

 地味で大変だが、いまの日本はここに掛けるしかない。こうした努力をする中で、北朝鮮問題の全貌が見えてくる。これが北朝鮮問題にいまわが国が全力を傾注することではないのか。ところが、北朝鮮問題があるから解散だ、というのなら話にもならない。

 民進党の前原代表は、“森友・加計”疑惑隠し解散だといった。私もそう思う。だったら共産党がどうとか言わないで、“森友・加計”疑惑隠しのために行われる解散なのであるから、これに反対する勢力を総結集して、今回の奇襲の解散を乗り切ることに全力を傾けることだ。展望がない訳ではない。一点でも敵の攻撃に弱点があったら、そこを突くのが闘いだ。

 今日はこのくらいにしておこう。それでは、また。
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『東京新聞』望月記者に強まる官邸の圧力(横田一)

2017-09-20 | いろいろ

より

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『東京新聞』望月記者に強まる官邸の圧力(横田一)

 〈官邸報道室、東京新聞を注意 「不適切質問で国民に誤解」〉と銘打った9月2日付『産経新聞』記事に、素朴な疑問が湧いてきた。「官邸と産経新聞が“共謀”をした言論弾圧に等しいのではないか」と。

 官邸が問題視した社会部記者は、加計問題での厳しい再質問で注目された『東京新聞』望月衣塑子記者。8月25日(金)午前中の菅義偉官房長官会見で望月記者は、すでに報道関係者や国会議員の間で広まっていた「加計学園獣医学部設置の認可保留」に触れながら質問したが、官邸は文科省の正式発表(解禁)前であったことを問題視(注1)。

 7日後の9月1日、『東京新聞』に「質問に不適切な点があった」「国民に誤解を生じさせる」として注意喚起と再発防止を求める文書を送り、翌2日に『産経』が次のように報じたのだ。

 〈獣医学部の新設計画は大学設置・学校法人審議会が審査し、答申を受けた文部科学省が認可の判断を決めるが、この時点ではまだ公表されていなかった。/官邸報道室は東京新聞に宛てた書面で「未確定な事実や単なる推測に基づく質疑応答がなされ、国民に誤解を生じさせるような事態は断じて許容できない」として、再発防止を強く求めた〉

ありもしない「被害」をでっちあげ

 これに対して望月記者は、こう反論する。「文科省の正式発表(解禁)の前に質問しましたが、加計学園獣医学部設置の『認可保留』という事実関係自体が誤っていたわけではありません。うちの担当記者が取材で大学設置審議会の保留決定の方針を詰めて、記事も出ていたため、菅官房長官会見で触れたのです。ただし文科省の正式発表であるかのような印象を与えたとすれば、私の落ち度といえるでしょうが」。

 加計問題を多少追っている大半の報道関係者や国会議員は、望月記者の反論に軍配を上げると同時に、官邸の抗議文に違和感を覚えるだろう。「認可保留」という公知の事実を、文科省が設定した正式発表よりも少し前に触れたところで、国民に誤解を生じさせるとは考えられないからだ。

 ちなみに文科省の正式発表(報道機関への解禁)は8月25日午後で、望月記者の質問は同日の午前中。閣議終了後に菅官房長官会見が行なわれ、この日の閣議は「10時2分から11分」(首相動静)であったから、2時間足らずのフライングにすぎないのだ。

 しかも保留を決定した設置審議会が開かれたのは8月9日で、テレビや新聞は保留の方針決定を報じていた。官邸の抗議文を報じた『産経新聞』でさえ、翌10日に「加計獣医学部の判断保留 設置審、文科相答申 延期へ」という記事を出していた(注2)。

 官邸の抗議文を「事実関係に反する意図的な表現」と一刀両断にしたのが、民進党の小西ひろゆき参議院議員だ。ツイッタ―で官邸が送った書面を公開、こう書き込んだのだ。

 〈「未確定な事実や単なる推測に基づく質疑応答がなされ、国民に対して誤解を生じさせる」との下りは、「記者は、政府が事前提供した解禁期限付の確定情報に触れただけ」という事実関係に反する意図的な表現。まさに、不当な言論弾圧そのもの。東京新聞は断固抗議すべきだ〉 https://twitter.com/konishihiroyuki/status/904613951647891456/photo/1

