以下は前章の続きである
鴻海によるシャープ買収時のメディアによるデタラメ報道たるものや本当に酷く、「技術の無い会社だから仕方がない」という論調がまかり通り、世論が中国側へ有利に誘導された。
M&A業務を一度でも経験すれば分かることだが、価値のない会社を買収するお人好しはこの世界にはいない。
シャープには価値があり、政府系ファンドによる介入が行なわれようとしていたのだ。
ところが、そのタイミングで、公正取引委員会が「公的再生支援に関する競争政策上の考え方」を発表し、政府介入を妨害してシャープを鴻海へ売却するように導いてしまった。
公取委が不可解だったのは、公正な市場競争が重要と政府介入をけん制しながら、鴻海が独占禁止法違反に明らかに抵触するガンジャンピング行為(結合実行前に当事者間で協調的な行動をとったり情報交換をしたりすること)を行なったことに関して、筆者が「意見の申し立て」書面を送ったにも関わらず、迅速な調査すら行なわず、「鴻海は問題なし」とダブルスタンダードによる法の運用を行なった点である。
公取委に反対され、メディアに世論までミスリードされ、国民の理解を得られなかったために、政府主導によるシャープ再建という最善策を採ることができなかった。
そのため、シャープは考えられないほど安値で鴻海の手に渡ってしまったのである。
それは、グローバルな視点を欠いたまま「銀と金の交換比率」を安くし過ぎた幕末と同じく、日本人の経済音痴を露呈する恥ずべき事態を繰り返したのだ。
この稿続く。