ベトナムなどへの移転を支援し、バランスのとれた国際分業体制を促進するのか、どちらかを模索すべきなのだ。と題して
2018-08-14に発信した章である。
以下は前章の続きである。
●軍需産業を中国に追いやる財務省
経済的な観点から中国の軍事的台頭を抑止することは、日本にとっても国益だ。
よってトランプ政権と連携すべきなのだが、日本政府の動きはちぐはぐだ。
何しろ日本企業のハイテク技術の中国への流出防止策を講じるどころか、逆の政策を推進している。
日本の有力な防衛産業のひとつ、三菱電機が7月9日、《中国の製造業の競争力強化に向けた長期戦略「中国製造2025」に協力するため、中国政府系の研究機関と戦略提携を結んだ。次世代技術の標準化を策定する段階から参画し、将来の市場開拓につなげる狙いだが、技術流出の懸念もある》(7月9日付共同通信)
なぜ三菱電機は中国との提携を強化するのか。
様々な要因があるが、財務省が自国の防衛産業に対して徹底したコストカットを求めていることもその一因だろう。
平成30年5月28日に開催された第7回経済財政諮問会議(安倍総理が議長)において麻生財務大臣は次のような提案をしている。
《主要分野において取り組むべき事項 防衛 安全保障環境を踏まえ、厳しい財政状況の中で防衛力を充実させるためには、技術力の選択と集中を戦略的に行った上で、防衛調達において一層の効率化を追求する必要。(中略)
・調達改革については、装備品の選定前、選定時及び選定後における取組を徹底し、装備品調達における企業間競争の確保や徹底したコストダウンを通じて、我が国の防衛産業を強靭化していくことが必要》
それでなくとも防衛費が増えないため開発費を捻出できずに苦しんでいるのに、更に徹底したコストダウンを求めるという。
防衛産業からすれば、日本で儲けることができない以上、外国市場に目を向けざるを得ない。
そうやって日本の防衛産業を海外へと追いやる政策を財務省が推進しているのだ。
しかも日本企業が中国への技術流出を続けていれば、いずれトランプ政権から厳しい制裁を科せられることになろう。
現にトランプ政権は安全保障上の観点から中国系の通信会社ZTEに制裁を科している。
因みにこの措置によってZTEに部品を供給している日本企業も大きなダメージを負ったと聞いている。
中国との連携は、特にハイテク技術をもっている場合は、大きなリスクになったのだ。
トランプ政権と連携して、日本のハイテク技術を守ろうと思うならば、中国に生産拠点を移したハイテク企業に対して国内回帰を促すのか、ベトナムなどへの移転を支援し、バランスのとれた国際分業体制を促進するのか、どちらかを模索すべきなのだ。