 こんな光景が目の前に浮かんでこないだろうか。「強面のオッサンがありもしない被害をでっちあげて騒ぎ立て、気に食わない人物を黙り込ませようとしている」と。

官邸の対応を解くカギ

 官邸が常軌を逸した対応をしたのはなぜか。この“謎”を解くカギは、望月記者が質問した8月25日から抗議文が出る9月1日までの7日間のタイムラグ。この間の菅官房長官会見で、望月記者は北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)のミサイル発射前夜に安倍首相が公邸に宿泊したことなどについて問い質し、この質問を『産経』が批判的に紹介した記事が広まった結果、安倍首相は公邸に留まらざるを得なくなったのだ。「その逆恨みで官邸は1週間前の些細な出来事を引っ張り出して、望月記者に嫌がらせをしたのではないか」という見立て(推論)が有力のようにみえるのだ。

 私邸通い中止の一因の可能性のある『産経』1日付の記事〈「北朝鮮に応じる調整しているか」…!? 東京新聞、官房長官に迷質問〉は、以下の通りだ。

 〈菅義偉官房長官の31日の記者会見で、米韓合同演習を批判し、弾道ミサイルを相次いで発射する北朝鮮を擁護するような質問が飛びだした。

 質問したのは、学校法人「加計学園」獣医学部新設計画をめぐって菅氏を質問攻めにした東京新聞の社会部記者。「米韓合同演習が金正恩朝鮮労働党委員長の弾道ミサイル発射を促しているともいえる。米韓との対話の中で、金委員長側の要求に応えるよう冷静に対応するように働きかけることをやっているか」と質問した。

 菅氏は「北朝鮮の委員長に聞かれたらどうか」と返答。東京記者は「北朝鮮側の要望に応えて、冷静かつ慎重な対応をするよう米韓に求めていく理解でいいか」と改めて迫った。

 東京記者はまた、北朝鮮が過去2回ミサイルを発射した前日にいずれも安倍晋三首相が公邸に宿泊したことを取り上げ、「前夜にある程度の状況を把握していたのなら、なぜ事前に国民に知らせないか」「Jアラートの発信から逃げる時間に余裕がない。首相動静を見て、(首相が)公邸に泊まると思ったら、次の日はミサイルが飛ぶのか」とも追及した〉

逆恨みの可能性も

 一方、「迷質問」と『産経』が批判したこの日の質問について望月記者は、こんな補足解説をした。

 「金委員長が米韓合同演習の中止を求めたのは『斬首作戦』が含まれていたからです。米国の攻撃で国家が崩壊したイラクやリビアの二の舞にならないように、自国防衛のために核武装をしようとしている。相手の立場に立って考えることが重要。北朝鮮に核ミサイルを連射されたら日本全土を守り切ることは難しい。悪の枢軸として圧力をかけるだけではなく、北朝鮮との対話を模索して欲しいとの考えから質問をしたのです」

 官邸が恫喝的対応(言論弾圧)に走った心情が垣間見えてくる。北朝鮮を「悪の枢軸」として米国と一緒に圧力をかける一方、ミサイル防衛強化などに巨額の血税を投じようとする安倍政権に対し、望月記者は斬首作戦中止などで緊張を和らげて北朝鮮との対話を重視する“ハト派的対応”を提示したといえる。

 この考えは、報道ステーションで「I am not ABE」のフリップを掲げた元経産官僚の古賀茂明氏と同じ立場だ。ちなみに両者は共著本出版や対談をする間柄だが、結局、官邸は古賀氏出演の報ステに抗議したのと同様、安倍政権に異論を唱えた形の望月記者の質問(言論)も針小棒大な抗議文で封じ込めようとしたようにみえる。

 外交安保政策についての異論封殺に加えて、逆恨みのような感情が働いた可能性もある。これまで安倍首相は「公邸に常時泊まるべきだ」との批判が出ても、私邸からの通いを続けてきた。「体調管理や精神衛生の面で好ましいためか」といった推測が囁かれていたが、その理由はさておき、これまでの生活パターンが望月記者の質問後に変わったことは紛れもない事実。安倍首相と菅官房長官が激怒する姿が目に浮かんでくるのは私だけであろうか。

 官邸の常軌を逸した恫喝的文書の謎解きには、この“逆恨み説”が有力なヒントになるのではないか。

 北朝鮮情勢が緊迫する今、異なった立場から質疑応答をすることは極めて重要だ。官邸の抗議文に屈せずに望月記者が、菅官房長官会見でどんな質問を続けていくのか否かが注目される。

 (横田一・ジャーナリスト。ネット独自記事)

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注1 官邸報道室の書面にも添付された質疑応答は以下の通り。

