文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

それに、ドイツの火力は、いざとなれば、安い自国の褐炭で動かせます。日本は、どこを掘っても、褐炭なんて出てきません。

2024年06月22日 10時34分28秒 | 全般

以下は、2016/10/30に、日・米・独ー10年後に生き残っている国はどこだ、と題して出版された、高山正之と川口マーン恵美の対談本からである。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読。

以下はp112からの、日本経済の未来は明るいが……

ドイツはまだ「脱原発」していない!
川ロ 
ドイツのメディアはたまに「原発が好きな安倍政権」と書いたりします。
自分たちの「脱原発」を正当化するために、あたかも安倍首相が、国民の意思に逆らって原発を再稼働させているかのような書き方をするのです。
高山 
そういえば、菅直人を表彰したのはドイツだったね。
川口 
私は、ドイツのニュースはわりとちゃんとフォローしているつもりですが、あれは日本のニュースで初めて知りました。
高山 
当のドイツが脱原発を貫徹できずに、ドイツ国内でまだ原発を運行しているじゃないですか。
川口 
もちろんそうです。
この間パリで開催された[COP91](気候変動枠組条約第21回締約国会議)」でも、「これから30年には再生可能なエネルギーを80%にする」とか、「50年には二酸化炭素排出のプラスマイナスをゼロにする」など、派手な打ち上げ花火ばかり上げています。
実行可能かどうかはかなり疑問です。
でも、少なくとも世界の人々に信じさせてしまうのがすごい。
いつも拍手をあびて、尊敬されています。
高山 
メルケル首相は、脱原発を主張するだけ主張してやめるのだからいいのでしょうが、現在の有様をみていると、やはり実現不可能でしょうね。
川口 
でも、ドイツがお金を使って、無駄は承知で壮大な実験をやってくれているのは、別にいいのです。
原子力に替わる再生可能エネルギーだって、100年くらいたったら使えるようになるかもしれませんから。
メルケル首相が地球を救うみたいな態度でやっているのは、ちょっと的外れですが、それも別にどうでもいい。
ただ、日本が真似をすることが問題なのです。
ドイツは、再エネのおかげで電気が余ろうが、足りなかろうが、それを隣国と買ったり、売ったり、いや、お金を出して引き取ってもらったりできる。
日本はそんなことは逆立ちしてもできません。 
それに、ドイツの火力は、いざとなれば、安い自国の褐炭で動かせます。
日本は、どこを掘っても、褐炭なんて出てきません。
世界一高い燃料を、あちこちから買っているのです。 
先日、中部電力の碧南火力発電所を見てきましたが、6万から9万トン級の石炭船が、オーストラリアやインドネシアから石炭を運んでくる。
ひとつの船の荷揚げに2、3日かかるそうですが、年間約130隻で、本当に、大袈裟ではなく、ほとんど列をなして往復しているのです。
あの光景は忘れられない。
気の遠くなるような話です。 
この発電所は410万キロワットの電気を発電していて、年間約1000万トンの石炭を使う。
全部、燃やして、おしまい。
空気が汚れることもさることながら、あまりにももったいない。
日本の国富ですよ。
これでは、日本人がどんなに一生懸命慟いても、豊かになれない。 
私は、アベノミクスがうまくいかない原因のひとつは、このエネルギー政策だと思っています。
地震よりも津波よりも、経済的な害は大きい。
高山 
そういえば、「地震」という言葉はドイツ語にありますか?
川口 
「エアトベーべン(Erdbeben)」と言いますね。「Erd(Erde)」が「地球」、「Beben」が「震動」。
しかし、ドイツでは地震は1980年代に1度あったくらいでそれ以来聞いたことはありません。
地震など経験したことのないドイツ人が大半です。 
同じヨーロッパでも火山の多いスペインとかイタリアに行くと地震があります。
先日もイタリアでありました。
建物が耐震構造になっていなかったので、街がひとつ、まるまる消滅しました。
新しい建物も全壊しており、耐震にするための補助金はEUからもたくさん出ていたのに、どこに蒸発したかわからないということで、いま、大きな問題になっています。
高山 
ラドヤード・キップリングの回想に出てきますが、彼が日本にいるときに地震があったらしく、「もう気分がめちゃくちゃに動揺して、すべてがそこで踊りだしてしまうほどだった」と書いている。
びっくりして転げ落ちるようにして外に出たら、「もう終わってますよ」と日本人に笑われてしまった。
キップリングいわく、「日本人は最後の審判ですら、笑って通り越せる」(笑)。
川口 
皆、大げさですよ。
以前、夫が初めて日本に来たとき、朝、小さな地震がありました。

私にとっては起き上がるほどのことではなかったのですが、彼は飛び上がってすごい勢いでお財布を搜しているので、何してるのかな、と思いました(笑)。
高山 
地震がほとんどないような国と、津波と大地震の頻繁に起こる日本の原子炉を比較すること自体がおかしいんだよね。
それで、向こうはさっさとやめてしまうという話ですから、なおさら意味がわからない。
川口 
日本の原子炉は地震では全然壊れていませんし、壊したのは津波でした。
日本の原子炉は地震に耐えられるという事実は、地震国はちゃんと頭に入れていると思いますよ。

 


2023/6/10 in Osaka


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