●望月記者 最近になって公開されています加計学園の設計図、今治市に出す獣医学部の設計図、52枚ほど公開されました。それを見ましても、バイオセキュリティの危機管理ができるような設計体制になっているかは極めて疑問だという声も出ております。また、単価自体も通常の倍くらいあるんじゃないかという指摘も専門家の方から出ています。こういう点、踏まえましても、今回、学校の認可の保留という決定が出ました。ほんとうに特区のワーキンググループ、そして政府の内閣府がしっかりとした学園の実態を調査していたのかどうか、これについて政府としてのご見解を教えて下さい。
●菅官房長官 まあ、いずれにしろ、学部の設置認可については、昨年11月および本年4月の文部科学大臣から大学設置・学校法人審議会に諮問により間もなく答申が得られる見込みであると聞いており、いまの段階で答えるべきじゃないというふうに思いますし、この審議会というのは専門的な観点から公平公正に審査している、こういうふうに思っています。
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注2 8月10日付『産経新聞」
〈加計獣医学部の判断保留 設置審、文科相答申 延期へ
政府の国家戦略特区制度を活用した学校法人加計(かけ)学園(岡山市)の獣医学部新設計画をめぐり、同学園が来年4月に愛媛県今治市で開学を目指す獣医学部設置の認可申請を審査する文部科学省の大学設置・学校法人審議会(設置審)の非公開会合が9日開かれ、獣医師養成に向けた教育環境に課題があるとして、認可の判断を保留する方針を決めた。設置審は今月下旬に林芳正文科相に答申する予定だったが、延期される見通しとなった〉
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民進党が招いた? 臨時国会を逃げるための解散劇  (抄) Plus

2017-09-19 | いろいろ

ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

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民進党が招いた? 臨時国会を逃げるための解散劇

 安倍総理が今月28日に召集される臨時国会冒頭で衆議院を解散する見通しになったとメディアは報じている。さもありなんとフーテンは思う。このまま臨時国会が開かれれば再び「森友・加計問題」が国民の目にさらされ、それらの問題から逃げ切るには局面転換を図る必要があったからである。

 臨時国会の召集は6月22日に野党が要求した。憲法53条は「衆参いずれかの4分の1以上の議員から臨時国会召集の要求があれば内閣はその召集を決定しなければならない」と定めている。ただ要求から何日以内に召集しなければならないかは決められていない。

 それが8月23日に行われた自公幹事長会談で9月25日の週に召集されるというニュースを聞きフーテンは「ほう」と思った。しかも二階、井上両氏はその会談で補正予算の編成を行うことでも一致したというからなおさら「ほほう」と思った。

 補正予算案を審議するには予算委員会の開催が必要である。予算委員会は総理も出席してテレビ中継が行われる。そして予算委員会は何を質問しても良いとの慣例がある。当然野党はそこで「森友・加計問題」を追及する。それを自公両幹事長が合意したというから「ほほう」なのである。

 すると内閣側から直ちに補正予算の編成は必要ないとの声が上がった。茂木経済再生担当大臣や菅官房長官が補正予算編成を否定したのである。安倍総理が臨時国会で「森友・加計問題」の追及を嫌がっていることが分かる。本音では臨時国会の召集を望んでいない。

 しかし6月に要求が出された臨時国会召集を無視することも難しい。「憲法違反」と大騒ぎになる。だから9月の最終週に召集を決めたが「森友・加計問題」を目立たせないために安倍官邸は腐心している。臨時国会召集を巡り官邸と与党には温度差がある。安倍総理の退陣時期について政局が始まっている証左だとフーテンは思った。

 安倍政権は2年前の通常国会で安保法制を強行採決した後、「国民に丁寧に説明する」と言いながら、野党の臨時国会召集要求を無視してついに召集しなかったことがある。菅官房長官は「前例がある」と弁明したが、それは03年と05年の小泉政権時のことを指す。それまで歴代政権が野党の要求を無視した例はなかった。

 その小泉政権の例では野党が臨時国会召集の要求を行ったのがいずれも11月に入ってからで、1月に開かれる通常国会との期間は短く、しかもいずれの年も衆議院解散があったため通常国会だけでなく特別国会や臨時国会などが複数開催されていた。

 ところが2年前の安倍政権は10月21日に野党から臨時国会召集の要求があったにもかかわらず召集を見送り、その年は通常国会だけという前代未聞の事態を招いた。安保法制の強行採決で支持率が急落し、国論が二分する中で「国民に丁寧に説明する」どころか、都合の悪いことには蓋をする体質が露骨に現れた事例だった。

 そのためフーテンは「森友・加計問題」で支持率を急落させた安倍政権がこの臨時国会をどうするかに大いに注目してきた。臨時国会が開かれれば「森友・加計問題」の再燃は避けられない。さらに10月22日に行われる衆議院のトリプル補選で一つでも取りこぼせば退陣論が浮上する。

 ・・・・・。




別Webより  Plus

 それを避けるには臨時国会の冒頭解散が一つの選択肢になるのだが、解散の大義があるのかと言われればそれも難しい。

 噂としてはプーチン大統領に頼み込んで「北方領土問題の進展」を演出するとか、消費税を減税して元に戻すとか、あるいは田原総一朗氏の提案に乗って北朝鮮問題を解決するとか色々あった。

 しかしいずれも取ってつけたような話で解散の大義になるとは思えない。そんなところに民進党の山尾志桜里衆議院議員の「不倫疑惑」と離党問題が出てきた。それに相次ぐ民進党議員の離党の動きである。これほどの「敵失」を見せつけられれば解散のチャンスに見えて不思議ではない。

 臨時国会の召集が迫る中で局面の転換に腐心していた安倍総理が飛びつきたくなる状況が生まれた。

 フーテンは10日夜に1時間半にわたり行われた麻生副総理との会談で決断するに至ったと見る。麻生氏にとっても愛媛3区の補欠選挙で自身の推す候補が敗れれば政治生命に影響が出る。トリプル補選をなくして責任論を免れるには総選挙に持ち込むしかない。

 そして11日午前に安倍総理は二階幹事長、公明党の山口代表と相次いで会談し胸の内を伝えた。「臨時国会中に解散に踏み切ることを排除しない」と語ったようだ。

 それならば冒頭解散が最も合理的である。臨時国会から逃げるために行う解散だから冒頭が最も望ましい。

 このように解散は積極的な意味があって行われる解散ではない。「森友・加計問題」から逃げ、トリプル補選の結果から逃げ、民進党の「敵失」に乗じて行われる解散である。

 見方を変えれば民進党が安倍総理の最も欲していた解散の口実を与えたと言っても良い。そのため解散の大義はないに等しい。

 北朝鮮の核ミサイル問題が注目され、朝鮮戦争の当事者である韓国も行っていない空襲警報と避難訓練で日本国民の理性が狂い始めている時期だから、それと関連する大義を後付けで考えれば国民はついてくると考えているのだろう。それは憲法改正にもプラスに働くという計算だ。

 ただしこれはフーテンの見るところ練りに練られた解散ではない。民進党の体たらくを見て誘惑にかられた解散である。それがどのような結果をもたらすか「一寸先は闇」である。

 はっきりしているのは自公選挙協力がなければ与党は負け、共産党が独自に立候補すれば野党は負けるという東京都議会選挙と茨城県知事選挙が見せた教訓である。カギは公明党と共産党がにぎっている。
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「やはり国策捜査だった森友疑惑。特捜部はやる気なしで財務省は逃げ切り」

2017-09-18 | いろいろ

より

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「やはり国策捜査だった森友疑惑。特捜部はやる気なしで財務省は逃げ切り」郷原信郎・元特捜検事

 学校法人「森友学園」をめぐる事件で、大阪地検特捜部は11日、籠池泰典前理事長と妻の諄子氏を詐欺などの罪で追起訴した。捜査開始の時点から「国策捜査」との批判が噴出した今回の事件。いったい何が問題なのか。元東京地検特捜部検事の郷原信郎氏が解き明かす。

* * *

──森友問題で「国策捜査」との批判が多いのはなぜでしょうか?

 今回ほど、政治的色彩が濃い捜査はありません。幼稚園や保育園の補助金不正は珍しいものではなく、不正がわかった場合は行政が調査や指導をするのが一般的です。悪質であっても捜査をするのは警察。大阪地検特捜部が出てくる事件ではありません。籠池泰典氏が「国策捜査」と思うのも無理もないと思います。

──捜査は不自然な部分が多い?

 籠池氏は、不正だと指摘された国交省からの補助金は返還していました。にもかかわらず、3月29日に大阪特捜部が補助金適正化法違反の告発を受理したことが、一斉に報道じられました。当時、籠池氏は国会の証人喚問で証言をして、注目を集めていた。その時期に、東京の法務・検察サイドから出たと思われる情報がメディアに流れたのです。

 それだけではありません。籠池夫妻は、補助金適正化法が適用される事案なのに、詐欺罪で起訴されました。従来の検察ではあり得ない処理です。「詐欺」の罪名を付けることで、特捜部は籠池夫妻に悪いイメージを付けたかったのでしょう。

──政治的な意図を持って特定の人物を狙い撃ちする「国策捜査」だとしても、森友問題では、財務省近畿財務局も8億2千万円の国有地の値引きに関わっていたと指摘されています。近畿財務局の担当職員も起訴されるのでは?

 担当職員が起訴されることはないでしょう。背任の成立は「自己や第三者の利益を図る目的で損害を与えた」ことが必要です。担当職員が、自分の利益のため不当な値引きを行って、国に損害を与えたことを立証できなければ、背任容疑で刑事責任を追及できません。

 特捜部は「籠池夫妻は詐欺をした悪者」というイメージを世間に広げることで、近畿財務局は「不当な圧力を受けた被害者」とのストーリーを作ろうとしているように思える。それによって、近畿財務局の不起訴が世の中に受け入れられやすいようにしたいということでしょう。

──しかし、国有地の値引き交渉では、安倍昭恵首相夫人付の政府職員だった谷査恵子氏も、財務省とやりとりしていたことが明らかになっています。「近畿財務局は被害者」というストーリーは成り立たないのでは?

 特捜部の捜査では、特定の人物の捜査をしない「国策不捜査」もあります。本気で捜査するなら、特捜部は近畿財務局を強制捜査をしているはず。証拠隠蔽が国会で大問題になっているのに、ガサ入れをしていないのは、最初から起訴の方向で捜査する気がないからでしょう。「籠池夫妻=悪党」を世間に広め、「籠池夫妻が昭恵夫人の名前まで使って脅してきたので、不当な値引きに応じざるを得なかった」というストーリーに持ち込みたいのでしょう。

──近畿財務局を調査している会計検査院の報告書が、今月中に発表されると報道されています。森友問題は、今後どうなるのでしょうか。

 会計検査院の報告書がどのようなものであれ、特捜部が「近畿財務局は被害者」というストーリーを基本的に変えることはないでしょう。

 幼稚園の補助金に関しては、多くの施設で同様の問題が大なり小なりあるはずです。本来は行政指導で対応すべき問題です。特捜部が捜査を始めた経緯も、捜査のやり方も処分も不可解でなことだらけです。もともと動機が不純だからでしょう。

 このまま籠池夫妻に「悪党」のイメージを広めるだけで捜査が終結してしまえば、検察は一体何のためにこの事件でしゃしゃり出たのか、という疑問を持たざるを得ない。そうなれば、特捜部が国民から批判を受けるのは避けられません。(AERA dot.編集部・西岡千史)
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オスプレイ事故報告 「メーデー」は墜落の証拠

2017-09-17 | いろいろ

より

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オスプレイ事故報告 「メーデー」は墜落の証拠

 まさに墜落だ。なぜ日米両政府は認めないのか。

 昨年12月、名護市安部に墜落した米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが墜落前、救助を求める救難信号「メーデー」を2回にわたり発していた。米軍の事故調査報告書に明記している。

 米側は「制御した緊急着水」と主張するが、メーデーとは機体が制御不能に陥ったことを意味する。明らかに矛盾する。事故原因をパイロットのせいにし、かたくなに機体の欠陥を認めない姿勢は異常だ。県民の生命を守るためには配備撤回を求める。

 報告書によると、墜落したオスプレイは、空中給油を何度か試みたが、MC130の給油口への接続は失敗。着陸燃料量の低下を受けて即時帰還の警報が出た。

 オスプレイはその後も接続を試みたが、MC130との正常な距離が保てず、給油口は揺れ、右プロペラに接触。回転翼の回転速度が低下し、バランスの取れた飛行ができなくなり、オスプレイは1度目の「メーデー」を発信した。その後も操縦室内の通信装置に異常がみられ、激しい揺れのためにバランスを維持できなくなり、2度目の「メーデー」を発した。

 オスプレイはヘリモードでは制御が不安定で、空中給油できないという構造上の欠陥を抱えている上、固定翼モードでも機体の前部に給油口と大きなプロペラがあるため、乱気流などで給油機のホースが安定せず接触すればプロペラを壊す危険性がある。

 制御された緊急着水ならローターなどの軽微な損傷であるはずが、報告書には左翼が見えず、操縦席が機体から垂直に曲がった様子の記述などもある。

 米国防研究所(IDA)でオスプレイの主任分析官を務めたレックス・リボロ氏が指摘するように「着水後の損傷ではなく、『衝撃』を受けた後の全く制御されていない状態での墜落」であることは明らかだ。

 米軍の事故原因隠しは今に始まったことではない。

 1959年6月30日、石川市(現うるま市石川)の宮森小学校に米軍嘉手納基地所属のF100D戦闘機が墜落した。米軍は宮森小に墜落した原因を「エンジン故障による不可抗力の事故」と発表した。しかし、最大の原因は「整備ミス」だった。この事実が明らかになったのは事故から40年後だ。

 同型機の事故が多発していたことは当時、知られていない。米空軍によると、事故の前年に重大事故(クラスA)は168件、47人のパイロットが死亡している。

 宮森小の事故から2年後、同型機が具志川村(現うるま市)川崎に墜落した。その後も米軍は嘉手納基地に配備し続けた。オスプレイは8月にも墜落している。これ以上県民の命が不当に軽く扱われることは許されない。
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「原子力開発、世界と日本」 & 「日本が牛耳られる日」

2017-09-16 | いろいろ

賀茂川耕助氏の「耕助のブログ」より

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原子力開発、世界と日本

 不適切会計問題などから経営危機に陥っている東芝だが、発端はアメリカの巨大原子力メーカー、ウェスチングハウス(WH)を傘下に置いたことであった。

 東芝は世界で原子力エネルギーの需要が増えるとして2006年、WHを約6,000億円で買収し、積極的な海外展開を進めた。しかし2011年、東日本大震災を機に世界各国で原発からの撤退または計画が凍結された。原発輸出を成長戦略の柱とする安倍首相がトップセールスマンとしてトルコやサウジアラビアなどを訪問し受注獲得に励んだが、世界の趨勢は原発撤退に転換したのである。

 アメリカの電力自由化などで原発の採算が悪化していたWHを2006年に東芝が買った背景には、経済産業省が「原子力立国計画」を国のエネルギー戦略として打ち立てたことがある。経産省はエネルギー白書で、「原子力は、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーであることに加え、少ない量で発電が可能であることや備蓄が容易なこと、燃料を一度装荷すると3~4年間は利用できること等から、エネルギーの供給安定性にも優れている。我が国は、安全確保を大前提に、エネルギー安全保障の確立と地球温暖化問題を一体的に解決する要となる原子力発電を基幹電源として推進し、『原子力立国』を目指す」としたのだ。

 原発は政府が公的資金を投入しなければ成り立たない、採算のとれない発電方式である。加えて放射性廃棄物の処理費や廃炉費などを考えればさらにコストは上がる。しかし日本政府は原子力発電を増やし、使用済燃料を再処理し、プルトニウムを有効利用する核燃料サイクルの推進、高速増殖炉の商業ベースでの導入、というように国が原子力産業を後押ししていくプランを策定していた。

 福島の事故以後、ドイツは2022年までに原発全廃を宣言し、原子炉メーカー、シーメンスは原発事業からの撤退を表明した。スイス、イタリア、ベルギー、オーストリアなどヨーロッパ各国で原発撤退が進んでいる。電力の76%を原発に依存するフランスでさえ、2025年までに原発依存度を50%にまで下げる法律を採択した。アジアではベトナムが原発の建設を撤回し、台湾は2025年までに原発をすべて廃炉にすると決めた。この世界の流れの中、そして福島原発事故の収束の見通しもなく、いまだに10万人以上が避難生活を余儀なくされている中で原発再稼働強行を続けているのが日本なのだ。

 俳優で元・参議院議員の中村敦夫氏は以前から環境問題に関わっていたが、朗読劇「線量計が鳴る」で全国を回られている。朗読劇は中村氏が元・原発技師だった老人の独白として、原発の歴史、チェルノブイリ事故の事実、そして今も原発が動き続ける理由を一人で語るというもので、10月には私の住む京都で開催される。私も実行委員として参加しているので、多くの方に中村氏の朗読を聞いて欲しい。世界が風力や太陽光などの自然エネルギーへの投資に向かう中、原発事故の当事者である日本が原発に固執し続けることはあまりにも悲しい。
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日本が牛耳られる日

インターネット小売り最大手であるアマゾン・ドット・コムが米国の自然食品スーパー、ホールフーズ・マーケットを買収した。

 アマゾンは本や家電、雑貨などをインターネットで販売する小売企業のイメージが強いが、ITインフラの提供者でもある。「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」という名称で、データ保存やデータベース、コンピュータ処理サービスなどさまざまなIT関連のインフラサービスを提供しており、2013年にはCIAにクラウド・コンピューティング・サービスを提供することで話題になった。

 政府関連の受注を多くしてきたIBMが、受注できなかったために異議の申し立てをCIAに行い、その回答の中でアマゾンのテクニカルソリューションの方が優れていたと説明されたため、アマゾンの受注が明らかになった。システムの受注額は6億ドル(約670億円)だったと言われている。

 しかしこのシステムについては、米国民の監視体制を強化するためにCIAとアマゾンが連携したと懸念する専門家もいる。なぜなら、アマゾンが買収したホールフーズの顧客の多くは、遺伝子組み換えに反対し、有機栽培やフェアトレード製品を好む人々であることは周知の事実で、つまり米国政府の農業、医療、健康分野の政策を好ましく思っていない消費者ということだ。

 アマゾンはCIAと強いコネクションを持つ新聞社「ワシントンポスト」も買収しているが、今回のホールフーズ買収により、アマゾンとCIAはコンビで、ホールフーズの顧客層をターゲット別に細かいアルゴリズムを展開し、分析ができるようになるからである。

 1999年、CIAは「In-Q-Tel」というベンチャーキャピタルを設立し、諜報活動に利用できそうな優れた技術、たとえばウェアラブル、ソーシャルメディア解析などのスタートアップ企業に投資している。CIAがアマゾンと共に投資しているベンチャー企業の一つにカナダにある量子コンピュータを開発する会社があるが、量子コンピューターとは驚くほどの速さで検索が行える革新的な技術なのである。

 またアマゾンはホールフーズに農作物を提供している生産者との関係を利用して、食料供給においても統制力を行使するようになるかもしれない。電子商取引においてアマゾンは独占的な地位を確立しており、米国で売買されている製品の価格を支配している。すでに凋落の始まっている米国の小売業界で、ホールフーズを買収することでアマゾンは実店舗にまでその力を広げることができるだろう。

 元国務長官だったヘンリー・キッシンジャー氏は、あらゆるもの、食料、ワクチン、医療品、種子に至るまで、戦略的武器として扱うことを提唱した。日本では安倍政権が主要農作物種子法を廃止する法案を可決したが、これは米、麦、大豆の種子を国が守るという政策を放棄するに等しく、これにより外資系企業による種子、そして食料の支配が可能になるということである。規制緩和、独占、技術進歩により、日本も膨大な富とデータを独占するアマゾンのような巨大企業に牛耳られる日は遠くないのかもしれない。
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甘利明は守られて山尾志桜里は守られず  (抄) Plus

2017-09-15 | いろいろ

ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

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甘利明は守られて山尾志桜里は守られず

 前回ブログを書いた直後に山尾志桜里衆議院議員が民進党を離党する記者会見を行い、そのことを巡ってまたテレビのワイドショーがバカ騒ぎを続けている。なぜバカ騒ぎが続くかと言えば「男女関係はない」と言い切る山尾氏が離党したからである。

 「男女関係がないならなぜ離党したのか、嘘をつかずに男女関係を認めろ」というゲスの怒りが爆発し、だからテレビが取り上げる。しかしフーテンは前回のブログで書いたが、政治家の身の下問題を騒ぐことほど愚劣なことはないと考える。

 政治家の最も「私」の部分に属する問題は、政治家にとって最も重要な「公」の能力と何の関係もない。政治家の能力は唯一「公」の分野で判断されるべきで、もし問題にされることがあるとすれば身の下の相手に「公」の立場を利用して利益を供与した場合である。私的な関係の範囲を超えていなければ問題は何もない。

 民主主義政治の先進国ではそれが常識なのだが、米国だけがそれとは異なっていたものをクリントン大統領のセックス・スキャンダルが命取りにならず、「未熟な米国政治がようやく成熟した」とフランスのメディアから称賛された事例を前回のブログで紹介した。

 従ってフーテンは山尾議員の議員辞職などとんでもないと思い離党にも反対であった。文春の記事に堂々と対応した方が良い、対応ぶりによっては「禍を転じて福」とすることもあり得ると考えていた。ところが山尾氏は「男女関係はない」と言い切る一方、民進党に迷惑をかけるという理由で離党を発表した。

 これで民進党に山尾氏を守る気がなかったことが分かる。同じく週刊文春に「口利き疑惑」を報道された甘利明衆議院議員が自民党を離党せず今も主要な地位にいるのとは対照的である。スキャンダル報道に対し自民党は所属議員を守るが民進党は守らない。その構図が鮮明になった。

 言うまでもなく「口利き疑惑」の方が「不倫疑惑」より政治家にとって致命的である。フーテンの考えでは100対0の割合だ。「不倫疑惑」は騒ぐ方がおかしいので問題にならないが、「口利き疑惑」は汚職の疑いだから100%問題にすべきである。

 「口利き疑惑」は国会で厳しく追及されて当然の事案である。しかし「不倫疑惑」を国会で追及する議員はいるだろうか。追及すれば追及した議員がバカにされつまはじきされるだろう。「不倫疑惑」はせいぜい三流週刊誌やテレビのワイドショーでバカ騒ぎするゲスな大衆向けの話題で、まともな場所でまともな人間が追及する問題ではない。

 ところが山尾議員は党から離党を迫られ甘利議員は党によって守られた。これがどのように政党に跳ね返ってくるか、そのことを民進党は考えたのだろうか。民進党執行部は山尾議員を守れば国民の反発を買い党は致命的な打撃を受けると考えたのだろう。

 しかし離党させることが党の利益にならないことだってある。そこのところの計算がフーテンには分からない。現実に起きているのは、山尾氏を離党させたことで民進党が週刊誌報道を認めた形に見え、一方の山尾氏は「男女関係はない」と言い切り、ゲスが怒りだして問題が尾を引いている。

 ・・・・・。



別Webより  Plus

 自民党と民進党では考え方に隔たりがある。フーテンの見るところ自民党は建前よりも利を重視する。しかし民進党はきれいごとに目が行きがちで利に疎い。その印象が今回の騒動で増幅された。そしてフーテンが思うのは、国民は瞬間的には「建前のきれいごと」を支持するが、長い目で見れば「きれいごと」を言って利に疎いより、「薄汚く思えても」利に聡い方を好感する。

 政治は理想をくどくど言われるより利益をくれる方が良いという結論になる。これは間違っているとは言えない。

 自分たちの暮らしを良くしてくれるのが政治であり、食えない理想論を説教されるのを拒否するのはまともである。従って09年の総選挙で民主党が「国民の生活が第一」を掲げ、新自由主義によって格差を拡げた自民党を大敗させたのは当然であった。

 国民は「改革」を連呼する自民党より「生活」を連呼する民主党に期待をかけた。しかし長年自民党政治のやり口を見てきたフーテンには政治を分かっている者が民主党にはあまりおらず、きれいごとを言うだけの集団に見えた。自民党が恐れるのは小沢一郎代表ただひとりに見えた。

 またロッキード事件で検察のやり口を見てきたフーテンは検察は必ずでっち上げ捜査で小沢代表の政治生命を絶つだろうと予想した。

 不幸にも予想は当たり小沢氏は民主党代表を降りることになる。この時も民主党は全く小沢氏を守ろうとしなかった。そして「生活」を守ると約束した選挙公約が次々に変えられ国民の支持を失っていく。

 その民主党の政権運営の未熟さをつついて安倍総理が権力に返り咲き、アベノミクスというニンジンで国民を幻惑したが、国民は全く生活の向上を実感できず、その上にお友達への利益誘導と見られる「森友・加計問題」によって国民の不信感はこれまでになく高まった。

 そうした時に野党第一党の民進党は安倍政権に全く一矢を報いることが出来なかった。「国民に受ける」という理由だけで蓮舫代表を選んだことが間違いだということに気づかない政党だからである。政治能力とは何かを分かっていない。

 「建前のきれいごと」はバカでも言える。きれいごとでないことをどうやってやるかが政治で、そのためには汚れ役も必要なら役割分担も必要で、何よりも政治は騙しであることを身に沁み込ませる必要がある。そうでなければ権力闘争に勝つことは出来ず、政治の理想は達成できない。

 「孫氏の兵法」の要諦は「兵は詭道なり」である。つまり戦争は騙し合いだという。騙す方が戦いに勝つ。政治は戦いであるからそれと同じである。あのリンカーンが奴隷解放を成し遂げるため裏でどれほど騙しや利益誘導を行ったかを調べてみると良い。

 政治家の能力は結果がすべてで人気や支持率は関係ない。人気や支持率を気にする政治家に碌な政治家はいない。

 今回の山尾議員離党劇には「建前のきれいごと」を気にするいつもながらの民進党の体質が現れたようでフーテンは失望した。民進党はさらに離党者が出るものと見られているが、落ちるところまで落ちたのだから、それもこれも学習の一助として受け止めていくしかないだろう。
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